建設業のISO9001取得の進め方|経審の加点と認証の流れ
建設業がISO9001を取得するには、規格の要求事項に沿った品質マネジメントシステム(品質を安定させるための社内の仕組み)を作って運用し、認証機関の審査(第一段階・第二段階)に合格して登録を受けます。 経営事項審査(経審)では、登録範囲に建設業を含み、一部の支店等に限られないISO9001の登録があれば、W8(認証・登録の状況)で素点5点が加点されます。
本記事では、ISO9001の概要、認証機関と認定機関(JAB)の仕組み、取得までの一般的な流れ、経審で加点される条件を整理します。費用や期間は認証機関・会社の規模・仕組みの完成度によって変わるため、具体的な金額は複数の認証機関に見積りを取って確認してください。
ISO9001の取得の要点(一覧)
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 規格の中身 | 品質マネジメントシステムの要求事項 | ISO 9001、JIS Q 9001 |
| 誰が審査するか | 認証機関(第三者) | JAB「マネジメントシステム認証機関」 |
| 認証機関を誰が認めるか | 認定機関(日本ではJAB) | JAB「マネジメントシステム認証機関」 |
| 取得の流れ | 仕組みの構築・運用、内部監査、マネジメントレビュー、第一段階審査、第二段階審査、登録 | JQA「認証取得・維持の流れ」 |
| 登録証の有効期間 | 3年間(JQAの場合。期間中は定期審査、満了前に更新審査) | JQA「認証取得・維持の流れ」 |
| 経審での扱い | W8でISO9001は素点5点(ISO14001と両方で10点) | 関東地方整備局 経審の手引き 表21 |
| 費用・期間 | 認証機関・組織の規模・仕組みの完成度で異なる | JAB「マネジメントシステム認証機関」 |
ISO9001とは
ISO9001は、国際標準化機構(ISO)が定めた品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格です。日本産業規格(JIS)では JIS Q 9001 が対応しており、JIS Q 9001:2015 は ISO 9001:2015 と一致(IDT=技術的内容・構成・文言が同じ)した規格です。
JAB(公益財団法人日本適合性認定協会)は、マネジメントシステムを「方針及び目標を定め、その目標を達成するために組織を適切に指揮・管理するための仕組み」と説明しています。ISO9001の場合は、顧客の要求に合った製品・サービスを安定して提供するための仕組みです。建設業に置き換えると、受注から施工計画、材料の受入、施工中の検査、不具合の処置、引渡しまでを、現場代理人ごとの「自分流」ではなく会社として決めた手順で回し、記録を残して改善していく仕組みにあたります。
規格の構成(2015年版)
ISO 9001:2015(JIS Q 9001:2015)の要求事項は、箇条4から箇条10に書かれています。
| 箇条 | 主な中身 | 建設会社での例 |
|---|---|---|
| 4 組織の状況 | 組織と状況の理解、利害関係者のニーズ、適用範囲の決定 | 認証を受ける範囲(土木工事の施工など)を決める |
| 5 リーダーシップ | トップのコミットメント、方針、役割・責任・権限 | 社長が品質方針を定め、担当者の役割を決める |
| 6 計画 | リスク及び機会への取組み、品質目標、変更の計画 | 手戻りや是正の件数など、自社の品質目標を決める |
| 7 支援 | 資源、力量、認識、コミュニケーション、文書化した情報 | 資格・教育の記録、文書・記録の管理ルール |
| 8 運用 | 要求事項の明確化、設計・開発、外部提供者の管理、製造及びサービス提供、不適合なアウトプットの管理 | 施工計画、協力会社・材料の管理、検査、不具合の処置 |
| 9 パフォーマンス評価 | 監視・測定・分析・評価、内部監査、マネジメントレビュー | 品質記録の確認、内部監査、社長による見直し |
| 10 改善 | 不適合及び是正処置、継続的改善 | 不具合の原因を調べ、再発防止策を他の現場にも展開する |
2026年版の発行について
ISOは2026年9月に ISO 9001:2026(第6版)を発行し、ISO 9001:2015 は廃止(Withdrawn)となりました。ISOは、2015年版で認証を受けている組織は認証サイクルの中で新しい版へ移行する必要があり、移行の手順は認証機関に確認するよう案内しています。これから取得を始める場合も、どの版で審査を受けるかを認証機関に確認してください。なお、日本規格協会の情報では、JIS Q 9001 は2015年版(2025年の追補あり)が有効とされています(2026年10月1日時点)。
認証の仕組み(認証機関と認定機関)
ISO9001の「認証」と「認定」は役割が違います。
| 用語 | 誰が | 何をするか |
|---|---|---|
| 認証 | 認証機関 | 組織(建設会社)の仕組みが規格の要求事項に合っているかを審査し、証明する |
| 認定 | 認定機関(日本ではJAB) | 認証機関が能力・公平性などの基準に合っているかを審査し、公表する |
JABが認定したマネジメントシステム認証機関は「JABに認定された適合性評価機関」から、その認証機関による認証を受けた組織は「JAB認定のマネジメントシステム認証組織検索」から調べられます。
経審のW8で加点されるのは、JAB(または JAB と相互認証している認定機関)に認定された審査機関による登録です。認証機関を選ぶときは、認定の有無と、建設業の審査ができる認定範囲を持っているかを確認しておくと安全です。
ISO9001取得の一般的な流れ
JABは、取得の進め方として、まず規格を理解して要求事項に適合した仕組みを組織内に構築し、次に自組織の業種の審査ができる認証機関を選ぶ、と説明しています。認証機関の例として、日本品質保証機構(JQA)が公表している流れを下表にまとめます(細部は認証機関によって異なります)。
| 段階 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 準備・構築 | 規格の理解、適用範囲・方針・目標の決定、手順・規程類の作成、推進体制づくり、教育 | 今の仕事の流れが規格のどこに当たるかを見て、足りない仕組みを足す(JAB) |
| 2. 運用 | 決めた手順で現場を回し、記録を残す | 審査では仕組みが実際に動いているかが見られる |
| 3. 内部監査・マネジメントレビュー | 社内で手順どおりに運用されているかを監査し、経営者が結果を見直す | 第二段階審査までに必ず終える(JQA) |
| 4. 認証機関の選定・契約 | 見積りを取り、審査登録の申請・契約をする | JQAは第一段階審査の4か月前までの契約を推奨(最短でも1か月前) |
| 5. 第一段階審査 | 文書審査を中心に、仕組みの構築状況を確認 | 第二段階の準備が整っているかが判断される |
| 6. 第二段階審査 | 適用範囲のすべてを対象に、運用状況と規格への適合性を審査 | 第一段階との間隔は原則最短1か月・最長6か月(JQA) |
| 7. 登録・登録証発行 | 審査判定会で登録の可否を判定し、登録証を発行 | JQAの登録証の有効期間は3年間 |
| 8. 維持 | 定期審査(JQAでは登録後おおむね1年ごと)、有効期限前の更新審査 | 不適合が出たら期限までに是正処置計画を出す |
検討開始から登録証の発行までの期間について、JQAは「おおむね1年間かかります。ただし、お客さまの準備体制などによって期間は大きく異なり、半年程度で認証取得まで至るケースもあります」としています。費用は、JABが認証機関により異なるため複数の認証機関への相談を勧めているとおり、見積りで確かめる項目です。
建設会社で整えておく手順・記録の例
規格は「何をしなければならないか」を定めるもので、手順書の形式までは決めていません。建設会社では、すでにある施工管理の書類を規格の要求事項に当てはめていくと、作る量を抑えられます。
| 規格の要求(箇条) | 既存の書類・仕組みの例 |
|---|---|
| 8.1 運用の計画及び管理 | 施工計画書、品質管理計画 |
| 8.4 外部から提供されるプロセス等の管理 | 協力会社の選定・評価、材料の受入検査記録 |
| 8.5 製造及びサービス提供 | 施工管理基準に基づく品質管理・出来形管理の記録、段階確認 |
| 8.7 不適合なアウトプットの管理 | 不具合・手直しの記録と処置 |
| 7.5 文書化した情報 | 文書の承認・配布・保管のルール、写真・記録の保管方法 |
| 9.2 内部監査 | 現場パトロールとは別に、手順どおり運用されているかを確認する監査 |
| 10.2 不適合及び是正処置 | 不具合の原因と再発防止策、他現場への展開 |
施工計画書の品質管理の書き方は施工計画書の品質管理計画の書き方、施工管理基準の考え方は施工管理基準の解説も参考にしてください。
経審での加点(W8)
経審のW点(その他の審査項目=社会性等)のうち、W8「国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況」で、ISO9001などの登録が評価されます。点数は次のとおりです(素点)。
| 認証・登録の状況 | 素点 |
|---|---|
| ISO9001 と ISO14001 | 10点 |
| ISO9001 とエコアクション21 | 8点 |
| ISO9001 のみ | 5点 |
| ISO14001 のみ | 5点 |
| エコアクション21 のみ | 3点 |
| なし | 0点 |
加点を受けるには、次の条件を満たす必要があります。
- 審査基準日の時点で登録されていること
- JAB または JAB と相互認証している認定機関に認定された審査機関による登録であること
- 登録範囲に建設業が含まれていること(含まれない場合は対象外)
- 登録範囲が一部の支店等に限られていないこと(限られる場合は対象外)
- 経審の申請時に、登録証と付属書を確認書類として出すこと
計算例:ISO9001の5点がP点に与える影響
W評点は、W1〜W8の素点の合計に「10×175÷200」を掛けて求めます。総合評定値P点は「0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W」です。
- ISO9001の素点5点 × 10×175÷200 = W評点 43.75点
- 43.75点 × 0.15 = P点で約6.6点
(W評点・P点は端数処理があるため、実際の増え方は他の項目との合計で決まります。)W点のほかの加点項目は経審W点の上げ方、P点全体の対策は経審P点を上げる7つの方法で解説しています。
取得前のチェックリスト(経審加点を目的にする場合)
| No. | 確認すること | 確認先 |
|---|---|---|
| 1 | 登録範囲に建設業(自社の許可業種の工事)が含まれる計画か | 認証機関との打合せ |
| 2 | 登録範囲が一部の支店・営業所に限られていないか | 認証機関との打合せ |
| 3 | 認証機関が JAB(または相互認証している認定機関)の認定を受けているか | JABの認定機関検索 |
| 4 | 認証機関が建設業の審査ができる認定範囲を持っているか | JABの認定機関検索、認証機関 |
| 5 | 次の経審の審査基準日までに登録が間に合う日程か | 認証機関の審査日程 |
| 6 | 第二段階審査までに内部監査とマネジメントレビューを終える予定か | 社内の計画 |
| 7 | どの版(2015年版・2026年版)で審査を受けるか、移行の扱いはどうか | 認証機関 |
| 8 | 見積りを複数の認証機関から取ったか(初回審査と維持審査の両方) | 各認証機関 |
| 9 | 登録証・付属書の写しを経審の申請書類として保管しているか | 社内の書類管理 |
| 10 | 登録後の定期審査・更新審査の時期を年間計画に入れたか | 認証機関の案内 |
よくある質問
ISO9001の取得にはどれくらいの期間がかかりますか?
会社の規模と仕組みの完成度によって変わります。認証機関のJQAは、検討開始から登録証の発行までおおむね1年間、準備体制によっては半年程度で取得に至るケースもあるとしています。また、第一段階審査と第二段階審査の間隔は原則として最短1か月・最長6か月です(JQA)。
取得費用はいくらですか?
認証機関によって異なります。JABも、費用などの詳細は認証機関により異なるため、複数の認証機関に相談することを勧めています。初回の審査費用だけでなく、定期審査・更新審査の費用、社内の作業時間、外部の支援を使う場合はその費用も含めて比べてください。
一部の支店だけでISO9001を取得した場合、経審で加点されますか?
加点されません。経審の手引きでは、登録範囲に建設業が含まれていない場合と、登録範囲が一部の支店等に限られている場合は加点対象外とされています。
ISO9001とISO14001の両方を取ると何点になりますか?
W8の素点で10点です。ISO9001だけ、ISO14001だけの場合はそれぞれ5点、ISO9001とエコアクション21の組み合わせは8点です。
2015年版で取得した認証はこのまま使えますか?
ISO 9001:2026 の発行により、2015年版で認証を受けている組織は認証サイクルの中で新しい版へ移行する必要があります(ISO)。移行の期限や審査の扱いは、登録している認証機関に確認してください。
まとめ
- 取得の流れ:規格に沿った仕組みを作って運用し、内部監査・マネジメントレビューを経て、認証機関の第一段階・第二段階審査を受ける
- 認証の仕組み:認証機関が会社を審査し、JABが認証機関を認定する。どちらもJABのサイトで検索できる
- 経審の加点:W8でISO9001は素点5点(P点で約6.6点相当)。建設業を含み、一部の支店等に限られない登録であることが条件
- 費用・期間:認証機関・会社の状況で異なる。複数の認証機関に見積りと日程を確認する
- 2026年版:ISO 9001:2026 が発行済み。版と移行の扱いは認証機関に確認する
出典・参考
- 公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)「マネジメントシステム認証機関 (ISO/IEC 17021)」(マネジメントシステムの定義、認証と認定の違い、品質マネジメントシステムの説明、企業が認証を取得するまでの進め方、費用・期間は認証機関で異なる旨)
https://www.jab.or.jp/service/management_system - 公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)「JABに認定された適合性評価機関検索」「JAB認定のマネジメントシステム認証組織検索」
https://www.jab.or.jp/certification_institutions
https://www.jab.or.jp/compatible_organizations - 一般財団法人日本品質保証機構(JQA)「ISO 9001(品質)概要」(規格の構成)、「認証取得・維持の流れ」(第一段階・第二段階審査、審査の間隔、登録証の有効期間3年、定期審査・更新審査)、「よくあるご質問」(取得までの期間、契約時期、内部監査・マネジメントレビュー)※認証機関の公表情報
https://www.jqa.jp/service_list/management/service/iso9001/
https://www.jqa.jp/service_list/management/service/iso9001/flow.html
https://www.jqa.jp/service_list/management/service/iso9001/faq.html - 一般財団法人日本規格協会「JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム―要求事項」(対応国際規格 ISO 9001:2015(IDT)、追補 JIS Q 9001:2015/AMENDMENT 1:2025)
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JIS+Q+9001%3A2015 - ISO「ISO 9001:2015 Quality management systems — Requirements」(2026年9月16日廃止、ISO 9001:2026 への移行の案内)、「ISO 9001:2026」(2026年9月発行、第6版)
https://www.iso.org/standard/62085.html
https://www.iso.org/standard/9001 - 国土交通省 関東地方整備局「経営事項審査 申請の手引き 別添資料【令和8年7月改正版】」(W評点の求め方「10×175/200」、W8の加点条件と点数表(表21)、ISO登録の記入要領、確認書類=登録証と付属書、総合評定値の算式)
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000949009.pdf
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