経審P点を上げる方法|審査基準日から逆算する1年の取り組み
経審(経営事項審査:公共工事を元請として受注する建設業者が受ける、経営規模・技術力などの審査)のP点を1年で上げるには、審査基準日(原則として直前の決算日)から逆算して取り組む時期を決めることが要です。CPD(継続教育)の単位やCCUS(建設キャリアアップシステム)の就業履歴の措置は「審査基準日以前1年」の実績で、技術職員は「審査基準日以前に6か月を超える雇用」で、建退共・法定外労災・防災協定・ISOなどは「審査基準日時点」の状況で評価されます。 決算が締まった後に気づいても間に合わない項目が多いため、期首の段階で計画を立てておく必要があります。
この記事では、P点の計算式を確認したうえで、1年間の取り組みを時期別の計画表にまとめます。項目ごとの点数の詳しい解説は、経審P点の上げ方、経審W点の上げ方、経審の技術職員の点数を参照してください。点数・要件は末尾の「出典・参考」に挙げた国土交通省・地方整備局の資料で確認したもので、申請前には審査行政庁(許可を受けた地方整備局・都道府県)の最新の手引きを確認してください。
経審P点の計算式と、1年で動かしやすい項目
総合評定値Pは次の式で求めます。
P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W
| 評価項目 | 記号 | ウエイト | 1年の取り組みでの動かしやすさ |
|---|---|---|---|
| 完成工事高 | X1 | 25% | 受注・完成の実績で決まる。2年平均と3年平均の有利な方を選べる |
| 自己資本額・利払前税引前償却前利益 | X2 | 15% | 決算の数値で決まる |
| 経営状況 | Y | 20% | 決算の8指標で決まる。借入金や遊休資産の見直しは期中に行う |
| 技術力 | Z | 25% | 技術職員の資格と人数(Z1)、元請完成工事高(Z2)。資格取得は期中に計画できる |
| その他の審査項目(社会性等) | W | 15% | 制度加入・協定・認証など、期中の手続きで加点できる項目が多い |
X1・X2・Yは決算の数値でほぼ決まるため、1年の計画で意図して動かしやすいのはZ(技術職員)とW(社会性等)です。ただしW1〜W8の点数は「素点」で、W評点は素点の合計に10×175÷200を乗じて求めます(素点1点がW評点で8.75点)。
「いつの状態で評価されるか」の早見表
経審の加点項目は、評価の基準になる時点がそれぞれ決まっています。計画を立てる前に、この表で「いつまでに何を済ませるか」を確認してください。
| 評価の基準 | 主な項目 | 計画上の注意 |
|---|---|---|
| 審査基準日以前1年の実績 | CPD単位の取得数(W1、1人30単位まで)、CCUSの就業履歴を蓄積する措置(W1、審査基準日以前1年に元請として請け負った工事が対象) | 期首から取り組まないと1年分の実績にならない |
| 審査基準日以前3年の実績 | 技能者の能力評価のレベルアップ(W1) | 前年度からの継続で考える |
| 審査基準日以前に6か月を超える雇用 | 技術職員(Z1) | 採用は審査基準日の6か月より前に済ませる |
| 審査基準日時点の状況 | 建退共・退職一時金制度または企業年金制度・法定外労災(W1)、ワーク・ライフ・バランスの認定(W1)、防災協定(W3)、建設機械の所有・リース(W7)、ISO9001・ISO14001・エコアクション21(W8) | 審査基準日までに加入・締結・登録を済ませる |
| 審査基準日以前の宣言 | 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」(W1、5点) | 宣言の立場が元請事業者または下請事業者であること |
| 審査基準日の決算 | X1、X2、Y、Z2(元請完成工事高) | 決算期の数値で決まる |
技術職員名簿は、審査基準日に在籍する技術職員について作成します。資格の扱いや確認書類は審査行政庁の手引きで指定されているため、合格・講習の時期が審査基準日の前後にかかる場合は事前に確認してください。
審査基準日から逆算した1年の取り組み計画
審査基準日(決算日)を基準に、時期ごとの取り組みを並べると次のとおりです。月数は審査基準日からの逆算で、3月決算なら「12か月前」が前年の4月にあたります。
| 時期 | 取り組み | 関係する項目 |
|---|---|---|
| 12か月前(期首) | 前回の結果通知書で項目別の点数を確認し、今期に加点を狙う項目を決める | 全項目 |
| 12か月前(期首) | 技術者ごとのCPD単位の取得計画を立てる(1人30単位まで算入) | W1 |
| 12か月前(期首) | 元請として請け負う工事で、CCUSの現場契約情報の作成・登録と、就業履歴を蓄積できる体制を整える | W1 |
| 12か月前から期中 | 資格の受験計画を立てる(2級から1級へ、1級技術者は監理技術者講習の受講など) | Z1 |
| 7か月前まで | 技術職員の採用を済ませる(審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用が必要) | Z1 |
| 期中 | 建退共・退職一時金制度または企業年金制度・法定外労災の加入状況を確認し、未加入の制度を検討する | W1 |
| 期中 | 防災協定の締結状況を確認する(地域の建設業協会を通じた協定も含めて確認) | W3 |
| 期中 | ISO・エコアクション21の認証範囲に建設業が含まれているかを確認する。新規取得は審査・登録までの期間を見込む | W8 |
| 期中 | 建設機械の特定自主検査・車検・性能検査の時期を確認する。リースは審査基準日から1年7か月以上の使用期間が定められた契約が対象 | W7 |
| 3か月前から審査基準日 | 借入金の返済、遊休資産の処分、完成工事未収入金の回収など、決算の数値に関わる対策を税理士と確認する | Y・X2 |
| 審査基準日(決算日) | 加入・締結・登録・宣言が済んでいるかを最終確認する | W |
| 決算後 | 決算変更届、経営状況分析(Y)の申請、経営規模等評価(X・Z・W)の申請。完成工事高は2年平均と3年平均の有利な方を選ぶ | 全項目 |
経審の有効期間は審査基準日から1年7か月で、結果通知書を受け取ってからの期間ではありません。公共工事を毎年元請で受注する会社は、有効期間が切れ目なく続くよう、毎年決算後速やかに申請する必要があります(中部地方整備局の手引きでは、決算終了後4か月以内の申請を目安として示しています)。
時期別のポイント
期首:前回の点数の確認と、1年単位の実績づくり
CPD単位とCCUSの措置は、どちらも審査基準日以前1年の実績で評価されます。CPDは「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況」(W1、最大10点)の一部として、技術者が1年のうちに取得した単位数(1人30単位まで)から計算します。CCUSの措置は、民間工事を含む全ての建設工事で実施していれば10点、全ての公共工事で実施していれば5点です。審査基準日以前1年に元請として請け負った対象工事が1件もない場合は加点の対象になりません。
CCUSの登録手順は建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録方法で解説しています。
期中:技術職員(Z1)の資格取得と採用
技術職員の点数は、1人あたり1級監理受講者6点、1級技術者5点、監理技術者補佐4点、基幹技能者・レベル4技能者3点、2級技術者・レベル3技能者2点、その他の技術者1点です。これを合計した「技術職員数値」を換算表に当てはめた点数がZ1で、Z=Z1×0.8+Z2×0.2で求めます。1人を技術職員として申請できるのは2業種までです。
1級監理受講者の加点は、監理技術者講習を修了した日の属する年の翌年から5年間です。また、技術職員として評価されるには、審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係が必要なため、中途採用で技術職員を増やす場合は審査基準日の7か月前までを目安に採用を済ませます。資格ごとの点数と注意点は経審の技術職員の点数|資格別の評価点一覧、1級の学習計画は1級土木施工管理技士の勉強法を参照してください。
期中:審査基準日時点で判定されるW点の手続き
W1の建退共・退職一時金制度または企業年金制度・法定外労災は、それぞれ15点です(中退共と自社の退職金制度は同じ項目なので、重ねても15点を超えません)。防災協定(W3)は20点、ISO9001・ISO14001はそれぞれ5点、エコアクション21は3点(W8は最大10点、ISO14001とエコアクション21は合算されません)。建設機械(W7)は対象機械の台数に応じて1台5点から15台以上15点までです。
いずれも審査基準日時点の状況で判定されるため、加入・締結・登録が決算日をまたぐと、その年の経審には反映されません。項目ごとの要件は経審W点の上げ方にまとめています。社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)の未加入はそれぞれ40点の減点になるため、加点の前に加入漏れがないかを確認してください。
決算前後:X1・X2・Yの確認と申請
X1・X2・Yは決算の数値で決まります。期末に向けて、借入金の返済や遊休資産の処分、完成工事未収入金の回収といったY点の対策を税理士と確認します。決算後は、登録経営状況分析機関に経営状況分析(Y)を申請し、その結果を添えて許可行政庁に経営規模等評価(X・Z・W)を申請します。完成工事高は2年平均と3年平均のいずれか有利な方を選べます。Yの8指標と対策は経審P点の上げ方で解説しています。
計算例:取り組みがP点にどう効くか(仮の数値)
以下は、式の使い方を示すための仮の数値です。実際の点数は会社ごとの構成で変わります。
Z1の例(技術職員)
技術職員数値が37(1級監理受講者2人、1級技術者3人、2級技術者4人、その他の技術者2人)の会社を仮定します。関東地方整備局の手引きの換算表(表5)では「30以上40未満」の式が63×技術職員数値÷10+633なので、Z1=63×37÷10+633=866.1、小数点以下を切り捨てて866です。
2級技術者のうち1人が1級に合格し、監理技術者講習も受けると、技術職員数値は37−2+6=41です。「40以上50未満」の式(63×技術職員数値÷10+633)でZ1=891.3→891となり、Z1は25点増えます。Z2が変わらなければZは約20点(25×0.8)、Pは約5点(20×0.25)の上積みです。
W評点の例(社会性等)
未加入だった法定外労災に加入して素点が15点増えると、W評点では15×10×175÷200=131.25点(端数処理前)の増加に相当します。Pへの影響は0.15を乗じた約19.7点(端数処理前)です。
このように、同じ「1つの取り組み」でもP点への効き方は項目によって大きく異なります。計画の優先順位は、前回の結果通知書で自社の未取得の項目を洗い出したうえで、費用と手間を比べて決めてください。
1年計画のチェックリスト
- □ 前回の結果通知書で、W1〜W8の項目ごとの点数と未取得の項目を確認した
- □ 審査基準日(決算日)と、そこから逆算した12か月前・7か月前の日付を把握した
- □ 技術者ごとのCPD単位の取得計画がある(1人30単位まで算入)
- □ 元請工事で、CCUSの現場契約情報の作成・登録を実施している
- □ 技術職員の採用は、審査基準日以前に6か月を超える雇用となる時期に済ませる
- □ 受験・監理技術者講習の予定が、審査基準日との前後関係も含めて整理されている
- □ 建退共・退職一時金制度または企業年金制度・法定外労災の加入状況を確認した
- □ 防災協定、ISO・エコアクション21の認証範囲(建設業を含むか)を確認した
- □ 建設機械の検査時期と、リース契約の使用期間(審査基準日から1年7か月以上)を確認した
- □ 社会保険の加入漏れがない
- □ 決算前に、Y・X2に関わる対策を税理士と確認した
- □ 決算後の申請時期(有効期間が切れ目なく続く時期)を決めた
よくある質問
Q. 経審の点数を上げるには、まず何から取り組むべきですか。 A. 前回の結果通知書で項目ごとの点数を確認し、未取得の項目を洗い出すことから始めます。そのうえで、CPDやCCUSのように1年分の実績が必要な項目は期首から、審査基準日時点で判定される制度加入や協定は決算日までに、という順で計画します。
Q. 決算日の直前に加入した制度は、その年の経審で加点されますか。 A. 建退共・退職一時金制度または企業年金制度・法定外労災・防災協定・ISO等は審査基準日時点の状況で判定されるため、審査基準日までに加入・締結・登録が済んでいれば対象になります。ただしCPDとCCUSは審査基準日以前1年の実績で評価されるため、直前の対応では1年分になりません。確認書類は審査行政庁の手引きで確認してください。
Q. 新しく採用した技術者は、その年の経審の技術職員になりますか。 A. 審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があることが必要です。審査基準日の直前に採用した場合は、その年の技術職員としては評価されません。
Q. 1年でP点は何点上がりますか。 A. 会社の現状と取り組む項目によって大きく異なるため、一律には言えません。上の計算例のように、項目ごとに式に当てはめて見積もってください。
まとめ
- P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W。1年の計画で動かしやすいのはZ(技術職員)とW(社会性等)
- CPDとCCUSは審査基準日以前1年の実績、技術職員は審査基準日以前に6か月を超える雇用、制度加入・協定・認証・建設機械は審査基準日時点で評価される
- 計画は審査基準日から逆算し、期首に前回の点数確認と1年単位の取り組みを始める
- 有効期間は審査基準日から1年7か月。毎年決算後速やかに申請する
入札参加の全体像は公共工事の入札の流れと入札参加資格の取り方、AI活用と経審の関係は経審のP点はAIで上がる?もあわせてご覧ください。
出典・参考
- 国土交通省 関東地方整備局「経営事項審査 申請の手引き 別添資料【令和8年7月改正版】」(総合評定値Pの算式、技術職員名簿の記載要領、Z1の技術職員数値の換算表(表5)、〔5〕W(その他社会性等)の評点の求め方、W1の加点項目(CPD単位数の算定期間と上限、CCUSの就業履歴を蓄積するために必要な措置、自主宣言)、W3の防災協定、W7の建設機械とリース契約の要件、W8の点数表)
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000949009.pdf - 国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和5年1月1日・一部令和4年8月15日改正)」(W1への再編、監理技術者講習受講者の加点期間)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001585871.pdf - 国土交通省 報道発表資料「経営事項審査の審査基準の改正等について」(平成22年10月15日。技術職員の6か月を超える恒常的雇用関係)
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo13_hh_000088.html - 国土交通省 中部地方整備局「経営規模等評価申請・総合評定値請求の手引き」平成30年4月(審査基準日、有効期間1年7か月と建設業法施行規則第18条の2、決算終了後4か月以内の申請の目安、経営状況分析の申請先、完成工事高の2年平均・3年平均)
https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/info/kensetsu/ken02/tebiki.pdf
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