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経審P点アップにAIは貢献するか|現実的な期待値と間接的効果

経審P点アップにAIは貢献するか|現実的な期待値と間接的効果

「AIを入れたらP点は上がりますか?」によくある誤解

最近、公共工事主体の土木工事会社から「AIツールを導入すれば経審のP点は上がりますか?」と聞かれることが増えてきました。

結論を先にお伝えすると、AIを導入しただけで経審のP点(総合評定値)が直接上がることはありません。経審の評価項目には「AI導入加点」という項目は存在しないためです。

一方で、AI活用を前提にした業務改善は、経審の複数の評価項目に間接的に効いてきます。この記事では、過大な期待を避けつつ、AIを正しく使えば経審にどの程度プラスになるのかを、評価項目ごとに整理します。

経審の基本的な仕組みや他の加点対策は経営事項審査(経審)のP点を上げる7つの方法にまとめてありますので、あわせてご参照ください。

経審P点の評価項目を改めて整理する

経審の総合評定値(P点)は、以下の5つの評価項目から算出されます。

P点 = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W

評価項目記号ウエイト内容
完成工事高X125%業種別の完成工事高
自己資本額等X215%自己資本額、利払前税引前償却前利益
経営状況Y20%財務諸表に基づく8指標の分析
技術力Z25%技術職員数、元請完成工事高
社会性等W15%社会保険加入、退職金制度、防災協定等

各項目の評価基準は「定量的な数値」または「該当の有無」で判定されます。AIソフトを何本契約しているか、どれだけ使いこなしているかは、評価項目の中には含まれていません。

AIで「直接加点される項目」は存在しない

まず誠実にお伝えすべき点として、現行の経審の制度で、AI導入が直接加点される評価項目はありません

ICT施工や建設DXについては、国土交通省の工事成績評定で加点される場合がありますが、それは個別工事の「工事成績」としての評価であり、経審そのものの加点ではありません。工事成績評定の詳細は工事成績評定とは|土木工事で良い点数を取るポイントで解説しています。

「AIを使えば経審のP点が確実に上がる」と誘う情報があれば、まず疑ってください。現時点の制度では、そのような直接的な関係は存在しません。

間接的に経審に効く4つの領域

では、AI活用は経審に全く貢献しないのかというと、そうではありません。以下の4つの領域で、確実に間接効果があります。

1. Y(経営状況)への間接効果

Yは財務諸表に基づく8指標で評価されるため、書類作成時間の短縮による人件費削減が、最終的にY点の向上につながります

業務AI活用前AI活用後月次の削減
施工計画書作成1人40時間1人20時間20時間
週報・月報作成1人16時間1人6時間10時間
協力会社との連絡メール1人10時間1人4時間6時間
社内研修資料作成1人20時間1人8時間12時間

仮に現場管理者1人あたり月48時間の事務作業が短縮できれば、残業代または増員コストの抑制につながります。この効果が年間で積み上がれば、売上高経常利益率の改善として経審のY点に反映されます。

2. W(社会性等)への間接効果

W点の加点項目の中には、書類整備や研修の実施実績が問われるものがいくつもあります。

W点の加点項目AIで効率化できる部分
ISO9001・ISO14001認証取得品質マニュアル・環境マニュアルの文書整備
エコアクション21認証環境活動レポートの作成
建設機械の保有・使用実績管理台帳の整備
若年技術者の育成研修資料の整備、計画書の策定
法定外労災保険加入社内規程整備の文書作業

ISO9001の取得そのものはAIでは代替できませんが、取得のために必要な膨大な文書整備作業は、AIで大きく短縮できます。ISO取得を諦めていた中小土木会社が、AIを使えば現実的な選択肢として検討できるようになった、というケースは実際に出てきています。

W点の詳しい加点方法は経審W点の上げ方|社会性等評価を最大化する方法をご覧ください。

3. Z(技術力)への間接効果

Zは技術職員の資格保有数が大きく影響します。AIを使った学習支援で、社員の資格取得を加速させることができます

資格Z点への加点
1級土木施工管理技士5点
2級土木施工管理技士2点
技術士(建設部門)5点

AIは、過去問の解説、苦手分野の弱点診断、模擬問題の作成といった学習支援に非常に相性が良いツールです。社内の若手が2級土木施工管理技士を取得すれば1人あたり2点、1級なら5点がZ点に加算されます。3年で5人が1級を取得すれば、Z点で25点の上積みになります。

Z点を上げるための資格選定は経審Z点の資格選び|加点が大きい資格の優先順位で詳しく扱っています。

4. 工事成績評定を通じた間接効果

Z点には「元請完成工事高」が含まれており、工事成績評定が良い会社ほど次年度の受注量が増える傾向にあります。つまり、工事成績評定の向上は、長期的に経審のZ点・X1点の底上げにつながります。

AIは施工計画書の充実、安全管理計画書の漏れ防止、工事書類の整備など、工事成績評定の加点対象になる書類品質の底上げに役立ちます。直接的な経審加点ではありませんが、3〜5年スパンで見ればP点全体に効く地力アップと考えてよいでしょう。

ISO・働き方改革対応でのAI活用

土木工事会社が経審W点を伸ばす上で、ISO認証と働き方改革の対応は代表的な論点です。

ISO9001・ISO14001の文書整備

ISO認証で最もハードルが高いのは、膨大な手順書・マニュアル・記録書式の整備です。AIに「土木工事会社のISO9001用の品質マニュアルの章立てを示してください」と投げれば、目次のたたき台が数分で揃います。既存の社内文書をベースに、ISO要求事項に照らして足りない章を補うような使い方も可能です。

働き方改革対応の規程整備

2024年問題への対応として、就業規則の改定、36協定の見直し、勤怠管理規程の整備が必要になっています。条文の下書きをAIに作らせ、社会保険労務士にチェックしてもらう流れが、コストを抑えつつ抜け漏れを防ぐ方法です。2024年問題の全体像は土木工事会社が知っておくべき2024年問題と具体的な対策をご覧ください。

社員教育としてのAI研修の位置づけ

ここまで「AI単体では経審は上がらない」と繰り返し述べてきましたが、AI研修そのものを「人材教育投資」として位置づける視点は、中小土木工事会社にとって非常に重要です。

AI研修を人材投資として捉える理由

視点効果
採用競争力若手が働きやすい環境を整え、採用・定着に寄与
技術職員のスキル底上げ資格取得の勉強にもAIを活用、Z点の底上げへ
離職防止ベテラン頼みから組織知への転換
経営の可視化文書化が進むことで経営判断の精度が上がる

これらは経審の「直接加点項目」ではなく、中長期で経営の足腰を強くする効果です。結果として、P点を構成するX1(完成工事高)・X2(自己資本額)・Y(経営状況)・Z(技術力)のすべてにじわじわと効いてきます。

土木工事業界に特化したAI研修の意義

一般的なAI研修は「業界共通の使い方」を教えるものが多いですが、土木工事の業務フローは一般的なオフィスワークとは大きく異なります。

  • 施工計画書・安全書類・打合簿など、業界固有の書式がある
  • 発注者(官公庁)とのやりとりで、独特の表現と手続きが必要
  • 工事成績評定や経審といった、業界固有の評価制度がある

土木工事業界の実務に精通した研修プログラムでなければ、現場で使えるレベルまで習得するのに時間がかかります。自社で試行錯誤する期間を短縮する意味でも、業種特化の研修は投資対効果が高いと言えます。

現実的な期待値:3年スパンで見る

最後に、AIと経審P点の関係について、現実的な期待値をまとめます。

期間期待できる効果
〜6か月書類作成時間の短縮を実感。残業削減に直結
6か月〜1年社員の資格取得勉強が加速、ISO整備が現実的に
1〜3年工事成績評定の向上、人件費効率の改善
3〜5年Y・Z・W点の底上げ、P点全体への反映

「AIを入れたから来年のP点が10点上がる」ようなことは起こりません。一方で、「AIを使いこなせる組織」と「使いこなせない組織」では、5年後の経営体力に大きな差が生まれます。その差が、最終的にP点の差として表れてくると考えるのが実態に近い見方です。

まとめ:AI導入は経審への「遠回りだが確実な投資」

AIの経審P点への貢献について整理すると、次のようになります。

  • AI導入が直接加点される評価項目は存在しない
  • Y(経営状況)・W(社会性等)・Z(技術力)には間接的に効く
  • ISO認証や規程整備の文書作業効率化で、W点の加点に届きやすくなる
  • 社員の資格取得支援に使えば、Z点の底上げにつながる
  • 短期的なP点上昇ではなく、3〜5年スパンでの経営体質改善として捉えるのが妥当

中小の土木工事会社にとって、AIは経審対策というより「経営全体の底上げ」の道具です。結果として経審P点にも跳ね返ってくる、という順番で捉えるのが正しい理解と言えます。

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