バックアップの方法|土木工事データの3-2-1ルールと保存先
バックアップの基本は「3-2-1ルール」です。データのコピーを本体も含めて3つ以上持ち、2種類の媒体に保存し、そのうち1つは別の場所に保管します。 IPAの「情報セキュリティ6か条」は、このルールを紹介したうえで、バックアップに使う装置・媒体はバックアップのときだけパソコンにつなぐこと、戻せるかを定期的に確かめることを挙げています。ランサムウェア(データを暗号化して身代金を要求する不正プログラム)の被害ではバックアップも一緒に暗号化される場合が多いため、ネットワークから切り離したコピーを1つは持つことが欠かせません。土木工事会社では、撮り直せない工事写真と、容量の大きい点群・3次元データをどう守るかが要点になります。
この記事では、公的機関の推奨、土木工事のデータ別の保存先と頻度、保存先ごとの長所と注意点、戻せるかの確認手順をまとめます。
IPA・警察庁が推奨するバックアップ
| 推奨されていること | 出典 |
|---|---|
| データのコピーは本体を含め3つ以上持ち、2種類のメディアで保管し、そのうち1つは稼働システムとは異なる拠点等で保存する(3-2-1ルール) | IPA 情報セキュリティ6か条 解説編 |
| 重要情報のバックアップを定期的に行う | IPA 情報セキュリティ6か条 解説編 |
| バックアップに使う装置・媒体は、バックアップのときだけパソコンと接続する | IPA 情報セキュリティ6か条 解説編 |
| バックアップしたデータを戻せるか定期的に確認する | IPA 情報セキュリティ6か条 解説編 |
| 複数の時点のバックアップを持つ(世代管理)。本番環境から物理的に分けた場所にも保存する | IPA 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版 |
| こまめに取得し、ネットワークから切り離してオフラインで保存するなど、暗号化されないように備える | 警察庁 ランサムウェア被害防止対策 |
警察庁の「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」は、ランサムウェアの攻撃者がネットワーク内部を探索して重要データやバックアップを物色し、復旧を妨害するためバックアップも一緒に暗号化する場合が多いと説明し、暗号化対策となるオフラインバックアップを被害の抑制に有効な管理の一つに挙げています。警視庁の「安全なバックアップの取得方法と注意点」も、バックアップ用の機器を常につないだままにしておくと感染時に「共倒れ」になるとして、バックアップのときだけ接続し、終わったら物理的に切り離すよう呼びかけています。
土木工事のデータ別の保存先と頻度
土木工事 業務改善Naviとして、3-2-1ルールを土木工事のデータに当てはめた早見表です。頻度は目安で、工事の規模と更新の頻度に合わせて決めてください。
| データ | 特徴 | 頻度の目安 | 3-2-1の組み方の例 |
|---|---|---|---|
| 工事写真(施工途中・出来形) | 撮り直せない。電子小黒板の情報を含む | 撮影した日のうち | 端末+クラウドの自動保存+週1回の外付け記憶装置 |
| 点群・ドローン測量の元データ | 容量が非常に大きい。測り直しには日数と費用がかかる | 取得・処理のたび | 処理用PC+NAS+取得のたびに外付け記憶装置を作って別の場所へ |
| 3次元設計データ・ICT建機のデータ | 修正のたびに版が変わる | 修正のたび | 版ごとに名前を変えて保存(世代管理)+クラウド+外付け |
| 工事書類(施工計画書、打合せ簿、品質記録) | 発注者への提出物の元になる | 毎日〜毎週 | 共有フォルダ+クラウド+切り離した外付け |
| 電子成果品 | 納品後も参照する | 納品時 | 納品した媒体の控え+社内保管+別の場所 |
| 積算・入札のデータ | 締切前は毎日変わる | 入札前は毎日 | ソフトのバックアップ機能+切り離した外付け |
| 会計・給与・作業員名簿 | 個人情報を含む | 毎日〜毎月 | ソフトの機能+暗号化した外付け |
点群の扱いは点群データの活用法、3次元設計データは3次元設計データの活用方法、電子成果品の作り方は電子納品の手順も参照してください。
保存先ごとの長所と注意点
| 保存先 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 外付けHDD・SSD | 容量あたりが安く、点群のような大きなデータに向く | つなぎっぱなしだと一緒に暗号化される。バックアップのときだけつなぐ |
| NAS(ネットワークにつなぐ記憶装置) | 社内の複数のPCから自動で保存できる | ネットワーク上にあるので、それだけでは切り離したコピーにならない。機器の更新と初期パスワードの変更が必要 |
| クラウドストレージ | 別の場所に置ける。現場からも使える | 同期型は、暗号化されたファイルや削除も同期されることがある。以前の版に戻せる機能や保存期間を確かめる |
| 光ディスク・テープ | 書き込んだ後は変わりにくい | 書き込みと保管の手間。読み取れる機器を残しておく |
| 別の拠点・金庫 | 火災・水害・地震でも残る | 持ち出しと戻しの担当を決める。暗号化して運ぶ |
IPAのガイドラインは、物理的に分ける保管先の例として、外付けストレージやバックアップテープ、銀行の貸金庫、信頼できる取引先や関連会社を挙げています。水害や地震で本社と現場事務所が同時に被災することも考え、1つは離れた場所に置くことがBCPの面でも大切です。災害を想定した計画は土木工事会社のBCPの作り方にまとめています。
同期とバックアップは違う
クラウドストレージの「同期」は、パソコンで変更・削除したものをクラウドにも反映する仕組みです。パソコンのファイルが暗号化されたり消されたりすると、同期先も同じ状態になることがあります。
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 以前の版に戻せる機能があるか、何日前まで戻せるか | 暗号化される前の時点に戻すため |
| 削除したファイルを何日間復元できるか | 誤って消したときに戻すため |
| 管理者がまとめて戻せるか | 1ファイルずつ戻すのでは復旧が終わらない |
クラウドストレージのアカウントそのものの守り方は、パスワード管理と二段階認証の記事をご覧ください。図面・書類の共有の仕方は建設業のクラウドストレージ活用術で扱っています。
戻せるかの確認手順
バックアップは、戻せて初めて意味があります。
| 頻度 | やること |
|---|---|
| 毎月 | 任意のファイルを1つ選び、バックアップから別の場所に戻して開けるか確かめる |
| 工事の節目 | 施工途中の写真フォルダを丸ごと戻せるか確かめる |
| 半年ごと | 「本社のファイルサーバーが使えなくなった」想定で、どのくらいの時間で業務を再開できるかを試す |
| 担当交代のとき | 手順書どおりに新しい担当者が戻せるか確かめる |
IPAの手引きは、ランサムウェアの被害を最小限に抑えるポイントとして、日頃から適切な方法でデータのバックアップを行っておくことを挙げています。被害を受けたときの動き方はランサムウェア対策の記事を参照してください。
バックアップのチェックリスト
| No. | 確認すること | できていれば |
|---|---|---|
| 1 | 守るデータと保存先・頻度を一覧にした | ☐ |
| 2 | 工事写真は撮影した日のうちに端末以外にも保存される | ☐ |
| 3 | ネットワークから切り離したコピーが1つある | ☐ |
| 4 | 1つは本社と別の場所にある | ☐ |
| 5 | 複数の時点のバックアップを持っている(世代管理) | ☐ |
| 6 | 外付けの記憶装置はバックアップのときだけつないでいる | ☐ |
| 7 | 毎月、戻せるかを確かめている | ☐ |
| 8 | バックアップの担当と手順書がある | ☐ |
よくある質問
Q. クラウドに保存していればバックアップは不要ですか。 A. 同期型のクラウドは、暗号化や削除も同期されることがあります。以前の版に戻せる機能を確かめたうえで、切り離したコピーも別に持つのが3-2-1ルールの考え方です。
Q. 点群データが大きすぎて全部は保存しきれません。 A. 取得した元データと、成果として使った処理済みのデータを優先します。何を残すかは、発注者への提出物と社内で再利用するデータを基準に決めます。
Q. バックアップはどのくらいの頻度で取ればよいですか。 A. 失って困る範囲で決めます。工事写真のように撮り直せないものはその日のうち、頻繁に変わる書類は毎日、変更の少ないものは週1回など、データごとに頻度を変えるのが現実的です。
まとめ
- バックアップは3-2-1ルール(3つのコピー、2種類の媒体、1つは別の場所)が基本
- ランサムウェアはバックアップも狙う。切り離したコピーを1つ持つ
- 土木工事では、撮り直せない工事写真と、大容量の点群・3次元データを優先して守る
- 同期とバックアップは違う。戻せるかを毎月確かめる
出典・参考
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ6か条 解説編」2026年9月(No.5 バックアップ、3-2-1ルール)
https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html - IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」2026年3月(適切なバックアップ、世代管理、物理的隔離)
https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html - IPA「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」2026年6月(事象ごとの対応のポイント)
https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html - 警察庁「ランサムウェア被害防止対策」(バックアップの取得)
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/countermeasures/ransom.html - 警察庁サイバー警察局「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」令和8年3月(ランサムウェア攻撃の手口と備え)
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R7/R07_cyber_jousei.pdf - 警視庁「安全なバックアップの取得方法と注意点」(3-2-1ルール、オフラインバックアップ)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/cyber/security/bkup.html
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