災害協定の結び方と経審W3|建設業者の締結手順と確認書類
建設業者の災害協定(防災協定:災害が起きたときに、建設業者が行政の要請を受けて応急復旧などに出動することを定めた協定)は、国、特殊法人等または地方公共団体との間で、審査基準日(経審の基準になる日。原則として直前の決算日)に締結していれば、経審(経営事項審査:公共工事を元請で受注する建設業者が受ける審査)のW3「防災活動への貢献の状況」で素点20点になります。締結の方法は、自社が国の事務所や自治体と直接結ぶ方法と、加入している建設業協会などの団体が結んだ協定に参加する方法の2つで、団体経由の場合は「団体への加入証明書」と「自社の活動内容が確認できる書類」をそろえる必要があります。
この記事では、W3の加点要件、2つの締結ルートの違い、地方整備局の公募を例にした直接締結の手順、経審で求められる確認書類を整理します。W点全体の上げ方は経審W点の上げ方で解説しているため、ここでは協定の結び方と書類に重心を置きます。点数・要件・手続きは末尾の「出典・参考」に挙げた法令と国土交通省・自治体の資料で確認したもので、申請前には審査行政庁(許可を受けた地方整備局・都道府県)の最新の手引きを確認してください。
災害協定とは
災害協定は、地震・大雨・大雪などの災害が起きたとき、またはそのおそれがあるときに、行政が管理する道路・河川などの被害状況の把握や応急復旧を速やかに行うため、必要な建設機械・資材・技術者・労力の確保と動員の方法をあらかじめ定めておく協定です。関東地方整備局の国道事務所が公募した「災害応急対策業務に関する協定」も、この趣旨を目的に掲げています。
行政側にとっても、協定は法律上の位置づけがあります。災害対策基本法第49条の3は、災害予防責任者(国の機関や地方公共団体など)に対し、災害応急対策や災害復旧に必要な物資・資材・役務を提供する事業者などの協力を得るため、協定の締結その他の措置を講ずるよう努めることを求めています。建設業者との災害協定は、この「協力を得るための措置」の一つです。
経審W3(防災活動への貢献の状況)の加点要件
関東地方整備局の経審の手引き(令和8年7月改正版)では、W3の要件と点数が次のように示されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 協定の相手方 | 国、特殊法人等(入札契約適正化法第2条第1項に規定する特殊法人等)、地方公共団体 |
| 協定の内容 | 災害時の防災活動等について定めた防災協定 |
| 判定の時点 | 審査基準日において締結しているか |
| 素点 | 締結あり20点、なし0点 |
| W評点への換算 | W1〜W8の素点の合計に「10×175÷200」を乗じる |
素点20点をW評点に換算すると20×10×175÷200=175点、総合評定値P(P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W)への寄与は175×0.15=26.25点です(いずれも端数処理前の計算上の値)。民間企業同士の協定や、相手方が上の3者に当たらない協定は、W3の対象として書かれていません。
「審査基準日において締結している」ことが要件のため、決算日をまたいで締結した協定はその年の経審に反映されません。東京都が掲載している大臣許可業者向けの確認書類一覧でも、防災協定は「審査基準日時点で有効な協定に限る」とされています。協定に有効期間がある場合は、更新の時期も確認しておきます。
締結の2つのルート:直接締結と団体経由
| 比較項目 | 自社が直接締結する | 加入団体の協定に参加する |
|---|---|---|
| 協定の当事者 | 自社と、国の事務所・特殊法人等・地方公共団体 | 建設業協会などの団体と、国・地方公共団体等 |
| 始め方 | 地方整備局の事務所などの公募に応募する、または相手方に確認する | 所属する団体に、協定の有無と参加の条件を確認する |
| 経審の確認書類 | 国、特殊法人または地方公共団体との防災協定書 | 団体への加入証明書と、活動内容が確認できるもの(協定書・活動計画書等) |
| 注意点 | 公募には入札参加資格や所在地、施工実績などの条件が付くことがある | 団体に加入しているだけでなく、防災活動で自社が役割を担うことが書類で確認できる必要がある |
どちらのルートでもW3の素点は20点で、両方あっても加算されるわけではありません(表の上では「有」か「無」かの判定です)。
直接締結の手順:地方整備局の公募の例
国の事務所との災害協定は、公募で締結先を募る形が取られています。関東地方整備局 宇都宮国道事務所が令和2年12月に公告した「災害応急対策業務に関する協定」締結の公募を例に、流れを整理します。具体的な条件や時期は事務所・年度ごとに異なるため、必ずその公告で確認してください。
| 手順 | 内容(宇都宮国道事務所の公募の例) |
|---|---|
| 1. 公募の公告を見つける | 事務所のホームページで公告。工事の発注ではないため、入札は行わない |
| 2. 参加資格を確認する | 下の「参加資格の例」を参照 |
| 3. 技術資料作成要領を入手する | ホームページからのダウンロードなどで交付 |
| 4. 技術資料を提出する | 受付期間内に、持参・郵送(配達記録が残るもの)・電子メール等で提出 |
| 5. 選定の通知を受ける | 条件を満たす者と協定を締結し、書面で通知 |
| 6. 協定期間を管理する | この公募の協定期間は令和3年4月1日から令和6年3月31日まで |
この公募で示された参加資格の主なものは次のとおりです。
- 関東地方整備局の一般競争(指名競争)参加資格の認定を、一般土木工事・維持修繕工事・アスファルト舗装工事・橋梁補修工事・造園工事のいずれかで受けていること(認定がされない場合、協定の締結は無効)
- 栃木県内または茨城県内に、建設業法に基づく本店・支店・営業所があること
- 応募区間から30km以内に資機材置き場を所有していること
- 栃木県内または茨城県内で、元請として完成・引渡しをした対象工種の施工実績があること
- 関東地方整備局発注工事の工事成績評定点の平均が、2年連続で60点未満でないこと
また、この公募では、協定の締結者は関東地方整備局が総合評価落札方式(価格と技術力などを合わせて落札者を決める方式)で発注する工事の入札で「企業の技術力の地域貢献度」の項目が優位になり、協定に基づいて災害応急対応業務(防災訓練を除く)を行うと、さらに優位になると示されています。経審のW3とは別に、入札の評価にも関わる点が直接締結の特徴です。
九州地方整備局 九州技術事務所も、災害対策用機械の出動や応急対策業務に関する基本協定の締結会社を、年度ごとに公募しています。国の事務所の公募は、各地方整備局・事務所のホームページの公募・入札情報で確認できます。都道府県や市町村との協定は、自治体ごとに窓口や方式が異なるため、防災・建設の担当課に確認してください。
団体経由の協定の扱い
地域の建設業協会などの団体が、都道府県や市町村と災害協定を結び、会員企業が出動する形もあります。この場合、経審では申請者自身が協定の当事者ではないため、関東地方整備局の手引きでは、防災協定書に代えて「加入証明書」および「活動内容が確認できるもの(協定書・活動計画書等)」を確認書類としています。東京都の確認書類一覧も、申請者が加入する団体等が国・特殊法人等・地方公共団体と締結している場合は、加入証明書と活動内容が確認できるもの(協定書・活動計画書等)としています。
確認書類の様式は審査行政庁によって扱いが異なります。たとえば長野県は、平成27年9月1日以降の申請から、団体に加入していることの確認書類として、県の様式(別紙様式第2号)のほか、事前確認を経た団体が発行する独自様式も使えるようにしました。その場合も、防災協定の協定書等の写しは引き続き提出が必要とされています。団体経由で申請する場合は、次の点を団体と審査行政庁に確認しておくと手戻りを防げます。
- 団体が結んでいる協定の相手方が、国・特殊法人等・地方公共団体のいずれかに当たるか
- 自社が協定に基づく防災活動の担い手として位置づけられていることを、団体の書類で示せるか(会員であるだけで足りるかどうかは審査行政庁の手引きで確認)
- 加入証明書の様式(審査行政庁の様式か、団体の独自様式でよいか)と、発行にかかる期間
- 協定が審査基準日時点で有効か(有効期間・自動更新の有無)
経審申請前の確認書類チェックリスト
- □ 協定の相手方が、国・特殊法人等・地方公共団体のいずれかである
- □ 協定の締結日(団体経由なら加入日)が審査基準日より前で、審査基準日時点で有効である
- □ 直接締結:防災協定書(写し)を用意した
- □ 団体経由:団体の加入証明書を、審査行政庁が認める様式で取得した
- □ 団体経由:活動内容が確認できるもの(協定書・活動計画書等)を用意した
- □ 申請書の「防災協定の締結の有無」欄を「有」で記入する根拠書類がそろっている
- □ 審査行政庁(許可を受けた地方整備局・都道府県)の最新の手引きで、提出・提示の方法を確認した
締結後に社内で決めておくこと
協定は「災害時に出動できる体制」があって初めて意味を持ちます。協定書で次の事項を確認し、社内の体制に落とし込んでおきます。数値や基準は協定ごとに異なるため、自社の協定書の記載に従ってください。
| 協定書で確認する事項 | 社内で決めておくこと |
|---|---|
| 対象となる施設・区間・作業 | 担当する区間・施設の一覧と、現地の資機材置き場からの経路 |
| 要請の方法と連絡先 | 夜間・休日も含めた連絡の受け手と、社内への連絡網 |
| 動員する建設機械・資材・人員 | 出動できる機械・オペレーター・技術者の把握と、不在時の代わり |
| 費用の負担と精算の方法 | 作業記録(時間・人員・機械・写真)の残し方 |
| 有効期間と更新の手続き | 更新の時期と、経審の審査基準日との前後関係 |
災害時の自社の事業継続と協定に基づく出動をどう両立させるかは、土木工事会社のBCP(事業継続計画)の作り方で解説しています。災害対応の時間外労働には、労働基準法上の例外(災害の復旧・復興の事業)があり、その範囲は建設業の2024年問題で整理しています。
よくある質問
Q. 建設業協会の会員であれば、自動的にW3の加点になりますか。 A. 関東地方整備局の手引きでは、団体経由の場合の確認書類を「加入証明書」と「活動内容が確認できるもの(協定書・活動計画書等)」としています。団体が国・特殊法人等・地方公共団体と協定を結んでいること、自社の活動内容が書類で確認できることが前提になるため、まず団体に協定の有無と証明書の発行を確認してください。
Q. 決算日の直前に協定を結んだ場合も加点されますか。 A. W3は審査基準日において締結しているかで判定されるため、審査基準日までに締結が済んでいれば対象になります。審査基準日の後に締結した協定は、その年の経審には反映されません。
Q. 民間の発注者や近隣企業と結んだ協定は対象になりますか。 A. 手引きに書かれた相手方は、国、特殊法人等(入札契約適正化法第2条第1項に規定する特殊法人等)、地方公共団体です。これに当たらない相手との協定は、W3の要件として書かれていません。
Q. W3の加点はP点にどのくらい影響しますか。 A. 素点20点をW評点に換算すると175点、Pへの寄与は0.15を乗じた26.25点です(端数処理前の計算上の値)。実際のPは他の項目との合計と端数処理で決まります。
まとめ
- 経審W3は、審査基準日に国・特殊法人等・地方公共団体と防災協定を締結していれば素点20点
- 締結の方法は、自社が直接結ぶ方法と、加入団体の協定に参加する方法の2つ。どちらでも素点は20点
- 直接締結の確認書類は防災協定書、団体経由は加入証明書と活動内容が確認できるもの(協定書・活動計画書等)
- 国の事務所の協定は公募で、入札参加資格・所在地・資機材置き場・施工実績などの条件が付くことがある。総合評価の地域貢献度にも関わる
- 協定は審査基準日時点で有効であることが必要。有効期間と更新の時期を管理する
経審の1年の取り組みは経審P点を上げる方法|審査基準日から逆算する1年の取り組み、発注者の指名との関係は指名競争入札で指名されるにはもあわせてご覧ください。
出典・参考
- 国土交通省 関東地方整備局「経営規模等評価申請・総合評定値請求の手引き 別添資料【令和8年7月改正版】」(「防災協定の締結の有無」欄の記載要領、確認書類(防災協定書、または加入証明書および活動内容が確認できるもの)、W3の点数(有20点・無0点)、W評点の求め方(10×175÷200)、総合評定値Pの算式)
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000949009.pdf - 東京都「国土交通大臣許可における経営事項審査について(確認書類一覧)」H31.4.1〜(防災協定の締結:直接締結の場合は防災協定書、団体締結の場合は加入証明書及び活動内容が確認できるもの、審査基準日時点で有効な協定に限る)
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/sinsa/pdf/setsumei/setsumei10.pdf - 長野県「経営事項審査確認書類」(平成27年9月1日以降の申請から、団体加入の確認書類に団体発行の独自様式を追加。協定書等の写しは引き続き提出が必要)
https://www.pref.nagano.lg.jp/kensetsu/infra/kensetsu/kyoka/shinsa/shorui/dokujiyoushiki.html - 国土交通省 関東地方整備局 宇都宮国道事務所「『災害応急対策業務に関する協定』締結の公募」令和2年12月15日(協定の目的、協定期間、参加資格、技術資料の提出、選定通知、総合評価落札方式での地域貢献度の取扱い)
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000790930.pdf - 国土交通省 九州地方整備局 九州技術事務所「令和4年度災害時協力会社の公募について」令和4年1月28日(災害対策用機械の出動等・応急対策業務等に関する基本協定の公募)
https://www.qsr.mlit.go.jp/kyugi/site_files/file/R4koubonituite.pdf - 災害対策基本法 第49条の3(物資供給事業者等の協力を得るために必要な措置)(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223
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