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土木の技術継承の進め方|ノウハウの文書化・OJT・資格支援

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土木の技術継承の進め方|ノウハウの文書化・OJT・資格支援

土木工事会社の技術継承は、①継承する技術を棚卸しして優先順位を決め、②熟練者のノウハウを手順書・チェックリスト・写真付きの記録に文書化し、③それを教材にしたOJT(On the Job Training:実際の仕事を通じて教えること)の計画と、④施工管理技術検定などの資格取得の支援を組み合わせて進めます。 国土交通省は、建設業就業者のうち55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%(令和6年、総務省「労働力調査」をもとに作成)で、次世代への技術承継が大きな課題だとしています。建設業法は建設業者に「担い手の育成及び確保その他の施工技術の確保」に努めることを求めており、訓練の費用には厚生労働省の人材開発支援助成金(建設業向けのコースあり)を使える場合があります。

本記事では、技術継承が求められる背景と法令上の位置づけ、文書化・OJT・資格支援の進め方、使える公的支援を整理します。新人の3年間の育成計画は土木の若手育成計画、若手の定着策は建設業の若手の離職率と定着の取り組みで解説しています。数値・制度は末尾の「出典・参考」で確認したものです。

技術継承の進め方(全体の手順表)

手順やること成果物の例関係する制度・根拠
1. 棚卸し誰がどの工種・業務のどんな判断を担っているかを書き出す技術・ノウハウの一覧表職業能力開発促進法第11条(計画的な能力開発)
2. 優先順位頻度・失敗したときの影響・担い手の退職時期で順位をつける優先順位つきの継承リスト同上
3. 文書化熟練者に聞き取り、手順・判断基準・失敗例を記録する作業手順書、チェックリスト、写真・動画付きの記録社内の取組み
4. OJT計画誰が誰に、どの現場で、いつまでに教えるかを決めるOJT計画表、スキルチェック表職業能力開発促進法第9条(業務の遂行の過程内での訓練)
5. 資格取得の支援受検の時期を育成計画に組み込み、受検費用や講習を支援する資格取得計画職業能力開発促進法第10条(職業能力検定を受けさせること)、施工管理技術検定
6. 費用の手当て外部の訓練・実習に使える助成金を確認する助成金の申請計画人材開発支援助成金
7. 見直し工事完了時などに記録を更新し、計画を見直す更新した手順書・計画社内の取組み

技術継承が求められる背景

建設業就業者の年齢構成(国土交通省の公表資料)

国土交通省「最近の建設産業行政について」(令和7年9月)は、総務省「労働力調査」をもとに次のように示しています。

項目数値国土交通省の説明
建設業就業者のうち55歳以上36.7%高齢化が進行し、次世代への技術承継が大きな課題
建設業就業者のうち29歳以下11.7%同上
建設業就業者数477万人(令和6年)ピークの685万人(平成9年)から減少
60歳以上の技能者の割合25.8%(約4分の1)10年後にはその大半が引退することが見込まれる

(技能者の年齢階層は「労働力調査」令和6年平均をもとにした国土交通省の集計です。)熟練者の引退が続くなかで、その人の頭の中にしかない段取りや判断の基準を、会社の記録と若手の経験に移していくことが技術継承の中身です。

法令上の位置づけ

技術継承そのものを直接義務づける法律はありませんが、関係する努力義務(努めなければならない、とされる義務)が定められています。

法令条文内容(要旨)
建設業法第25条の27第1項建設業者は、建設工事の担い手の育成及び確保その他の施工技術の確保に努めなければならない
建設業法第25条の27第3項建設工事に従事する者は、必要な知識及び技術または技能の向上に努めなければならない
職業能力開発促進法第4条第1項事業主は、雇用する労働者に必要な職業訓練を行うこと等により、職業能力の開発及び向上の促進に努めなければならない
職業能力開発促進法第9条事業主が行う職業訓練は、業務の遂行の過程内(OJT)でも、過程外(Off-JT:仕事を離れて行う研修)でも行うことができる
職業能力開発促進法第10条事業主は、外部の教育訓練を受けさせることや、職業能力検定を受けさせることなどにより、能力の開発を促進する
職業能力開発促進法第11条事業主は、能力開発が段階的かつ体系的に行われるよう、計画を作成するように努めなければならない
職業能力開発促進法第12条事業主は、計画の作成・実施等を担当する「職業能力開発推進者」を選任するように努めなければならない

技術継承の取組みは、この「計画を作り、担当者を決め、OJTと外部の訓練・検定を組み合わせる」という職業能力開発促進法の枠組みに当てはめると、社内で説明しやすく、助成金の検討にもつなげやすくなります。

手順1・2:継承する技術を棚卸しし、優先順位をつける

すべてのノウハウを一度に文書化することはできません。まず、誰がどんな判断を担っているかを書き出し、次の観点で順位をつけます。

観点優先度を上げる目安
頻度多くの現場で毎回出てくる工種・業務(例:自社の主力工種の施工、施工計画書の作成)
失敗したときの影響判断を誤ると事故・手戻り・品質不良につながるもの(例:仮設、掘削、コンクリートの打設・養生の段取り)
担い手の状況その判断ができる人が社内に1人しかいない、または引退の時期が近いもの
外部の資料で代えにくいか仕様書・基準書を読めば分かるものより、現場での見極め方や段取りのコツなど、人に聞かないと分からないもの
発注者・協力会社との調整協議の進め方、書類の出し方など、経験者のやり方がそのまま会社の信用にかかわるもの

基準値や規格値そのものは、発注者の仕様書・共通仕様書・最新の基準で確認するものです。社内の記録に数値を書く場合は「どの資料のどの版によるか」を一緒に残し、資料が改訂されたら見直します。

手順3:ノウハウを文書化する

聞き取りと記録の方法

方法やり方向いている内容
聞き取り若手が聞き手になり、「なぜそうするのか」「どんなときに変えるのか」を具体的な場面で聞く判断の基準、段取りの理由
写真+コメント施工の各段階を写真で残し、見るべきポイントを書き込む出来形・仕上がりの見極め
動画熟練者に作業や確認の手順を説明しながら実演してもらう手順、体の使い方、確認の順番
チェックリスト化熟練者が無意識に確かめていることを項目に分ける作業前・施工中の確認事項
失敗例の記録過去のトラブル、手戻り、ヒヤリハットと、その対処を書き残す再発防止、判断を誤りやすい場面

熟練者は自分のやり方を言葉にするのに慣れていないことが多いため、「この状況ならどうするか」と具体的な場面を示して聞くと引き出しやすくなります。聞き取りは1回で終わらせず、現場を一緒に回りながら少しずつ進めます。

記録をまとめる型

項目書く内容
対象工種・業務の名前、適用する場面
手順作業の順番(作業手順書の形)
判断のポイント「こういう状況ならこう対応する」という分かれ道
確認事項作業前・施工中・完了時のチェックリスト
よくある失敗と対処過去の事例と再発防止策
参照する資料仕様書・基準書・社内規程の名前と版
写真・動画参考になる記録の保存場所
更新履歴いつ、誰が、何を追記したか

安全にかかわる手順は作業手順書として整えておくと、新規入場者への説明や危険予知活動にも使えます。作り方は土木工事の作業手順書の作り方を参照してください。

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手順4:OJTの計画を立てる

職業能力開発促進法第9条は、事業主が行う職業訓練を「業務の遂行の過程内」でも行えるとしています。文書化した記録は、OJTの教材として使ってはじめて技術継承になります。

決めること内容
教える人と教わる人熟練者1人に任せきりにせず、中堅を間に入れて「熟練者→中堅→若手」の流れも作る
教える場面どの現場の、どの工種・段階で、どの記録を使って教えるか
到達目標「補助としてできる」「指導を受けながらできる」「1人でできる」など段階で決める
確認の方法スキルチェック表に到達度を記録し、定期的な面談で確かめる
記録の更新OJTで出てきた質問や新しい気づきを、手順書・チェックリストに追記する

時期ごとの到達目標やスキルチェック表の例は土木の若手育成計画にまとめています。

手順5:資格取得を支援する

職業能力開発促進法第10条は、事業主が労働者に職業能力検定(技能や知識を一定の基準で評価する試験)を受けさせることなどにより能力開発を促すとしています。土木工事会社では、施工管理技術検定が技術継承の到達点の目安になります。

資格・検定押さえどころ根拠・参照
2級土木施工管理技術検定 第一次検定17歳以上(受検年度末時点)で受検できる国土交通省(令和6年度からの受検資格)
1級土木施工管理技術検定 第一次検定19歳以上(受検年度末時点)で受検できる同上
第二次検定第一次検定合格後、所定の実務経験を積んで受検する同上。詳細は土木の若手育成計画
技術士(建設部門)施工管理技士の次に目指す技術者の国家資格の一つ技術士(建設部門)の取得メリット

第一次検定は実務経験を問わず受けられるようになったため、入社後早い時期に受検させ、OJTで実務経験を積ませながら第二次検定を目指す計画が立てやすくなっています。資格保有者が増えることは経営事項審査の技術職員の評価にもかかわります(経審の技術職員の点数)。

手順6:使える公的支援(人材開発支援助成金)

厚生労働省の「人材開発支援助成金」は、事業主が雇用する労働者に職務に関連した訓練を行った場合などに、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。コースは次のとおりです。

コース厚生労働省の説明(要旨)
人材育成支援コース職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
建設労働者認定訓練コース認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施した場合の訓練経費の一部や、建設労働者に有給で認定訓練を受講させた場合の訓練期間中の賃金の一部を助成
建設労働者技能実習コース雇用する建設労働者に技能向上のための実習を有給で受講させた場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
その他教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コース、障害者職業能力開発コース

要件・助成額・手続きはコースごとに異なり、改正もされます。使う前に厚生労働省の最新のパンフレット・支給要領、または都道府県労働局で確認してください。

チェックリスト:技術継承の取組みを始める前に

No.確認すること
1熟練者ごとに、担っている工種・業務と、引退・異動の見込み時期を把握したか
2継承する技術の一覧を作り、頻度・失敗したときの影響・担い手の状況で優先順位をつけたか
3聞き取りの聞き手(若手・中堅)と、熟練者の時間の確保の仕方を決めたか
4記録の型(手順・判断のポイント・確認事項・失敗例・参照資料・更新履歴)を決めたか
5記録に書く数値に、根拠となる仕様書・基準の名前と版を添えているか
6記録の保存場所を決め、現場から見られるようにしたか
7OJTの組み合わせ(誰が誰に教えるか)と到達目標、スキルチェック表を作ったか
8施工管理技術検定などの受検時期を育成計画に入れ、受検費用・講習の支援方法を決めたか
9職業能力開発の計画(職業能力開発促進法第11条)と、推進する担当者(同法第12条)を決めたか
10人材開発支援助成金のどのコースが使えるか、訓練開始前に必要な手続きを確認したか
11工事完了時などに記録を見直す時期と担当者を決めたか

よくある質問

技術継承は何から始めればよいですか?

まず、熟練者が担っている工種・業務と判断を書き出し、引退の時期が近い人、社内でその人しかできない判断、失敗したときの影響が大きいものから優先順位をつけます。最初から全部を文書化しようとせず、主力の工種1つから記録の型を作り、OJTで使いながら直していくのが進めやすい方法です。

マニュアルを作っても使われません。どうすればよいですか?

記録をOJTの教材として使う場面を計画に組み込むことが大切です。どの現場のどの段階で、どの記録を使って教えるかを決め、OJTで出てきた質問や気づきを記録に追記するルールにすると、現場で使われる記録になっていきます。

技術継承に法律上の義務はありますか?

技術継承そのものを直接義務づける規定はありません。ただし、建設業法第25条の27は建設業者に担い手の育成・確保その他の施工技術の確保に努めることを、職業能力開発促進法は事業主に職業訓練の実施や計画の作成(第11条)、職業能力開発推進者の選任(第12条)に努めることを求めています。

技術継承の費用に使える助成金はありますか?

厚生労働省の人材開発支援助成金に、人材育成支援コース、建設労働者認定訓練コース、建設労働者技能実習コースなどがあり、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成される場合があります。要件や手続きはコースごとに異なり改正もされるため、最新の支給要領で確認してください。

熟練者が退職した後も協力してもらうことはできますか?

再雇用や嘱託などの形で、指導役として関わってもらう方法があります。その場合も、本人に頼り続けるのではなく、在籍中に記録と後継者への引継ぎを進めておくことが技術継承の目的に合います。

まとめ

  • 背景:国土交通省は、建設業就業者のうち55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%(令和6年)で、技術承継が大きな課題としている
  • 法令:建設業法は施工技術の確保、職業能力開発促進法は職業訓練・計画の作成・推進者の選任を、いずれも努力義務として定めている
  • 進め方:棚卸し→優先順位→文書化→OJT計画→資格取得の支援→見直し。記録はOJTの教材として使ってはじめて継承につながる
  • 資格:施工管理技術検定の第一次検定は2級17歳以上・1級19歳以上(受検年度末時点)で受けられ、育成計画に早くから組み込める
  • 費用:人材開発支援助成金(建設業向けコースあり)を、要件を確かめたうえで検討する

出典・参考

  • 国土交通省 不動産・建設経済局 建設振興課「最近の建設産業行政について」(令和7年9月)「建設業就業者の高齢化の進行」(55歳以上36.7%、29歳以下11.7%、次世代への技術承継が大きな課題)、建設業就業者数(685万人(H9)→477万人(R6))、「年齢階層別の建設技能者数」(60歳以上の技能者25.8%、10年後にはその大半が引退することが見込まれる)。いずれも総務省「労働力調査」をもとに国土交通省が作成
    https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001566406.pdf
  • e-Gov法令検索「建設業法」(昭和24年法律第100号)第25条の27(施工技術の確保に関する建設業者等の責務)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
  • e-Gov法令検索「職業能力開発促進法」(昭和44年法律第64号)第4条(関係者の責務)、第9条(業務の遂行の過程内・過程外での職業訓練)、第10条(教育訓練・職業能力検定を受けさせること)、第11条(計画的な職業能力開発の促進)、第12条(職業能力開発推進者)
    https://laws.e-gov.go.jp/law/344AC0000000064
  • 厚生労働省「人材開発支援助成金」(コース一覧、人材育成支援コース・建設労働者認定訓練コース・建設労働者技能実習コースの概要)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
  • 国土交通省「令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります」(1級第一次検定は19歳以上、2級第一次検定は17歳以上、いずれも受検年度末時点)
    https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001707687.pdf

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