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建設業の若手の離職率と定着の取り組み|土木会社の5施策

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建設業の若手の離職率と定着の取り組み|土木会社の5施策

建設業の若手の離職率は、厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」で、就職後3年以内に高卒の41.4%、大卒の30.5%が離職しています。 全産業(高卒37.9%・大卒33.8%)と比べると、高卒は全産業より高く、大卒はやや低い水準です。さらに事業所の規模が小さいほど離職率は高く、従業員5〜29人の事業所では高卒54.6%・大卒52.0%に達します。若手の定着には、育成計画・労働時間と休日・処遇・指導の仕方・会社の見通しの共有という5つの取り組みを、自社の離職率を測りながら進めることが有効です。

本記事では、公表統計で建設業の若手離職の実態を確認したうえで、土木工事会社が取り組める定着策5つと、効果の測り方、自社点検用のチェックリストを整理します。育成の具体的な段取り(入社から独り立ちまでの計画)は土木工事の若手育成ロードマップで詳しく解説しています。

建設業の若手の離職率(厚生労働省の最新公表値)

厚生労働省は毎年10月ごろ、新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率を公表しています。2026年10月1日時点で最新の公表(令和7年10月24日)は、令和4年3月に卒業して就職した人の状況です。

早見表:就職後3年以内の離職率(令和4年3月卒業者)

区分高卒大卒
全産業(調査産業計)37.9%33.8%
建設業41.4%30.5%
製造業28.6%21.2%
建設業(前年の令和3年3月卒業者)43.2%30.7%

建設業の高卒就職者は、製造業と比べて離職率が10ポイント以上高く、全産業の平均も上回っています。大卒就職者は全産業より低いものの、製造業との差は9ポイントあります。土木工事会社は高卒採用の比重が大きい会社も多いため、高卒で入った若手の最初の3年をどう支えるかが定着の要になります。

事業所規模別の離職率

事業所規模高卒大卒
5人未満63.2%57.5%
5〜29人54.6%52.0%
30〜99人45.2%41.9%
100〜499人36.7%33.9%
500〜999人29.9%31.5%
1,000人以上26.3%27.0%

この表は全産業の値ですが、規模が小さい事業所ほど離職率が高いという傾向ははっきりしています。地域の中小の土木工事会社では、何もしなければ「新卒の半分が3年以内に辞める」ことが平均的な姿になりうる、と捉えておく必要があります。

統計の見方の注意

  • 離職率は、雇用保険の加入記録から新規学卒者と推定される就職者を数え、その後の離職を集計したものです。離職理由や転職先は問わないため、建設業内の別の会社へ移った人も「離職」に含まれます。
  • 1社の数字と比べるときは、母数が小さいと1人の退職で率が大きく動く点に注意してください。数年分をまとめて見るのが現実的です。

若手が辞める主な理由

公表統計は離職の理由までは示していません。現場でよく聞かれる理由を整理すると、おおむね次のような分類になります。

分類よく聞かれる内容対応する取り組み
労働時間・休日残業や休日出勤が多い、休みの予定が立たない取り組み2
処遇体力的な負担や責任に給与が見合わない取り組み3
成長の見通し何ができるようになれば一人前か分からない取り組み1
人間関係・指導叱責が中心で質問しにくい、相談相手がいない取り組み4
会社の将来この会社にいて将来大丈夫か分からない取り組み5
入社前とのずれ仕事内容が想像と違った採用時の情報提供(若手が集まる会社の共通点)

自社の若手がどの理由で辞めているかは、退職時の面談や在職者への聞き取りで確かめるのが確実です。

取り組み1:段階的な育成計画を示す

若手が「成長を実感できない」と感じて辞めるのを防ぐには、入社から数年間に何を身につけるかを計画として示し、本人と共有することが有効です。

育成計画の例

時期目標具体的な内容
入社〜3か月現場の基本を覚える安全教育、測量の補助、工具の使い方
3か月〜1年単純な作業を自分で完了できる丁張り設置、出来形測定の補助、日報・写真整理
1年〜2年一部の工程を任される小規模な工種の施工管理を担当、施工管理技術検定の第一次検定に挑戦
2年〜3年小規模現場の中心を担う上司の指導のもと現場全体の管理を経験

施工管理技術検定(施工管理技士の国家試験)は、令和6年度から第一次検定の受検資格が年齢だけになり、2級は17歳以上、1級は19歳以上(いずれも受検年度末時点)で受けられます。入社1〜2年目から資格取得の目標を置けるようになったため、育成計画に組み込みやすくなっています。受検資格と育成の段取りの詳細は若手育成ロードマップを参照してください。

定期的な面談の実施

月に1回程度、上司や指導担当との1対1の面談を設けます。

  • 現在の業務で困っていること
  • 次のステップで挑戦したいこと
  • 職場の人間関係で気になること
  • 資格取得の進み具合

面談は「評価の場」ではなく「相談の場」として運営し、若手が本音を話せる雰囲気をつくることが大切です。

取り組み2:労働時間と休日を改善する

時間外労働の上限規制への対応

2024年4月1日から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。上限の内容と罰則、土木工事会社の対策は建設業の2024年問題で詳しく解説しています。規制への対応としてだけでなく、若手の定着のためにも残業の削減は欠かせません。

  • 朝礼・打合せの時間を決めて短くする
  • 書類作成・写真整理をクラウドツールなどで効率化する
  • 会議の回数を減らし、議題を事前に共有する
  • 協力会社との段取りを詰め、手戻りを減らす

週休2日(4週8休)の実現

国土交通省は直轄工事で週休2日工事を順次拡大しており、例えば中部地方整備局は令和6年度以降、月ごとに4週8休以上の現場閉所を行う「月単位の週休2日」を原則とする方針を示しています。公共工事で週休2日が前提になりつつあるため、民間工事を含めて会社全体の休日の取り方を見直す好機です。いきなり4週8休が難しい場合は、段階的に休日を増やす計画を示し、達成状況を若手にも共有します。

年次有給休暇の取得

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者には、使用者が年5日を確実に取得させることが義務付けられています(2019年4月施行)。法定の最低限を守るのはもちろん、繁忙期を避けた計画的な取得を工程に組み込むと、若手も休みを取りやすくなります。

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取り組み3:処遇(給与・手当・福利厚生)を見直す

給与水準は地域や会社の規模で大きく異なるため、ハローワークの求人情報や地域の同業他社の募集条件と比べ、自社の水準が見劣りしていないかを定期的に確認します。

給与全体を上げるのが難しい場合は、頑張りが収入に反映される仕組みを整えることが有効です。

  • 資格手当(2級・1級施工管理技士、技士補など資格ごとに設定)
  • 現場手当・遠隔地手当
  • 資格取得支援(受検手数料・講習費用の会社負担、受検日の勤務扱い)
  • 住宅手当・社宅
  • 作業着・安全靴などの支給

建設キャリアアップシステム(CCUS、技能者の資格や就業履歴を業界共通で記録する仕組み)の能力評価を処遇に結びつける会社もあります。登録方法はCCUSの登録方法と登録料を参照してください。

社員の訓練費用については、厚生労働省の「人材開発支援助成金」(事業主が雇用する労働者に職務に関連した訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度)が使える場合があります。建設業向けには「建設労働者認定訓練コース」「建設労働者技能実習コース」があります。要件と助成額は年度ごとに改正されるため、厚生労働省の最新のページと都道府県労働局で確認してください。

取り組み4:指導の仕方とコミュニケーションを見直す

指導方法の見直し

「見て覚えろ」「失敗したら叱る」という指導は、質問や相談をしにくくし、孤立感を生みます。

従来の指導見直し後の指導
見て覚えろ手順と理由を説明してからやらせる
失敗したら叱る失敗の原因と対策を一緒に考える
質問すると叱られる質問しやすい時間と相手を決めておく
全体像を説明しないその作業が工事全体のどこに当たるかを説明する
できて当然という態度できたことを言葉で認める

先輩社員のメンター制度

入社1〜2年目の若手に、年齢の近い先輩をメンター(仕事や職場の悩みを相談できる指導役)として付ける方法です。成功させるには次の点に注意します。

  • メンターに、事前に役割と接し方を説明しておく
  • メンターの業務負担が大きくなりすぎないよう配慮する
  • 相性が合わない場合に変更できる仕組みにしておく
  • 定期的に話す機会を会社として確保する

取り組み5:会社の将来の見通しを共有する

若手は「この会社にいて将来大丈夫か」という不安を抱えがちです。経営方針や見通しを定期的に共有すると、安心感と仕事への意欲につながります。

共有したい情報

  • 会社の受注や業績の推移(概要レベルで可)
  • 今後の受注見込みと事業計画
  • 設備投資の計画(ICT施工の導入など)
  • 処遇改善の計画
  • 新しい事業分野への進出予定

共有の方法

  • 半期ごとの全体ミーティング
  • 社長からの直接のメッセージ(動画や社内報)
  • 若手との少人数の意見交換会

取り組みの効果の測り方

定着の取り組みは、効果を数字で確かめながら続けることが大切です。目標値は会社ごとに決め、比べる相手として公表統計を使います。

指標計算の仕方比べる目安
入社3年以内の離職率同じ年に入社した人のうち3年以内に退職した人数 ÷ 入社人数建設業の公表値(高卒41.4%、大卒30.5%)と自社と同じ規模の事業所の値
年次有給休暇の取得日数一人ごとの年間取得日数年10日以上付与される人は年5日が法律上の最低限
月の時間外労働勤怠記録から算出時間外労働の上限規制(2024年問題の記事を参照)
現場閉所の状況月ごとの閉所日数4週8休(月単位の週休2日)
資格取得者数年間の合格者数(技士補を含む)前年との比較
若手の満足度年1回の匿名アンケート前年との比較

自社点検用:若手定着チェックリスト

土木工事 業務改善Naviが、本記事の5つの取り組みを「今日確認できる項目」に並べ直したチェックリストです。「いいえ」が多い取り組みから手を付けてください。

番号確認項目対応する取り組み
1入社から3年間の育成計画が書面になっており、本人に渡しているか取り組み1
2指導担当者が若手1人ごとに決まっているか取り組み1・4
3月1回程度、評価と切り離した面談の時間があるか取り組み1
4若手の月の時間外労働を把握し、上限規制を守れているか取り組み2
5現場閉所の計画(4週何休か)を工程表に書き込んでいるか取り組み2
6年5日の年次有給休暇を全員が取得できているか取り組み2
7資格手当と受検費用の負担のルールが決まっているか取り組み3
8給与水準を地域の同業他社の募集条件と比べたことがあるか取り組み3
9質問・相談の相手と時間が若手に伝わっているか取り組み4
10会社の事業計画や処遇改善計画を若手に説明する場があるか取り組み5
11自社の入社3年以内の離職率を毎年計算しているか効果の測り方
12退職者から辞めた理由を聞き取り、記録しているか効果の測り方

よくある質問

Q. 建設業の若手の離職率はどのくらいですか。 A. 厚生労働省の最新公表(令和4年3月卒業者)では、建設業に就職した人の就職後3年以内の離職率は高卒41.4%、大卒30.5%です。全産業は高卒37.9%、大卒33.8%です。

Q. 建設業の離職率は他の産業より高いのですか。 A. 高卒は全産業の平均より高く、製造業(28.6%)と比べると10ポイント以上高い水準です。大卒は全産業の平均より低いものの、製造業(21.2%)よりは高くなっています。

Q. 会社の規模で離職率は変わりますか。 A. 変わります。全産業の値で、従業員5〜29人の事業所は高卒54.6%・大卒52.0%、1,000人以上の事業所は高卒26.3%・大卒27.0%と、規模が小さいほど離職率が高くなっています。

Q. 若手の定着のために、まず何から始めればよいですか。 A. 上のチェックリストで「いいえ」が多い取り組みから始めるのが現実的です。費用をかけずに始めやすいのは、育成計画の書面化、指導担当者の指名、定期面談の3つです。

Q. 社員の資格取得や訓練に使える助成金はありますか。 A. 厚生労働省の人材開発支援助成金があり、建設業向けに建設労働者認定訓練コース・建設労働者技能実習コースが設けられています。要件や助成額は改正されるため、最新の情報を厚生労働省のページや都道府県労働局で確認してください。

まとめ

  • 建設業の若手の就職後3年以内の離職率は、高卒41.4%、大卒30.5%(令和4年3月卒業者、厚生労働省)
  • 規模の小さい事業所ほど離職率が高く、中小の土木工事会社ほど意識的な定着策が必要
  • 取り組みの柱は、育成計画・労働時間と休日・処遇・指導の仕方・会社の見通しの共有の5つ
  • 自社の離職率や休暇の取得状況を毎年測り、公表統計と比べながら改善を続ける

育成計画の具体的な作り方は土木工事の若手育成ロードマップ、採用段階の工夫は若手が集まる会社の共通点もあわせてご覧ください。

出典・参考

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