土木工事の業務効率化|すぐできる5つの方法と国の仕組み
土木工事会社の業務効率化は、①日報のデジタル化、②工程表のクラウド共有、③写真管理ルールの統一、④朝礼・打ち合わせの見直し、⑤書類のテンプレート化とAI活用の5つから、費用をかけずに始められます。 公共工事を受注しているなら、国土交通省が直轄工事で使っている情報共有システム(ASP)や遠隔臨場といった、発注者側の仕組みもあわせて使うのが近道です。
建設業には2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されており、限られた時間で工事と書類を回す仕組みづくりが経営課題になっています。本記事では、自社ですぐできる5つの方法と、公共工事で使える国の仕組みを、国土交通省・厚生労働省の公表資料に基づいて整理します。
土木工事・建設業で業務効率化が必要な理由
時間外労働の上限規制が建設業にも適用された
厚生労働省によると、建設業の時間外労働の上限規制は令和6(2024)年4月から適用されています。上限は原則として月45時間・年360時間で、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)を超えることはできません。災害時の復旧・復興の事業には、月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内の規制は適用されません。
工期は変わらないまま働ける時間が限られるため、書類作成や移動、待ち時間など「工事そのもの以外の時間」を減らすことが効率化の中心になります。2024年4月からの変化と対策は土木工事会社が知っておくべき2024年問題と具体的な対策で詳しく解説しています。
国も「少ない人数で回る現場」を目標にしている
国土交通省は令和6年4月に「i-Construction 2.0」を公表し、2040年度までに、2023年度と比べて建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍以上に向上することを目指すとしています。取組の柱は「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」の3つです。中小の会社が最初の一歩として何をするかは中小土木会社のためのi-Construction入門を参照してください。
業務効率化の方法5選(一覧)
| 方法 | 主に減る作業 | 導入費用 | 始めやすさ |
|---|---|---|---|
| 1. 日報のデジタル化 | 記入・回収・転記・保管 | 低い(無料のツールで始められる) | 始めやすい |
| 2. 工程表のクラウド共有 | ファイルの送り直し、最新版の確認 | 低い | 始めやすい |
| 3. 写真管理ルールの統一 | 写真の整理・検索・写真帳づくり | 特になし(ルールづくりのみ) | 始めやすい |
| 4. 朝礼・打ち合わせの見直し | 全員の拘束時間 | 特になし | 始めやすい |
| 5. 書類のテンプレート化・AI活用 | 毎回ゼロから作る手間 | 低い(AIツールは有料のものもある) | 書類の棚卸しが必要 |
方法1:日報をデジタル化する
紙の日報は、記入、回収、転記、保管と手間がかかります。スマートフォンやタブレットで入力できるようにすると、次のような違いが出ます。
| 項目 | 紙の日報 | デジタル日報 |
|---|---|---|
| 回収 | 事務所へ持ち帰る、または写真を送る | 入力した時点で事務所に届く |
| 転記・集計 | 事務員が手入力する | 入力内容をそのまま集計できる |
| 検索 | 綴りをめくって探す | キーワードや日付で探せる |
| 写真の添付 | 別に管理する | その場で添付できる |
無料のツールとしては、Googleフォームや、LINE WORKSなどのビジネスチャットのアンケート機能でも始められます。日報の書き方は土木工事の日報の書き方と活用法で詳しく解説しています。
導入のポイント
- 最初は1つの現場で試す(全社一斉導入は混乱のもと)
- ベテラン社員には入力画面を見せながら説明する
- 入力項目は必要最低限に絞る(多すぎると続かない)
方法2:工程表と書類をクラウドで共有する
Excelで工程表を作ってメールで送る方法では、修正のたびにファイルを送り直す手間と、どれが最新版か分からなくなる問題が起きます。クラウド上で工程表を共有すれば、現場監督も事務所も同じ最新版を見られます。
| 方法 | 特徴 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| Googleスプレッドシート | Excelに近い操作で、共有が簡単 | まず無料で始めたい小規模な会社 |
| Microsoft 365(Excel for the web) | 既存のExcelファイルをそのまま共有しやすい | 社内でExcelを多く使っている会社 |
| 専用の工程管理ツール・施工管理クラウド | ガントチャートや写真・連絡との連携がある | 複数の現場を同時に管理する会社 |
料金はプランや契約人数で変わるため、各社の公式サイトで確認してください。工程表の作り方の基本は施工計画書に添付する工程表の作り方を参考にしてください。
公共工事なら情報共有システム(ASP)を使う
国土交通省の土木工事共通仕様書(案)1-1-1-27 では、受注者は監督職員との間の情報を電子的に交換・共有して業務の効率化を図らなければならず、その際は工事情報共有システム(ASP。インターネット経由で利用するサービスのこと)を活用し、最新版の「土木工事・業務の情報共有システム活用ガイドライン」に基づくこととされています。システムのサービス提供者との契約は受注者が行います。
情報共有システムで作成・提出した工事帳票は、別途紙に出力して提出しないものとされ(共通仕様書 1-1-1-2)、同ガイドラインでは、情報共有システムで発議・提出・受理などの処理を行った打合せ簿も「書面」として認められるとしています。紙への印刷、押印、持参の手間を減らせるため、直轄工事以外でも発注者がASPを使っているかを最初に確認しておきましょう。
方法3:写真管理のルールを統一する
土木工事では大量の工事写真を撮影するため、写真の整理に時間がかかっている現場は少なくありません。
写真管理を効率化する3つのルール
(1)社内のファイル名の付け方を決める
例:「工種_測点_撮影日_連番」(舗装_No3_20260409_001.jpg)。電子納品する写真は、発注者が指定する基準(デジタル写真管理情報基準など)に沿って整理し直します。
(2)フォルダ構成を統一する
全現場で同じフォルダ構成にすると、誰が見ても写真を探せます。
(3)撮影前に黒板の記載内容を確認する
後から撮り直す手間をなくすため、撮影前に黒板の記載内容をダブルチェックします。国土交通省は、デジタル工事写真の小黒板情報電子化(電子小黒板)を行う場合の取扱いを定めています(共通仕様書 1-1-1-2 の工事写真の定義で、令和5年3月15日付の通知に基づき実施するとされています)。電子小黒板を使う場合は、発注者の承諾と使用するアプリの対応状況を確認してください。
写真の撮り方の基本は工事写真の撮り方の基本、写真アプリの選び方は工事写真アプリの比較で解説しています。電子黒板付きの写真アプリを探している場合は、当サイト運営会社の黒板Photoアプリ(CloudCamera)もご覧ください。
方法4:朝礼と打ち合わせの時間を見直す
朝礼や打ち合わせは、参加している全員の時間を使います。短くした分は人数分の時間が生まれるため、効果が大きい取り組みです。
| 改善策 | 効果 |
|---|---|
| 議題を事前に共有する | 脱線を防ぎ、時間を短縮できる |
| 立ったまま打ち合わせをする | 自然と短時間で終わる |
| 決定事項をその場でメモし共有する | 「言った・言わない」を防げる |
| 報告だけの打ち合わせはやめる | チャットや掲示で代替できる |
計算例:短縮で生まれる時間
生まれる時間は「人数 × 短縮した分数 × 稼働日数」で見積もれます。例えば、10人が参加する朝礼を10分短くすると、1日あたり100分、月20日稼働なら2,000分(約33時間)になります。自社の人数と短縮できた分数を入れて計算し、効果を記録しておくと次の改善の判断材料になります。
公共工事なら遠隔臨場を使う
遠隔臨場とは、動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)で撮った映像と音声を使い、監督職員が現場に来ずにWeb会議システム等を介して「段階確認」「材料確認」「立会」を行うことです。国土交通省の「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」(令和5年3月)は、受注者の段階確認に伴う手待ち時間の削減や確認書類の簡素化などを目的に挙げています。
i-Construction 2.0 によると、遠隔臨場は2022年度から原則としてすべての直轄土木工事で適用され、2024年度からは中間技術検査・完成検査にも拡大するとしています。同実施要領(案)では、国の直轄工事で遠隔臨場の実施にかかる費用の全額を技術管理費に積み上げて計上するとしています。自治体の工事では扱いが異なるため、特記仕様書と監督職員に確認してください。導入手順は遠隔臨場の導入方法と実施手順で解説しています。
方法5:書類をテンプレート化し、AIで下書きを作る
見積書、請求書、安全書類、届出書類、施工計画書など、土木工事会社の書類は種類が多くあります。毎回ゼロから作るのではなく、テンプレートを整えましょう。
テンプレート化の優先度が高い書類
| 書類 | 作成頻度 | テンプレート化の優先度 |
|---|---|---|
| 日報 | 毎日 | 高い |
| 安全書類(施工体制台帳、作業員名簿等) | 工事ごと | 高い |
| 見積書 | 案件ごと | 高い |
| 施工計画書 | 工事ごと | 高い(記載事項が共通仕様書で決まっているため型にしやすい) |
| 請求書・出来高調書 | 月次など支払いの都度 | 中程度 |
| 届出書類(道路使用許可等) | 随時 | 中程度 |
施工計画書の記載事項は、国土交通省の土木工事共通仕様書(案)1-1-1-6 で16項目と定められているため、ひな形を作りやすい書類です。テンプレートの文章をもとにAIで下書きを作る方法もあります。ただし、AIの出力は下書きなので、工法・数量・規格値は技術者が設計図書と照らして確認します。作成ツールの比較は施工計画書の作成ソフト・ツール比較、請求書の書き方は土木工事の請求書と出来高調書の書き方で紹介しています。
施工計画書や安全管理計画書などの入札関連書類をAIで作成したい場合は、当サイト運営会社の入札書類作成AI(PattoAI)もご覧ください。
早見表:業務別に使える国の仕組み
公共工事を受注している会社が、自社の効率化とあわせて確認したい国の仕組みです。自治体の工事では、それぞれの発注者が採用しているかを確認してください。
| 減らしたい作業 | 使える仕組み | 根拠となる資料 | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 打合せ簿の印刷・押印・持参 | 情報共有システム(ASP) | 土木工事共通仕様書(案)1-1-1-27、情報共有システム活用ガイドライン(令和6年3月) | 発注者が使うシステムと、受注者側の契約・費用 |
| 段階確認・立会の手待ち、監督職員の移動待ち | 遠隔臨場 | 建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)(令和5年3月) | 特記仕様書の記載、対象の確認項目、通信環境 |
| 中間技術検査・完成検査の移動 | 遠隔臨場による工事検査 | 遠隔臨場による工事検査に関する実施要領(案)(令和6年3月) | 発注者が検査に遠隔臨場を使うか |
| 黒板の準備・書き換え | デジタル工事写真の小黒板情報電子化 | 土木工事共通仕様書(案)1-1-1-2(令和5年3月15日付の通知に基づく) | 発注者の承諾、アプリの対応状況 |
| 工事書類そのものの量 | 工事書類の簡素化(スリム化) | 国土交通省・地方整備局の工事関係書類ガイドライン・リーフレット | 提出不要な書類、提示で済む書類の範囲 |
効率化を進めるうえでの注意点
いきなり全部やろうとしない
5つの方法を一度に始めると、現場が混乱します。まず1つ選んで小さく試し、効果を確かめてから次に進みましょう。
現場の声を聞く
効率化の施策が「管理側の都合」になっていないかを確認します。実際に使う現場の人にとって使いやすいかどうかが、定着の鍵です。
効果を数字で測る
「なんとなく楽になった」ではなく、作業時間や件数を導入前後で記録しましょう。自社で測った数字があると、次の改善策を経営判断しやすくなります。
よくある質問
Q. 土木工事会社の業務効率化は、まず何から始めればよいですか。 A. 費用がかからず効果が見えやすい、日報のデジタル化か朝礼・打ち合わせの見直しから始めるのがおすすめです。公共工事を受注しているなら、発注者が情報共有システム(ASP)や遠隔臨場を使えるかも最初に確認しましょう。
Q. 建設業の業務効率化にはどんな方法がありますか。 A. 日報のデジタル化、工程表や書類のクラウド共有、写真管理ルールの統一、打ち合わせの見直し、書類のテンプレート化・AI活用があります。国の仕組みとしては、情報共有システム(ASP)、遠隔臨場、i-Construction(ICT施工など)があります。
Q. i-Construction 2.0 とは何ですか。 A. 国土交通省が令和6年4月に公表した、建設現場のオートメーション化の取組です。2040年度までに、2023年度と比べて建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍以上に向上することを目指しています。
Q. 遠隔臨場の費用は誰が負担しますか。 A. 国土交通省の「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」(令和5年3月)では、直轄工事で遠隔臨場の実施にかかる費用の全額を技術管理費に積み上げて計上するとしています。自治体の工事では扱いが異なることがあるため、特記仕様書で確認してください。
Q. 時間外労働の上限規制は建設業にいつから適用されていますか。 A. 令和6(2024)年4月からです。原則は月45時間・年360時間で、特別条項がある場合も年720時間、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)が上限です。
まとめ
- 土木工事会社の業務効率化は、日報のデジタル化、工程表のクラウド共有、写真管理ルールの統一、打ち合わせの見直し、書類のテンプレート化・AI活用の5つから始められる
- 公共工事なら、情報共有システム(ASP)、遠隔臨場、電子小黒板など、発注者側の仕組みもあわせて使う
- 国は i-Construction 2.0 で、2040年度までに省人化3割(生産性1.5倍以上)を目標にしている
- 1つずつ小さく試し、自社で測った作業時間で効果を確かめる
人材の採用や育成と合わせて取り組むと、より大きな効果が期待できます。若手の採用に課題がある場合は土木工事会社の人材採用 若手が集まる会社の共通点も参考にしてください。
出典・参考
- 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html - 国土交通省「i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~」(令和6年4月)1. はじめに、4.(3)施工管理のオートメーション化
https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf - 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」第1編 第1章 第1節 1-1-1-2 用語の定義(25. 情報共有システム、27. 工事写真)、1-1-1-6 施工計画書、1-1-1-27 施工管理(10. 工事情報共有化)
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun01_syo01_setsu01.html - 国土交通省「土木工事・業務の情報共有システム活用ガイドライン」(令和6年3月)2. 用語の定義
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001757574.pdf - 国土交通省 大臣官房技術調査課「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」(令和5年3月)2.1 目的、費用負担
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001594449.pdf - 国土交通省 大臣官房技術調査課「遠隔臨場による工事検査に関する実施要領(案)」(令和6年3月)
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001736204.pdf - 国土交通省「技術調査:監督・検査・工事成績評定・土木工事共通仕様書関係」(遠隔臨場、情報共有システム、工事関係書類ガイドライン・リーフレット一覧)
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000052.html
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