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土留め工の施工手順|親杭横矢板・鋼矢板の施工方法

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土留め工の施工手順|親杭横矢板・鋼矢板の施工方法

親杭横矢板工法(おやぐいよこやいたこうほう)とは、H形鋼などの親杭を一定の間隔で地中に設置し、掘削を進めながら親杭の間に横矢板(木製の板など)をはめ込んで土を支える土留め工法です。 施工手順は「埋設物の確認 → 親杭の打込み・建込み → 1段ずつ掘削して横矢板をはめ込み、裏込め → 腹起し・切梁の設置 → 次の段の掘削」の繰り返しで、国の共通仕様書は、横矢板を掘削と並行してはめ込み、掘削面との間に隙間を残さないことを求めています。鋼矢板工法は先に矢板を連続して打ち込んでから掘削する点が異なり、止水性が必要な場所では鋼矢板やSMWが選ばれます。

本記事では、土留め工法の比較、親杭横矢板工法と鋼矢板工法の施工手順、労働安全衛生規則で決められた土止め支保工の点検と作業主任者、出来形の規格値、施工計画書への記載事項をまとめます。

土留め工とは

土留め工は、掘削するときに周囲の地盤が崩れないよう、仮設の壁と支保工で土圧を支える工事です。上下水道の管路、地下構造物、開削トンネルなど、深い掘削を伴う土木工事で必要になります。

労働安全衛生規則第361条は、明り掘削で地山の崩壊や土石の落下の危険があるときは、あらかじめ土止め支保工を設ける等の措置を講じるよう事業者に求めています。国の「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説」も、土留工は仮設構造物であるため重要性の認識が不足しがちだと指摘しています。仮設であっても、本体工事の品質と安全を左右する工種です。

土留め工法の種類と比較

代表的な3つの土留め工法を比べると次のとおりです。適用できる深さや部材の寸法は、地盤条件と設計計算で決まるため、ここでは数値を示しません。設計図書と仮設計算書で確認してください。

項目親杭横矢板工法鋼矢板工法SMW工法
壁の作り方親杭を間隔をあけて設置し、掘削しながら横矢板をはめ込む継手をかみ合わせた鋼矢板を連続して打ち込む原位置の土とセメント系材料を混ぜた壁にH形鋼などの芯材を入れる
止水性低い(板の間から水が出る)比較的高い(継手でかみ合う)高い
向いている地盤地下水位が低く、掘削面がある程度自立する地盤地下水位が高い地盤、軟弱地盤地下水位が高い地盤、軟弱地盤
騒音・振動親杭の設置方法で変わる(オーガで削孔して建て込めば小さい)打設工法で変わる比較的小さい
撤去親杭は引き抜けることが多い。横矢板は残置することが多い引き抜いて転用できる壁は残置が前提になることが多い
コスト比較的安い中程度高い

親杭横矢板工法の施工手順

親杭横矢板工法は、手順の中で「掘る→すぐ板を入れる→隙間を埋める」を段ごとに繰り返すのが特徴です。掘った面をしばらく露出させる工法なので、掘りすぎと隙間の放置が事故と沈下の原因になります。

(1) 事前調査:地山の形状・地質・地層、き裂・含水・湧水、埋設物の有無を調べる(労働安全衛生規則第355条)。地下水位が高い場合は補助工法を検討する

(2) 埋設物の確認(試掘・溝掘り):親杭の打込みに先立ち、溝掘り等で支障となる埋設物を確認する(共通仕様書 土留・仮締切工)。道路上で布掘りを先行する場合は、杭の打設に必要な範囲にとどめ、打設後は速やかに埋め戻す

(3) 組立図の作成:矢板・杭・腹起し・切梁などの部材の配置、寸法、材質、取付けの時期と順序を示した組立図を作る(同規則第370条)

(4) 親杭の設置:H形鋼の親杭を、打込み(バイブロハンマなど)またはアースオーガで削孔してからの建込みで、所定の位置・深さに設置する。騒音・振動を抑えたい現場では、打込みより削孔建込みが向く

(5) 1段目の掘削と横矢板のはめ込み:掘削と並行して、親杭のフランジの間に横矢板をはめ込む。横矢板と掘削面の間に隙間を残さない

(6) 裏込めとくさび:掘りすぎて隙間ができた場合は、良質な土砂などで裏込めし、親杭のフランジと横矢板の間にくさびを打ち込んで固定する

(7) 腹起し・切梁の設置:組立図に従い、所定の深さで腹起し・切梁を取り付ける。切梁と腹起しは脱落しないよう確実に取り付け、圧縮材の継手は突合せ継手とする(同規則第371条)

(8) 2段目以降の掘削:所定の部材の取付けが終わるまで次の段の掘削をしない(土木工事安全施工技術指針)。(5)〜(7)を床付け(掘削の最終深さ)まで繰り返す

(9) 本体構造物の構築:掘削完了後、本体のコンクリート工事などを行う

(10) 埋戻しと支保工の撤去:下段から順に埋め戻しながら支保工を撤去する。構造物の周りは偏った土圧がかからないよう埋め戻す

(11) 親杭の引抜きと跡の充填:親杭を引き抜く場合は、引抜き跡の空洞を砂等で充填し、地盤沈下を防ぐ(共通仕様書 土留・仮締切工)

親杭横矢板工法の注意点

  • 地下水:止水性が低いため、地下水位が高い場所では、薬液注入工法・地下水位低下工法・地盤改良工法などの補助工法を発注者と協議して用いる(建設工事公衆災害防止対策要綱 第47)
  • 裏込め不足:横矢板の裏に空洞が残ると、背面地盤の沈下や土砂の流出につながる。点検でも矢板・背板の背面の空隙を確認する
  • 掘りすぎ:一度に深く掘ると、板を入れる前に掘削面が崩れる。1段の掘削深さは施工計画で決め、現場で守らせる
  • 親杭の間隔と根入れ:土質と設計計算で決まる。設計図書・仮設計算書の値を確認する(旧要綱にあった最小根入れなどの一律の数値は、現在の要綱では削除されている)

鋼矢板工法の施工手順

鋼矢板工法は、先に鋼矢板を連続して打ち込み、壁を作ってから掘削します。

(1) 埋設物の確認と導材の設置:溝掘り等で埋設物を確認し、矢板の建込み位置をガイドする導材を設置する

(2) 鋼矢板の打設:バイブロハンマ、油圧式圧入引抜機、打撃ハンマなどで打ち込む。継手はかみ合わせ、ぶれ・よじれ・倒れと隣の矢板の共下がりを防ぐ

(3) 1段目の掘削:設計で定めた深さまで掘削する

(4) 腹起し・切梁の設置:腹起しは矢板と密着させ、隙間はパッキング材で埋めて土圧を均等に受ける。受け金物や吊りワイヤで支持して落下を防ぐ

(5) 2段目以降の掘削:支保工を設置しながら段階的に掘り進める

(6) 本体構造物の構築

(7) 埋戻し・支保工の撤去:下段から順に埋め戻しと支保工の撤去を行う

(8) 鋼矢板の引抜き:バイブロハンマなどで引き抜き、引抜き跡の空洞を砂等で充填する

打設工法ごとの手順と選び方は鋼矢板の施工方法で解説しています。

SMW工法の施工手順

SMW(Soil Mixing Wall)工法は、原位置の土とセメント系の材料を混ぜて壁を作り、その中にH形鋼などの芯材を入れる工法です。

(1) 多軸の撹拌機を所定の位置に据え付ける

(2) 撹拌翼を回しながら地盤を掘削し、セメント系の材料を注入して撹拌混合する

(3) ソイルセメントが固まる前に芯材を建て込む

(4) 所定の強度が出るまで養生する(期間と強度は設計図書・配合計画による)

(5) 鋼矢板工法と同じく、段階的に掘削と支保工の設置を行う

(6) 本体構造物を構築し、埋め戻す

支保工の種類

支保工の種類特徴向いている条件
切梁方式向かい合う土留め壁を切梁で突っ張って支える。最も一般的掘削幅が狭い場合
アンカー方式背面地盤に定着したアンカーで土留め壁を引っ張って支える掘削幅が広い場合、切梁が作業の邪魔になる場合
自立方式支保工を使わず、壁の根入れと剛性だけで自立させる浅い掘削、良好な地盤

早見表:土止め支保工の点検と法令

親杭横矢板・鋼矢板のどちらでも、腹起し・切梁を使う土留めは労働安全衛生規則の「土止め支保工」に当たります。

項目決まっていること根拠
材料著しい損傷・変形・腐食のある材料を使わない安衛則第368条
構造地山の形状・地質・地層・き裂・含水・湧水・凍結・埋設物等の状態に応じた堅固な構造安衛則第369条
組立図あらかじめ作成し、その通りに組み立てる。部材の配置・寸法・材質、取付けの時期と順序を示す安衛則第370条
部材の取付け切梁・腹起しは脱落しないよう確実に取り付ける。圧縮材(火打ちを除く)の継手は突合せ継手安衛則第371条
切梁等の作業関係者以外の立入禁止、材料・工具の上げ下ろしはつり綱・つり袋等安衛則第372条
点検の時期設置後7日を超えない期間ごと、中震以上の地震の後、大雨等で地山が急に軟弱化するおそれのある事態の後安衛則第373条
点検の内容部材の損傷・変形・腐食・変位・脱落、切梁の緊圧の度合、接続部・取付け部・交さ部の状態安衛則第373条
作業主任者切梁・腹起しの取付け・取り外しの作業には、技能講習修了者から土止め支保工作業主任者を選任安衛令第6条第10号、安衛則第374条

土木工事安全施工技術指針は、これに加えて、矢板・背板の背面の空隙の状態や部材のきしみ・ふくらみも日常点検の対象に挙げています。異常を見つけたら作業員を避難させ、対策を終えるまで次の段階の施工に進まないことが原則です。

品質管理と計測管理

出来形の規格値

国の「土木工事施工管理基準及び規格値(案)」では、仮設の土留・仮締切工(H鋼杭・鋼矢板)の出来形を次のように管理します。

測定項目規格値測定基準
基準高±100mm施工延長40m(測点間隔25mの場合は50m)につき1か所。延長40m(又は50m)以下は1施工箇所につき2か所
根入長設計値以上同上

鉛直度、支保工の設置高さ、切梁のプレロード(事前に切梁へ軸力をかけておくこと)の導入量などは、この表に一律の数値がありません。設計図書・仮設計算書と施工計画書で管理値を決め、記録を残してください。

計測管理

公衆災害防止対策要綱は、土留工を設置している間は常時点検を行い、必要に応じて測定計器で土圧・変位を測定し、地下水位や地盤の沈下・移動を定期的に観測・記録するよう求めています。目視で変形が分かる時点では変形がかなり進んでいることが多いためです。

  • 土留め壁の水平変位:傾斜計、トランシットなど
  • 切梁の軸力:ひずみ計など
  • 地下水位:観測井
  • 周辺地盤の沈下:レベル測量
  • 周辺構造物の変状:目視、クラックゲージ

地盤の隆起・沈下などの異常があれば作業を中止し、埋設物の管理者などに連絡して原因の調査と保全措置を行い、発注者などに通知します。設計段階では、土質に応じてボイリング(掘削底から水と砂が噴き上がる現象)やヒービング(軟らかい粘土の掘削底が盛り上がる現象)の検討も必要です。

施工計画書への記載

土留め工の施工計画書には、土木工事の施工計画書ガイドの基本構成に加え、次を記載します。

  • 土留め工法の選定理由(地下水位・地盤・周辺環境)
  • 土留め壁と支保工の仮設計算書(設計図書に含まれる場合はその写し)
  • 組立図(部材の配置・寸法・材質、取付けの時期と順序)
  • 掘削と支保工設置の段階図(1段ごとの掘削深さ)
  • 補助工法の要否と方法
  • 計測管理計画(測定項目、頻度、管理値、超えた場合の対応)
  • 点検計画(7日を超えない間隔、地震・大雨後)と土止め支保工作業主任者
  • 引抜きと引抜き跡の充填方法

よくある質問

Q. 親杭横矢板工法とは何ですか。 A. H形鋼などの親杭を一定の間隔で地中に設置し、掘削しながら親杭の間に横矢板をはめ込んで土を支える土留め工法です。比較的安く、狭い場所でも施工できますが、止水性は低い工法です。

Q. 親杭横矢板の施工手順を簡単に教えてください。 A. 事前調査と埋設物の確認、組立図の作成、親杭の設置、1段目の掘削と横矢板のはめ込み・裏込め、腹起し・切梁の設置、次の段の掘削の繰り返し、本体構築、埋戻しと支保工撤去、親杭の引抜きと跡の充填、の順です。

Q. 横矢板の施工で気をつけることは何ですか。 A. 掘削と並行してはめ込み、掘削面との間に隙間を残さないことです。掘りすぎて隙間ができたら良質な土砂で裏込めし、親杭のフランジと横矢板の間にくさびを打ち込んで固定します(共通仕様書)。

Q. 鋼矢板の土留めの施工方法は親杭横矢板と何が違いますか。 A. 鋼矢板は先に矢板を連続して打ち込んで壁を作ってから掘削します。継手がかみ合うため止水性が比較的高く、地下水位が高い場所に向きます。親杭横矢板は掘削しながら板をはめ込むため、掘削面が一時的に露出します。

Q. 土止め支保工の点検はいつ行いますか。 A. 設置後7日を超えない期間ごと、中震以上の地震の後、大雨などで地山が急に軟弱化するおそれのある事態の後です(労働安全衛生規則第373条)。

まとめ

  • 親杭横矢板工法は、親杭を設置し、掘削しながら横矢板をはめ込む土留め工法。隙間を残さず裏込めすることが要点
  • 鋼矢板工法は先に壁を作ってから掘る。止水性が必要なら鋼矢板やSMWを選ぶ
  • 土止め支保工は、組立図の作成、7日以内ごとの点検、作業主任者の選任が法令で決まっている
  • 出来形は施工管理基準(基準高±100mm、根入長は設計値以上)、それ以外の管理値は設計図書と施工計画で決める

上下水道工事での開削工法については管渠工事の施工管理も参照してください。

出典・参考

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