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土留めが必要な深さの基準と掘削勾配|土砂崩壊を防ぐ対策

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土留めが必要な深さの基準と掘削勾配|土砂崩壊を防ぐ対策

土留め(山留め)は、深さ1.5m以上の掘削では原則として設けるのが基準です。 建築基準法施行令第136条の3第4項がこの値を定め、国の「建設工事公衆災害防止対策要綱」は土木工事の土留めの要否もこの基準に準じるとしています(地盤が崩壊するおそれがない場合などを除く)。土留めを設けずに手掘りする場合の掘削勾配は、労働安全衛生規則(安衛則)第356条・第357条で地山の種類と掘削面の高さごとに上限が決まっており、たとえば「その他の地山」で高さ2m以上5m未満なら75度以下です。掘削面の高さが2m以上になる地山の掘削には、地山の掘削作業主任者の選任が必要です。

本記事では、深さ・高さごとに法令で決まっていることを早見表にまとめたうえで、掘削勾配の基準、土留めの考え方、毎日の点検、崩壊の前兆と退避までを整理します。

早見表:掘削の深さ・高さで決まっていること

土木工事 業務改善Naviが、掘削に関わる法令・国の基準の数値を「深さ・高さ」の順に並べ直した早見表です。

深さ・高さ決まっていること根拠
高さ又は深さが1.5mを超える箇所安全に昇降するための設備等を設ける安衛則 第526条
深さ1.5m以上の根切り(掘削)地盤が崩壊するおそれがないとき等を除き、山留め(土留め)を設ける建築基準法施行令 第136条の3第4項。土木工事も公衆災害防止対策要綱 第47で同基準に準じる
試掘の深さが1.5mを超える第47(掘削方法の選定等)に従って土留工を施す公衆災害防止対策要綱の解説 第42
掘削面の高さが2m以上の地山の掘削技能講習修了者から地山の掘削作業主任者を選任する安衛法施行令 第6条第9号、安衛則 第359条
掘削面に奥行き2m以上の水平な段がある段で区切られたそれぞれの面を1つの掘削面として勾配を判定する安衛則 第356条
手掘りの掘削勾配地山の種類と掘削面の高さごとの上限(下の表)安衛則 第356条・第357条
深さに関係なく土止め支保工の切梁・腹起しの取付け・取外しは土止め支保工作業主任者を選任する安衛法施行令 第6条第10号、安衛則 第374条

「1.5m」は昇降設備では「超える」、山留めでは「以上」と書き方が違います。現場の基準として掲げるときは条文の表現に合わせてください。

掘削勾配の基準(労働安全衛生規則 第356条・第357条)

手掘りの場合の勾配の上限

安衛則第356条・第357条は、手掘り(パワー・ショベルなどの掘削機械を使わない掘削)で地山を掘るときの掘削面の勾配を、次の値以下にするよう定めています。

地山の種類掘削面の高さ掘削面の勾配根拠
岩盤又は堅い粘土からなる地山5m未満90度以下第356条
岩盤又は堅い粘土からなる地山5m以上75度以下第356条
その他の地山2m未満90度以下第356条
その他の地山2m以上5m未満75度以下第356条
その他の地山5m以上60度以下第356条
砂からなる地山-35度以下とするか、掘削面の高さを5m未満とする第357条
発破等で崩壊しやすい状態になっている地山-45度以下とするか、掘削面の高さを2m未満とする第357条

読み方の注意点は次のとおりです。

  • 第356条の表から除かれる地山がある:崩壊や岩石の落下の原因となるき裂がない岩盤、砂からなる地山、発破等で崩壊しやすい地山は第356条の対象外で、砂と発破後の地山は第357条で別に決まっています。
  • 砂は「勾配」か「高さ」のどちらか:35度以下にするか、高さを5m未満にするかのいずれかです。
  • 勾配が一定でない面:傾斜の異なる部分があって勾配が計算できないときは、上の基準より崩壊の危険が大きくならないよう各部分の傾斜を保ちます(第356条第2項)。
  • 数値は上限:国の「土木工事安全施工技術指針」は、特に地質が悪い地山ではさらに緩やかな勾配とするよう求めています。

機械掘削の場合

機械掘削の勾配を数値で定めた条文はありません。土木工事安全施工技術指針は、土留・支保工の節で「切土面に,その箇所の土質に見合った勾配を保って掘削すること」(安衛則第356条・第357条を参照)とし、施工計画では地山の調査結果に基づいて掘削面の高さと勾配を箇所ごとに定めるよう求めています。のり面が長くなる場合は数段に区切って掘削します。小段の幅や段の高さは、設計図書・施工計画で決めてください。

土留めが必要になる深さと考え方

深さ1.5m以上は原則として土留め

建築基準法施行令第136条の3第4項は、深さ1.5m以上の根切り工事では、地盤が崩壊するおそれがないとき、及び周辺の状況により危害防止上支障がないときを除き、山留めを設けるとしています。公衆災害防止対策要綱の解説は、土木工事でも土留工の要否はこの基準に準じるとしたうえで、節理のない岩盤などで崩壊や岩石の落下のおそれがない場合や、掘削箇所の周囲に余裕があって土質に見合った高さと勾配で掘削できる場合などを除き、一般に土留工が必要になると説明しています。

つまり、1.5m未満なら不要という意味ではありません。安衛則第361条は、明り掘削で地山の崩壊や土石の落下の危険があるときは、深さにかかわらず、あらかじめ土止め支保工を設ける・防護網を張る・立入りを禁止するなどの措置を求めています。

土留めの形式は設計で決める

公衆災害防止対策要綱は、掘削の深さ、掘削期間、地盤の性状、周辺の環境条件を総合的に勘案して土留めの要否と形式、掘削方法を決めるとしています。改訂前の要綱にあった鋼矢板の最小根入れなどの一律の数値は削除されており、部材の寸法は「道路土工 仮設構造物工指針」などに基づく設計で決まります。

親杭横矢板・鋼矢板・SMWの施工手順、土止め支保工の点検(設置後7日を超えない期間ごと等)は、土留め工の施工手順で解説しています。

土砂崩壊が起きやすい条件

安衛則第355条は、地山の崩壊や埋設物の損壊などのおそれがあるときは、あらかじめボーリングなどで次の事項を調査し、その結果に合った掘削の時期と順序を定めるよう求めています。調査項目は、そのまま崩壊を起こしやすい条件の確認項目です。

調査事項(安衛則 第355条)崩壊との関係
形状、地質及び地層の状態地山の種類によって勾配の上限が変わる(第356条・第357条)
き裂、含水、湧水及び凍結の有無及び状態き裂や湧水は崩壊の原因になる
埋設物等の有無及び状態埋設物の周りは埋戻し土で緩い
高温のガス及び蒸気の有無及び状態作業者への危険

このほか、次のような外的な要因でも崩壊の危険が高まります。

  • 降雨・地下水:安衛則第534条は、崩壊の原因となる雨水や地下水等を排除するよう求めている
  • 法肩の荷重:土木工事安全施工技術指針は、掘り出した土砂を掘削部の上部やのり肩付近に仮置きする場合は、掘削面の崩落や土砂の落下が生じないよう留意するとしている
  • 重機の振動:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の災害事例(下水管布設の溝掘削での土砂崩壊)では、ほぼ垂直の掘削面、土留めなし、掘削土による法肩の上載圧の増加、ドラグ・ショベルの作業振動、作業主任者の未選任が原因に挙げられている
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具体的な安全対策

(1) 事前調査と作業計画

  • 地質調査報告書(ボーリングデータ等)で地山の種類と地下水位を確認する
  • 試掘等で埋設物の位置を確認する
  • 近接する構造物とブロック塀・擁壁などへの影響を確認する(安衛則第362条:損壊のおそれがあれば補強・移設等の措置後でなければ作業しない)
  • 調査結果に合った掘削の時期と順序、掘削面の高さと勾配、土留めの要否を施工計画書に書く

(2) 作業主任者の選任

掘削面の高さが2m以上なら地山の掘削作業主任者を選任します。作業主任者は、作業の方法を決定して直接指揮し、器具・工具を点検し、墜落制止用器具と保護帽の使用状況を監視します(安衛則第360条)。土止め支保工の切梁・腹起しを取り付ける・外す作業には、別に土止め支保工作業主任者が必要です。

(3) 毎日の点検

安衛則第358条は、明り掘削では点検者を指名して、その日の作業を開始する前、大雨の後及び中震以上の地震の後に、作業箇所と周辺の地山について次を点検させるよう定めています。

  • 浮石とき裂の有無と状態
  • 含水・湧水・凍結の状態の変化
  • 発破を行った後は、その箇所と周辺の浮石・き裂

土止め支保工を設けている場合は、これとは別に第373条の点検(設置後7日を超えない期間ごと、中震以上の地震の後、大雨等で地山が急に軟弱化するおそれのある事態の後)が必要です。

(4) 重機・運搬機械との接触防止

措置内容根拠
運行経路の周知運搬機械等の運行の経路と、土石の積卸し場所への出入の方法を定めて周知する安衛則 第364条
誘導者運搬機械等が作業箇所に後進して近づくとき、転落のおそれがあるときは誘導者を配置する安衛則 第365条
立入禁止運転中の車両系建設機械に接触するおそれのある箇所への立入りを禁止する(誘導者を配置して誘導させる場合を除く)安衛則 第158条
保護帽明り掘削の作業者に保護帽を着用させる安衛則 第366条

崩壊の前兆と退避

土木工事安全施工技術指針は、土留工を施している間は点検員を配置して定期的に点検し、土留用部材の変形、緊結部のゆるみ、地下水位や周辺地盤の変化などの異常を見つけたら、直ちに作業員全員を避難させ、対策を終えるまで次の段階の施工を行わないよう求めています。素掘りの掘削でも、次のような変化は作業を止める合図です。

  • 掘削面からの湧水が増える、濁る
  • 掘削面のき裂が増える・広がる、浮石が出る
  • 法肩の地表面が沈下する、ひび割れが出る
  • 土砂がぱらぱらと落ち始める
  • 土留めの部材が変形する、きしむ

退避経路は掘削の外へ確実に出られるように設け、深さが1.5mを超える箇所には昇降設備を置きます(安衛則第526条)。退避の合図と人数確認の方法を決め、全員に周知しておきます。

現場用:掘削前チェックリスト

確認すること根拠
□ 地山の形状・地質・地層、き裂・含水・湧水・凍結、埋設物を調査した安衛則 第355条
□ 調査結果に合わせて掘削の時期と順序を定めた安衛則 第355条
□ 深さ1.5m以上の掘削で、土留めの要否を検討し記録した建築基準法施行令 第136条の3、公衆災害防止対策要綱 第47
□ 手掘りの掘削勾配が地山の種類と高さの上限以下になっている安衛則 第356条・第357条
□ 掘削面の高さ2m以上なら地山の掘削作業主任者を選任した安衛則 第359条
□ 土止め支保工があれば組立図を作り、土止め支保工作業主任者を選任した安衛則 第370条・第374条
□ 作業開始前・大雨の後・中震以上の地震の後に地山を点検している安衛則 第358条
□ 法肩に掘削土や資材を置いていない土木工事安全施工技術指針 第7章
□ 雨水・地下水の排水を確保した安衛則 第534条
□ 重機の運行経路・誘導者・立入禁止を決めた安衛則 第158条・第364条・第365条
□ 深さ1.5m超の箇所に昇降設備を設けた安衛則 第526条
□ 退避の合図・経路・人数確認の方法を周知した土木工事安全施工技術指針 第5章

よくある質問

Q. 土留めは深さ何mから必要ですか。 A. 深さ1.5m以上の掘削では、地盤が崩壊するおそれがないとき等を除き土留め(山留め)を設けるのが基準です(建築基準法施行令第136条の3第4項。公衆災害防止対策要綱は土木工事もこれに準じるとしている)。1.5m未満でも崩壊の危険があれば、安衛則第361条により土止め支保工などの措置が必要です。

Q. 掘削勾配の基準を教えてください。 A. 手掘りの場合、岩盤又は堅い粘土からなる地山は高さ5m未満で90度以下・5m以上で75度以下、その他の地山は2m未満で90度以下・2m以上5m未満で75度以下・5m以上で60度以下です。砂は35度以下か高さ5m未満、発破等で崩れやすい地山は45度以下か高さ2m未満です(安衛則第356条・第357条)。

Q. 機械掘削にも勾配の基準は適用されますか。 A. 第356条・第357条は手掘りの規定です。機械掘削の勾配を数値で定めた条文はありませんが、国の土木工事安全施工技術指針は土質に見合った勾配を保って掘削するよう求めています。勾配は地山の調査結果から施工計画で決めます。

Q. 地山の掘削作業主任者が必要になるのはいつですか。 A. 掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削の作業です(安衛法施行令第6条第9号、安衛則第359条)。地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習の修了者から選任します。

Q. 雨の後はいつから作業を再開できますか。 A. 法令に雨量の数値で再開を決める規定はありません。安衛則第358条により、大雨の後は点検者が地山の浮石・き裂・含水・湧水の変化を点検し、異常がないことを確かめてから再開します。土止め支保工がある場合は第373条の点検も行います。

まとめ

  • 土留めは深さ1.5m以上の掘削で原則必要。1.5m未満でも崩壊の危険があれば措置が要る
  • 手掘りの掘削勾配は安衛則第356条・第357条で地山の種類と高さごとに上限がある(その他の地山:2m未満90度、2m以上5m未満75度、5m以上60度)
  • 掘削面の高さ2m以上は地山の掘削作業主任者を選任する
  • 作業開始前・大雨の後・中震以上の地震の後に地山を点検し、異常があれば全員を退避させる

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出典・参考

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