道路工事の交通事故防止対策|規制帯の設置と誘導員の配置
道路工事の交通事故は、規制帯(作業帯)を基準どおりに設置し、設置・撤去の順序を守り、交通誘導警備員と保安施設で通行車両と歩行者を作業場から確実に分けることで防ぎます。 建設工事公衆災害防止対策要綱は、工事を予告する標識・標示板を工事箇所の前方50mから500mの間に設けること、移動さくを高さ0.8m以上1m以下で間隔をあけずに設置し、交通流に対面する部分には原則として15度から30度のすりつけ区間を設けること、夜間は高さ1m程度・150m前方から視認できる保安灯を設けることなどを定めています。
本記事は、道路工事の現場で事故を防ぐための対策(規制帯の設置・撤去、誘導員、夜間、歩行者)に絞って解説します。規制方法の決め方や道路使用許可・道路占用許可の手続き、規制図の描き方は交通規制計画書の書き方で扱っています。
道路工事における交通事故のリスク
道路上や道路に接して行う土木工事は、一般車両や歩行者との接触事故のリスクが常にあります。事故は作業員だけでなく、通行車両・歩行者などの第三者にも被害が及びます(公衆災害)。特に次のような工事では、交通事故防止対策が重要です。
- 舗装の修繕・打替え工事
- 上下水道の埋設管工事
- 電線共同溝の設置工事
- 側溝・縁石の改修工事
- 橋梁の補修工事
要綱の解説は、道路上の工事では運転者に工事箇所を予告し、交通の流れの変化や走行位置の変更を知らせることで、追突事故や接触事故を防ぐことが重要だとしています。
交通規制の種類と手続き
主な規制方法
| 規制方法 | 内容 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 片側交互通行 | 片側車線を規制し、残りの車線を交互に通行させる | 2車線道路での工事 |
| 車線規制 | 複数車線のうち一部を規制 | 多車線道路での工事 |
| 全面通行止め | 全車線を通行止めにして迂回させる | 道路全幅を使用する工事 |
| 歩道規制 | 歩道の一部を規制 | 歩道上での工事 |
規制後の車道幅員は、道路管理者・所轄警察署長の特に指示がない場合、1車線となる場合は3m以上、2車線となる場合は5.5m以上が要綱の標準です(第25)。
交通規制の手続き
| 手続き | 内容 | 申請先 |
|---|---|---|
| 道路使用許可 | 道路において工事・作業をすることの許可(道路交通法第77条) | 所轄警察署長 |
| 道路占用許可 | 道路に工作物・物件・施設を設けて継続して使用することの許可(道路法第32条) | 道路管理者 |
| 規制方法の協議 | 規制方法・時間帯の協議 | 所轄警察署・道路管理者 |
許可が下りないと着工できないため、必要な日数は所轄警察署の案内で確認し、工程に余裕を持って申請します。手続きの詳細は交通規制計画書の書き方を参照してください。
規制帯の設置方法
規制帯の構成
規制帯の設置は、要綱と国土交通省の「道路工事保安施設設置基準(案)」(令和6年2月)に沿って行います。設置基準(案)は、工種・車線数・昼夜・作業箇所ごとに、A-1型〜H-2型の設置標準図を示しています。
| 区間 | 主な設置物 | 目的 |
|---|---|---|
| 予告区間 | 工事予告の道路標識・標示板、工事予告看板 | 前方の工事を予告し、減速・車線変更を促す |
| 移行区間(すりつけ区間) | 進路指定看板(矢印板)、セイフティコーン、移動さく | 車両を無理なく規制後の車線へ誘導する |
| 作業区間 | 移動さく(バリケード)、保安灯、工事中の標示板 | 作業場の範囲を明示し、作業員を守る |
| 終端区間 | 工事区間の終わりを示す標示板 | 規制の終了を明示する |
予告標識・看板の位置
| 項目 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 工事を予告する道路標識・標示板 | 工事箇所の前方50mから500mの間の路側または中央帯のうち、視認しやすい箇所に設置 | 公衆災害防止対策要綱 第24 |
| 工事予告看板 | 500mから1000m手前に設置(標準様式図の注) | 道路工事保安施設設置基準(案) |
| 予告標識・看板の設置数と距離 | 交通量その他、現地の状況によって定める(各標準図の注) | 道路工事保安施設設置基準(案) |
| 交差点付近 | 右左折車両の車線変更を伴うので、できるだけ余裕を持って支障箇所の前方で車線変更が終わるよう配慮することが望ましい | 公衆災害防止対策要綱 第24 解説 |
制限速度ごとの予告距離やテーパー長を一律に決めた数値は、要綱・設置基準(案)にはありません。現場ごとの配置は、道路管理者・所轄警察署の指示と許可条件に従います。
移動さくとすりつけ区間
| 項目 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 移動さくの高さ | 0.8m以上1m以下(1m以上となる場合は、0.8mを超える部分を金網等にして見通しを妨げない) | 要綱 第15 解説 |
| 移動さくの長さ | 1m以上1.5m以下が標準 | 要綱 第15 解説 |
| 連続して設置する場合 | 原則として移動さくの長さを超える間隔をあけない。さくの間には保安灯またはセイフティコーンを置く | 要綱 第15 解説 |
| 交通流に対面する部分 | 原則として15度から30度のすりつけ区間を設ける。とれない場合は二重さくを設置する等で対処し、道路管理者・所轄警察署長の指示に従う | 要綱 第15 解説 |
| 作業場への車両の出入り | 原則として交通流に対する背面から出入りさせる。やむを得ず交通流に平行する部分から出入りさせる場合は、原則として交通誘導警備員を配置し、一般車両の通行を優先する | 要綱 第22 |
独自の早見表:規制帯の設置・撤去の順序
規制帯の設置中・撤去中は、保安施設がそろっていない状態で作業員が車道に出るため、事故が起きやすい時間帯です。要綱の解説は、さくの設置は交通流の上流から下流に向けて、撤去は下流から上流に向けて行うこと、設置は工事予告の表示板・進路指定看板・セイフティコーン・移動さくの順序で行い、撤去は設置と逆の順番で行うことを原則としています。土木工事 業務改善Naviが、これを手順表にまとめました。
| 段階 | 設置するとき(上流から下流へ) | 撤去するとき(下流から上流へ) |
|---|---|---|
| 1 | 工事予告の表示板 | 移動さく(バリケード、ガードフェンス) |
| 2 | 進路指定看板(矢印看板、内照式矢印看板など) | セイフティコーン |
| 3 | セイフティコーン | 進路指定看板 |
| 4 | 移動さく(バリケード、ガードフェンス) | 工事予告の表示板 |
設置・撤去の作業中も、交通の流れを妨げないように行います(要綱 第15 解説)。
誘導員の配置
配置の考え方
要綱は、次の場面で交通誘導警備員の配置を求めています。人数は規制方法・交通量・見通しに応じて決め、道路管理者・所轄警察署との協議と許可条件に合わせます。設置基準(案)の標準図の注も、工事区間長と交通量に応じて、適宜交通整理員、自動信号機もしくは交通誘導システムを置くこととしています。
| 場面 | 配置の考え方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 道路上の工事 | 道路管理者・所轄警察署長の指示を受け、作業場出入口等に原則として配置 | 要綱 第24 |
| 片側交互通行 | 制限区間をできる限り短くし、前後で渋滞しないよう原則として配置(工事用の自動信号機の活用も) | 要綱 第25 |
| まわり道 | 交通量が多い場合や通学路の場合は原則として配置 | 要綱 第25 解説 |
| 歩行者の多い箇所 | 幅1.5m以上の歩行者用通路を確保し、配置して歩行者を誘導 | 要綱 第27 |
高速自動車国道・自動車専用道路や、都道府県公安委員会が定める道路では、交通誘導警備業務の検定合格警備員の配置が必要です(警備員等の検定等に関する規則第2条)。対象の道路は交通規制計画書の書き方で整理しています。
誘導員の装備
- 反射材のついたベスト(蛍光色)
- 誘導灯・誘導旗
- ヘルメット
- 笛
- 無線機(片側交互通行で両端の誘導員が連絡を取り合う場合など)
誘導員の配置で注意すべきこと
- 誘導員自身が車両と接触しない位置に立ち、退避できる方向を確保する
- 長時間の立ち仕事になるため、交代要員を確保する
- 熱中症対策として、暑熱環境下では休憩時間を十分に設ける
- 夜間は反射材つきの装備を着用する
夜間工事の追加対策
照明・保安設備
| 設備 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 保安灯 | 道路上または道路に接する部分のさく等に沿って、高さ1m程度で、夜間150m前方から視認できる光度のもの | 要綱 第24 |
| 工事中の標示板・注意灯 | 交通量の特に多い道路では、交通流に対面する場所に工事中を示す標示板(原則として内部照明式)。必要に応じ、夜間200m前方から視認できる回転式または点滅式の黄色・赤色の注意灯を標示板の近くに設置 | 要綱 第24 |
| 黄色回転灯 | 視認距離200m以上の効果をもつもの | 道路工事保安施設設置基準(案) 標準様式図 |
| 背の高い機械・構造物 | 杭打機など背の高い建設機械や構造物、危険が予想される箇所は白色照明灯で照明する | 要綱 第24 |
| さくの彩色 | 移動さくの横板部分は黄色と黒色の斜縞(反射処理) | 要綱 第15 解説 |
作業箇所の照明の明るさは、発注者の仕様書・特記仕様書や道路管理者の指示で確認してください。
夜間工事の注意点
- ドライバーの視認性が低下するため、保安灯・反射材で作業場の範囲をはっきり示す
- 照明は対向車や通行車両の運転者がまぶしくならないよう、向きと角度を調整する
- 要綱の解説は、付近に住居がある場合、反射光等で睡眠が妨げられないよう配慮することを求めている
- 作業員の疲労が蓄積しやすいため、適切な休憩を設ける
歩行者の安全確保
歩行者用通路の基準
公衆災害防止対策要綱 第27は、やむを得ず通行を制限する場合に、車道とは別に次の歩行者用通路を確保するよう定めています。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 通路の幅 | 0.90m以上(高齢者や車椅子使用者等の通行が想定されない場合は0.75m以上) |
| 歩行者の多い箇所 | 幅1.5m以上。交通誘導警備員を配置する等で適切に誘導する |
| 有効高さ | 2.1m以上 |
| 車道・作業場との境 | 移動さくを間隔をあけずに設置する、またはさくの間に安全ロープ等をはってすき間をなくす |
| 路面 | 段差や凹凸をなくし、滑りにくい状態を保つ。必要に応じてスロープ、手すり、視覚障害者誘導用ブロック等を設ける |
| 照明・標識 | 必要な標識等を掲げ、夜間は適切な照明等を設ける |
掘削箇所を交通に開放するときは、仮舗装・覆工を行い、やむを得ず段差が生じた場合は5%以内の勾配ですりつけます(要綱 第26)。
通学路での追加対策
学校の近くや通学路で工事を行う場合は、次の対策を検討します。
- 登下校の時間帯を学校に確認し、その時間帯の誘導員の増員や作業の制限を検討する
- まわり道が通学路になる場合は、原則として交通誘導警備員を配置する(要綱 第25 解説)
- 学校への事前連絡と協力依頼を行う
- 児童・生徒が通る歩行者用通路を、さくで作業場と確実に区分する
独自の早見表:道路工事 交通事故防止の日々の点検チェックリスト
土木工事 業務改善Naviが、要綱・設置基準(案)の規定を、毎日の作業開始前と終了時に確認する順に並べたものです。
| No. | 確認すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 道路使用許可の許可証と許可条件(規制時間帯など)を確認した | 道路交通法 第77条 |
| 2 | 工事を予告する標識・標示板が前方50m〜500mの間の見やすい位置にある | 要綱 第24 |
| 3 | 規制帯を上流から下流の順に設置した(撤去は下流から上流) | 要綱 第15 解説 |
| 4 | 交通流に対面する部分に15度〜30度のすりつけ区間がある(とれない場合は協議・指示どおりの対処) | 要綱 第15 解説 |
| 5 | 移動さくを間隔をあけずに連続して設置し、さくの間に保安灯またはセイフティコーンを置いた | 要綱 第15 解説 |
| 6 | 規制後の車道幅員が1車線3m以上・2車線5.5m以上(特に指示がない場合の標準)ある | 要綱 第25 |
| 7 | 作業場出入口・片側交互通行の両端に交通誘導警備員(または自動信号機)を配置した | 要綱 第24・第25 |
| 8 | 工事車両は交通流に対する背面から出入りさせる計画になっている | 要綱 第22 |
| 9 | 夜間は高さ1m程度・150m前方から視認できる保安灯を設置した | 要綱 第24 |
| 10 | 歩行者用通路を幅0.90m以上(多い箇所は1.5m以上)・有効高さ2.1m以上で確保した | 要綱 第27 |
| 11 | 掘削箇所を開放するときは仮舗装・覆工をし、段差は5%以内の勾配ですりつけた | 要綱 第26 |
| 12 | 緊急時の連絡体制(発注者・道路管理者・警察・消防)を作業員と共有した | 現場の連絡体制表 |
道路工事の安全管理は、施工計画書の安全衛生計画の段階から検討し、毎朝のKY活動でも交通事故防止を重点的に取り上げると効果的です。
よくある質問
Q. 工事の予告看板は何m手前に置きますか。 A. 公衆災害防止対策要綱は、工事を予告する道路標識・標示板等を工事箇所の前方50mから500mの間の、視認しやすい路側または中央帯に設置するよう定めています。道路工事保安施設設置基準(案)の標準様式図では、工事予告看板を500mから1000m手前に設置するとしています。設置数と距離は交通量など現地の状況で決め、道路管理者・警察署の指示に従います。
Q. 規制帯のテーパー(すりつけ)はどう決めますか。 A. 要綱の解説は、交通流に対面する部分に移動さくを設置する場合、原則として15度から30度のすりつけ区間を設けるとしています。制限速度ごとのテーパー長を一律に定めた数値は要綱・設置基準(案)にはないため、道路管理者・警察署の指示と許可条件で確認します。
Q. 規制帯はどの順番で設置・撤去しますか。 A. 要綱の解説は、さくの設置は交通流の上流から下流に向けて、撤去は下流から上流に向けて行うことを原則とし、設置は工事予告の表示板、進路指定看板、セイフティコーン、移動さくの順、撤去はその逆の順番としています。
Q. 交通誘導警備員は何人必要ですか。 A. 人数を一律に定めた規定はありません。要綱は作業場出入口等や片側交互通行の区間に原則として配置することを定めており、人数は規制方法・交通量・見通しに応じて決め、道路管理者・警察署との協議と許可条件に合わせます。
まとめ
- 道路工事の交通事故は、規制帯を基準どおりに設置し、設置・撤去の順序を守り、誘導員と保安施設で通行車両・歩行者を作業場から分けることで防ぐ
- 工事予告は前方50m〜500m、移動さくは高さ0.8m〜1mで連続設置、交通流に対面する部分は15度〜30度のすりつけ区間が要綱の基準
- 規制帯の設置は上流から下流、撤去は下流から上流。工事車両は交通流に対する背面から出入りさせる
- 夜間は高さ1m程度・150m前方から視認できる保安灯、歩行者用通路は幅0.90m以上(多い箇所は1.5m以上)・有効高さ2.1m以上
規制方法の決め方と許可の手続きは交通規制計画書の書き方をあわせてご覧ください。
出典・参考
- 国土交通省「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説」令和元年9月(土木工事編 第15 作業場の区分(解説)、第22 作業場への工事車両の出入り等、第24 道路上(近接)工事における措置、第25 一般交通を制限する場合の措置、第26 仮復旧期間における車両交通のための路面維持、第27 歩行者用通路の確保)
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001305477.pdf - 国土交通省道路局国道・技術課「道路工事保安施設設置基準(案)」令和6年2月(近畿地方整備局「土木請負工事必携」収録)
https://www.kkr.mlit.go.jp/plan/jigyousya/technical_information/gijutsukanri/hikkei_kouji/qgl8vl00000050p0-att/19-1.pdf - 道路交通法 第77条(道路の使用の許可)(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105 - 道路法 第32条(道路の占用の許可)(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000180 - 警備員等の検定等に関する規則 第2条(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60400000020
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