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建設現場の熱中症対策|WBGT基準値と義務化された報告体制

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建設現場の熱中症対策|WBGT基準値と義務化された報告体制

建設現場の熱中症対策は、令和7年6月1日から労働安全衛生規則 第612条の2で義務になりました。 WBGT値(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の場所で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業では、事業者は、熱中症の自覚症状がある人や熱中症が疑われる人を見つけた人が報告する体制と、作業からの離脱・身体の冷却・医療機関への搬送などの手順を、作業場ごとにあらかじめ定めて作業者に周知しなければなりません。

作業ごとの暑さの判断には、厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」のWBGT基準値を使います。暑熱順化した人の基準値は、ショベル作業・重量物の運搬などの高代謝率の作業で26℃、盛土や建設車両の運転などの中程度の作業で28℃で、暑さに慣れていない人はそれぞれ23℃・26℃に下がります。

建設業における熱中症の現状

厚生労働省の集計(令和7年12月末速報値)では、2025年の職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は1,681人で、統計を取り始めた2005年以降で最多でした。死亡者15人のうち建設業が5人で最も多く、2021年以降の5年間でも死亡者数は建設業、製造業の順に多くなっています。

土木工事では、次のような作業で熱中症のリスクが高まります。

  • 舗装工事(高温のアスファルト混合物を扱う作業。温度の基準はアスファルトの温度管理を参照)
  • コンクリート打設(長時間の連続作業)
  • 掘削作業(風通しの悪い掘削底面での作業)
  • 法面作業(直射日光を遮るものがない場所での作業)
  • 交通誘導(長時間の屋外での立ち作業)

安衛則第612条の2で義務になったこと

項目義務の内容根拠
対象の作業熱中症を生ずるおそれのある作業。ガイドラインでは、WBGT値28度以上または気温31度以上の場所で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業安衛則 第612条の2、ガイドライン 第3の1(3)
報告体制自覚症状がある作業者や、熱中症が疑われる作業者を見つけた作業者が報告する体制を整備し、周知する安衛則 第612条の2 第1項
悪化防止の手順作業場ごとに、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察・処置を受けさせることなどの措置の内容と実施手順を定め、周知する同 第2項
施行日令和7年6月1日改正労働安全衛生規則

報告体制の例として、ガイドラインは電話などで報告を受けること、巡視、2人以上で作業して互いの体調を確かめるバディ制、ウェアラブルデバイスの活用(他の方法と組み合わせる)を挙げています。手順には緊急連絡先も定め、休憩場所に掲示しておくことも考えられるとしています。

なお、厚生労働省は令和8年3月18日に「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を定め、これまでの「職場における熱中症予防基本対策要綱」(令和3年)は廃止されました。現場の手順書や安全衛生計画で要綱を引用している場合は、ガイドラインに改めておきます。

WBGT(暑さ指数)とは

WBGT(湿球黒球温度)は、気温だけでなく湿度、日射・輻射熱、風を考慮した暑熱環境の指標です。日射がある場合は次の式で求めます(厚生労働省 職場のあんぜんサイト)。

条件算出式
日射がある場合WBGT値 = 0.7×自然湿球温度 + 0.2×黒球温度 + 0.1×気温(乾球温度)
日射がない場合WBGT値 = 0.7×自然湿球温度 + 0.3×黒球温度

湿球温度の重みが大きいため、気温がそれほど高くなくても湿度が高い日はWBGT値が高くなります。ガイドラインは、JIS Z 8504またはJIS B 7922に適合したWBGT指数計で作業場所の値を随時把握することを基本とし、黒球のない測定器では屋外や輻射熱のある場所で正しく測れない場合があること、地域の予報値は実測値より低めになることがあるため直射日光下の作業などでは実測が必要であることを示しています。

WBGT基準値(作業強度・暑熱順化別)

ガイドラインの表1-1(JIS Z 8504 附属書A「WBGT熱ストレス指数の基準値」をもとに作成)です。実測したWBGT値に着衣補正値を加えた値が、この基準値を超える(おそれがある)場合に対策をとります。

区分身体作業強度の例(建設現場に近いもの)暑熱順化者暑熱非順化者
0 安静安静、楽な座位33℃32℃
1 低代謝率軽い手作業、点検、乗り物の運転、2.5km/h以下の歩行30℃29℃
2 中程度代謝率くぎ打ち、盛土、トラクター・建設車両の運転、空気圧ハンマーでの作業、しっくい塗り、中くらいの重さの材料を断続的に持つ作業28℃26℃
3 高代謝率重量物の運搬、ショベル作業、ハンマー作業、掘る、コンクリートブロックを積む26℃23℃
4 極高代謝率激しくシャベルを使う・掘る、階段を昇る、走る25℃20℃

暑熱順化者とは「評価期間の少なくとも1週間以前から同様の全労働期間、高温作業条件にばく露された人」をいいます。入職直後の人や休み明けの人は、暑熱非順化者の基準値で判断します。

着衣補正値(主なもの)

通常の織物製の作業服は補正値0℃です。服を重ねたり、透湿しにくい服を着たりする場合は、WBGT値に次の値を加えて基準値と比べます(ガイドライン 表1-2)。

着衣の組合せWBGT値に加える補正値
作業服(織物製)0℃
織物の衣服を二重に着用(作業服の上につなぎ服)3℃
単層のポリオレフィン不織布製つなぎ服2℃
フードなしの単層の不透湿つなぎ服10℃
フード付きの着衣フードなしの補正値に1℃を加える

基準値を超えたときの休憩時間の目安

ガイドライン表1-1の注3は、身体を冷却する服を着ていないなど特段の対策をとっていない場合の「休憩時間の目安」を、暑熱順化した作業者について次のとおり示しています。暑熱順化していない作業者は、これより長い休憩などが望ましいとされています。

WBGT基準値からの超過休憩時間の目安(1時間当たり)
1℃程度超過15分以上
2℃程度超過30分以上
3℃程度超過45分以上
それ以上超過作業中止が望ましい

計算例:どの基準値で判断するか

土木工事 業務改善Naviが、ガイドラインの表を使って判断の手順を示した例です。

  1. 作業:掘削底面でのショベル作業(高代謝率、区分3)
  2. 作業者:今週入場した新規入場者(暑熱非順化者)
  3. 基準値:23℃(暑熱順化者なら26℃)
  4. 実測WBGT値26℃、通常の作業服(補正0℃)の場合:基準値を3℃程度超過 → 暑熱順化者の目安でも1時間当たり45分以上の休憩。非順化者はさらに長い休憩や作業の変更・中止を検討する
  5. WBGT値28℃以上の場所で1時間以上続く見込みなら、安衛則第612条の2の報告体制・手順の周知の対象
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具体的な熱中症対策

作業環境管理

対策具体的な方法(ガイドライン 第3の2)
WBGT値の把握JIS適合のWBGT指数計を作業場所に置いて随時測る
日射の遮へい直射日光や地面・壁面からの照り返しを遮る簡易な屋根などを設ける
通風・冷房・散水送風機・冷房設備、ミストシャワーなどの散水設備。風通しの悪い場所での散水は湿度の上昇と滑りに注意
休憩場所作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所または日陰などの涼しい休憩場所を確保。足を伸ばして横になれる広さとし、氷・冷たいおしぼり・シャワーなど身体を冷やせる物品を置く
飲料の備付け飲料水、スポーツドリンク、経口補水液、塩飴など。多量の発汗を伴う作業場では塩と飲料水の備付けが義務(安衛則 第617条)

作業管理

対策具体的な方法
作業時間の短縮WBGT基準値に応じて休憩時間を確保し、連続作業時間を短くする。基準値を大幅に超える場合は原則として作業を行わない
作業時間帯太陽の位置を考えて日陰で作業する、早朝から作業して早帰りにするなどで直射日光下の作業時間を短くする
休憩時間の設定休憩場所が遠い場合は移動時間を考えて休憩時間を設定する
暑熱順化7日以上かけて暑熱環境での身体的負荷と作業時間を次第に増やす。新規入職者に他の作業者と同じ暑熱作業を行わせない
作業負荷の軽減重量物は台車・リフターを使う、複数人で作業するなど1人当たりの負荷を下げる
巡視作業中は頻繁に巡視し、声をかけて体調と水分・塩分の摂取を確認する。長時間の単独作業を避ける

暑熱順化は、熱へのばく露が中断すると4日後には顕著に失われ始め、3〜4週間後には完全に失われるとされています。夏季休暇明けの作業者は、休暇中の様子を聞き取って順化期間を延長するなどの対応を検討します。

水分・塩分の補給

ガイドラインは、自覚症状の有無にかかわらず、作業前後と作業中に定期的に水分・塩分を摂ることを指導するよう求めています。目安として、0.1〜0.2%の食塩水や、ナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンクなどを20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度摂ることが望ましい(摂り過ぎに注意)とされています。尿の回数が少ない、色が濃いときは水分不足の可能性があります。高血圧や糖尿病などで塩分・糖分の制限がある人は、主治医や産業医に相談させます。

健康管理

対策具体的な方法
作業開始前の確認朝礼時に、朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒、体調不良がないか確認する
配慮が必要な人の把握入職後1週間未満の人、夏季休暇などで4日以上熱から離れていた人を把握し、巡視の頻度を増やす
健康診断結果に基づく対応糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患、感冒、下痢などは熱中症の発症に影響するおそれがある
服装透湿性・通気性の良い服装、通気性の良い帽子・ヘルメット。送風・送水で冷やす服は他の対策と組み合わせる
身体の状況の確認休憩場所に体温計・体重計などを備える

熱中症の症状と応急処置

症状の分類(ガイドライン 表2)

分類主な症状重症度
Ⅰ度めまい・生あくび・失神(立ちくらみ)、筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)、大量の発汗小
Ⅱ度頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、集中力や判断力の低下Ⅰ度とⅢ度の間
Ⅲ度・Ⅳ度意識障害・けいれん・手足の運動障害、高体温(体に触ると熱い)大

応急処置の手順

  1. 熱中症が疑われる人を、必ず一旦作業から離し、涼しい休憩場所に移す
  2. 身体を冷やす(作業着を脱がせて水をかける、濡れタオルを当てて扇風機で風を当てる、ミストファンを当てるなど)
  3. 自力で飲める場合は、経口補水液やアイススラリー(流動性の氷状飲料)などで水分・塩分を摂らせる
  4. 返事がおかしい、ぼーっとしているなど普段と様子が違うときは異常ありとして扱い、救急隊を要請する。判断に迷う場合は#7119などで専門機関に相談する
  5. 搬送までの間や経過観察中は一人にしない

本人が「大丈夫」と言っても、ためらわずにあらかじめ決めた担当者に連絡し、手順に従って対応します。

現場での管理体制

熱中症予防管理者の選任

ガイドラインは、衛生管理者(50人未満の事業場では安全衛生推進者または衛生推進者)を中心に熱中症防止対策を検討させ、職長など現場で作業を管理する人に対策を行わせる場合は、教育を受けた人など必要な知識を持つ人の中から熱中症予防管理者を選任するとしています。主な役割は次のとおりです。

  • 作業に応じたWBGT基準値と着衣補正の要否を決める
  • WBGT値の低減対策を検討し、実施状況を確認する
  • 各作業者の暑熱順化の状況を確認する
  • 朝礼時などに作業者の体調と暑熱順化の状況を確認する
  • 作業場所のWBGT値を把握・評価する
  • 巡視で水分・塩分の摂取状況を確認する
  • 退勤後に体調が悪化しうることを注意喚起する
  • 熱中症に関する教育の実施状況を確認する

発注者・元請との調整

ガイドラインは、仕事を注文する者に対して、夏季の屋外作業が熱中症のおそれのある作業になる可能性が高いことから、経費や工期について配慮することが望ましいとしています。工期の設定で猛暑日をどう見込むかは、梅雨時期の工事対策で触れている「工期に関する基準」も参考にしてください。

現場用:熱中症対策チェックリスト

時期チェック項目根拠
夏前(おおむね4月中)熱中症を生ずるおそれのある作業を洗い出したかガイドライン 第3の1(3)・7(1)
夏前報告体制(連絡先・バディ制・巡視)を決めて周知したか安衛則 第612条の2 第1項
夏前作業場ごとに離脱・冷却・搬送の手順と緊急連絡先を定めて周知したか安衛則 第612条の2 第2項
夏前JIS適合のWBGT指数計を用意し、点検したかガイドライン 第2の2
夏前作業ごとにWBGT基準値(順化者・非順化者)を決めたかガイドライン 表1-1
毎日作業場所のWBGT値を測り、基準値と比べたかガイドライン 第3の1
毎日朝礼で体調(朝食・睡眠・飲酒)と暑熱順化の状況を確認したかガイドライン 第3の4(3)
毎日飲料水・塩飴・経口補水液を備え付けたか安衛則 第617条
毎日冷房または日陰の休憩場所を確保したかガイドライン 第3の2(2)
入場時新規入場者・休み明けの人の暑熱順化計画(7日以上)を立てたかガイドライン 第3の3(2)
入場時新規入場者教育で熱中症の症状と報告方法を説明したかガイドライン 第3の5
毎日KY活動で熱中症リスクを取り上げたか現場の安全活動

よくある質問

Q. 熱中症対策の義務化で、何をしないと違反になりますか。 A. 熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときに、報告体制を整備して周知すること、作業場ごとに悪化防止の措置の内容と手順を定めて周知することの2点が、安衛則第612条の2で事業者に義務付けられています。

Q. WBGT値が何度なら作業を中止しますか。 A. 全国一律の中止値は定められていません。ガイドラインは、作業強度と暑熱順化の状況に応じたWBGT基準値(例:高代謝率の作業で順化者26℃・非順化者23℃)を示し、基準値を大幅に超える場合は原則として作業を行わないこととしています。休憩時間の目安では、基準値の超過が3℃程度を上回る場合は作業中止が望ましいとされています。

Q. 新規入場者はいつから通常どおり作業させてよいですか。 A. ガイドラインは、7日以上かけて暑熱環境での身体的負荷と作業時間を次第に増やす暑熱順化の方法を示しています。その間は暑熱非順化者の基準値で判断します。

Q. 水分補給はどのくらいの間隔で行いますか。 A. ガイドラインは、0.1〜0.2%の食塩水やナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンクなどを、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度摂ることが望ましいとしています。

Q. 熱中症予防基本対策要綱はまだ使えますか。 A. 令和8年3月18日付けで「職場における熱中症防止のためのガイドライン」が定められ、要綱は廃止されました。今後はガイドラインを参照してください。

まとめ

  • 令和7年6月1日から、熱中症を生ずるおそれのある作業(WBGT28度以上または気温31度以上で、継続1時間以上または1日4時間超の見込み)では、報告体制と悪化防止の手順の整備・周知が義務
  • WBGT基準値は作業強度と暑熱順化で変わる。高代謝率の作業は順化者26℃・非順化者23℃
  • 基準値を超えたら、超過の程度に応じて休憩を増やし、大幅に超える場合は原則作業しない
  • 暑熱順化は7日以上。水分・塩分は20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度が目安

熱中症は、適切な対策によって防ぐことができる災害です。安全衛生計画に熱中症対策を盛り込み、現場全体で取り組みましょう。

出典・参考

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