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工事現場・建設現場の台風対策|作業中止基準とチェックリスト

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工事現場・建設現場の台風対策|作業中止基準とチェックリスト

工事現場の台風対策は、「作業中止の基準を先に決めておく」「接近前に養生・固定・退避を終える」「通過後は点検してから再開する」の3段で進めます。 作業中止の法令上の基準は労働安全衛生規則(安衛則)とクレーン等安全規則(クレーン則)にあり、強風・大雨・大雪等の悪天候で危険が予想されるときは、高さ2m以上の作業やクレーン作業などを中止しなければなりません。厚生労働省の解釈例規では、強風=10分間の平均風速が毎秒10m以上、大雨=1回の降雨量が50mm以上、大雪=1回の降雪量が25cm以上とされ、気象注意報・警報が出て悪天候が予想される場合も含みます。

国土交通省の「土木工事安全施工技術指針」も、気象庁などが発表する防災気象情報等を踏まえて作業の中止を判断するよう求めています。本記事では、これらの基準を一覧にしたうえで、台風接近前の養生、連絡体制、通過後の点検と復旧までを、現場でそのまま使えるチェックリストにまとめます。

工事中止の判断基準

法令で作業中止が義務づけられている作業

台風時の作業中止の根拠は、主に次の条文です。いずれも「数値を超えたら自動的に中止」ではなく、悪天候のため作業の実施について危険が予想されるときは中止するという書き方になっています。

対象となる作業中止の条件根拠
高さ2m以上の箇所での作業強風・大雨・大雪等の悪天候で危険が予想されるとき安衛則 第522条
つり足場・張出し足場・高さ2m以上の足場の組立て・解体・変更同上安衛則 第564条
型枠支保工の組立て・解体同上安衛則 第245条
作業構台の組立て・解体・変更同上安衛則 第575条の7
鋼橋・コンクリート橋の架設等(高さ5m以上など)同上安衛則 第517条の7、第517条の21
コンクリート造の工作物(高さ5m以上)の解体同上安衛則 第517条の15
解体用機械を用いる作業同上安衛則 第171条の6
クレーンに係る作業強風で危険が予想されるときクレーン則 第31条の2
移動式クレーンに係る作業強風で危険が予想されるときクレーン則 第74条の3
クレーンの組立て・解体、移動式クレーンのジブの組立て・解体悪天候で危険が予想されるときクレーン則 第33条、第75条の2

強風・大雨・大雪の定義(悪天候の解釈例規)

条文の「強風」「大雨」「大雪」には、厚生労働省の解釈例規(昭和46年4月15日付け基発第309号)で次の目安が示されています。

用語定義
強風10分間の平均風速が毎秒10m以上の風
大雨1回の降雨量が50mm以上の降雨
大雪1回の降雪量が25cm以上の降雪
「悪天候のため」の範囲実際に悪天候となった場合のほか、強風・大雨・大雪等の気象注意報・気象警報が発せられ、悪天候となることが予想される場合を含む

ここでいう大雨は「1時間あたり」ではなく「1回の降雨量」です。台風の接近で注意報・警報が出た段階で、条文上の「悪天候のため」に当たりうる点に注意してください。

暴風(瞬間風速30m/s超)に備える措置

クレーン則には、瞬間風速を基準にした規定もあります。

場面求められる措置根拠
瞬間風速が毎秒30mを超える風が吹くおそれがあるとき屋外の走行クレーンに逸走防止装置を作用させる等クレーン則 第31条
強風で作業を中止し、ジブクレーンのジブが損壊するおそれがあるときジブの位置を固定する等クレーン則 第31条の3
強風で作業を中止し、移動式クレーンが転倒するおそれがあるときジブの位置を固定する等の転倒防止クレーン則 第74条の4
瞬間風速が毎秒30mを超える風が吹いた後に屋外のクレーンで作業するときあらかじめ各部分の異常の有無を点検クレーン則 第37条

国土交通省の作業中止基準はあるか

「国土交通省 作業中止基準」と検索されることがありますが、国交省の土木工事共通仕様書(案)に風速や雨量の数値で作業中止を定めた条文はありません。共通仕様書は次のように、法令と安全施工技術指針に沿った対応を受注者に求めています。

規定内容
共通仕様書 1-1-1-31 工事中の安全確保最新の「土木工事安全施工技術指針」等を参考に災害の防止を図る。豪雨、出水、土石流その他の天災に対しては、天気予報などに注意を払い、防災体制を確立しておく
共通仕様書 1-1-1-46 臨機の措置災害防止等のため必要と認めるときは臨機の措置をとり、その内容を直ちに監督職員に通知する。監督職員は暴風・豪雨・洪水等に伴い臨機の措置を請求できる
共通仕様書 1-1-1-17 工事の一時中止暴風、豪雨、洪水、高潮等の事象による工事の中断は、臨機の措置により適切に対応する
土木工事安全施工技術指針 第2章第7節防災気象情報等(気象庁、河川・防災部局等が発表する警報等、市町村が発令する避難情報)を踏まえて作業の中止を判断する

つまり、数値の基準は安衛則・クレーン則とその解釈例規、判断の手順は安全施工技術指針という役割分担です。現場の条件(河川近接、山間部、沿岸部、高所作業の多さなど)によっては、これより厳しい自社基準を施工計画書に定めておきます。

判断のタイミング

安全施工技術指針は、防災気象情報等であらかじめ異常気象が予想される場合は、作業中止を含めて作業予定を検討しておくよう求めています。台風の場合は次の段階で判断すると、養生の時間を確保できます。

段階確認内容判断・実施すること
台風の進路予想が出た段階気象庁の台風情報、現場周辺の予報事前対策の開始、作業予定の見直し
接近の前日まで注意報・警報の見込み、雨量・風の予報作業中止の判断、養生・固定・退避の完了確認、関係者への連絡
当日最新の警報、避難情報、河川水位中止の最終確認、警戒・巡視(2名以上の班)
通過後警報の解除、現場の被害点検の実施、再開の判断

事前対策(1) 現場の養生

台風の接近が予想されたら、できるだけ早い段階で現場の養生を開始します。

仮設物の養生

対象養生方法注意点
足場メッシュシートを巻き上げる等の措置、壁つなぎ・筋かいの確認安全施工技術指針は、シートは強風時(特に台風時)の足場への影響に留意し巻き上げる等の措置を講じるとしている
仮囲い・立入防止施設相互に連結・固定する同指針は強風等による飛散防止に努めるとしている
仮設事務所アンカー・固定状態の確認、窓の養生プレハブの固定状態を確認
仮設トイレロープで固定、転倒防止措置軽量のため風で飛ばされやすい
看板・標識撤去または固定飛散すると周辺に被害を与える
資材置場シートで覆いロープで固定、軽量資材は屋内に収納流出のおそれのある物件は安全な場所へ移動

土工事関連の養生

対象養生方法
掘削箇所シートで覆い、排水ポンプを設置する
法面ブルーシートで覆い、土のうで固定する
盛土天端をシートで覆い、仮排水路を設ける
仮設道路排水溝を清掃し、路面の排水を確保する

安全施工技術指針は大雨に備えて、土砂崩れ・がけ崩れが予想される箇所、物や土砂の流出箇所、降雨で満水し沈没・転倒するおそれのあるもの、浸水のおそれのある箇所を点検し、必要に応じて立入禁止とするよう求めています。

建設機械の対策

対策内容
安全な場所に移動冠水・流出、地盤のゆるみ、転倒のおそれがある場所から早めに退避させる
ブーム・アームを下げるクレーンのブーム、バックホウのアームを下げ、ジブの位置を固定する
転倒・逸走の防止クレーン・杭打機など風圧を大きく受ける機械は、休止場所での転倒・逸走防止に十分注意する
電線からの距離強風で高圧電線が大きく振れても触れないよう、十分な距離をとって退避させる
ブレーキ駐車ブレーキと歯止めを確認する
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事前対策(2) 連絡体制の確認

連絡網の整備

連絡先連絡内容タイミング
発注者(監督職員)作業中止の判断、臨機の措置の内容、被害状況中止判断時、措置をとったとき、台風通過後
下請業者中止連絡、翌日以降の予定中止判断時
作業員出勤の要否、安全確認前日までに
資材業者搬入の延期連絡前日までに
近隣住民飛散物対策の実施状況養生完了時
道路管理者・警察・消防道路規制や被害の情報必要に応じて

共通仕様書 1-1-1-46 は、臨機の措置をとった場合、その内容を直ちに監督職員に通知するよう定めています。

緊急連絡先リスト

安全施工技術指針は、通報責任者を指定し、緊急連絡表(関係連絡先、担当者、電話番号)を作成して事務所・詰所等の見やすい場所に標示するよう求めています。台風前に次の連絡先がそろっているか確認しておきます。

(1) 現場代理人・通報責任者の携帯電話番号

(2) 発注者(監督職員)の緊急連絡先

(3) 下請業者の連絡先一覧

(4) 最寄りの消防署・警察署の連絡先

(5) 救急病院の連絡先

事前対策(3) 河川近接工事の特別対策

河川近くの工事では、増水による被害リスクが特に高いため、追加の対策が必要です。安全施工技術指針(第17章 河川及び海岸工事)は、出水・暴風雨等の対策を立て、水位の観測や情報収集を日頃から行うこと、出水・暴風雨の際には避難または公衆災害防止の措置を講じること、避難場所・方法・設備をあらかじめ検討しておくことを求めています。

対策項目内容
水位監視国土交通省の「川の防災情報」等で上流の雨量・水位を確認する
避難開始の基準現場独自の避難開始水位を決め、全員に周知する
退避経路の確認増水時の退避ルートと避難場所を全員に周知する
仮締切の確認仮締切の設計限界(越水する水位)を現場で認識できるようにし、非常時の避難体制を定めておく
資機材の退避浸水のおそれがある範囲の外へ移動する
救命具救命胴衣・救命ブイ・ロープ等を備える

河川工事の施工計画では出水期の考え方を、水害対策の記事では増水時の対応を解説しています。

工事現場の台風対策チェックリスト(印刷用)

土木工事 業務改善Naviが、上記の法令と安全施工技術指針の規定を「いつ・何を確認するか」の順に並べ直したチェックリストです。印刷して現場で使えるよう、1行1項目にしています。

時期チェック項目根拠・参考
平常時□ 施工計画書に悪天候時の作業中止基準と判断者を定めている安衛則 第522条等、安全施工技術指針
平常時□ 緊急連絡表を作成し、事務所・詰所に標示している安全施工技術指針 第1章第4節
平常時□ 避難場所・避難経路・救命具を準備している(河川近接工事)安全施工技術指針 第17章
接近前□ 台風情報・注意報・警報を確認し、作業予定を見直した安全施工技術指針 第2章第7節
接近前□ 足場のシートを巻き上げる等の措置をした安全施工技術指針 第2章第6節
接近前□ 仮囲い・看板・仮設トイレ・資材を固定または撤去した安全施工技術指針 第2章第2節
接近前□ 掘削箇所・法面・盛土をシートと土のうで養生し、排水を確保した安全施工技術指針 第2章第7節
接近前□ クレーン等のジブ・ブームを下げて固定し、機械を安全な場所へ退避させたクレーン則 第31条の3、第74条の4
接近前□ 屋外の走行クレーンに逸走防止措置をした(瞬間風速30m/s超のおそれ)クレーン則 第31条
接近前□ 下請・作業員・資材業者・監督職員へ中止を連絡した共通仕様書 1-1-1-46
当日□ 高さ2m以上の作業、足場・型枠支保工の組立て等、クレーン作業を中止した安衛則 第522条・第564条・第245条、クレーン則 第31条の2・第74条の3
当日□ 警戒・巡視は2名以上の班で行っている安全施工技術指針 第2章第7節
通過後□ 地盤のゆるみ・崩壊・陥没がないか点検した安全施工技術指針 第2章第7節
通過後□ 足場・作業構台を作業開始前に点検した安衛則 第567条第2項、第575条の8第2項
通過後□ 明り掘削の地山を点検した(大雨の後)安衛則 第358条
通過後□ 土止め支保工を点検した(大雨等で地山が急激に軟弱化するおそれがあった後)安衛則 第373条
通過後□ 屋外のクレーンを作業前に点検した(瞬間風速30m/s超の風の後)クレーン則 第37条
通過後□ 被害を写真で記録し、監督職員に報告した共通仕様書 1-1-1-46

台風通過後の対応

復旧の手順

(1) 安全確認を最優先とし、防災気象情報等を確認してから現場を巡回する

(2) 地盤のゆるみ、崩壊、陥没、法面の崩れ、仮設物の損傷、浸水の有無を確認する

(3) 足場・作業構台・土止め支保工・クレーンなど、法令で点検が定められているものを作業開始前に点検し、異常があれば補修する

(4) 被害がある場合は写真で記録し、監督職員に報告する

(5) 排水を行い、地盤の安定を確認してから本工事を再開する

被害報告書に記載する項目

項目内容
台風の概要名称、現場付近の気象状況
被害の内容損傷箇所、浸水範囲、崩壊の有無
写真記録被害状況の写真(複数アングル)
とった措置臨機の措置の内容と実施日時
復旧の見込み必要な作業と期間の見通し
工程への影響遅延日数と回復計画

天災等による損害や工期への影響の扱いは、工事請負契約書と共通仕様書(1-1-1-43 不可抗力による損害、1-1-1-19 工期変更)に沿って監督職員と協議します。

工程への影響を最小限にするために

安全施工技術指針は、工程を作成する際に、天候その他やむを得ない理由により工事の実施が困難と見込まれる日数等を十分考慮するよう求めています。台風の多い時期にかかる工事では、作業中止日を見込んだ工程を組み、河川内の作業は出水期を避ける計画にしておきます。

安全衛生計画にも台風対策を盛り込み、毎年の台風シーズン前に対策の見直しを行うようにしましょう。

よくある質問

Q. 台風で工事を中止する風速の基準は何m/sですか。 A. 安衛則・クレーン則の「強風」は、解釈例規で10分間の平均風速が毎秒10m以上の風とされています。強風で危険が予想されるときは、高さ2m以上の作業やクレーン・移動式クレーンの作業を中止しなければなりません。また、瞬間風速が毎秒30mを超える風が吹くおそれがあるときは、屋外の走行クレーンの逸走防止措置が必要です。

Q. 大雨の基準「50mm以上」は時間雨量ですか。 A. 解釈例規は「1回の降雨量が50mm以上の降雨」としており、1時間あたりの雨量ではありません。また、大雨の注意報・警報が出て悪天候が予想される場合も「悪天候のため」に含まれます。

Q. 国土交通省に作業中止の数値基準はありますか。 A. 土木工事共通仕様書(案)には、風速・雨量の数値による作業中止の条文はありません。共通仕様書は土木工事安全施工技術指針を参考に安全を確保するよう求め、同指針は防災気象情報等を踏まえて作業中止を判断するとしています。数値の目安は安衛則・クレーン則の解釈例規を使います。

Q. 工事現場の台風対策をPDFで配りたいのですが。 A. 本記事の「工事現場の台風対策チェックリスト」は1行1項目の表にしてあるので、ブラウザの印刷機能でPDFに保存して配布できます。自社の中止基準や連絡先を書き足して使ってください。

Q. 台風通過後、すぐに作業を再開してよいですか。 A. 足場・作業構台は悪天候の後に作業開始前の点検が、明り掘削の地山は大雨の後の点検が、屋外のクレーンは瞬間風速30m/s超の風の後の点検が義務づけられています。点検と地盤の安定の確認を終えてから再開します。

まとめ

  • 作業中止の基準:強風・大雨・大雪等の悪天候で危険が予想されるときは、高さ2m以上の作業、足場・型枠支保工の組立て等、クレーン作業を中止する(安衛則・クレーン則)
  • 悪天候の定義:強風は10分間平均風速10m/s以上、大雨は1回の降雨量50mm以上、大雪は1回の降雪量25cm以上。注意報・警報で悪天候が予想される場合も含む
  • 国交省の考え方:共通仕様書は安全施工技術指針を参考に防災体制を確立するよう求め、指針は防災気象情報等を踏まえて中止を判断するとしている
  • 事前対策と復旧:接近前に養生・固定・退避と連絡を終え、通過後は法令で定められた点検をしてから再開する

出典・参考

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