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河川工事の出水時の安全管理|水位監視・退避基準と出水期

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河川工事の出水時の安全管理|水位監視・退避基準と出水期

河川工事の出水時の安全管理は、「上流の雨量・水位とダムの放流を常に把握する」「現場独自の警戒水位・退避水位を決めて段階的に動く」「出水後は点検してから再開する」の3つが柱です。 国土交通省の「土木工事安全施工技術指針」(第17章 河川及び海岸工事)は、出水・暴風雨等の対策を立て、水位の観測やインターネット等による情報収集を日頃から行うこと、出水の際には避難又は公衆災害防止の措置を講じること、避難場所・方法・設備をあらかじめ検討しておくことを求めています。出水期(梅雨・台風・融雪で川が増水しやすい時期)は、原則として河道内の工事を行いません。

河川工事の記事は役割を分けています。出水期の期間・施工制限・河川法の許可は河川工事の施工計画、仮締切の高さや工法は仮締切工の工法と設置基準、台風時の作業中止の数値基準は工事現場の台風対策で解説しています。本記事は、施工中に川が増水したときの現場の監視・退避・点検に絞って整理します。

河川工事の水害リスク

土木工事安全施工技術指針は、河川工事は陸上の一般工事と異なり特有の制約があるとし、事前調査の項目の最初に「上流域の降雨量と水位,流量の状況及びダムの状況」を挙げています。現場で問題になるのは次のようなリスクです。

リスク内容指針・法令での扱い
急な水位上昇現場は晴れていても、上流の降雨で水位が上がる水位の観測と情報収集を日頃から行う(指針 第17章)
鉄砲水急な出水で退避の時間が短い鉄砲水のおそれがある河川では、特に出水に対しての避難対策を講じる(同)
ダムの放流上流のダム操作で流量が急に変わるダムの放流等に対する対策を講じる(同)。ダム設置者には河川法第48条の通知・周知義務がある
仮締切の越水・流失設計で想定した水位を超えると締切内が水没する仮締切の設計限界を現場で認識できる構造とし、周知する(同)
水中への転落・溺水増水時・水辺作業で転落する救命胴衣・救命ブイ・ロープ等を備える(同)
出水後の地盤の緩み法面の崩壊、重機の転倒大雨の後の地山の点検(安衛則 第358条)

出水期と河川工事

出水期の期間は全国一律ではなく、河川を管理する河川管理者(国の河川事務所や都道府県)が河川ごとに定めます。仮締切堤設置基準(案)は、出水期(融雪出水等のある地方ではその期間を含む)には河道内の工事を行わないものとし、施工期間等からやむを得ない場合に限り、治水上の安全を十分確保して実施するとしています。

国管理河川では、作業員や資機材の退避など適切な防災措置を講じることを前提に、出水期でも施工できる工種が広げられています。出水期に施工する場合ほど、本記事の監視と退避の体制が前提になります。 出水期の具体的な期間の例と、出水期に施工できる工種の一覧は河川工事の施工計画にまとめています。

出水期に入る前の準備

準備項目内容
仮締切の撤去・確認非出水期に撤去まで終える工程か確認する。残す場合は設置基準と河川管理者との協議で決めた構造であることを確認する
河道内の資機材出水で流されない場所へ移すか、退避の手順と置き場所を決める
重機の退避場所浸水しない退避場所と、退避にかかる時間を確認する
排水ポンプ作動確認と予備の準備
水防資材・警報装置非常時に備えて準備する(指針 第17章)
救命具救命胴衣・救命ブイ・ロープを作業場所の近くに備える

水位・雨量の監視

監視に使う情報

情報提供元分かること
川の防災情報国土交通省水位観測所の水位、雨量、レーダ雨量(XRAIN等)、河川カメラ、洪水予報、ダムの放流量など
キキクル(洪水警報の危険度分布)気象庁上流で降った雨が川に集まり流れ下るまでの時間差を考えた「流域雨量指数」による洪水危険度
気象警報・注意報気象庁大雨・洪水の注意報・警報など
指定河川洪水予報気象庁と河川管理者洪水予報河川の水位の見通し(警戒レベル2〜5)
ダムの放流の通知・警報ダム設置者放流の日時、放流量又は下流の水位上昇の見込み
発注者(監督職員)・河川事務所河川管理者工事箇所に関係する水位観測所、連絡体制

基準水位の名称を知っておく

河川の水位観測所には、危険度に応じた基準水位が設定されています。気象庁は水位の危険度を次のレベルで示しています。

水位危険度レベル水位の名称
レベル1水防団待機水位
レベル2氾濫注意水位
レベル3避難判断水位
レベル4氾濫危険水位
レベル5氾濫発生水位

これらは主に住民の避難や水防活動のための水位です。河道内で作業する現場は、堤防から水があふれるよりずっと前に危険になるため、これとは別に現場独自の警戒水位・退避水位を決める必要があります。

ダムの放流情報

河川法第48条は、ダムの操作で流水の状況に著しい変化が生じ、危害の防止に必要なときは、ダムを設置する者があらかじめ関係都道府県知事・関係市町村長・関係警察署長に通知し、一般に周知する措置をとるよう定めています。周知は、立札による掲示、インターネット等による公表、サイレン・警鐘・拡声機等による警告で行われます(河川法施行令第31条)。

法令上の通知先は工事現場ではありません。上流にダムがある工事では、発注者・ダム管理者とあらかじめ放流情報の入手方法と連絡ルートを決め、放流警報のサイレンが鳴ったら河道から出ることを全員に教えておきます。

現場独自の退避基準の決め方

退避の水位や雨量は、川ごと・現場ごとに違うため、全国共通の数値はありません。次の手順で施工計画書に定め、発注者と共有します。

(1) 見る観測所を決める:工事箇所の上流と直近の水位観測所・雨量観測所を選ぶ

(2) 危険になる水位を決める:仮締切の天端(設計限界)、作業足場や河床の作業面、退避経路が水没する高さを、観測所の水位に置き換える

(3) 時間を見込む:作業員・重機・資材の退避にかかる時間を実測し、その時間内に水位がどこまで上がりうるかを過去の出水記録から見込んで、手前に警戒水位を置く

(4) 段階ごとの行動を決める:誰が判断し、誰に何で知らせるかを決める

段階きっかけの例行動
注意大雨・洪水の注意報、上流の雨、キキクルの危険度の上昇監視の間隔を短くする、退避の準備、河道内の資材の片付け
警戒現場で決めた警戒水位に到達、洪水警報、ダム放流の通知河道内の作業を中止、重機・資材の退避を始める
退避現場で決めた退避水位に到達、放流警報のサイレン、急な濁り・流木・水位の上昇全員退避、人数確認、監督職員へ連絡
再開水位が下がり、警報が解除された出水後の点検をしてから再開を判断

台風の接近など、あらかじめ悪天候が予想される場合の作業中止の判断は工事現場の台風対策の基準(安衛則第522条など)もあわせて確認してください。

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退避計画に書くこと

国の土木工事共通仕様書(1-1-1-31 工事中の安全確保)は、豪雨・出水などの天災に対して天気予報などに注意を払い、防災体制を確立しておくよう受注者に求めています。退避計画には次を書きます。

  • 監視する観測所と、現場の警戒水位・退避水位、判断する人
  • 退避の合図(サイレン、無線、ホイッスル等)
  • 退避経路(水位が上がっても水没しない経路。複数)と避難場所
  • 人数確認の方法
  • 重機・資材の退避の手順と置き場所
  • 連絡体制(監督職員、河川事務所、ダム管理者、警察・消防)
  • 夜間・休日の監視と連絡の方法

指針は、水中作業では単独作業をさせず監視員を置くこと、夜間作業では照明に注意し必要に応じて監視員を増やすことも求めています。舟・いかだ等の上での作業で水中に転落しおぼれるおそれがあるときは、浮袋等の救命具を備え、救命のための舟を配置する等の措置が必要です(安衛則第532条)。

仮締切の出水対策

指針は、仮締切工を設置する場合はその設計限界が現場で認識できる構造とし、設計限界を工事関係者に周知するとともに、非常時の避難体制等を定めておくよう求めています。

  • 仮締切の天端と、越水が始まる水位を観測所の水位に置き換えて掲示する
  • 毎日の始業前に、漏水・変形・沈下・洗掘を点検する
  • 締切内の排水ポンプと予備ポンプを確認する
  • 越水が予想されるときは、締切内から先に人を出す

仮締切の設計対象水位・高さ・天端幅は、仮締切堤設置基準(案)と河川管理者との協議で決まります。詳しくは仮締切工の工法と設置基準を参照してください。

出水後の点検と作業再開

出水が収まっても、すぐに河道に入らず、点検してから再開します。

確認項目内容根拠・参考
地山・法面浮石・き裂、含水・湧水の変化(大雨の後)安衛則 第358条
土止め支保工部材の損傷・変形・変位・脱落、切梁の緊圧(大雨等で地山が急に軟弱化するおそれのある事態の後)安衛則 第373条
足場床材、緊結部、緊結金具など(大雨等の悪天候の後、作業開始前)安衛則 第567条第2項
仮締切漏水・変形・沈下、前面河床の洗掘指針 第17章、施工計画
河床・仮設道路洗掘・堆積、路面の損傷、仮橋の橋脚まわり施工計画
資機材流出・損傷の有無、流木・漂着物施工計画

出水後は地盤が緩んでいることがあるため、重機を入れる前に走行路と据付け位置の地盤を確認します。土砂崩壊を防ぐ点検の詳細は土砂崩壊事故を防ぐ掘削時の安全対策で解説しています。

現場用:出水対策チェックリスト

土木工事 業務改善Naviが、指針と法令の規定を「いつ・何を確認するか」の順に並べ直したチェックリストです。

時期チェック項目根拠・参考
着工前□ 上流の降雨量・水位・流量とダムの状況を調べた指針 第17章 第1節
着工前□ その河川の出水期と、出水期の施工の可否を設計図書で確認した仮締切堤設置基準(案)、設計図書
着工前□ 監視する観測所と、現場の警戒水位・退避水位・判断者を施工計画書に書いた指針 第17章、共通仕様書 1-1-1-31
着工前□ 仮締切の設計限界を現場で分かるようにし、全員に周知した指針 第17章
着工前□ ダムの放流情報の入手方法と、放流警報の意味を周知した河川法 第48条、指針 第17章
着工前□ 避難場所・退避経路・救命具・水防資材・警報装置を準備した指針 第17章
毎日□ 天気予報・注意報・警報、上流の雨量・水位を確認した指針 第17章、共通仕様書 1-1-1-31
毎日□ 仮締切・排水ポンプを始業前に点検した施工計画
毎日□ 水中作業を単独でさせていない指針 第17章
出水時□ 段階ごとの行動(作業中止・重機退避・全員退避)をとり、人数を確認した施工計画
出水時□ 監督職員へ連絡した共通仕様書 1-1-1-46 臨機の措置
出水後□ 地山・土止め支保工・足場を点検してから再開した安衛則 第358条・第373条・第567条

よくある質問

Q. 出水時の作業中止は何を基準に決めますか。 A. 河道内の作業は、現場ごとに決めた警戒水位・退避水位で判断します。全国共通の数値はないため、仮締切の天端や作業面が水没する高さと退避にかかる時間から決め、施工計画書に書きます。高所作業やクレーン作業の悪天候時の中止は、安衛則第522条やクレーン則の規定によります。

Q. 出水期に河川工事はできますか。 A. 原則として河道内の工事は行いません。国管理河川では、退避などの防災措置を講じることを前提に、出水期でも施工できる工種が広げられています。施工できるかは工事ごとに発注者の判断によります。

Q. 水位はどこで確認できますか。 A. 国土交通省の「川の防災情報」で、水位観測所の水位、雨量、レーダ雨量、河川カメラ、ダムの放流量などを確認できます。気象庁のキキクル(洪水警報の危険度分布)では、上流の雨による洪水の危険度を地図で確認できます。

Q. ダムの放流は工事現場に直接連絡がありますか。 A. 河川法第48条の通知先は、関係都道府県知事・市町村長・警察署長で、一般へはサイレンや掲示などで周知されます。現場へ直接届く仕組みではないため、発注者・ダム管理者と入手方法を決めておきます。

まとめ

  • 出水時の安全管理は「情報の常時把握」「現場独自の警戒水位・退避水位」「出水後の点検」が柱
  • 住民避難のための基準水位とは別に、河道内の作業のための退避水位を決める
  • 仮締切は設計限界を現場で分かるようにし、越水前に人を出す
  • 出水後は地山・土止め支保工・足場を点検してから再開する

日常の危険の共有にはKY活動、現場全体の計画には安全衛生計画も活用してください。

出典・参考

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