推進工法の種類と違い|泥水式・泥土圧式・泥濃式と施工手順
推進工法は、使う推進管の呼び径800〜3,000mmの「大中口径管推進工法」と、呼び径150〜700mmの「小口径管推進工法」に大きく分かれます。大中口径は、切羽(きりは=掘削している先端の面)を開いたまま人力で掘る開放型の「刃口式」と、掘進機の隔壁で切羽を仕切る密閉型の「泥水式」「土圧式(泥土圧式)」「泥濃式」に分類されます。 密閉型の3方式の違いは、切羽を何の圧力で安定させ、掘った土をどう運び出すかです。
本記事では、日本推進技術協会の分類を掲載した農林水産省関東農政局の公開資料などをもとに、推進工法の種類と各方式の違い、工法選定の手順、発進から到達までの施工手順を整理します。
推進工法とは
推進工法は、発進立坑と到達立坑を設け、発進立坑に据えたジャッキで、先端に掘進機を付けた管を地中へ押し込みながら管路をつくる非開削工法(道路を掘り返さずに管を埋設する工法)です。下水道管、上水道管、農業用水路、電線管などの敷設に使われ、交通や周辺環境への影響を抑えられます。
日本建設機械工業会は、推進工法を「人が管内に入って作業のできる大中口径管推進工法」「管内作業ができない小口径管推進工法」「取付管推進工法」「改築推進工法」の4種に大別しています。本記事では、このうち新設管路で使う大中口径と小口径を中心に扱います。
推進工法の種類(分類の早見表)
関東農政局の公開資料に掲載された、日本推進技術協会の分類(特殊な工法を除く)を表にすると次のとおりです。
| 区分 | 呼び径 | 型式・方式 | 掘削・排土の方式 |
|---|---|---|---|
| 大中口径管推進工法 | 800〜3,000mm | 開放型 | 刃口式 |
| 大中口径管推進工法 | 800〜3,000mm | 密閉型 | 泥水式、土圧式(泥土圧式を含む)、泥濃式 |
| 小口径管推進工法 | 150〜700mm | 高耐荷力方式(高耐荷力管) | 圧入方式、オーガ方式、泥水方式、泥土圧方式 |
| 小口径管推進工法 | 150〜700mm | 低耐荷力方式(低耐荷力管) | 圧入方式、オーガ方式、泥水方式、泥土圧方式 |
| 小口径管推進工法 | 150〜700mm | 鋼製さや管方式(鋼管) | 圧入方式、オーガ方式、ボーリング方式(一重・二重ケーシング式)、泥水方式 |
同資料の分類図では、泥濃式推進工法は呼び径800〜2,200mm、そのほかの大中口径の各工法は呼び径800〜3,000mmとされています。個々の工法で対応できる呼び径・延長・土質は工法ごとに異なるため、採用候補の技術資料で確認します。
旧版の本記事では小口径管推進工法の適用管径を「200〜700mm」と書いていましたが、上の分類では呼び径150〜700mmです。
大中口径・密閉型の3方式の違い(泥水式・泥土圧式・泥濃式)
密閉型推進工法は、切羽と作業空間を掘進機の隔壁で仕切り、カッターヘッドで掘削する工法です。関東農政局の資料は、密閉型は操向性(方向を制御しやすいこと)に富み、適用土質の範囲も広く、主として長距離推進に適しているとしています。3方式の違いは次のとおりです。
| 比較項目 | 泥水式 | 土圧式(泥土圧式) | 泥濃式 |
|---|---|---|---|
| 切羽を安定させるもの | 隔壁の掘削室にポンプで圧送した泥水の圧力 | カッタチャンバに充満させた掘削土砂、または添加材を混ぜた土砂(泥土)の圧力 | カッタチャンバに注入した高濃度泥水と掘削土砂を撹拌した、流動性のある泥土の圧力 |
| 掘った土の運び出し方 | 泥水の環流(送泥・排泥)で坑外に排出 | スクリュコンベヤで排土量を調整しながら排出 | 排土バルブの開閉で間欠的に排土し、吸引搬送が基本(吸引できないものはトロバケット) |
| 地上に要る主な設備 | 送排泥の設備、泥水から土砂を分ける処理設備 | 排出した土砂を搬出する設備 | 吸引搬送の設備 |
「泥土圧と泥水式の違い」を一言でいえば、泥水式は泥水の圧力で切羽を押さえて土砂を泥水ごと流して運び、泥土圧式は掘った土そのものを泥土状にして切羽を押さえ、スクリュコンベヤで排土量を調整する方式です。
旧版の本記事では「泥水式は砂質土、泥土圧式は粘性土に適する」「泥土圧式は中距離まで」と書いていましたが、公的資料で確かめられなかったため削除しました。関東農政局の資料は、工法別の適用土質を『下水道推進工法の指針と解説』(日本下水道協会)の表で確認して選定しています。各方式の適用土質・推進延長は、日本推進技術協会の積算要領や各工法協会の技術資料で確認してください。
刃口式推進工法(開放型)
刃口式推進工法は、先端に刃口を付けた管を押し込み、切羽を人力で掘削する開放型の工法です。関東農政局の資料は、地盤が自立し、地下水がない安定した土質を前提とする工法として、次の点を挙げて選定から外した例を示しています。
- 切羽が開放されているため、緩い地盤では切羽の安定確保が難しい
- 地下水がある場合は、地下水位低下工法や薬液注入工法で遮水する必要がある
- 長距離の施工は難しい
設備が簡素な一方で、地盤と地下水の条件が合わないと補助工法の費用がかさむため、事前の地質調査が重要です。
小口径管推進工法
小口径管推進工法は、人が管内に入れない呼び径700mm以下の管を、先導体(先導管)で掘り進めながら推進する工法です。使う推進管により高耐荷力方式・低耐荷力方式に大別され、鋼製さや管方式もあります。日本建設機械工業会は、掘削排土方式の代表例としてオーガ方式・泥水方式・泥土圧方式・圧入方式を挙げ、先導管の先端のビットを回し、らせん状のブレードで土を発進側へ送るオーガ方式が主流としています。
関東農政局の資料では、石英を含む硬い礫が混じる地盤で、当初計画の小口径管推進工法(呼び径600mm)が採用できず、大中口径管推進工法の最小口径である呼び径800mmに変えた検討例が示されています。小口径は掘削口径と排土管が小さいため、礫の硬さ・大きさによっては掘進できないことがあります。
推進工法の選定手順
関東農政局の資料は、『下水道推進工法の指針と解説』の工法選定フローに沿って工法を決めています。流れを整理すると次のとおりです。
- 工法選定条件を整理する:管種・呼び径、1スパンの推進延長、土質と地下水の条件、特殊条件
- 大別方式を選ぶ:大中口径か小口径か、開放型か密閉型か
- 1次選定(工法別の適用性判定):適用できる管種・呼び径・1スパン延長、適用土質の範囲(土質分類、N値、最大礫径と礫率、地下水位、透水係数)、特殊条件(玉石・岩盤、立坑の条件、曲線推進、長距離推進)を照合する
- 施工可能な工法を抽出する:該当がなければ補助工法を組み合わせて再検討する
- 2次選定(総合判定):概算工事費などの経済比較で決める
同資料は、密閉型推進工法は施工途中での工法変更や施工不能時の対応が難しいため、特に土質に対して適切な工法を選ぶことが重要としています。工法ごとの金額差は、土質・延長・立坑条件・補助工法の有無で大きく変わるため、この手順で候補を絞ったうえで概算工事費を比べます。
選定時のチェックリスト
| 確認項目 | 確認すること | 主な資料 |
|---|---|---|
| 管種・呼び径 | 大中口径(800〜3,000mm)か小口径(150〜700mm)か | 設計図書 |
| 1スパンの推進延長 | 立坑の配置から決まる延長が工法の適用範囲内か | 工法の技術資料 |
| 土質 | 土質分類、N値、最大礫径・礫率、玉石・岩盤の有無 | 地質調査(柱状図)、試掘 |
| 地下水 | 地下水位、透水係数、湧水の想定 | 地質調査 |
| 線形 | 直線か曲線か、曲線半径 | 設計図書 |
| 立坑 | 発進・到達立坑と発進基地を設けられる用地があるか | 用地・占用の条件 |
| 周辺条件 | 既設埋設物、交通、近接構造物 | 埋設物台帳・試掘 |
| 経済性 | 補助工法を含めた概算工事費 | 積算基準・見積 |
推進工法の施工手順(大中口径・密閉型の例)
| 手順 | 作業 | 主なポイント |
|---|---|---|
| 1 | 発進立坑・到達立坑の築造 | 鋼矢板やケーシングなどで立坑を構築し、発進側に推進設備を置く基地を設ける |
| 2 | 推進設備の据付け | 元押しジャッキ、支圧壁、発進坑口、方式に応じた送排泥・排土・吸引設備を設置する |
| 3 | 掘進機の据付け・発進 | 掘進機を所定の位置・方向に据え、坑口から地山へ発進する |
| 4 | 掘進・推進 | 切羽圧力を管理しながら掘削し、元押しジャッキで管を押し込む。1本押し終えるごとに次の管を継ぎ足す |
| 5 | 測量・方向修正 | 掘進機の位置と方向を測り、計画線からずれないよう修正する |
| 6 | 到達 | 掘進機が到達立坑に達したら回収する |
| 7 | 管内・立坑の仕上げ | 管と地山のすき間の処理(滑材の置換・裏込め注入など)、管内の清掃・検査を行い、立坑にマンホールなどを築造する |
推進中は、推進力、切羽の圧力、排土量(泥水式は送排泥の流量や泥水の性状)、掘進機の位置、地表面の沈下などを記録して管理します。管理の方法と基準値は、発注者の特記仕様書と採用工法の技術資料で確認してください。
旧版の本記事に載せていた「推進方向の管理基準±50mm」「滑材注入量は理論量の1.5〜3.0倍」「最小土被りは管径の1.5倍以上」は、出典で確かめられなかったため削除しました。
推進工法とシールド工法の違い
どちらも道路を掘り返さずに管路やトンネルをつくる工法ですが、成り立ちが違います。
| 項目 | 推進工法 | シールド工法 |
|---|---|---|
| 進め方 | 発進立坑から管を押し込んでいく | 掘進機(シールド機)の中でセグメントを組み立て、その反力で進む |
| できあがる構造 | 押し込んだ管そのものが本体 | 組み立てたセグメントがトンネル本体 |
| 立坑 | 発進・到達の立坑が必要 | 発進・到達の立坑が必要 |
| 主な用途 | 下水道、上水道、農業用水路、電線管など | 地下鉄、大規模な下水幹線、道路トンネルなど |
推進工法は管全体を押し込むため、延長が長くなるほど必要な推進力が大きくなります。長距離や大断面ではシールド工法が比較の対象になるため、口径・延長・土質・立坑条件で両者を比べます。
施工計画書への記載
推進工事の施工計画書には次の事項を記載します。基本的な構成は土木工事の施工計画書ガイドを参照してください。
- 工法の選定理由(上の選定手順と比較結果)
- 推進管の規格・数量
- 立坑の構造と築造方法
- 掘進機の仕様
- 推進計画(推進力の想定、1日の推進量、工程)
- 測量方法
- 滑材・裏込め注入計画
- 泥水管理計画(泥水式の場合)、排土・残土処理計画
- 地表面・近接構造物の監視計画
よくある質問
Q. 推進工法にはどんな種類がありますか。 A. 呼び径800〜3,000mmの大中口径管推進工法と、呼び径150〜700mmの小口径管推進工法に分かれます。大中口径は開放型の刃口式と、密閉型の泥水式・土圧式(泥土圧式)・泥濃式、小口径は高耐荷力方式・低耐荷力方式・鋼製さや管方式に分類されます。
Q. 泥土圧式と泥水式の違いは何ですか。 A. 泥水式は泥水の圧力で切羽を安定させ、掘った土砂を泥水の環流で坑外へ運びます。泥土圧式は掘削土砂(または添加材を混ぜた泥土)をカッタチャンバに満たしてその圧力で切羽を安定させ、スクリュコンベヤで排土量を調整しながら排出します。泥水式は泥水の処理設備が必要です。
Q. 泥濃式推進工法とは何ですか。 A. カッタチャンバに高濃度泥水を注入して掘削土砂と撹拌し、流動性をもたせた泥土の圧力で切羽を安定させる密閉型の工法です。掘削土砂は排土バルブの開閉で間欠的に排土し、吸引搬送するのが基本です。
Q. 推進工法の施工手順は。 A. 立坑の築造→推進設備の据付け→掘進機の発進→掘進・推進(管の継ぎ足しと測量)→到達・掘進機の回収→管と地山のすき間の処理と管内の検査、の順です。
まとめ
- 推進工法は、呼び径800〜3,000mmの大中口径と、呼び径150〜700mmの小口径に分かれる
- 大中口径は開放型の刃口式と、密閉型の泥水式・土圧式(泥土圧式)・泥濃式がある
- 密閉型の違いは、切羽を安定させる媒体(泥水・泥土・高濃度泥水)と排土の方法
- 工法は、管種・呼び径、1スパン延長、土質・地下水、特殊条件で絞り込み、経済比較で決める
- 管理基準の数値は、発注者の特記仕様書と採用工法の技術資料で確認する
上下水道の開削工法については管渠工事の施工管理、施工計画全般については上下水道工事の施工計画書も参照してください。
出典・参考
- 農林水産省 関東農政局 公開資料「1.1.4 推進工の施工方法の決定」「1.1.5 推進工区間の工法選定」(図-1.1.5.1 推進工法の工法選定フロー〔『下水道推進工法の指針と解説 -2010年版-』に加筆〕、図-1.1.5.2 推進工法の分類〔出典:日本推進技術協会「推進工事用機械器具等損料参考資料」〕、泥濃式・泥水式・土圧式推進工法の概要、刃口推進工法を除外した理由)
https://www.maff.go.jp/kanto/nouson/sekkei/kokuei/dogisyo/attach/pdf/sogosien_h30-33.pdf - 一般社団法人日本建設機械工業会「推進機械」(推進工法の4種の大別、小口径管推進の掘削排土方式)※業界団体の公表情報
https://www.cema.or.jp/general/industry/machines/micro-tunnelling-machines.html - 公益社団法人日本推進技術協会「推進工法用設計積算要領」各工法編(工法ごとの適用土質・推進延長の確認先)※民間団体の資料
https://www.jstt.jp/
いまの課題に近いものはどれですか?
選んだお悩みに最適なサービスのご案内ページへ移動します。
お使いの業務に合う機能と、無料体験の内容をご確認いただけます。




