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取水期・出水期とは|河川工事の施工計画と河川法の許可

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取水期・出水期とは|河川工事の施工計画と河川法の許可

取水期とは、川から農業用水などを取水する期間のことで、水田の農業用水では「かんがい期」にあたります。それ以外の期間が非取水期(非かんがい期)です。出水期とは、梅雨・台風・融雪などで川が増水しやすい時期のことで、国土交通省は出水期には原則として河川工事を行わないこととしています。

出水期の期間は全国一律ではなく、河川を管理する河川管理者(国の河川事務所や都道府県など)が河川ごとに定めています。例えば関東地方整備局 江戸川河川事務所の資料では6月1日〜10月31日、福岡県では6月1日〜9月30日が出水期とされています。本記事では、この2つの「期」を押さえたうえで、河川工事の施工計画で必要になる出水期の施工制限、河川法の許可、仮締切の計画を整理します。

取水期・出水期とは(用語の整理)

用語意味期間を決めるもの
取水期河川から農業用水などを取水する期間。水田の農業用水では「かんがい期」(水を川・湖などから引いて農地をうるおす期間)許可を受けた農業用水では、期別に最大取水量が定められている。かんがい期間は作付け体系などで変わる
非取水期取水期以外の期間。農業用水では「非かんがい期」にあたる同上
出水期川が増水しやすい時期。融雪の時期、梅雨の集中豪雨、台風の多い時期河川管理者が河川ごとに定める
非出水期川が増水しない期間(出水期以外の期間)。河川工事を実施する期間同上

取水期とは

国土交通省水資源部の資料では、農業用水の主な取水源である河川の流水を使うには河川管理者の許可(水利権の取得)が必要で、農業用水は「かんがい」を目的として期別に最大取水量が定められているとされています。水田を中心とした農業用水の使用は、大きくかんがい期と非かんがい期に分けられ、かんがい期はさらに代かき期と普通期に分けられます。

同じ資料は、かんがい期間は水稲の作付け体系の変化などにより変動し、地域によっては始期が早まっていることも示しています。取水期・非取水期の具体的な期間は、その川・その用水の水利使用の内容で決まるため、施工計画では設計図書・特記仕様書と、堰・樋門・用水路の管理者(土地改良区など)への確認で把握します。

取水期が施工計画に関係するのは、堰(頭首工)、取水樋門、用水路など、取水を止めたり水位を変えたりする工事です。取水期にこれらを止めると下流の農業用水に影響するため、施工時期を非取水期に合わせる、仮の取水・通水設備を設けるなど、施設管理者との調整が工程の前提になります。

出水期とは

国土技術政策総合研究所の用語解説では、出水期は「川が増水しやすい時期」で、融雪の時期、集中豪雨(梅雨)や台風の多い時期が出水期にあたり、非出水期は「川が増水しない期間(出水期以外の期間)」とされています。日本では一般に6月〜10月頃が出水期ですが、雪が多い地方では雪融けの多い3〜5月が出水期になるとも説明されています。

出水期の期間は河川ごとに違う

出水期の具体的な日付は、河川管理者が定めます。公表されている例は次のとおりです。

河川管理者出水期非出水期出典
関東地方整備局 江戸川河川事務所(江戸川上流出張所だより、2013年)6月1日〜10月31日11月1日〜翌年5月31日出張所の広報資料
福岡県6月1日〜9月30日10月1日〜5月31日県のウェブサイト

このように管理者によって期間が異なり、融雪出水のある地方では別の期間が加わることもあります。工事の出水期は、その河川の河川管理者が定めた期間を設計図書・特記仕様書で確認するのが原則です。

河川工事の主な工種

工種内容主な施工場所
築堤工事堤防の新設・嵩上げ・拡幅堤防敷
護岸工事河岸の侵食防止(ブロック積み・張り等)河岸・堤防法面
河道掘削河床の掘り下げ・拡幅河道内
水門・樋門工事取水・排水施設の新設・改修堤防横断部
床止め工事河床の洗掘防止河道内
堤防浸透対策ドレーン工・止水矢板の設置堤防内

出水期の施工制限(河川工事と出水期)

河川工事における最大の制約が出水期です。国土交通省は、梅雨期や台風期など洪水が起きやすい出水期には、原則として河川工事を行わないこととしています。仮締切堤設置基準(案)も、出水期(融雪出水等のある地方ではその期間を含む)には河道内の工事を行わないものとし、施工期間等からやむを得ない場合に限り、治水上の安全を十分確保して実施するとしています。

出水期でも施工できる工種(国管理河川)

一方で国土交通省は、施工時期の平準化のため、全国の国管理河川で出水期でも施工できる工種を広げています(平成30年5月25日 報道発表)。

開始年度工種前提
平成29年度から準備・後片付け、河道掘削・浚渫、天端舗装、高水敷(工事用)道路、土砂運搬、根固工(乱積み)作業員や資機材等の退避など適切な防災措置を講じ、安全性が確保できること
平成30年度から追加遮水対策(矢板)工、耐震対策(矢板)工、地盤改良工、矢板護岸、築堤盛土(嵩上げ)、川裏法尻補強護岸洪水が予測されたときに施工前の堤防形状に戻す等の措置ができるよう、施工範囲を限定して段階的に施工すること

実際に出水期に施工できるかは、工事ごとに発注者(河川管理者)の判断と設計図書の条件によります。

出水期における施工計画のポイント

(1) 非出水期に河道内作業を集中させる 河道内の掘削、仮締切の設置・撤去は、その河川の非出水期に完了させる工程を組みます。

(2) 段階施工の計画 工期が出水期をまたぐ場合は、出水期前に仮締切を撤去する、洪水が予測されたときに元の形状に戻せる範囲に施工を区切るなどの段階施工を検討します。

(3) 出水時の退避計画 施工中に急な増水が発生した場合の退避方法、機械の退避場所、連絡体制を明記します。国土交通省の土木工事安全施工技術指針は、仮締切を設置する場合、その設計限界が現場で認識できる構造とし、工事関係者に周知するとともに、非常時の避難体制等を定めておくよう求めています。

(4) 水位監視体制 同指針は、河川工事では出水・暴風雨等の対策を立て、水位の観測やインターネット等による情報収集を日頃から行うよう求めています。上流の雨量・水位を監視し、現場独自の警戒水位・避難水位を決めて、段階的な対応を計画書に記載します。

河川法に基づく許可・承認

河川管理者以外の者が河川区域内で工事などを行う場合は、河川法に基づく次の許可・承認が必要です。

条文内容対象の例
第20条河川管理者以外の者が施行する河川工事の承認河川管理者以外の者が行う河川工事・河川の維持
第24条土地の占用の許可河川区域内の土地を工事ヤード等として占用する
第25条土石等の採取の許可河川区域内の土地で土石(砂を含む)を採取する
第26条工作物の新築等の許可河川区域内の土地で工作物(仮締切、仮設橋など)を新築・改築・除却する
第27条土地の掘削等の許可河川区域内の土地で掘削・盛土・切土などの形状変更や竹木の栽植・伐採をする(政令で定める軽易な行為を除く)

河川管理者が発注する河川工事を受注した場合の手続の扱いは、設計図書と監督職員の指示で確認します。国土交通省の土木工事共通仕様書(1-1-1-40 官公庁等への手続等)は、受注者が行うべき関係官公庁への届出等を法令・条例・設計図書の定めにより実施すること、許可・承諾等を得たときはその書面を監督職員に提示すること、許可承諾条件を遵守し、条件が設計図書と異なる場合は監督職員と協議することを定めています。施工計画書には、手続の状況(申請日・許可日・許可条件)と、許可条件に対応した施工方法を記載します。

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仮締切工の計画

河道内で施工を行う場合、仮締切で施工箇所の水を遮断します。

仮締切工法の比較

工法特徴適用の考え方
土のう締切簡易で低コスト水深が浅い、流速が小さい場合
大型土のう締切施工が速い中規模の締切
鋼矢板締切止水性が高い水深が深い、湧水が多い場合
鋼矢板二重締切高い止水性と安定性堤防開削を伴い出水期にかかる場合は、仮締切堤設置基準(案)で原則とされる

仮締切の設計で考慮すべき事項

堤防にかわる仮締切は、仮締切堤設置基準(案)で設計対象水位と高さの決め方が定められています。

条件設計対象水位高さ
堤防開削を伴う・出水期計画高水位(高潮区間は計画高潮位)既設堤防高以上
堤防開削を伴う・非出水期工事施工期間の既往最高水位、または既往最大流量を仮締切設置後の河積で流下させる水位のいずれか高い方設計対象水位相当流量に余裕高(河川管理施設等構造令第20条の値)を加えた高さ以上
堤防開削を伴わない出水期・非出水期を問わず、工事施工期間の過去5か年の時刻最大水位を目安設計対象水位

このほか、次の事項を検討して施工計画書に残します。

  • 浸透流に対する安定性の検討
  • 水替え(排水ポンプ)の計画
  • 仮締切の設置・撤去時期と工程への影響
  • 越水した場合の退避と対応策
  • 仮締切設置後の流下能力の確保

工法の選び方と基準の詳細は仮締切工の工法と設置基準で解説しています。

施工時期を決めるための早見表

土木工事 業務改善Naviが、本記事の内容を「着工前に確認すること」の順に並べた早見表です。

確認事項確認先施工計画への反映
その河川の出水期・非出水期の期間設計図書・特記仕様書、河川管理者の公表資料河道内作業・仮締切の設置撤去を非出水期に収める
出水期に施工できる工種か発注者(河川管理者)、設計図書段階施工の範囲、洪水予測時に元の形状へ戻す手順
取水施設への影響(堰・樋門・用水路)施設管理者(土地改良区など)、設計図書非取水期の施工、仮の取水・通水設備
河川法の許可・承認の要否と条件監督職員、河川管理者手続の状況と許可条件を計画書に記載
仮締切の設計対象水位と高さ仮締切堤設置基準(案)、河川管理者との協議構造形式・高さ・天端幅と越水時の対応
水位・雨量の監視と退避基準河川管理者の水位情報、現場の観測警戒水位・避難水位と連絡体制

環境保全対策

河川工事では、水質汚濁や生態系への影響を最小限に抑える対策が求められます。

対策項目具体的な内容
濁水処理沈砂池の設置、濁水処理装置の導入
水生生物保護魚類等の移動経路確保、産卵期への配慮
騒音・振動低騒音型機械の使用、施工時間の配慮
油流出防止オイルフェンスの設置、重機の点検強化

濁水の放流基準や監視方法は、設計図書・許可条件・関係する条例で確認し、基準を超えた場合の対応とあわせて施工計画書に記載します。

安全管理のポイント

河川工事特有の安全リスクとして以下があります。安全衛生計画に盛り込みましょう。

  • 急な増水による水没・流出のリスク
  • 軟弱な河床での重機転倒のリスク
  • 深い掘削箇所での土砂崩壊のリスク
  • 水辺・水上作業での転落・溺水のリスク(救命胴衣・救命ブイ等の備え)

水位の監視体制と緊急時の退避手順は、水害対策の記事も参考にしてください。

よくある質問

Q. 取水期とはいつですか。 A. 川から農業用水などを取水する期間で、水田の農業用水では「かんがい期」にあたります。許可を受けた農業用水では期別に最大取水量が定められており、期間は川・用水・作付け体系によって異なるため、工事では設計図書と施設管理者への確認で把握します。

Q. 非取水期とは何ですか。 A. 取水期以外の期間で、農業用水では非かんがい期にあたります。堰・樋門・用水路など取水に影響する工事は、施設管理者と調整のうえ、施工時期を非取水期に合わせることを検討します。

Q. 出水期とはいつからいつまでですか。 A. 一般に6月〜10月頃ですが、期間は河川管理者が河川ごとに定めます。例えば江戸川河川事務所の資料では6月1日〜10月31日、福岡県では6月1日〜9月30日です。雪が多い地方では雪融けの3〜5月も出水期になります。

Q. 出水期に河川工事はできませんか。 A. 原則として河道内の工事は行いません。ただし国管理河川では、防災措置を講じることを前提に、河道掘削や天端舗装、矢板護岸など出水期でも施工できる工種が広げられています。施工できるかは工事ごとに発注者の判断によります。

まとめ

  • 取水期:川から農業用水などを取水する期間(水田ではかんがい期)。取水に影響する工事は非取水期に合わせる
  • 出水期:梅雨・台風・融雪で川が増水しやすい時期。期間は河川管理者が河川ごとに定め、原則として河道内の工事は行わない
  • 施工計画:河道内作業と仮締切の設置撤去を非出水期に収め、出水時の退避と水位監視を計画書に書く
  • 手続と仮締切:河川法の許可・承認の状況と条件、仮締切の設計対象水位・高さを確認して計画に反映する

出典・参考

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