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仮締切工とは|仮締切堤設置基準の要点と工法の種類・選定

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仮締切工とは|仮締切堤設置基準の要点と工法の種類・選定

仮締切工(かりしめきりこう)とは、河川や水路の中で工事を行うために、施工範囲へ水が入らないよう一時的に設ける仮設の構造物と、その設置工事のことです。 河川堤防を開削する工事の仮締切は、国の「仮締切堤設置基準(案)」で、設計対象水位(出水期は計画高水位など)、高さ(出水期は既設堤防高以上)、天端幅(河川管理施設等構造令第21条の値以上)が決められています。工法は鋼矢板二重締切・鋼矢板一重締切・大型土のう締切などから、水深・流速・地盤・工期で選びます。

本記事では、仮締切工の意味と仮締切工法との違い、仮締切堤設置基準(案)の要点を早見表で整理したうえで、工法ごとの特徴・施工手順・選定のポイント、安全管理と施工計画書への記載事項をまとめます。

仮締切工とは

仮締切工は、施工する範囲を水から締め切るための仮設物と、それを設ける工事を指します。工事が終われば撤去する前提の仮設物であり、完成後に残る本設構造物とは目的も設計の考え方も異なります。

似た言葉に仮締切工法がありますが、こちらは「どのやり方で締め切るか」という工法そのものを指します。鋼矢板を打つのか、大型土のうを積むのか、といった選択肢の呼び名です。実務では両者はほぼ同義で使われます。

仮締切工が必要になるのは、橋梁の下部工事、堰・水門の構築、護岸工事、河床の掘削など、水中または水際で作業する場面です。水を止めなければ掘削も打設もできないため、河川工事では欠かせない工種になります。

締切排水工とは

締切排水工は、仮締切で囲った内側にたまった水や、仮締切からしみ出してくる水をポンプで排水し、乾いた状態で作業できるようにする作業です。仮締切工とセットで計画し、施工計画書ではポンプの台数・排水量と予備ポンプの有無を示します。

出水期は河道内で工事をしないのが原則

仮締切堤設置基準(案)は、出水期(融雪出水などのある地方ではその期間を含む)には河道内の工事を行わないものとし、施工期間などからやむを得ないと認められる場合に限り、治水上の安全を十分確保して実施するとしています。仮締切は洪水時に流失・崩壊するリスクがあるため、非出水期に施工・撤去を終える工程を組むのが基本です。

仮締切堤設置基準(案)の要点

仮締切堤設置基準(案)は、河川区域とその周辺で行う工事の施工期間中に治水上の安全を確保するため、河川堤防にかわる仮締切を設置する場合の基準です。旧建設省が平成10年に通達し、平成26年12月の改定を経て、令和6年3月に改定されています。国土交通省の土木工事共通仕様書(令和8年3月)も、河川堤防の開削を伴う仮締切は「仮締切堤設置基準(案)」(国土交通省、令和6年3月)の規定によると定めています。以下は令和6年3月版に基づく主な規定です。

仮締切を必ず設置する場合

河川堤防にかかる仮締切は、次のいずれかに当たる場合に必ず設置します(堤防開削によって洪水や高潮の被害が生じる危険がまったくない場合を除く)。

  • 河川堤防を全面開削する場合
  • 河川堤防を部分開削するもののうち、堤防の機能が相当に低下する場合(設計対象水位に対して必要な堤防断面が確保されていない場合)

構造形式

堤防を開削する場合は、既設堤防と同等以上の治水の安全度を持つ構造とし、特に出水期間の仮締切は鋼矢板二重式工法を原則とします。地質などでこの工法によりがたい場合は、同等の安全度を持つ構造にします。土堤による仮締切は、法覆工などで十分に補強し、かつ川裏に設けるのが原則です。

早見表:設計対象水位・高さ・天端幅

区分設計対象水位高さ天端幅
堤防開削あり・出水期計画高水位(高潮区間は計画高潮位)既設堤防高以上河川管理施設等構造令第21条の値以上。鋼矢板式は大河川で5m程度、その他の河川で3m程度以上とし、安定計算で決定
堤防開削あり・非出水期非出水期間の既往最大流量に1.2を乗じた流量を、仮締切設置後の河積で流下させるための水位。これによりがたい場合は、非出水期間の既往最高水位に0.5mを加えた水位。上限は計画高水位(高潮区間は計画高潮位)設計対象水位相当流量時の水位に余裕高(構造令第20条の値)を加えた高さ以上同上
堤防開削なし(出水期・非出水期とも)工事施工期間の過去5か年の時刻最大水位が目安(異常出水と判断される場合は過去10か年の2位の水位を採用できる)設計対象水位(波浪の影響などでよりがたい場合は必要な高さ)構造の安定上必要な値以上

堤防開削ありの場合、既設堤防高が上の水位より低いときは既設堤防高とすることができる、などの例外も定められています。非出水期の設計対象水位は、河川の特性や近年の出水傾向などを考慮して変更することができ、既往の水文資料(過去の水位・流量の観測記録)が乏しい河川では、近隣の降雨資料などを勘案して十分安全な水位とすることができます。

令和6年3月の改定で変わった点

平成26年12月版から令和6年3月版への主な変更は、堤防を開削する場合の非出水期の設計対象水位です。古い版の資料で計画している場合は、次の点を確認してください。

項目平成26年12月版令和6年3月版
非出水期の設計対象水位(堤防開削あり)非出水期間の既往最高水位と、既往最大流量を仮締切設置後の河積で流下させる水位の、いずれか高い方既往最大流量×1.2の流量を仮締切設置後の河積で流下させる水位。これによりがたい場合は既往最高水位+0.5m
設計対象水位の上限規定なし計画高水位(高潮区間は計画高潮位)が上限
非出水期の高さの書き方設計対象水位相当流量に余裕高を加えた高さ以上設計対象水位相当流量時の水位に余裕高を加えた高さ以上(意味を明確化)
非出水期の流下能力の確認設計対象水位時の洪水流量で確認同じ。ただし設計対象水位が計画高水位となる場合は、出水期と同じく現況流下能力の確保で確認

設計対象水位(出水期)・高さ(出水期)・天端幅・補強・堤体の復旧の規定は変わっていません(天端幅の条文は構造令の名称が「河川管理施設等構造令」に正されたのみ)。

余裕高と天端幅の値(河川管理施設等構造令)

設置基準が参照する余裕高(第20条:計画高水位に加える値)と天端幅(第21条)は、計画高水流量に応じて次のように定められています。

計画高水流量(m³/s)余裕高(第20条)天端幅(第21条)
200未満0.6m3m
200以上 500未満0.8m3m
500以上 2,000未満1.0m4m
2,000以上 5,000未満1.2m5m
5,000以上 10,000未満1.5m6m
10,000以上2.0m7m

早見表の使い方(例):計画高水流量1,500m³/sの河川で、非出水期に堤防を開削して仮締切を設ける場合、余裕高は1.0m、天端幅は構造令第21条の4m以上が基準になります。設計対象水位は、非出水期間の既往最大流量に1.2を乗じた流量を仮締切設置後の河積で流す水位(よりがたい場合は既往最高水位+0.5m)で求め、高さはその水位+1.0m以上とし、背後地の状況や出水時の応急対策も考慮して決めます。鋼矢板式で施工する場合の天端幅は、上の目安(その他の河川で3m程度以上)を踏まえて安定計算で決定します。

流下能力・補強・堤体の復旧

  • 流下能力:仮締切設置後の断面で、一連区間の流下能力が確保されているかを確認し、不足する場合は河道掘削や堤防嵩上げなどの対策を行います(流下能力は不等流計算などで算定できる)。非出水期は設計対象水位時の洪水流量で確認し、設計対象水位が計画高水位になる場合は出水期と同じ扱いになります。
  • 補強:川表側の仮締切前面の河床と、取付部の上下流おおむね「天端幅の2倍」の長さの法面を、設計対象水位以上の高さまで鉄線蛇かごなどで補強します。
  • 堤体の復旧:仮締切の撤去後は、堤体部の表土1m程度を良質土で置き換えて十分に締め固め、必要に応じて堤防と基礎地盤も復旧します。

この基準は一般的な基準を示したもので、実際の高さ・構造は河川管理者との協議で決まります。協議の結果は施工計画書に必ず残してください。

仮締切工法の種類と比較

工法止水性適した条件コスト・工期特徴
鋼矢板二重締切高い水深が深い・出水期にかかる・堤防開削を伴う大きい設置基準で出水期の堤防開削時の原則とされる工法
鋼矢板一重締切中程度水圧が比較的小さい一般的な河川工事中程度腹起し・切梁などの支保工で補強する
大型土のう締切中程度水深が浅く流速が緩い中小規模の工事比較的小さい重機で設置でき、設置・撤去が早い
土のう締切低いごく浅い・小規模な工事小さい常時のポンプ排水が前提
土堤(築堤)による締切中程度施工スペースに余裕がある場合比較的小さい設置基準では法覆工などで補強し川裏に設けるのが原則

鋼矢板二重締切

鋼矢板二重締切は、2列の鋼矢板の間に中詰材(砂・砕石など)を充填して構築する工法です。

特徴

  • 止水性・安定性が高く、水深の深い箇所や大規模な河川工事に適する
  • 出水期の堤防開削を伴う仮締切では、設置基準でこの工法が原則とされている
  • コストが高く、施工期間も長い
  • 鋼矢板の打設・引抜きに伴う振動・騒音への配慮が必要

施工手順

(1) 鋼矢板の打設準備:導材を設置し、打設順序を計画する

(2) 外側鋼矢板の打設:河川側の鋼矢板を先に打設する

(3) 内側鋼矢板の打設:施工区域側の鋼矢板を打設する

(4) 中詰材の投入:2列の鋼矢板の間に砂や砕石を投入し、締め固める

(5) 腹起し・タイロッドの設置:内外の鋼矢板をタイロッドで連結し、安定性を高める

(6) 排水:締切内の水をポンプで排水し、乾いた状態で作業できる環境をつくる

鋼矢板の打設方法の詳細は鋼矢板の施工方法を参照してください。

鋼矢板一重締切

特徴

  • 二重締切に比べてコスト・施工期間を抑えられる
  • 止水性は鋼矢板の継手の性能に左右される
  • 水圧が大きい場合は腹起し・切梁で補強が必要

施工手順

(1) 鋼矢板の打設:施工区域を囲むように鋼矢板を打設する (2) 腹起し・切梁の設置:水圧に応じた支保工を設置する (3) 排水:ポンプで締切内の水を排水する (4) 漏水対策:継手部からの漏水はコーキングや止水材で処理する

土のう締切・大型土のう締切

特徴

  • 施工が簡易で、短期間で設置できる
  • コストが低い
  • 止水性は低く、常時のポンプ排水が必要になることが多い
  • 水深が浅い箇所、小規模な工事に適する

施工手順

(1) 河床面の整地:土のうを積む箇所の河床を平らにする (2) 敷設シートの設置:必要に応じて土のうの下に遮水シートを敷設する (3) 土のうの積上げ:必要な高さまで土のうを段積みする。大型土のうはバックホウで設置する (4) 遮水シートの設置:土のうの表面に遮水シートを被せ、漏水を抑える (5) 排水ポンプの設置:締切内にたまる水を排水する

工法選定のポイント

仮締切工法を選定する際は、次の要素を検討します。

検討項目確認内容
堤防開削の有無と施工時期堤防開削を伴い出水期にかかるなら鋼矢板二重式が原則(設置基準)
設計対象水位設置基準の区分に沿って決まる水位と、それに対する高さ
河川の水深・流速平水時の水深と流速
施工期間非出水期に設置から撤去まで完了できるか
施工区域の規模締切の延長と囲む面積
河床の地盤条件鋼矢板の打設が可能な地盤か
上流のダム・堰の有無急な放流による水位上昇のリスク
流下能力仮締切設置後の断面で一連区間の流下能力を確保できるか
環境への配慮濁水の流出防止、魚類への影響

河川断面の阻害と流下能力

仮締切によって河川の断面が狭くなるため、洪水時の水位上昇を検討する必要があります。設置基準では、仮締切設置後の断面で一連区間の流下能力が確保されていることを確認し、不足する場合は河道掘削や堤防嵩上げなどの対策を行うとしています。どこまでの断面の阻害を許容するかは、河川管理者との協議で決まります。

現場用:仮締切の計画チェックリスト

土木工事 業務改善Naviが、設置基準の要点を「協議の前に揃えておく資料」の順に並べ直したチェックリストです。

順番確認すること根拠・資料
1堤防開削を伴うか、全面開削か部分開削か設置基準「仮締切の設置」
2施工期間が出水期にかかるか設置基準「目的」(出水期は河道内工事を行わない)
3設計対象水位の算定資料(非出水期間の既往最大流量と、よりがたい場合の既往最高水位、堤防開削なしなら過去5か年の時刻最大水位)水位観測所の記録、河川管理者の資料
4計画高水流量と、構造令の余裕高・天端幅河川管理施設等構造令第20条・第21条
5仮締切設置後の流下能力の計算不等流計算など
6工法と構造(二重式・一重式・大型土のう等)、安定計算設置基準「構造形式」「天端幅」
7前面河床・取付部法面の補強範囲設置基準「補強」
8撤去後の堤体復旧の方法設置基準「堤体の復旧」
9出水時の警戒・退避の基準と連絡体制施工計画書・河川管理者との協議

安全管理のポイント

河川工事では、次の安全管理が特に重要です。

(1) 出水対策:上流の降雨状況を常に監視し、水位上昇時の退避基準を明確にする

(2) 退避訓練:作業員全員に退避経路と退避方法を周知し、定期的に訓練を行う

(3) 水位監視:水位計を設置して監視し、警戒水位・退避水位を設定する

(4) 仮締切の点検:毎日の始業前点検で仮締切の変状を確認する

(5) 排水ポンプの予備:排水ポンプの故障に備え、予備ポンプを用意する

施工計画書への記載

河川工事の仮締切に関する施工計画書には、次の内容を記載します。河川工事全般の施工計画書の書き方は河川工事の施工計画書を参照してください。

  • 仮締切工法の選定理由
  • 設計対象水位・高さ・天端幅の設定根拠(設置基準と構造令のどの規定によるか)
  • 仮締切の構造図(平面図・断面図)と安定計算
  • 流下能力の検討結果
  • 施工手順と工程(非出水期内に完了する計画か)
  • 排水計画(ポンプの台数・排水量・予備)
  • 出水時の対応計画(退避基準・退避経路)
  • 仮締切の撤去計画と堤体の復旧方法
  • 河川管理者との協議結果

よくある質問

Q. 仮締切工とは何ですか。 A. 河川や水路の中で工事をするために、施工範囲へ水が入らないよう一時的に設ける仮設構造物と、その設置工事のことです。工事完了後に撤去します。

Q. 仮締切工と仮締切工法はどう違いますか。 A. 仮締切工は仮設構造物そのものと、それを設ける工事を指します。仮締切工法は、鋼矢板二重締切や大型土のう締切など「どの方法で締め切るか」という工法の呼び名です。実務ではほぼ同義に使われます。

Q. 仮締切堤設置基準とは何ですか。 A. 河川区域とその周辺の工事で、河川堤防にかわる仮締切を設置する場合の国の基準(案)です。仮締切を必ず設置する場合、構造形式、設計対象水位、高さ、天端幅、流下能力の確保、補強、堤体の復旧などを定めています。

Q. 仮締切の高さはどう決めますか。 A. 堤防を開削する場合、出水期は既設堤防高以上、非出水期は設計対象水位相当流量時の水位に余裕高(河川管理施設等構造令第20条の値)を加えた高さ以上が基準です。令和6年3月の改定で、非出水期の設計対象水位は「既往最大流量×1.2の流量を流す水位(よりがたい場合は既往最高水位+0.5m)、上限は計画高水位」になりました。堤防を開削しない場合は、過去5か年の時刻最大水位を目安とした設計対象水位とします。最終的な高さは河川管理者との協議で確定させ、施工計画書に残します。

Q. どの工法を選べばよいですか。 A. 堤防開削を伴い出水期にかかる場合は鋼矢板二重式が原則です。それ以外は、水深・流速・地盤条件・施工規模・工期で絞り込みます。水深が浅く流速が緩い小規模なら大型土のう、水深があり止水性が要るなら鋼矢板というのが基本的な考え方です。

Q. 出水期でも施工できますか。 A. 原則は非出水期です。設置基準は出水期に河道内の工事を行わないものとし、やむを得ない場合に限り治水上の安全を十分確保して実施するとしています。水位の監視体制、警報の基準、撤去または退避の判断基準をあらかじめ決め、河川管理者と共有しておく必要があります。

まとめ

  • 仮締切工は、施工範囲を水から締め切るための仮設物と、その設置工事のこと
  • 堤防を開削する仮締切は、仮締切堤設置基準(案)で設計対象水位・高さ・天端幅が決められている。出水期は既設堤防高以上、鋼矢板二重式が原則
  • 余裕高・天端幅は河川管理施設等構造令第20条・第21条の値を使う
  • 工法は水深・流速・地盤・規模・工期で選び、協議の結果と根拠を施工計画書に残す

施工計画書の基本的な書き方については土木工事の施工計画書ガイドも併せてご確認ください。

出典・参考

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