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鋼矢板の施工方法|打設工法の種類・手順と管理基準

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鋼矢板の施工方法|打設工法の種類・手順と管理基準

鋼矢板(こうやいた)の施工方法は、ハンマの打撃で打ち込む「打撃工法」、振動で打ち込む「バイブロハンマ工法」、アースオーガで掘りながら押し込む「オーガ併用圧入工法」、既に打った矢板を反力にして油圧で押し込む「油圧式圧入引抜工法」の4つが基本です。 どの工法でも、導材(導枠)を設けて矢板のぶれ・よじれ・倒れと隣の矢板の共下がりを防ぎながら打ち込み、継手はかみ合わせて施工することが、国の土木工事共通仕様書で求められています。工法は、地盤の硬さ、周辺の騒音・振動の制約、施工スペース、矢板の種類で選びます。

本記事では、4つの打設工法の比較と手順、工法の選び方、騒音規制法・振動規制法との関係、出来形管理の規格値と施工時のチェックリストをまとめます。

鋼矢板とは

鋼矢板(シートパイル)は、両端の継手を互いにかみ合わせることで連続した壁をつくる鋼製の部材です。土留め、止水、護岸、岸壁、仮締切など、土木工事で幅広く使われます。

国の「土木工事共通仕様書(案)」では、矢板工の対象を鋼矢板、軽量鋼矢板、コンクリート矢板、広幅鋼矢板、可とう鋼矢板としています。軽量鋼矢板は、浅い掘削の土留めなど比較的小規模な工事で使われる薄肉の矢板です。

鋼矢板の種類

種類断面形状有効幅主な特徴・用途
U形鋼矢板U字形400mm幅と600mm幅(広幅)最も普及している形式。仮設土留めから本設まで。本設では600mm幅が多く用いられる
ハット形鋼矢板帽子形900mm大断面で、同じ延長を少ない枚数で施工できる
直線形鋼矢板平板形―継手の引張強度が高く、主に鋼矢板セルに使用
鋼管矢板円筒形―継手付きの鋼管。大規模な護岸・基礎など

有効幅は鋼管杭・鋼矢板技術協会(業界団体)の公表資料によります。国内の鋼矢板はJIS A 5523(溶接用熱間圧延鋼矢板)またはJIS A 5528(熱間圧延鋼矢板)に基づいて製造されています。

鋼矢板の打設工法の比較

鋼管杭・鋼矢板技術協会(業界団体)の技術資料をもとに、4つの打設工法を比べると次のとおりです。

工法原理主な使用機械長所注意点
打撃工法ハンマの落下衝撃で貫入させる三点式杭打機+各種ハンマ打撃力が大きい、機動性がある騒音・振動が発生する。頭部が潰れるおそれ
バイブロハンマ工法起振機の上下振動を矢板に伝えて打ち込むクローラクレーン+バイブロハンマ頭部を傷めにくい。打込みと引抜きを兼用できる騒音・振動に注意が必要
オーガ併用圧入工法アースオーガの掘削と油圧の押込みを連動させる三点式杭打機+アースオーガ+アタッチメント低騒音・低振動、適用できる土質が広い設備が大がかり。地盤を緩める可能性
油圧式圧入引抜工法打設済みの矢板数枚をつかみ、その引抜き抵抗を反力に静的に押し込む油圧式圧入引抜機低騒音・低振動、コンパクトで狭い場所や桁下にも向く矢板の種類に合った機械が必要

どの工法でも、矢板の吊り込みには別途クレーンが必要です。硬い地盤(一般にN値50以上の礫層や岩など)では、ウォータージェット(先端から高圧水を噴射して地盤を崩す補助工法)やアースオーガを併用します。

鋼矢板打設の基本手順(工法共通)

(1) 事前調査と試掘:土質(ボーリング柱状図)と地下水、周辺の家屋・埋設物を確認する。仮設の鋼矢板では、打込みに先立って溝掘り等で支障となる埋設物を確認することが共通仕様書で求められています

(2) 試験打設:試験打ちで打込みの可否を確かめ、施工機械の規格や補助工法の要否、必要に応じて矢板の断面を決める

(3) 打込み法線の設定:矢板を打ち込む基準線(矢板前面を結ぶ線、または壁の中心線)を決め、始点・終点と見通し点を現地に設ける

(4) 導材(導枠)の設置:矢板の蛇行・回転を防ぎ、施工中の安定を確保するための仮設設備。導杭を法線に平行に2列打ち、その内側に導梁を取り付ける方法や、移動式のユニット導枠を使う方法がある

(5) 建込み:先に打った矢板の継手にかみ合わせ、傾いたり位置がずれたりしないよう所定の高さまで下ろす。斜め引きを避け、ねじれや継手の損傷に注意する

(6) 打込み:選んだ工法で所定の深さまで打ち込む。トランシットやレーザー照準器で法線からのずれを見ながら打つ

(7) 打止めと確認:天端の高さと根入れ長を確認し、記録する

設計図書に示された深さに達する前に打込めなくなった場合は、原因を調べたうえで監督職員と協議します。ウォータージェットを使った場合は、最後の打止めを併用機械で貫入させて落ち着かせる必要があります(共通仕様書 矢板工)。

バイブロハンマ工法の手順と注意点

施工手順

(1) クレーンとバイブロハンマの据付け:クレーンの作業半径と吊り上げ能力を確認する

(2) 吊り込み:バイブロハンマのチャックで矢板の頭部をつかむ

(3) 建込み:導材に沿って矢板を所定の位置にセットする

(4) 打設:起振機を動かし、振動と自重で矢板を貫入させる

(5) 所定深度の確認:天端高さと根入れ長を確認する

注意点

  • 振動で地盤の抵抗を下げるため、打込み速度が速い
  • 振動が周辺に伝わるので、近接構造物や家屋への影響を事前に検討する
  • 打込みと引抜きの両方に使えるため、仮設土留めの引抜き・転用に向く
  • 騒音規制法・振動規制法の特定建設作業に当たる(後述)

圧入工法(油圧式圧入引抜工法)の手順と注意点

施工手順

(1) 初期圧入:施工開始時は反力となる既設矢板がないため、機械メーカーの手順に従って反力を確保し、最初の矢板を圧入する

(2) 自走・圧入:打設済みの矢板数枚をつかみ、その引抜き抵抗を反力として次の矢板を油圧で押し込む

(3) 機械の移動:圧入が終わると、機械が打設済みの矢板の上を移動して次の位置へ進む

(4) 硬い地盤:ウォータージェットやオーガを併用する

(5) 完了確認:天端高さ、通り(法線からのずれ)を確認する

注意点

  • 低騒音・低振動で、市街地や家屋が近い現場に向く
  • 機械がコンパクトで、狭い場所や桁下・空頭制限のある場所にも対応しやすい
  • 矢板の種類(U形・ハット形など)に合った機械が必要
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打撃工法の手順と注意点

施工手順

(1) 杭打機の据付け:リーダー付きの三点式杭打機を、敷鉄板などで水平・安定させて据え付ける

(2) 建込み:リーダーに沿って矢板をセットする

(3) 打撃:ハンマで矢板の頭部を打撃して貫入させる

(4) 深度確認:所定の深さまで打ち込まれたことを確認する

注意点

  • 打撃力が大きく、硬い地盤でも貫入させやすい
  • 騒音・振動が大きいため、住宅地では規制と周辺への影響を特に検討する
  • 矢板の頭部を傷めないよう、正規のキャップを使う

騒音規制法・振動規制法との関係

鋼矢板の打設・引抜きは、使う機械によって騒音規制法・振動規制法の「特定建設作業」に当たります。指定地域内で特定建設作業を行う場合は、作業開始の7日前までに市町村長へ届け出る必要があります(騒音規制法第14条、振動規制法第14条)。

早見表:工法と特定建設作業の該当

使用機械騒音規制法(施行令 別表第二 第1号)振動規制法(施行令 別表第二 第1号)
くい打機該当(もんけん、アースオーガー併用を除く)該当(もんけん、圧入式くい打機を除く)
くい抜機該当該当(油圧式くい抜機を除く)
くい打くい抜機該当(圧入式くい打くい抜機を除く)該当(圧入式くい打くい抜機を除く)
圧入式くい打くい抜機(油圧式圧入引抜機)対象外対象外

打撃ハンマやバイブロハンマによる打込み・引抜きは、圧入式に当たらないため原則として対象になります。どの区分に当たるかの最終判断は、届出先の市町村に確認してください。

特定建設作業の規制基準は、敷地の境界線で騒音が85デシベル、振動が75デシベルを超えないことなどです(騒音は「特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準」、振動は振動規制法施行規則 別表第一)。作業時間帯・日数の制限もあり、自治体の条例で上乗せされている場合もあるため、工事場所の市町村で確認してください。

工法の選び方

打込み方法と使用機械は、設計図書に示されていればそれに従い、示されていない場合は打込み地点の土質条件、立地条件、矢板の種類などに応じて選ぶ、というのが共通仕様書の考え方です。実務では次の順で絞り込みます。

順番確認すること判断の目安
1設計図書・特記仕様書の指定指定があればそれに従う
2周辺環境(家屋・学校・病院、近接構造物)近い場合は低騒音・低振動の圧入系を優先
3特定建設作業の該当と届出該当する機械なら届出・作業時間の制約を工程に反映
4地盤(N値、礫・玉石、硬質層)硬い地盤はウォータージェットやオーガの併用を検討
5施工スペース・空頭制限狭い場所や桁下は油圧式圧入引抜機が有利
6矢板の種類・長さ、引抜きの有無引抜き・転用するならバイブロハンマや圧入引抜機
7経済性・工期残った候補で比較する

施工時の品質管理(出来形の規格値)

国の「土木工事施工管理基準及び規格値(案)」では、鋼矢板の出来形を次のように管理します。

区分測定項目規格値測定基準
矢板工(本設。指定仮設・任意仮設は除く)基準高±50mm施工延長40m(測点間隔25mの場合は50m)につき1か所、延長40m(または50m)以下は1施工箇所につき2か所
同上根入長設計値以上同上
同上変位100mm施工延長20m(測点間隔25mの場合は25m)につき1か所、延長20m(または25m)以下は1施工箇所につき2か所
土留・仮締切工(H鋼杭・鋼矢板)基準高±100mm施工延長40m(測点間隔25mの場合は50m)につき1か所、延長40m(又は50m)以下は1施工箇所につき2か所
同上根入長設計値以上同上

鉛直度や継手のかみ合いは、規格値の表には個別の数値がありません。施工計画書で管理方法(トランシットによる確認、打込み記録、目視)を決め、記録を残します。発注者の特記仕様書で別の管理値が定められている場合はそちらに従ってください。

現場用:鋼矢板打設のチェックリスト

土木工事 業務改善Naviが、共通仕様書・施工管理基準・安全施工技術指針の要求を工程順に並べたチェックリストです。

工程確認すること根拠
着手前支障となる埋設物を溝掘り等で確認したか共通仕様書 土留・仮締切工
着手前特定建設作業の届出(開始7日前まで)は済んだか騒音規制法・振動規制法 第14条
着手前機械の据付け地盤は水平・安定か(敷鉄板等)土木工事安全施工技術指針
打込み導材を設け、ぶれ・よじれ・倒れ・共下がりを防いでいるか共通仕様書 矢板工
打込み継手をかみ合わせて施工しているか共通仕様書 矢板工
打込み所定深度前に打込み不能になったら、原因調査と協議をしたか共通仕様書 矢板工
打止めウォータージェット併用時、最後は併用機械で打ち止めたか共通仕様書 矢板工
出来形基準高・根入長・変位を測定基準の頻度で測ったか施工管理基準及び規格値
腹起し矢板と密着させ、隙間はパッキング材で埋めたか共通仕様書 矢板工
引抜き引抜き跡の空洞を砂等で充填したか共通仕様書 矢板工・土留・仮締切工

施工計画書への記載

鋼矢板の施工計画書には次の項目を記載します。施工計画書の基本構成は土木工事の施工計画書ガイドを参照してください。

  • 鋼矢板の種類・規格・枚数・長さ
  • 打設工法と使用機械の選定理由
  • 試験打設の計画
  • 打込み法線、導材の設置計画、打設順序図
  • 出来形・品質管理計画(管理項目、規格値、測定頻度)
  • 騒音・振動対策と特定建設作業の届出
  • 近接施工の影響検討(必要な場合)
  • 引抜き方法と引抜き跡の充填方法(仮設の場合)

よくある質問

Q. 鋼矢板の施工方法にはどんな種類がありますか。 A. 打撃工法、バイブロハンマ工法、オーガ併用圧入工法、油圧式圧入引抜工法の4つが基本です。硬い地盤では、これらにウォータージェットやアースオーガを併用します。

Q. 鋼矢板打設でいちばん多い工法は何ですか。 A. 現場条件で変わります。振動で速く打ち込めて引抜きにも使えるバイブロハンマ工法がよく使われますが、住宅地や近接構造物がある場所では、低騒音・低振動の油圧式圧入引抜工法が選ばれます。

Q. 鋼矢板の打設は届出が必要ですか。 A. 騒音規制法・振動規制法の指定地域内で、くい打機・くい抜機・くい打くい抜機(圧入式などを除く)を使う場合は特定建設作業に当たり、開始の7日前までに市町村長への届出が必要です。油圧式圧入引抜機(圧入式くい打くい抜機)は対象外です。

Q. 矢板施工の出来形はどこを測りますか。 A. 施工管理基準では、本設の矢板工で基準高(±50mm)、根入長(設計値以上)、変位(100mm)、仮設の土留・仮締切工で基準高(±100mm)と根入長(設計値以上)を管理します。

Q. 鋼矢板の打ち込み方法で気をつけることは何ですか。 A. 導材で矢板のぶれ・よじれ・倒れと隣の矢板の共下がりを防ぐこと、継手を確実にかみ合わせること、所定の深さの前に打ち込めなくなったら無理をせず原因を調べて協議することです。

まとめ

  • 鋼矢板の施工方法は、打撃・バイブロハンマ・オーガ併用圧入・油圧式圧入引抜の4つが基本
  • 工法は設計図書の指定を確認したうえで、周辺環境・地盤・施工スペース・矢板の種類で選ぶ
  • 圧入式を除く杭打ち・杭抜き機械は特定建設作業に当たり、7日前までの届出が必要
  • 出来形は施工管理基準の規格値(基準高・根入長・変位)で管理し、引抜き跡は砂等で充填する

土留め工事全体の流れは土留め工の施工手順、河川工事での鋼矢板の使い方は河川工事の仮締切工法も参照してください。

出典・参考

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