土木工事の材料・資材の在庫管理|棚卸しと置場管理の進め方
土木工事会社の材料・資材の在庫管理は、①管理する材料と数える単位を決めて台帳を作る、②置場を区画して定位置に置き、先に入れた物から使う、③入庫・出庫・現場からの残材戻しを記録する、④定期的に実地棚卸し(現物を数えて台帳と照らし合わせること)をする、の4つで回します。 保管の品質については、国土交通省の土木工事共通仕様書(案)で「工事材料を使用するまでにその材質に変質が生じないよう保管」することが求められ、セメントや鋼材などは材料ごとに保管の注意が定められています。資材を高く積む置場では、労働安全衛生規則の「はい」(積み重ねた荷の集まりのこと)に関する規定も守る必要があります。
本記事では、在庫管理の進め方、材料別の保管の注意の早見表、置場の安全、入出庫の記録とバーコード・QRコードの使い方、決算の棚卸しで押さえる税務上の基本を整理します。本文の法令・基準は、末尾の「出典・参考」に挙げた資料で確認したものです。
在庫管理の進め方(全体像)
| 手順 | やること | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 1. 管理する材料を決める | 自社ヤード(資材置場)と現場仮置場にある材料・仮設材を書き出し、管理する対象を決める | 1本・1個単位で数える物、袋・缶・m³単位で数える物、数えない消耗品 |
| 2. 台帳を作る | 材料名・規格・単位・置場・数量・入庫日を一覧にする | 品番(管理番号)の付け方、規格違いを別品目にするか |
| 3. 置場を整える | 使えない残材を処分し、区画ごとに置く材料を決めて表示する | 区画と定位置、先に入れた物から使う置き方 |
| 4. 入出庫を記録する | 入庫、現場への出庫、現場からの戻しをその都度記録する | 記録する人とタイミング、出庫先の工事名 |
| 5. 実地棚卸しをする | 定期的に現物を数え、台帳との差を調べて直す | 棚卸しの時期、差が出たときの確認手順 |
いきなり全部の材料を管理しようとすると続きません。まずは金額が大きい物、劣化しやすい物、現場間で融通することが多い物から始めると、手間に見合った管理になります。
材料別の保管の注意(早見表)
土木工事共通仕様書(案)の規定を、在庫管理で気をつける点として整理した表です。発注者の仕様書や特記仕様書に別の定めがある場合はそちらに従ってください。
| 材料 | 共通仕様書の主な規定 | 在庫管理で気をつけること |
|---|---|---|
| すべての工事材料 | 使用するまでに材質に変質が生じないよう保管する。変質で使用が不適当と監督職員から指示されたら取り替え、新たに搬入する材料は再度確認を受ける(2編1章2節 5) | 入庫日を記録し、古い物が奥に残らない置き方にする |
| 品質証明の書類 | 試験成績表、性能試験結果、ミルシート等の品質規格証明書を受注者の責任で整備・保管し、請求があれば速やかに提示する(2編1章2節 1) | 現物と証明書類を品番・ロットで結びつけておく |
| セメント | 防湿構造のサイロまたは倉庫に品種別に区分して貯蔵する。貯蔵中に塊状になったセメントは用いない。長期間貯蔵したセメントは使用しない。温度・湿度が過度に高くならないようにする(2-2-6-1) | 品種ごとに分けて置き、入庫日の古い物から使う。湿気を受けた疑いのある物は使う前に試験で品質を確かめる |
| 混和剤 | ごみ等の不純物が混入しないよう、液状の物は分離・変質・凍結しないよう、粉末状の物は吸湿・固結しないよう貯蔵する。長期間貯蔵した物は使用しない(2-2-6-1) | 冬場の凍結と、開封後の保管に注意する |
| 混和材 | 防湿的なサイロまたは倉庫等に品種別に区分して貯蔵し、入荷の順に用いる(2-2-6-1) | 入荷順に使えるよう、入庫日を表示する |
| 骨材(現場練りコンクリート用) | ごみ・泥などの異物が混入しないよう、大小粒が分離しないよう、排水設備の整った貯蔵施設に貯蔵する(1-3-5-2) | 置場の排水と、種類ごとの仕切りを整える |
| 鋼材 | さび、くされ等変質のないものとする。じんあいや油類等で汚損しないようにし、防蝕する(2-2-5-1) | 地面に直に置かず、雨や泥を避ける養生をする |
| 木材 | 有害な腐れ、割れ等の欠陥のないものとする(2-2-4-1) | 雨ざらしを避け、湿気のこもらない置き方にする |
| セメントコンクリート製品 | 有害なひび割れ等損傷のないものでなければならない(2-2-7-1) | 積み下ろしや仮置きで欠けやひびを作らない |
| 支給材料・貸与品 | 善良な管理者の注意をもって管理し、受払状況を記録した帳簿を備え付けて常に残高を明らかにする。他の工事に流用してはならない(1-1-1-20) | 自社の材料と区別して置き、専用の帳簿で管理する |
置場の安全(はいの積み重ね)
資材置場で材料を積み重ねるときは、労働安全衛生法令の「はい」に関する規定を確かめます。はいは「倉庫、上屋又は土場に積み重ねられた荷(小麦、大豆、鉱石等のばら物の荷を除く。)の集団」と定義されています。
| 規定 | 内容 |
|---|---|
| はい作業主任者(労働安全衛生法施行令第6条第12号、労働安全衛生規則第428条) | 高さ2m以上のはいのはい付け・はい崩しの作業(荷役機械の運転者のみで行うものを除く)では、はい作業主任者技能講習を修了した者からはい作業主任者を選任する |
| はいの昇降設備(規則第427条) | はいの上で作業する箇所の高さが床面から1.5mを超えるときは、安全に昇降するための設備を設ける(荷で安全に昇降できる場合を除く) |
| はいの間隔(規則第430条) | 高さ2m以上の、袋・かます・俵の荷によるはいは、隣のはいとの間隔を下端で10cm以上とる |
| はいくずし(規則第431条) | 高さ2m以上のはいをくずすときは中抜きをしない。袋・かます・俵の荷のはいはひな段状にくずし、各段(最下段を除く)の高さは1.5m以下とする |
| 崩壊等の防止(規則第432条) | はいの崩壊や荷の落下の危険があるときは、ロープで縛る、網を張る、くい止めを施す、はい替えを行うなどの措置をとる |
| 立入禁止(規則第433条) | はい付け・はいくずしの箇所で危険のおそれがあるところに、関係者以外が立ち入らないよう見やすい箇所に表示するなどして禁止する |
| 照度(規則第434条) | はい付け・はいくずしの作業場所は、安全に作業するために必要な照度を保つ |
| 保護帽(規則第435条) | 高さ2m以上のはいの上の作業では保護帽を着用させる |
置場の配置(資材置場・重機の駐機場所・残土の仮置き場など)は、施工計画書の仮設備計画で示すのが一般的です。書き方は仮設計画書とは|土木工事の書き方・記載例と仮設備計画を参考にしてください。
入出庫の記録とバーコード・QRコードの使い方
台帳に持たせる項目
| 項目 | 内容 | 使い道 |
|---|---|---|
| 品番(管理番号) | 材料名・規格ごとに付ける番号 | 規格違いの取り違えを防ぐ |
| 材料名・規格 | 径・長さ・呼び強度など | 発注・転用の判断 |
| 単位 | 本・個・袋・缶・m³など | 数量の集計 |
| 置場・区画 | 本社ヤード、現場仮置場、区画番号 | 探す手間を減らす |
| 入庫日・ロット | 搬入日、製造ロット | 先に入れた物から使う、品質証明書類との照合 |
| 入庫・出庫・戻しの数量 | 日付と数量 | 現在の在庫数 |
| 出庫先の工事名 | どの工事に使ったか | 工事ごとの材料費の把握 |
| 自社材料か支給材料か | 区分 | 支給材料の流用防止、精算 |
バーコード・QRコードを使う場合
バーコードやQRコードは、品番を読み取りで入力するための道具です。手書きや手入力の転記ミスを減らせますが、記録する習慣がないまま導入しても在庫の数は合いません。
| 進め方 | ポイント |
|---|---|
| ラベルは品番ごとに作る | 同じ材料でも規格が違えば別の品番・別のラベルにする |
| 貼る場所を決める | 1本ずつ貼れない物(砂・砕石、袋物など)は、棚や区画、パレットに貼る |
| 読み取る場面を絞る | 入庫、現場への積込み、現場からの戻しの3つに絞ると続けやすい |
| 出庫時に工事名を選ばせる | 工事ごとの材料費の集計に使える |
| 読み取れないときの代わりの手順 | ラベルの汚れ・破損時に手入力で記録する方法を決めておく |
日報アプリに「使用材料」の欄を設けている場合は、在庫の出庫記録と二重入力にならないよう、どちらを正とするかを決めておきます(日報のデジタル化は作業日報のデジタル化の進め方)。工事ごとの材料費を原価管理に使う方法は土木工事の原価管理で利益率を改善する方法で解説しています。
実地棚卸しと決算での扱い
実地棚卸しは、台帳の数と現物の数のずれを見つけて直す作業です。ずれが出たら、出庫の記録漏れ、現場からの戻しの記録漏れ、規格の取り違え、破損・紛失のどれかを確かめ、原因に合わせて記録の手順を直します。
決算では、事業年度終了の時に持っている棚卸資産を評価します。法人税法上の基本は次のとおりです。会計処理の詳細は顧問の税理士に確認してください。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 棚卸資産の範囲 | 商品・製品、半製品、仕掛品(半成工事を含む)、主要原材料、補助原材料、消耗品で貯蔵中のもの、これらに準ずるもの | 法人税法第2条第20号、法人税法施行令第10条 |
| 評価の方法 | 原価法(個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法のいずれかで取得価額を出す)または低価法から選ぶ | 法人税法第29条、同施行令第28条 |
| 選ぶ単位 | 事業の種類ごと、かつ商品・製品、半製品、仕掛品、主要原材料、補助原材料その他の区分ごと | 同施行令第29条 |
| 選ばなかった場合 | 最終仕入原価法による原価法 | 同施行令第31条 |
| 消耗品 | 消費した日の属する事業年度の損金が原則。事務用・作業用の消耗品などで、毎年おおむね一定数量を取得し経常的に消費するものは、継続して取得した年度の損金に算入している場合は認められる | 法人税基本通達2-2-15 |
日々の在庫管理で入庫日と取得価額を記録しておくと、決算の棚卸しで評価額を出すときの資料にもなります。
在庫管理を始めるときのチェックリスト
| No. | 確認すること | 確認先 |
|---|---|---|
| 1 | 管理する材料と、数える単位を決めたか | 工事部、資材担当 |
| 2 | 規格違いを別の品番にしたか | 台帳 |
| 3 | 使えない残材(変質した物、規格外の物)を処分したか | ヤード、産業廃棄物の処理業者 |
| 4 | 区画と定位置を決め、表示したか | ヤード |
| 5 | セメント・混和剤など劣化しやすい材料に入庫日を表示したか | ヤード、台帳 |
| 6 | 高さ2m以上のはいになる置き方がないか、ある場合ははい作業主任者を選任しているか | 安全担当 |
| 7 | 入庫・出庫・戻しを誰がいつ記録するか決めたか | 現場代理人、資材担当 |
| 8 | 支給材料を自社の材料と分けて管理しているか | 現場代理人 |
| 9 | 品質証明書類と現物を結びつけて保管しているか | 現場代理人 |
| 10 | 実地棚卸しの時期と、差が出たときの確認手順を決めたか | 経理、資材担当 |
よくある質問
土木工事会社の在庫管理は何から始めればよいですか?
まず資材置場の現物を確認し、使えない残材を処分して、区画と定位置を決めるところから始めます。台帳を先に作っても、置場が整っていないと数えるたびに数が合わず、記録が続きません。管理する材料は、金額が大きい物、劣化しやすい物、現場間で融通することが多い物から絞ると始めやすくなります。
セメントは何か月まで保管できますか?
土木工事共通仕様書(案)には具体的な月数の定めはありません。防湿構造のサイロまたは倉庫に品種別に区分して貯蔵すること、塊状になったセメントを用いないこと、湿気を受けた疑いのある物は使う前に試験で品質を確かめること、長期間貯蔵したセメントは使用しないことが定められています。入庫日を記録して古い物から使い、判断に迷う物は監督職員やメーカーに確認してください。
資材を積み重ねるときに資格は必要ですか?
高さ2m以上のはい(積み重ねた荷の集まり)のはい付け・はい崩しの作業では、はい作業主任者技能講習を修了した者からはい作業主任者を選任する必要があります(荷役機械の運転者のみで行う作業を除く)。あわせて、崩壊防止の措置や関係者以外の立入禁止などの規定も守ります。
発注者から支給された材料はどう管理しますか?
国の直轄工事では、土木工事共通仕様書(案)1-1-1-20 により、支給材料は善良な管理者の注意をもって管理し、受払状況を記録した帳簿で常に残高を明らかにしておく必要があります。他の工事への流用は禁止され、工事完成時には支給品精算書を提出します。自社の材料と置場や帳簿を分けて管理してください。
まとめ
- 進め方:管理する材料と単位の決定、台帳づくり、置場の整理、入出庫の記録、実地棚卸しの順で回す
- 保管の品質:共通仕様書では、使用するまで変質しないよう保管することが求められ、セメント・混和剤・鋼材などは材料ごとの注意がある
- 置場の安全:高さ2m以上のはいのはい付け・はい崩しには、はい作業主任者の選任が必要。崩壊防止や立入禁止も守る
- 記録:入庫・出庫・戻しの3場面に絞り、出庫先の工事名を残すと原価管理に使える。バーコード・QRコードは入力の補助として使う
- 決算:棚卸資産の評価方法は事業の種類・資産の区分ごとに選び、選ばなければ最終仕入原価法による原価法になる
出典・参考
- 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」第2編 第1章 第2節 工事材料の品質(1. 品質規格証明書の整備・保管、5. 材料の保管)
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun02_syo01_setsu02.html - 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」第2編 第2章 2-2-4-1 木材 一般事項、2-2-5-1 鋼材 一般事項、2-2-6-1 セメント及び混和材料 一般事項(セメント・混和剤・混和材の貯蔵)、2-2-7-1 セメントコンクリート製品 一般事項
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun02_syo02_setsu04.html
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun02_syo02_setsu05.html
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun02_syo02_setsu06.html
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun02_syo02_setsu07.html - 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」第1編 第3章 第5節 現場練りコンクリート 1-3-5-2 材料の貯蔵(骨材の貯蔵)
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun01_syo03_setsu05.html - 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」第1編 第1章 第1節 1-1-1-20 支給材料及び貸与品
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun01_syo01_setsu01.html - 労働安全衛生法施行令 第6条第12号(高さ2m以上のはいのはい付け・はい崩しの作業)(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/347CO0000000318 - 労働安全衛生規則 第427条〜第435条(はいの定義、昇降設備、はい作業主任者の選任・職務、はいの間隔、はいくずし、崩壊等の危険の防止、立入禁止、照度、保護帽)(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 - 法人税法 第2条第20号(棚卸資産の定義)、第29条(棚卸資産の評価の方法)(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034 - 法人税法施行令 第10条(棚卸資産の範囲)、第28条(評価の方法)、第29条(評価の方法の選定)、第31条(法定評価方法)(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097 - 国税庁「法人税基本通達 第2章 第2節 第2款 販売費及び一般管理費等」2-2-15(消耗品費等)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_02_02.htm
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