精算変更とは|設計変更協議の流れと記録の残し方【公共工事】
精算変更とは、公共工事の工期末に、契約数量と実際に施工した数量の差や、工事中に指示された軽微な設計変更をまとめて精算し、請負代金額と工期を確定させる最後の変更契約のことです。 法令で定義された言葉ではなく実務上の呼び方ですが、国の通達で「設計変更に伴う契約変更は必要が生じた都度、遅滞なく行う。ただし軽微な設計変更に伴うものは工期の末に行うことをもって足りる」とされていることが、その根拠になっています。精算変更で増額を認めてもらうには、工事中に「協議」と「指示」を書面で受け、根拠となる記録を残しておくことが欠かせません。
本記事では、設計変更・契約変更・精算変更の違い、設計変更協議とは何か、公共工事の設計変更の流れ、設計変更できるケースとできないケース、精算で困らないための記録の残し方を、公共工事標準請負契約約款と国土交通省の設計変更ガイドラインに沿って整理します。条番号は標準約款の番号で、実際の契約書と異なることがあるため、手元の契約書で確認してください。
設計変更・契約変更・精算変更の違い(用語の早見表)
| 用語 | 意味 | 根拠 |
|---|---|---|
| 設計変更 | 契約書第18条・第19条により図面や仕様書を変える場合に、契約変更の手続の前に、変更の内容をあらかじめ受注者に指示すること | 「設計変更に伴う契約変更の取扱いについて」(昭和44年3月31日 建設省東地厚発第31号の2) |
| 契約変更 | 設計変更などを受けて、請負代金額や工期を変える契約の変更 | 約款第24条(工期の変更方法)・第25条(請負代金額の変更方法等) |
| 精算変更 | 工期末に、契約数量と実施数量の差や軽微な設計変更をまとめて反映する最後の契約変更(実務上の呼び方) | 上記通達の「軽微な設計変更に伴うものは工期の末に行うことをもって足りる」 |
| 設計変更協議 | 設計変更の対象とするかどうか、変更内容などを、書面で発注者と受注者が対等の立場で話し合い結論を得ること | 共通仕様書 1-1-1-2 の「協議」の定義 |
| 指示 | 監督職員が契約図書に基づき、施工上必要な事項を書面で示し実施させること。設計図書の変更につながる | 共通仕様書 1-1-1-2 |
| 承諾 | 契約図書で明示した事項について、書面で同意すること。設計図書の変更ではない | 共通仕様書 1-1-1-2 |
関東地方整備局の設計変更ガイドラインは、「設計変更=契約変更ではないので注意」と強調しています。設計変更の指示を受けた段階では、まだ請負代金額は変わっていません。変更契約(工事中の変更契約と、工期末の精算変更)を結んで、はじめて金額と工期が確定します。
精算変更とは
工事中には、数量の増減や小さな仕様の変更が何度も起きます。そのたびに変更契約を結ぶのは手間がかかるため、国の通達は、軽微な設計変更に伴う契約変更は工期の末(国庫債務負担行為に基づく工事では各会計年度の末と工期の末)にまとめて行えばよいとしています。この工期末の変更契約が、一般に「精算変更」「最終変更」と呼ばれるものです。
日本下水道事業団の設計変更ガイドライン(案)も、「工期末などに契約数量と実施数量の差などを精算する場合」は、総括的な工事実施数量の精算根拠資料などによる協議でよく、設計変更協議用打合せ簿の取り交わしを省略してもよい(大規模な数量の変更を除く)としています。
精算変更で押さえておきたいのは次の3点です。
- 都度の変更契約が原則:軽微でない設計変更は、必要が生じたつど遅滞なく契約変更を行うのが原則です。大きな変更まで工期末に回してよいわけではありません。
- 精算できるのは手続を踏んだものだけ:工期末にまとめるのは契約の手続であって、設計変更の手続(協議・指示)は工事中に済ませておく必要があります。
- 数量の根拠資料が要る:契約数量と実施数量の差は、出来形の測定結果や数量計算書で示します。
設計変更協議とは
設計変更協議は、現場で設計図書と違う条件が見つかったときなどに、それを設計変更の対象とするか、どう変えるかを発注者(監督職員)と受注者が書面で話し合うことです。共通仕様書は「協議」を、書面により契約図書の協議事項について発注者または監督職員と受注者が対等の立場で合議し、結論を得ることと定義しています。
関東地方整備局の設計変更ガイドラインは、受注者の留意事項として「施工中に疑義が生じた場合には、発注者と『協議』し進めることが重要」としています。注意したいのは、「承諾」で施工した場合は設計変更できないという点です。承諾は受注者の提案に同意しただけで、設計図書の変更ではないからです。費用の増減を伴う変更は、「協議」を経て「指示」を受ける形にする必要があります。
公共工事の設計変更の流れ
関東地方整備局の設計変更ガイドラインが示す手続フロー(契約書第18条による場合)を、受注者の動きを中心に並べると次のとおりです。
| 順番 | 実施者 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 | 受注者 | 設計図書と現場の不一致などの事実を発見し、直ちに監督職員に通知して確認を請求する | 契約書第18条第1項 |
| 2 | 監督職員 | 受注者の立会いのうえ、直ちに調査する | 第18条第2項 |
| 3 | 発注者 | 受注者の意見を聴いて調査結果をまとめ、調査終了後14日以内に結果(とるべき措置の指示を含む)を通知する | 第18条第3項(国の直轄工事の期間。標準約款では日数は契約で定める) |
| 4 | 発注者 | 必要があれば設計図書を訂正・変更する。工事目的物の変更を伴わないものは、発注者と受注者が協議して発注者が行う | 第18条第4項 |
| 5 | 発注者・受注者 | 必要があると認められるときは、工期や請負代金額の変更を協議する | 第18条第5項、第24条、第25条 |
| 6 | 発注者・受注者 | 変更契約を結ぶ(軽微なものは工期末の精算変更でまとめて) | 昭和44年通達 |
発注者が自ら必要と認めて設計図書を変える場合は、第19条により変更内容が受注者に通知されます。工事を中止させる場合は第20条、工期の延長を受注者から求める場合は第22条の手続になります。
ガイドラインは、発注者が先行して作業を指示するときは必ず書面(指示書など)で行い、変更見込みの概算額(百万円単位が基本、百万円以下の場合は十万円単位)を記載するとしています。受発注者間の協議による変更では、協議の時点で受注者から見積書が出ている場合に限って概算額を記載します。概算額は参考値で、契約変更額を拘束するものではありません。
また、変更見込金額が当初請負代金額の30%を超えたことだけを理由に、設計変更に応じない、または必要な請負代金額や工期の変更を行わないことはあってはならないと明記されています。
設計変更ができるケース
契約書第18条第1項は、受注者が次の事実を見つけたときは直ちに監督職員に通知し、確認を請求しなければならないとしています。これが設計変更の入口になります。
| 号 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 第1号 | 図面、仕様書、現場説明書、質問回答書が一致しない(優先順位が定められている場合を除く) | 図面と数量表で数量が違う |
| 第2号 | 設計図書に誤謬(誤り)または脱漏(記載漏れ)がある | 必要な工種が設計図書にない |
| 第3号 | 設計図書の表示が明確でない | 仕様の読み方が二通りある |
| 第4号 | 設計図書に示された自然的・人為的な施工条件と実際の現場が一致しない | 地質・湧水が違う、地下埋設物がある |
| 第5号 | 設計図書で明示されていない施工条件について、予期できない特別な状態が生じた | 想定外の地中障害物 |
関東地方整備局のガイドラインは、このほか設計変更が可能なケースとして、仮設(任意仮設を含む)で当初予期しえなかった土質条件や地下水位が確認された場合(所定の手続が必要)、受注者の責任によらず工事に着手できない場合、所定の協議等を行い発注者の指示によるもの、受注者が行う設計図書の照査の範囲を超える作業を行う場合、受注者の責任によらない工期の延期・短縮で協議により必要と認められる場合などを挙げています。
なお、第18条第1項の事実を確認するための資料の作成費用は契約変更の対象になりませんが、発注者の書面による指示に基づいて受注者が設計変更に必要な資料を作成した場合は、契約変更の対象になります。
設計変更ができないケース
同じガイドラインは、原則として設計変更できないケースを次のように挙げています。精算変更で揉める原因の多くがここに当てはまります。
| 設計変更できないケース | 防ぎ方 |
|---|---|
| 設計図書に条件明示のない事項で、協議をせず受注者が独自に判断して施工した | 施工前に協議する |
| 協議はしたが、回答(指示)がない時点で施工した | 指示を受けてから施工する |
| 「承諾」で施工した | 費用に関わる変更は協議→指示の形にする |
| 契約書・共通仕様書の所定の手続を経ていない | 第18条〜第25条の手続を踏む |
| 正式な書面によらない(口頭のみの指示・協議等) | 打合せ簿などの書面に残す |
ただし、災害防止などのための臨機の措置(契約書第27条)は別に扱われます。受注者がとった臨機の措置の費用のうち、受注者が請負代金額の範囲で負担するのが適当でない部分は発注者が負担すると定められています。やむを得ず口頭で進めた場合は、速やかに根拠書類を作り、書面で協議します。
請負代金額の変更はどう決まるか
約款第25条は、請負代金額の変更は発注者と受注者が協議して定め、協議開始の日から所定の日数以内に協議が整わない場合は発注者が定めて受注者に通知するとしています。請負代金内訳書が承認されている契約(第25条(A))では、数量の増減が内訳書の数量の一定割合を超える場合、施工条件が異なる場合、内訳書にない項目が生じた場合などは変更時の価格を基礎に協議し、それ以外は内訳書の単価を基礎に定めます(一定割合は約款の記入例で百分の二十)。
発注者は協議にあたり、受注者の意見の趣旨をできる限り勘案して十分に協議するよう留意し、協議が整わなかったことなどを理由に受注者を不利益に扱ってはならないとされています(第25条)。日本下水道事業団のガイドライン(案)は、契約変更時の請負代金額には新規工種の場合を除き当初契約時の落札額が考慮されると説明しています。変更額の算定方法は発注者ごとに定めがあるため、特記仕様書や発注者の要領で確認してください。
請負代金額が著しく増額された場合は、追加の前払金を請求できることがあります(約款第35条)。手続は公共工事の前払金・中間前払金の請求方法を参照してください。
精算で困らないための記録の残し方
設計変更の精算でいちばん効くのは、変更の根拠となる記録です。法令で様式が決まっているものではありませんが、上のガイドラインの「書面で協議し、指示を受けてから施工する」という考え方に沿って、次の記録をそろえておきます。
| 記録 | 残す内容 | タイミング |
|---|---|---|
| 通知・協議の書面(打合せ簿など) | 発見した事実、第18条第1項の何号に当たるか、協議の内容と結論 | 発見したとき・協議のつど |
| 指示書 | 変更内容、概算額(記載がない場合はその理由) | 指示を受けたとき |
| 写真 | 変更前・施工中・完了後の状況。寸法がわかるようにスケールを当て、黒板に工事名・位置・内容を書く | 発見時・施工中・完了時 |
| 数量の記録 | 測量データ、出来形の測定結果、数量計算書(変更前後の比較) | 施工時 |
| 材料・機械の記録 | 追加材料の納品書、追加機械の稼働記録 | 納品時・稼働日ごと |
| 工程の記録 | 変更による工程への影響(変更工程表) | 変更が決まったとき |
施工方法や工程が変わる場合は、変更施工計画書の提出も必要です。書き方は施工計画書の変更(変更施工計画書)で解説しています。
打合せ簿に書く項目
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時・場所 | 協議の日時と場所 |
| 出席者 | 発注者側・受注者側の出席者 |
| 区分 | 通知・協議・指示・承諾のどれか(承諾は設計変更にならない点に注意) |
| 協議内容 | 変更の内容、理由、根拠となる条項(第18条第1項第◯号など) |
| 結論 | 「設計変更の対象とする/しない」、合意した内容 |
| 添付資料 | 写真、図面、数量計算書、見積書 |
現場用:設計変更・精算変更の管理表とチェックリスト
土木工事 業務改善Naviが、約款とガイドラインの手続を「精算変更の時点で根拠がそろっているか」の観点で並べ直したものです。変更が複数ある工事では、1件ごとに次の管理表で追いかけます。
| 管理項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 変更番号 | 通し番号 |
| 変更内容 | 変更の概要 |
| 根拠 | 第18条第1項第◯号/第19条/第20条/第22条 など |
| 発見日・通知日 | 事実を見つけた日と、監督職員に通知した日 |
| 協議・指示の状況 | 未協議/協議中/指示済み(指示書の日付) |
| 契約変更の時期 | 都度の変更契約/工期末の精算変更 |
| 概算額 | 指示書に記載された概算額(参考値) |
| 根拠資料の整備 | 写真、数量計算書、見積書、変更工程表の有無 |
工期末の精算変更の前には、次の点を確認します。
| 順番 | 確認すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | すべての変更に、協議の書面と指示書がそろっているか(承諾だけのものはないか) | 設計変更ガイドライン「設計変更が不可能なケース」 |
| 2 | 口頭で進めたものを、書面で協議し直したか | 同上 |
| 3 | 契約数量と実施数量の差を、出来形の測定結果と数量計算書で説明できるか | 日本下水道事業団ガイドライン(案) |
| 4 | 軽微でない変更を、工期末まで契約変更せずに残していないか | 昭和44年通達(都度遅滞なく) |
| 5 | 工期の変更が必要な変更について、工期変更の協議を済ませたか | 約款第24条 |
| 6 | 請負代金額の大幅な増減に伴う前払金の追加・返還を確認したか | 約款第35条 |
設計変更でよくあるトラブルと対策
| トラブル | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 変更が認められない | 協議せずに施工した、承諾で施工した、口頭だけで進めた | 協議→指示を書面で受けてから施工する |
| 金額が合わない | 数量や単価の根拠資料が不十分 | 数量計算書と見積書を協議時に提出する |
| 協議が長引く | 事実の認識が受発注者で違う | 写真・測定結果を通知時点で共有する |
| 精算変更で漏れる | 小さな変更が積み重なり把握できていない | 管理表で1件ずつ追いかける |
よくある質問
Q. 精算変更とは何ですか。 A. 工期末に、契約数量と実施数量の差や工事中に指示された軽微な設計変更をまとめて反映し、請負代金額と工期を確定させる最後の変更契約の呼び方です。国の通達で、軽微な設計変更に伴う契約変更は工期の末に行えば足りるとされていることが背景にあります。
Q. 設計変更協議とは何ですか。 A. 設計図書と現場の条件が違うときなどに、設計変更の対象とするか、どう変更するかを発注者と受注者が書面で対等に話し合い、結論を得ることです。共通仕様書の「協議」の定義に当たります。
Q. 設計変更と契約変更は同じですか。 A. 違います。設計変更は契約変更の手続の前に変更内容をあらかじめ受注者に指示することで、請負代金額や工期は変更契約を結んではじめて変わります。
Q. 承諾をもらって施工した変更は精算できますか。 A. 原則としてできません。承諾は設計図書の変更ではないため、関東地方整備局のガイドラインは「承諾で施工した場合」を設計変更できないケースに挙げています。費用に関わる変更は、協議を経て指示を受けてから施工します。
Q. 変更額が当初の請負代金額の30%を超えると変更できないのですか。 A. 30%を超えたことだけを理由に設計変更に応じない、または必要な請負代金額や工期の変更を行わないことはあってはならないと、国の設計変更ガイドラインに明記されています。
まとめ
- 精算変更は、工期末に契約数量と実施数量の差や軽微な設計変更をまとめて反映する最後の変更契約(実務上の呼び方)
- 設計変更(指示)と契約変更は別。軽微でない変更は都度遅滞なく契約変更するのが原則
- 設計変更協議は、書面で対等に話し合い結論を得ること。「承諾」で施工したもの、口頭だけのものは設計変更できない
- 第18条第1項の事実を見つけたら直ちに通知し、協議→指示→施工の順を守り、写真・数量・打合せ簿で根拠を残す
公共工事の支払いの流れは公共工事の代金支払い、工事全体の流れは公共工事の土木入札 完全ガイドも参考にしてください。
出典・参考
- 中央建設業審議会「公共工事標準請負契約約款」(令和7年12月2日改正)第18条(条件変更等)・第19条(設計図書の変更)・第20条(工事の中止)・第24条(工期の変更方法)・第25条(請負代金額の変更方法等)・第27条(臨機の措置)・第35条(前金払及び中間前金払)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001499463.pdf - 国土交通省 関東地方整備局「工事請負契約における設計変更ガイドライン(総合版)」令和7年3月(設計変更とは〔昭和44年3月31日 建設省東地厚発第31号の2を引用〕、変更見込金額が30%を超える場合の対応、先行指示書等への概算額の記載、設計変更が不可能なケース・可能なケース、設計変更手続きフロー、設計変更に関わる資料の作成)
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000697185.pdf - 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」第1編 第1章 第1節 総則(1-1-1-2 用語の定義〔指示・承諾・協議〕、1-1-1-18 設計図書の変更)
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun01_syo01_setsu01.html - 日本下水道事業団「工事請負契約における円滑な設計変更のためのガイドライン(案)」令和5年4月(工期末などに契約数量と実施数量の差などを精算する場合の扱い、変更見込み概算額)
https://www.jswa.go.jp/nyusatsu/pdf/koujiukeoi_pdf/koujiukeoi-guideline.pdf
いまの課題に近いものはどれですか?
選んだお悩みに最適なサービスのご案内ページへ移動します。
お使いの業務に合う機能と、無料体験の内容をご確認いただけます。




