土木工事の労働災害事例|建設業で多い事故の型と再発防止策
建設業の労働災害で最も多いのは墜落・転落です。 厚生労働省の令和7年の確定値では、建設業の死亡者214人のうち91人、休業4日以上の死傷者13,437人のうち4,343人が墜落・転落でした。建設業労働災害防止協会(建災防)の集計(令和6年)では、建設業の死亡者232人のうち土木工事が99人(42.7%)で最も多く、土木工事では墜落・転落21人に続いて、はさまれ・巻き込まれ15人、激突され14人、崩壊・倒壊13人と、重機と土砂による災害が多いのが特徴です。
本記事では、この統計を表にしたうえで、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に掲載された土木工事の災害事例6件から、原因と再発防止策を整理します。事例はいずれも出典のあるものだけを取り上げています。
建設業の労働災害の現状(令和7年確定値)
厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」によると、全産業の死亡者700人のうち建設業は214人で、業種別で最も多くなっています(前年は232人)。休業4日以上の死傷者は、建設業で13,437人(前年は13,849人)でした。
事故の型別(建設業・令和7年)
| 事故の型 | 死亡者数 | 死傷者数(休業4日以上) |
|---|---|---|
| 墜落・転落 | 91人 | 4,343人 |
| はさまれ・巻き込まれ | 23人 | 1,496人 |
| 崩壊・倒壊 | 22人 | 373人 |
| 激突され | 14人 | 704人 |
| 交通事故(道路) | 14人 | 499人 |
| 飛来・落下 | 8人 | 1,127人 |
| 高温・低温の物との接触 | 7人 | 371人 |
| 有害物等との接触 | 7人 | 84人 |
| 感電 | 6人 | 43人 |
| おぼれ | 6人 | 8人 |
| 転倒 | 5人 | 1,579人 |
| 切れ・こすれ | 0人 | 1,158人 |
| 動作の反動・無理な動作 | 0人 | 915人 |
| 上記以外(激突、踏抜き、爆発、破裂、火災、交通事故(その他)、その他、分類不能) | 11人 | 737人 |
| 合計 | 214人 | 13,437人 |
出典の別表3・別表4(業種、事故の型別)の建設業の行から作成しました。「上記以外」の行は、表に載せなかった型の人数を合計したものです。死亡では墜落・転落が4割を超え、休業4日以上の死傷では墜落・転落に続いて転倒、はさまれ・巻き込まれ、切れ・こすれ、飛来・落下が多くなっています。
土木工事で多い労働災害(建災防の集計・令和6年)
建災防が公表している「工事の種類別死亡災害発生状況」(令和6年確定値)では、建設業の死亡者232人の内訳は土木工事99人(42.7%)、建築工事78人(33.6%)、設備工事55人(23.7%)です。土木工事の99人を事故の型別に見ると次のとおりです。
| 事故の型(土木工事) | 死亡者数(令和6年) |
|---|---|
| 墜落・転落 | 21人 |
| はさまれ・巻き込まれ | 15人 |
| 激突され | 14人 |
| 崩壊・倒壊 | 13人 |
| 交通事故(道路) | 9人 |
| 転倒 | 6人 |
| 飛来・落下 | 6人 |
| おぼれ | 6人 |
| 高温・低温の物との接触 | 3人 |
| 交通事故(その他) | 2人 |
| その他 | 2人 |
| 激突 | 1人 |
| 切れ・こすれ | 1人 |
| 土木工事の合計 | 99人 |
工事の種類別では道路20人が最も多く、土地整理9人、上下水道7人、橋梁6人、河川5人と続きます(その他の土木工事35人)。建設業全体に比べて、はさまれ・巻き込まれ、激突され(重機・車両との接触を含む)、崩壊・倒壊、おぼれの比率が高いのが土木工事の特徴です。
早見表:事故の型ごとの主な法令と対策
土木工事 業務改善Naviが、上の統計で多い事故の型ごとに、関係する主な法令と対策を並べ直した早見表です。
| 事故の型 | 土木で起きやすい場面 | 主な法令・基準 | 対策の要点 |
|---|---|---|---|
| 墜落・転落 | 橋梁の足場、のり面、開口部 | 安衛則 第518条〜第521条(作業床・囲い等・墜落制止用器具) | 作業床と手すり、墜落制止用器具の使用、足場の組立て等作業主任者 |
| はさまれ・巻き込まれ、激突され | 重機の旋回・後進、トラックの後進 | 安衛則 第158条(接触の防止)、第365条(誘導者) | 立入禁止、誘導者の配置、運行経路の周知 |
| 崩壊・倒壊 | 溝掘削、土留め、のり面 | 安衛則 第355条〜第361条(明り掘削)、第368条〜第375条(土止め支保工) | 勾配の確保、土留め、作業主任者、点検 |
| 交通事故(道路) | 道路上の規制帯、工事車両の出入り | 道路工事保安施設設置基準、安衛則 第364条(運行経路) | 規制と保安施設、誘導者、運行経路の周知 |
| おぼれ | 河川工事、水上作業 | 安衛則 第532条(救命具等)、土木工事安全施工技術指針 第17章 | 救命具、監視員、出水時の退避基準 |
| 有害物等との接触 | マンホール、管渠内 | 酸素欠乏症等防止規則 | 作業開始前の酸素濃度測定、換気、作業主任者 |
土木工事の労災事例と再発防止策
以下の事例は、いずれも厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の労働災害事例から要点をまとめたものです。詳しい経過は各事例のページで確認できます。
(1) 墜落・転落:橋梁工事の張り出し足場の解体中に墜落
事例(道路建設工事業、死亡1人):橋梁建設工事に使った張り出し足場の解体を指示された作業者が、河床に墜落して死亡した。安全帯(現在の墜落制止用器具)を使用していなかった。足場の組立て等作業主任者が選任されておらず、作業を直接指揮する者がいなかった。作業手順も定められていなかった。
| 原因 | 再発防止策 |
|---|---|
| 墜落防止の措置がなかった | 親綱を張り、墜落制止用器具を使わせる。フルハーネス型の使用を徹底する |
| 作業主任者を選任せず、直接指揮する者がいなかった | 足場の組立て等作業主任者を選任し、直接指揮させる |
| 作業手順がなかった | 解体の手順を作成し、教育してから作業させる |
| 元請の管理 | 元請が統括安全管理を行う |
手すりを外して作業する解体時は特に危険です。取り外しの順序と、外している間の墜落防止の方法を手順書に書いておきます。
(2) 激突され:後進してきたドラグ・ショベルにひかれる
事例(上下水道工事業、死亡1人):配水管の敷設替え工事で、ドラグ・ショベルのバケットと排土板の間に鉄板をはさんで後進しながら運搬していたところ、後方で作業していた作業者に気付かずにひいた。被災者は後日死亡した。
| 原因 | 再発防止策 |
|---|---|
| 運転中の重機に接触する危険箇所へ作業者が立ち入った | 接触のおそれのある箇所への立入りを禁止する(安衛則第158条) |
| 誘導者を配置していなかった | 誘導者を配置し、その誘導に従って運転させる |
| 重機の用途外使用(鉄板の運搬) | 用途外使用は原則禁止。やむを得ない場合は安全措置を定める |
| 下請への指示が徹底されていなかった | 作業箇所ごとに責任者を指名し、元請と下請で連絡調整する |
(3) 崩壊・倒壊:下水管布設の溝掘削で掘削壁面が崩壊
事例(上下水道工事業、死亡1人):深さ約2.7mの掘削穴に入って本管の土被りをシャベルで掘っていたところ、掘削壁面が崩壊し、作業者が生き埋めになった。
| 原因 | 再発防止策 |
|---|---|
| 地山がほぼ垂直に掘削されていた | 掘削面を安全な勾配にする(安衛則第356条・第357条) |
| 土留め等の崩壊防止対策がなかった | 土留めを設ける。土砂崩壊を防ぐ掘削時の安全対策で深さの基準を確認する |
| 掘削土で法肩の上載圧が増えた | 掘削土を法肩に置かない |
| ドラグ・ショベルの作業振動 | 掘削面の近くで重機を使う場合の崩壊防止を計画する |
| 地山の掘削作業主任者を選任していなかった | 掘削面の高さ2m以上は作業主任者を選任し、直接指揮させる |
| 安全な作業計画がなかった | 地山を事前に調査し、作業計画を立てる |
(4) 崩壊・倒壊:トラックに積み込んだ鋼矢板が崩れ落ちる
事例(一般貨物自動車運送業、死亡1人):土木現場で移動式クレーンを使って鋼矢板(1束10枚)をトラックに積み込む作業中、荷台上の作業者が玉掛け用ワイヤロープをフックから外して荷台に放り出したままクレーンを巻き上げたため、ロープが荷台のフック掛けに引っ掛かり、鋼矢板の束が崩れ落ちた。飛び降りた作業者が下敷きになった。
| 原因 | 再発防止策 |
|---|---|
| ワイヤロープが荷台に引っ掛かった | ワイヤロープは手で抜き取る |
| 無資格で玉掛け作業をしていた | 玉掛けは技能講習修了者に行わせる |
| ロープの状態を確認せずに巻上げの合図をした | 安全を確認してから合図を送る |
土木現場では、運送業者など別会社の作業者が荷の積み卸しに関わります。特別教育・技能講習の資格の確認と、合図のルールを入場時に共有しておきます。
(5) 有害物等との接触:下水道のマンホール内で酸素欠乏
事例(その他の土木工事業、死亡1人・休業1人):下水道の幹線管路工事で、作業者がマンホール内の土砂を取り除いた後、管の接続用の穴を開ける作業中にマンホール内で倒れ、救助に入った同僚も被災した。
| 原因 | 再発防止策 |
|---|---|
| マンホールに入る前に酸素濃度を測定しなかった | 作業開始前に酸素濃度を測定する(酸素欠乏・硫化水素の対策) |
| 換気をせず、空気呼吸器も使わなかった | 換気し、必要に応じて空気呼吸器を使う |
| 酸素欠乏危険作業主任者を選任していなかった | 作業主任者を選任し、職務を行わせる |
| 特別教育をしていなかった | 酸素欠乏危険作業の特別教育を行う |
酸素欠乏は、空気中の酸素濃度が18%未満の状態をいいます(酸素欠乏症等防止規則第2条)。救助に入った人が続けて倒れる二次災害が起きやすいため、救助は空気呼吸器等を着けた者が行うことを全員に教えておきます。
(6) 交通事故(道路):道路の掘削工事現場で後進したトラックにひかれる
事例(道路建設工事業、死亡1人):片側を閉鎖した二車線道路で溝の掘削工事中、トラックが後進しながら反対車線に出ようとしたとき、交通整理をしていた作業者がトラックの後方に移動してきて後輪にひかれた。
| 原因 | 再発防止策 |
|---|---|
| 運転者が死角にいた作業者を見落とした | 後進時は誘導者を配置し、合図のルールを決める |
| 狭い現場で誘導者なしにバック運転した | 運行経路と出入の方法を事前に決める |
| 作業手順を事前に検討していなかった | 突発的な作業も事前に検討し、作業指揮者を指名する |
| 元請と下請の連絡調整、安全教育の不足 | 元方事業者が調整と統括安全衛生管理を行い、新規入場者教育を行う |
道路上の規制と保安施設の考え方は道路工事の交通事故防止で解説しています。
6つの事例に共通する原因
6件のうち多くの事例で、次の原因が重なっています。
- 作業主任者・作業指揮者・誘導者がいなかった:(1)(3)(5) は作業主任者の未選任、(2)(6) は誘導者の未配置
- 作業手順・作業計画がなかった:(1)(3)(6)
- 元請と下請、別会社どうしの連絡調整が不足していた:(1)(2)(6)
- 資格・教育が不足していた:(4)(5)(6)
統計の数字より、こうした「誰が指揮し、どの手順で、誰と調整するか」が決まっていないことが、事故の型を問わず共通する原因です。
再発防止のための取り組み
(1) リスクアセスメント
厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」は、危険性・有害性を特定し、リスクを見積もり、優先度を決めて低減措置を行う手順を示しています。低減措置は、法令に定められた事項を必ず実施したうえで、次の優先順位で検討します。
| 優先順位 | 措置 | 土木工事での例 |
|---|---|---|
| 1 | 設計や計画の段階での危険な作業の廃止・変更等(本質的対策) | 開削をやめて推進工法にする、地上で組み立ててから架設する |
| 2 | インターロック、局所排気装置等の設置(工学的対策) | 重機の接近警報装置、送風機による換気 |
| 3 | マニュアルの整備等(管理的対策) | 作業手順書、立入禁止区域、誘導者の配置 |
| 4 | 個人用保護具の使用 | 墜落制止用器具、保護帽、空気呼吸器 |
(2) ヒヤリハット活動
ヒヤリハット(事故には至らなかったが、危険を感じた出来事)の報告と共有を日常的に行います。
- ヒヤリハット報告書の様式を整える
- 報告した人を責めない
- 集まった事例を定期的に分析し、対策を検討する
- 対策の結果を全作業員に伝える
(3) 安全教育
労災が発生した場合の対応
| 手順 | 対応内容 |
|---|---|
| (1) 被災者の救護 | 応急処置、救急車の手配 |
| (2) 二次災害の防止 | 作業の中止、危険区域への立入禁止。酸欠・崩壊の現場に無防備で入らない |
| (3) 関係者への連絡 | 元請、発注者(監督職員)、労働基準監督署、必要に応じて警察 |
| (4) 現場の保存と記録 | 写真、図面、関係者の話 |
| (5) 労働者死傷病報告 | 死亡又は休業4日以上は遅滞なく、休業4日未満は四半期ごとに、電子申請で所轄の労働基準監督署長へ報告(安衛則第97条) |
| (6) 原因の究明 | 事故の原因を調べ、分析する |
| (7) 再発防止策 | 対策を決め、ほかの現場にも展開する |
休業4日未満の報告は、1〜3月・4〜6月・7〜9月・10〜12月の期間ごとに、それぞれの期間の最後の月の翌月末日までに行います。
よくある質問
Q. 建設業で一番多い労働災害は何ですか。 A. 墜落・転落です。厚生労働省の令和7年確定値では、建設業の死亡者214人のうち91人、休業4日以上の死傷者13,437人のうち4,343人が墜落・転落でした。
Q. 土木工事で多い労災は何ですか。 A. 建災防の集計(令和6年)では、土木工事の死亡者99人のうち、墜落・転落21人、はさまれ・巻き込まれ15人、激突され14人、崩壊・倒壊13人の順でした。重機・車両との接触と土砂の崩壊が多いのが土木工事の特徴です。
Q. 建設業の労働災害は減っていますか。 A. 厚生労働省の確定値では、建設業の死亡者は令和6年の232人から令和7年は214人に、休業4日以上の死傷者は13,849人から13,437人に減りました。ただし死亡者数は全産業の中で最も多い業種です。
Q. 労災の事例はどこで調べられますか。 A. 厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」で、業種や事故の型ごとに労働災害事例とヒヤリ・ハット事例を検索できます。
まとめ
- 建設業の労働災害は墜落・転落が最も多い(令和7年:死亡214人中91人)
- 土木工事は建設業の死亡者の4割強を占め、はさまれ・巻き込まれ、激突され、崩壊・倒壊が多い(令和6年)
- 事例に共通する原因は、作業主任者・誘導者の不在、作業手順の欠如、連絡調整と教育の不足
- 労災が起きたら救護と二次災害防止を優先し、死亡又は休業4日以上は遅滞なく労働者死傷病報告を出す
現場の安全管理の中心となる安全衛生責任者の役割もあわせて確認してください。
出典・参考
- 厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」令和8年5月(別表1 業種別死亡災害発生状況、別表2 業種別死傷災害発生状況、別表3・別表4 業種、事故の型別)
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001704887.pdf - 厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況を公表」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73382.html - 建設業労働災害防止協会「令和8年度 建設業労働災害防止対策実施事項」参考資料1 建設業における労働災害の発生状況(工事の種類別死亡災害発生状況、令和6年確定値)
https://www.kensaibou.or.jp/public_relations/enforcement_plan/files/2026_enforcement_plan_06.pdf - 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」労働災害事例
「橋梁建設工事に使用した張り出し足場の解体中に墜落」https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100491
「後進してきたドラッグ・ショベルにひかれる」https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100064
「下水管布設のための溝掘削工事における土砂崩壊」https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100052
「トラック荷台から鋼矢板が崩れ落ち、逃げた作業者を直撃」https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=000070
「下水道工事でマンホールに入り酸欠」https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_DET.aspx?joho_no=100191
「道路の掘削工事現場内で、バックしてきた工事用トラックにひかれる」https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=100268 - 厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針 同解説」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/roudou/an-eihou/dl/ka060320001b.pdf - 労働安全衛生規則 第97条(労働者死傷病報告)、第158条、第355条〜第375条、第518条〜第521条、第532条 e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 - 酸素欠乏症等防止規則 第2条 e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000042 - 国土交通省大臣官房技術調査課「土木工事安全施工技術指針」令和7年3月 第17章 河川及び海岸工事
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001878929.pdf
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