公共工事の前払金・中間前払金の請求方法|請求書と14日の数え方
公共工事の前払金は、受注者が保証事業会社(前払金の保証を行う国土交通大臣登録の会社)と保証契約を結び、その保証証書を発注者に預けたうえで、前払金の支払いを「請求」して受け取ります。請求書の提出は必要で、公共工事標準請負契約約款では、発注者は請求を受けた日から14日以内に前払金を支払うと定めています。 14日は、契約に別段の定めがなければ民法の期間計算により、請求を受けた日の翌日から数えます。
本記事では、前払金と中間前払金の違い、請求の手順と必要書類、「請求書は必要か」「14日以内はどう数えるか」といった実務で迷う点、前払金の使い道の制限を、約款と法令の条文に沿って整理します。条番号や割合は契約ごとに決まるため、最終的には自社の工事請負契約書と発注者の要領で確認してください。
前払金・中間前払金の早見表
前払金(前金払)は、工事の完成前に請負代金の一部を受け取れる制度です。材料費や労務費など、着工時にかかる資金を手当てするために使います。中間前払金は、当初の前払金に加えて工期の途中でもう一度前払いを受ける制度です。
| 項目 | 前払金 | 中間前払金 |
|---|---|---|
| 受け取れる時期 | 契約締結後(保証証書を預けて請求) | 当初の前払金を受けたあと、工期の2分の1を経過してから |
| 割合(地方公共団体の上限) | 請負代金のうち材料費等に相当する経費の4割以内 | 同じく2割以内(前払金と合わせて6割まで) |
| 割合(約款の記載例) | 請負代金額の10分の4以内 | 請負代金額の10分の2以内 |
| 主な要件 | 保証事業会社との保証契約、保証証書の寄託 | 工期の2分の1経過、工程表どおりの作業の実施、出来高が請負代金の2分の1以上、発注者の認定 |
| 保証 | 前払金の保証契約 | 中間前払金の保証契約(別に結ぶ) |
| 支払期限(約款) | 請求を受けた日から14日以内 | 同じく14日以内 |
| 根拠 | 約款第35条第1項・第3項、地方自治法施行規則附則第3条第1項 | 約款第35条第4項・第5項、地方自治法施行規則附則第3条第2項 |
地方公共団体の工事では、地方自治法施行規則附則第3条で、請負代金の額が50万円以上の土木建築に関する工事について、前払金は4割、中間前払金は2割を超えない範囲と定められています。約款の「10分の4」「10分の2」は記入例で、実際の割合は契約書に書かれた数字が基準です。中間前払金の制度を導入していない発注者もあるため、公告と契約書で有無を確認してください。
なお、令和7年12月2日改正の標準約款では、前金払の条文は第35条です。改正前の版や、それをもとにした契約書では第34条になっていることがあるため、条番号は手元の契約書で確かめてください。
前払金の請求書は必要か
必要です。 約款は、受注者が保証証書を発注者に預けたうえで「前払金の支払いを発注者に請求することができる」と定め、発注者の14日以内の支払義務は「請求があったとき」から始まります。保証証書を出しただけでは請求したことにならないため、発注者が定める様式の前払金請求書を提出します。
保証証書は紙のほか、電子保証(電子化された保証証書)で出せる発注者もあります。約款も、保証証書を預ける代わりに、保証事業会社が定めて発注者が認めた電磁的な方法をとれば、保証証書を預けたものとみなすと定めています(第35条第2項)。たとえば鹿児島県は、令和7年4月1日以降の契約分から、保証事業会社が発行する「保証契約番号・認証キー」を電子メールで提出する方法を認めています。電子保証にしても、前払金の請求そのものは別に必要です。
前払金の請求手続(4ステップ)
| 順番 | やること | 相手 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | 工事請負契約を結ぶ | 発注者 | 契約書で前払金の割合と、中間前払金の有無を確認する |
| 2 | 保証契約を申し込む | 保証事業会社 | 保証期限は契約書に書かれた工事完成の時期。申込みに必要な書類は保証事業会社の案内に従う |
| 3 | 保証証書(または電子保証の認証情報)を発注者に預ける | 発注者 | 電子保証を使えるかは発注者に確認する |
| 4 | 前払金請求書を提出する | 発注者 | 請求を受けた日から14日以内に支払われる(約款第35条第3項) |
保証事業会社は「公共工事の前払金保証事業に関する法律」に基づいて国土交通大臣の登録を受けた会社で、東日本建設業保証、西日本建設業保証、北海道建設業信用保証の3社があります。申込先や保証料、審査にかかる日数は、各社の案内で確認してください。
「14日以内」の数え方
約款は「請求を受けた日から十四日以内に前払金を支払わなければならない」と定めています。契約に期間の数え方の定めがなければ、民法の規定(第138条)によって次のように数えます。
- 初日は数えない:日で期間を定めたときは、期間の初日は算入しない(民法第140条)。請求を受けた日の翌日が1日目になります。
- 末日の終わりで満了:期間は、その末日が終わったときに満了する(民法第141条)。
- 末日が休日のとき:期間の末日が日曜日・祝日その他の休日に当たり、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、翌日に満了する(民法第142条)。
計算例(数え方の早見表)
| 請求を受けた日 | 1日目(起算日) | 14日目(期限) |
|---|---|---|
| 10月1日 | 10月2日 | 10月15日 |
| 10月20日 | 10月21日 | 11月3日(休日の扱いは上の民法第142条を参照) |
起点は「請求書を発注者に出した日」ではなく、発注者が「請求を受けた日」です。郵送や電子申請では受理日がずれることがあるため、受付日を記録しておくと、入金予定が立てやすくなります。地方公共団体の財務規則などで別の定めがある場合は、そちらを確認してください。
ちなみに、工事完成後の請負代金の支払いは約款で「請求を受けた日から40日以内」(第33条第2項)、国の契約では政府契約の支払遅延防止等に関する法律第6条で工事代金は40日以内の日を支払時期とするよう定められています(同法は地方公共団体の契約にも準用、第14条)。前払金の「14日」は、この完成代金の期限とは別の、約款上の期限です。
中間前払金の要件と請求手続
請求できる要件
中間前払金を請求するには、次のすべてを満たす必要があります(地方自治法施行規則附則第3条第2項、関東地方整備局・北陸地方整備局の公表資料)。
(1) 当初の前払金の支払いを受けていること
(2) 工期の2分の1を経過していること
(3) 工程表により、工期の2分の1を経過するまでに実施すべきとされている作業が行われていること
(4) すでに行われた作業に要する経費が、請負代金の額の2分の1以上に相当すること
手続の流れ
(1) 中間前払金の認定を発注者に請求する(中間前払金認定請求書に、工事履行報告書と、工事の進み具合を示す工程表・工事写真など発注者が求める資料を添える)
(2) 発注者が要件を満たしているか確認し、認定の結果を通知する
(3) 保証事業会社と中間前払金の保証契約を結び、保証証書を発注者に預ける
(4) 中間前払金請求書を提出する。発注者は請求を受けた日から14日以内に支払う(約款第35条第5項で第3項を準用)
国土交通省の直轄工事では、認定の請求を受けた日から遅くとも7日以内に認定の結果を通知すること(提出資料の不備や連休前などの事情がある場合を除く)、出来高が2分の1以上であることの認定資料は工事履行報告書で足りることが、令和2年3月11日の通知(国地契第57号ほか)で示されています。部分払と違い、出来高の現場検査を経ずに書類で認定されるのが中間前払金の特徴です。
前払金の使い道(使途)の制限
前払金は、その工事の施工に必要な経費にしか使えません。約款第37条は、前払金を次の経費以外の支払いに充ててはならないと定めています。
| 使える経費(約款第37条) | 注意点 |
|---|---|
| 材料費・労務費 | その工事の分に限る |
| 機械器具の賃借料 | リース・レンタル料 |
| 機械購入費 | その工事で償却される割合に相当する額に限る |
| 動力費・支払運賃・修繕費・仮設費 | その工事の分に限る |
| 労働者災害補償保険料・保証料 | 前払金の保証料も含まれる |
| 現場管理費・一般管理費等のうちその工事の施工に要する費用 | 約款第37条(A)を使う契約では、前払金額の一定割合まで(約款の記入例は100分の25)。中間前払金は対象外 |
国土交通省発注工事でも、前払金額の100分の25を上限に現場管理費・一般管理費等に充てられる使途の拡大が行われてきました(令和5年3月30日公表など)。自社の契約がどちらの型か、契約書の第37条(または相当する条文)で確認してください。
保証事業会社は、前払金が適正にその工事に使われているかを厳正に監査しなければならないと法律で定められています(公共工事の前払金保証事業に関する法律第27条)。他の工事の支払いや借入金の返済など、上の経費以外には使えません。払い出しの手続は保証事業会社の案内に従ってください。
請負代金が増減したときの前払金
設計変更などで請負代金額が変わったときは、前払金も調整されます。
- 著しく増額された場合:増額後の請負代金額に約款の割合を掛けた額から、受領済みの前払金を差し引いた範囲で、追加の前払金を請求できます(約款第35条第6項)。あらかじめ保証契約を変更し、変更後の保証証書を預ける必要があります(第36条第1項)。
- 著しく減額された場合:受領済みの前払金が減額後の請負代金額に対する所定の割合を超えるときは、減額された日から30日以内に超過額を返還します(第35条第7項)。
設計変更の進め方と精算は設計変更の精算と変更協議で解説しています。
部分払との違い
前払金のほかに、工事の途中で出来形(できあがった部分)に応じて支払いを受ける部分払(出来高払い)があります。
| 項目 | 前払金・中間前払金 | 部分払 |
|---|---|---|
| 支払いの基準 | 請負代金額に対する割合 | 出来形部分と搬入済み材料に相応する請負代金相当額 |
| 保証 | 保証事業会社の保証が必要 | 不要 |
| 確認の方法 | 前払金は保証証書、中間前払金は書類による認定 | 発注者による出来形の検査(確認の請求から14日以内) |
| 支払期限(約款) | 請求から14日以内 | 請求から14日以内 |
| 回数 | 前払金1回+中間前払金1回 | 契約書で定めた回数まで |
| 根拠 | 約款第35条 | 約款第38条 |
部分払で受け取れる額は、約款第38条第6項で次の式とされています(10分の9は約款の記入例)。前払金を受けている分が差し引かれる仕組みです。
部分払金の額 ≦ 請負代金相当額 ×(9/10 − 前払金額 ÷ 請負代金額)
中間前払金と部分払を同じ工事で併用できるかは、発注者によって扱いが異なります。国土交通省の直轄工事では「中間前金払をした工事について既済部分払ができることの特例について」(昭和48年3月22日 建設省会発第1279号)に基づく運用があります。地方公共団体の扱いは発注者ごとに異なるため、契約書と発注者の要領で確認してください。支払制度全体の流れは公共工事の代金支払い、出来高の請求書類は土木工事の請求書と出来高調書の書き方も参照してください。
現場用:前払金請求のチェックリスト
土木工事 業務改善Naviが、約款と法令の規定を「契約から入金まで」の順に並べたチェックリストです。
| 順番 | 確認すること | 根拠・資料 |
|---|---|---|
| 1 | 契約書の前払金の割合と、中間前払金の有無 | 工事請負契約書(約款第35条相当) |
| 2 | 前払金の使途が(A)型(現場管理費等に一部充当可)か(B)型か | 契約書(約款第37条相当) |
| 3 | 保証事業会社に保証契約を申し込んだか(保証期限=工事完成の時期) | 保証事業会社の案内 |
| 4 | 保証証書を紙で出すか、電子保証の認証情報で出すか | 発注者の案内 |
| 5 | 前払金請求書を発注者の様式で提出し、受理日を記録したか | 約款第35条第1項・第3項 |
| 6 | 支払期限(受理日の翌日から数えて14日目)を資金繰り表に入れたか | 約款第35条第3項、民法第140条・第141条 |
| 7 | 前払金の払い出しを、使える経費の範囲で管理しているか | 約款第37条、前払金保証事業法第27条 |
| 8 | 工期の2分の1を過ぎる前に、中間前払金の要件(工程・出来高2分の1)を満たせる工程か | 地方自治法施行規則附則第3条第2項 |
| 9 | 請負代金が大きく増額・減額したとき、保証契約の変更と前払金の追加・返還を確認したか | 約款第35条第6項・第7項、第36条 |
よくある質問
Q. 公共工事の前払金の請求書は必要ですか。 A. 必要です。約款では、保証証書を預けたうえで前払金の支払いを「請求」でき、発注者の14日以内の支払義務は請求を受けたときから始まります。電子保証を使う場合も、前払金の請求は別に行います。様式は発注者が定めるものを使います。
Q. 前払金の「14日以内」はどう数えますか。 A. 契約に別段の定めがなければ民法の期間計算により、請求を受けた日の翌日を1日目として数え、14日目が終わるまでが期限です。たとえば10月1日に請求を受けた場合、期限は10月15日です。
Q. 前払金はいつ請求できますか。 A. 契約を結び、保証事業会社と保証契約を結んで保証証書を発注者に預けたあとに請求できます。着工前の材料手配などに使うため、契約後早めに手続するのが一般的です。
Q. 中間前払金はどんなときに請求できますか。 A. 当初の前払金を受けていて、工期の2分の1を経過し、工程表どおりの作業が行われ、すでに行われた作業の経費が請負代金の2分の1以上に達しているときです。発注者の認定を受けてから、保証契約を結び請求します。
Q. 前払金は何に使えますか。 A. その工事の材料費、労務費、機械器具の賃借料、機械購入費(その工事で償却される分)、動力費、支払運賃、修繕費、仮設費、労災保険料、保証料です。契約によっては前払金額の一定割合まで現場管理費・一般管理費等にも充てられます。他の工事の支払いや借入金の返済には使えません。
まとめ
- 前払金は、保証事業会社との保証契約→保証証書(電子保証も可)の寄託→前払金請求書の提出、の順で受け取る。請求書は必要
- 発注者は請求を受けた日から14日以内に支払う(標準約款第35条第3項)。14日は請求を受けた日の翌日から数える
- 地方公共団体の工事では、前払金は4割、中間前払金は2割が上限(地方自治法施行規則附則第3条)。実際の割合は契約書で確認
- 中間前払金は「工期2分の1経過・工程どおり・出来高2分の1以上」を満たし、発注者の認定を受けて請求する
- 前払金はその工事の経費にしか使えず、保証事業会社が使途を監査する
入札から受注までの流れについては公共土木工事の入札ガイド、入金のタイミングを含めた資金管理は土木工事会社の資金繰り改善も併せてご確認ください。
出典・参考
- 中央建設業審議会「公共工事標準請負契約約款」(令和7年12月2日改正)第33条(請負代金の支払い)・第35条(前金払及び中間前金払)・第36条(保証契約の変更)・第37条(前払金の使用等)・第38条(部分払)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001499463.pdf - 地方自治法施行規則 附則第3条(公共工事の前金払の割合、中間前金払の要件)e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000008029 - 公共工事の前払金保証事業に関する法律 第2条(定義)・第27条(前払金の使途の監査)e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000184 - 民法 第138条・第140条〜第142条(期間の計算)e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - 政府契約の支払遅延防止等に関する法律 第6条(支払の時期)・第14条(地方公共団体への準用)e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000256 - 国土交通省 大臣官房地方課長ほか「公共工事の代価の中間前金払及び既済部分払等の手続の簡素化・迅速化の促進について」(令和2年3月11日 国地契第57号ほか。建設業課長事務連絡に別添)
https://www.mlit.go.jp/common/001342729.pdf - 国土交通省「国土交通省発注工事に関する前金払の特例の継続」(令和5年3月30日報道発表)
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00173.html - 国土交通省 関東地方整備局「資金繰り対策」(前払金・中間前払金制度の概要)
https://www.ktr.mlit.go.jp/kensan/kensan00000021.html - 国土交通省 北陸地方整備局「中間前払金制度」(請求の要件と提出書類)
https://www.hrr.mlit.go.jp/kensei/sangyo/kensetsu/keieisien/251001chuumae_seido.pdf - 鹿児島県「建設工事等における電子保証(契約保証・前払金保証)について」(地方公共団体の運用例)
https://www.pref.kagoshima.jp/ah01/kanri/densihosho.html
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