業務改善事例約10分で読めます
材料の在庫管理を見える化してロスを年間200万円削減|S土木株式会社様
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | S土木株式会社 |
| 所在地 | 中国地方 |
| 従業員数 | 25名 |
| 主な事業 | 上下水道工事、道路工事、土地造成工事 |
| 年間売上 | 約5.5億円 |
| 資材置場 | 本社ヤード1か所+現場仮置場(常時3-5か所) |
導入前の課題
S土木株式会社では、工事で使用する材料(管材、継手、バルブ、セメント、骨材など)の在庫管理がほとんどできていませんでした。
在庫管理の実態(改善前)
| 問題 | 具体的な状況 |
|---|---|
| 在庫の数量が把握できていない | 「だいたいこれくらいある」という感覚値のみ |
| 同じ材料を重複発注 | ヤードにある材料を知らずに新たに注文する |
| 余剰材料が放置される | 工事完了後の残材がヤードに積み上がる |
| 材料の劣化・期限切れ | セメントや混和剤の使用期限切れが頻繁に発生 |
| 棚卸しに時間がかかる | 年1回の棚卸しに2人で丸2日かかる |
| 盗難・紛失に気付けない | 在庫記録がないため、なくなっても分からない |
ロスの内訳(年間推定)
| ロスの種類 | 年間推定金額 |
|---|---|
| 余剰材料の廃棄 | 約80万円 |
| 材料の重複発注 | 約50万円 |
| 使用期限切れによる廃棄 | 約30万円 |
| 紛失・破損(管理不備) | 約40万円 |
| 緊急発注による割増運賃 | 約30万円 |
| 合計 | 約230万円 |
改善のきっかけ
決算時の棚卸しで、ヤードに200万円以上の使えない残材(錆びた管材、固まったセメント、規格違いの継手)が発見されたことがきっかけです。
社長は「材料の管理ができていないのは、お金を捨てているのと同じ」と認識し、在庫管理の見える化に着手しました。
取り組みの内容
(1) 材料のカテゴリ分けと台帳の作成
まず、管理する材料をカテゴリ分けし、台帳(リスト)を作成しました。
| カテゴリ | 主な材料 | 管理方法 |
|---|---|---|
| 管材・継手 | 塩ビ管、鋳鉄管、PE管、各種継手 | 1本(個)単位で管理 |
| バルブ類 | 仕切弁、消火栓、止水栓 | 1個単位で管理 |
| セメント・骨材 | セメント、砂、砕石 | 袋(t)単位で管理 |
| 混和剤・薬品 | AE減水剤、養生剤 | 缶単位+使用期限を管理 |
| 仮設材 | 矢板、H鋼、覆工板 | 1枚(本)単位で管理 |
| 消耗品 | 安全用品、工具類 | 箱(セット)単位で管理 |
(2) バーコードによる入出庫管理
各材料にバーコードラベルを貼り、入出庫をスマートフォンで読み取る仕組みを導入しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| バーコードラベル | 市販のラベルプリンターで作成(材料名+規格+管理番号) |
| 読み取り | スマートフォンのカメラでバーコードを読み取り |
| 管理アプリ | クラウド型の在庫管理アプリを利用 |
| 入庫処理 | 材料が届いたらバーコードを読み取り+数量を入力 |
| 出庫処理 | 現場に持ち出す際にバーコードを読み取り+工事名を選択 |
(3) ヤードの整理整頓(5S活動)
在庫管理と並行して、ヤードの整理整頓を実施しました。
| 取り組み | 内容 |
|---|---|
| 不要品の撤去 | 使えない残材を廃棄(約200万円分) |
| 保管場所の区画分け | 材料カテゴリごとに保管場所を決め、看板を設置 |
| 先入先出の徹底 | 古い材料から使うルールを徹底 |
| 定位置管理 | 材料ごとの定位置を写真で掲示 |
(4) 発注ルールの整備
在庫数量に基づいた発注ルールを策定しました。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 発注点の設定 | 材料ごとに「この数量を下回ったら発注」という基準を設定 |
| 発注の承認 | 一定金額以上の発注は上長の承認を必要とする |
| 発注前の在庫確認 | 新規発注前に必ずアプリで在庫を確認 |
| 残材の転用 | 他現場の残材を確認し、転用できるものは転用 |
導入スケジュール
| 期間 | 取り組み |
|---|---|
| 1か月目 | 材料台帳の作成、ヤードの整理整頓 |
| 2か月目 | バーコードラベルの作成・貼付、アプリの設定 |
| 3か月目 | 入出庫管理の試行(本社ヤードのみ) |
| 4-5か月目 | 現場仮置場も含めた全体運用 |
| 6か月目 | 発注ルールの整備、効果検証 |
定量的な効果
導入1年後の効果です。
| 指標 | 改善前 | 改善後 | 改善幅 |
|---|---|---|---|
| 材料ロス(年間) | 約230万円 | 約30万円 | -200万円 |
| 余剰在庫の金額 | 約400万円 | 約150万円 | -250万円 |
| 棚卸し作業時間 | 2人x2日 | 2人x半日 | -75% |
| 材料の重複発注 | 月2-3回 | ほぼゼロ | -95%以上 |
| 緊急発注 | 月3-4回 | 月0-1回 | -80% |
コスト対効果
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 導入費用(初年度) | 約40万円(ラベルプリンター、アプリ利用料等) |
| 年間運用費用 | 約15万円(アプリ利用料、ラベル消耗品) |
| 年間削減金額 | 約200万円 |
| 投資回収期間 | 約3か月 |
定性的な効果
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 在庫の可視化 | いつでもスマホで在庫状況を確認できるようになった |
| 工事別の材料費把握 | 出庫時に工事名を紐付けることで、工事別の材料費が把握可能に |
| ヤードの美化 | 5S活動により、ヤードが整頓され安全性も向上 |
| 協力会社への信頼 | 「材料管理がしっかりしている元請」として評価が向上 |
苦労した点
| 課題 | 対応 |
|---|---|
| 入出庫の記録を忘れる | 最初の1か月は管理者が毎日確認し、記録漏れを指摘 |
| 現場で忙しくて読み取りが面倒 | 1回の操作を10秒以内に簡略化。朝の積込み時にまとめて処理 |
| 残材の帰着処理 | 工事完了時の残材戻し入れをルーティン化 |
| 規格違いのバーコード登録 | 同じ材料でも規格(径、長さ)ごとに別コードで管理 |
現場代理人の声
「以前は現場に行く前に『あの材料、ヤードにあったかな?』と不安になって、念のため発注していました。今はスマホで確認できるので、無駄な発注がなくなりました」(40代・現場代理人)
まとめ
材料の在庫管理は、地味ですが確実に利益を改善できる取り組みです。S土木株式会社の事例では、バーコード管理というシンプルな仕組みで年間200万円のロスを削減しました。
導入費用も低く、3か月で投資を回収できるため、費用対効果の高い改善策です。まずはヤードの整理整頓から始めてみてはいかがでしょうか。
