遠隔臨場の導入方法と実施手順【土木工事】
遠隔臨場とは
遠隔臨場とは、動画撮影用のカメラやウェアラブル端末を活用し、発注者が現場に行かなくても「段階確認」「材料確認」「立会」をリモートで実施できる仕組みです。国土交通省は2022年度から本格的に遠隔臨場の活用を推進しており、受注者・発注者双方の移動時間を削減できる手段として注目されています。
本記事では、遠隔臨場を導入するために必要な機材や通信環境、実施手順を分かりやすく解説します。
遠隔臨場の対象となる業務
| 業務 | 内容 | 遠隔臨場での対応 |
|---|---|---|
| 段階確認 | 施工途中の出来形や品質の確認 | カメラで計測状況をリアルタイム配信 |
| 材料確認 | 使用材料の品質・規格の確認 | 材料の外観・ラベルをカメラで確認 |
| 立会 | 現場状況の確認・指示 | ウェアラブルカメラで現場映像を共有 |
従来は発注者が現場に足を運んで確認していましたが、遠隔臨場では映像と音声のリアルタイム共有によりこれらの業務を効率化できます。
導入に必要な機材と通信環境
機材の選定
| 機材 | 用途 | 価格帯(目安) |
|---|---|---|
| ウェアラブルカメラ | ヘルメットに装着し現場映像を配信 | 3万円から10万円 |
| スマートフォン | 映像・音声の送受信端末 | 既存端末を活用可能 |
| タブレット | 図面表示と映像確認を同時に行う | 3万円から8万円 |
| モバイルWi-Fiルーター | 通信環境の確保 | 月額3,000円から5,000円 |
| Web会議用ソフトウェア | 映像・音声のリアルタイム共有 | 無料から月額2,000円程度 |
通信環境の確認ポイント
(1) 現場での通信速度を事前にテストする(上り速度3Mbps以上が目安)
(2) 山間部や地下などで電波が届きにくい場合はポータブル基地局やメッシュWi-Fiを検討する
(3) 通信が不安定な場所では録画機能を併用し、途切れた部分を補完できるようにする
遠隔臨場の実施手順
ステップ(1) 事前協議
施工計画段階で発注者と遠隔臨場の実施について協議します。協議する内容は以下のとおりです。
- 遠隔臨場の対象とする確認項目(段階確認、材料確認、立会)
- 使用する機材とWeb会議ツール
- 映像の録画・保存方法
- 通信不良時の代替手段
ステップ(2) 機材の準備とテスト
本番前に発注者と接続テストを行います。テスト時に確認すべき項目は次のとおりです。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 映像品質 | 計測値やラベルの文字が読み取れるか |
| 音声品質 | 双方向の会話がスムーズにできるか |
| 通信安定性 | 映像の途切れや遅延が許容範囲内か |
| 録画機能 | 映像が正常に保存されるか |
| バッテリー | 確認時間中にバッテリーが持つか |
ステップ(3) 遠隔臨場の実施
当日の流れは以下のとおりです。
(1) 現場担当者がカメラを起動し、Web会議に発注者を招待する
(2) まず現場の全体状況を映し、施工箇所の位置を確認する
(3) 計測器具や測定値をカメラでアップにして確認してもらう
(4) 発注者からの指示や質問にその場で対応する
(5) 確認完了後、録画データを保存する
ステップ(4) 記録の整理と保管
遠隔臨場の実施記録として、以下の書類を整理します。
- 録画データ(日時、対象工種、確認内容を明記)
- 段階確認記録簿(遠隔臨場で実施した旨を記載)
- 通信ログ(必要に応じて)
遠隔臨場のメリットと課題
| 項目 | メリット | 課題 |
|---|---|---|
| 時間 | 移動時間の大幅な削減 | 通信準備に慣れるまで時間がかかる |
| コスト | 交通費の削減 | 初期の機材導入費用が必要 |
| 品質 | 録画記録が残り振り返りが可能 | 映像では確認しにくい項目もある |
| 安全 | 発注者の現場移動リスクが減少 | 通信不良時に確認が中断する |
| 働き方 | 発注者の業務効率が向上 | 受注者側の準備負担が増える場合がある |
導入時の注意点
遠隔臨場を円滑に進めるためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
(1) 事前に発注者との接続テストを必ず行う。本番当日にトラブルが発生すると段階確認のやり直しになる
(2) 映像だけでは確認が難しい項目(触感による材料確認など)は、従来どおりの対面確認と組み合わせる
(3) 録画データの保存先とファイル命名ルールを統一しておく
(4) 通信環境が不安定な場合に備え、写真撮影による記録を併用する
(5) 発注者側のPC環境やWeb会議ツールのバージョンが対応しているか事前に確認する
遠隔臨場の導入実績と今後の動向
国土交通省の調査によると、遠隔臨場を導入した現場では、発注者の移動時間が平均で年間100時間以上削減されたという報告があります。また受注者側でも段階確認の待ち時間が短縮され、工程管理の効率が向上するケースが多く見られます。
今後は映像の高画質化やAR(拡張現実)技術との組み合わせにより、遠隔臨場で確認できる項目の幅がさらに広がることが期待されています。
ICT施工との組み合わせで効果を最大化
遠隔臨場は単体でも効果がありますが、他のICT技術と組み合わせることでさらに効率が上がります。たとえばICT施工で3次元データを活用している現場では、画面共有で設計データと施工状況を同時に確認できるため、段階確認の精度が向上します。
また、ドローン測量のデータをもとにした出来形管理と遠隔臨場を組み合わせれば、発注者は事務所にいながら面的な出来形を確認できます。
まとめ
遠隔臨場は、導入のハードルが比較的低く、受注者・発注者双方にメリットがあるICT活用策です。必要な機材はスマートフォンやウェアラブルカメラなど比較的安価なもので対応でき、通信環境さえ整えば中小規模の現場でも実施可能です。
まずは事前協議で発注者と実施範囲を決め、接続テストを経てから本番に臨むことで、スムーズな導入が実現できます。
