土留め工の施工手順|鋼矢板・親杭横矢板・SMWの比較
土留め工とは
土留め工は、掘削時に周囲の地盤が崩壊しないよう、仮設の壁体を設けて土圧を支える工事です。上下水道工事、地下構造物の構築、開削工法によるトンネル工事など、深い掘削を伴う土木工事では必ず必要となります。
土留め工は仮設構造物ですが、本体工事の品質と安全を左右する極めて重要な工種です。
土留め工法の種類と比較
代表的な3つの土留め工法を比較します。
| 項目 | 鋼矢板工法 | 親杭横矢板工法 | SMW工法 |
|---|---|---|---|
| 止水性 | 高い(継手あり) | 低い(隙間あり) | 非常に高い |
| 適用深さ | 10m程度まで | 10m程度まで | 20m以上可能 |
| 振動・騒音 | 工法により異なる | 比較的小さい | 小さい |
| コスト | 中程度 | 比較的安い | 高い |
| 引抜き・転用 | 可能 | 親杭のみ可能 | 不可(埋殺し) |
| 地盤条件 | 砂質土に適する | 自立性ある地盤 | 軟弱地盤にも対応 |
| 施工スペース | 中程度 | 小さくても可 | やや大きい |
鋼矢板工法の施工手順
鋼矢板工法は止水性が比較的高く、最も一般的な土留め工法です。
(1) 導材の設置:鋼矢板の建込み位置をガイドする導材(ガイドビーム)を設置する
(2) 鋼矢板の打設:バイブロハンマー、油圧圧入機、またはディーゼルハンマーで鋼矢板を打設する。市街地ではバイブロまたは圧入工法が一般的
(3) 掘削(1段目):設計で定められた深さまで掘削する
(4) 腹起し・切梁の設置:1段目の支保工(腹起し・切梁)を設置して矢板を支える
(5) 掘削(2段目以降):支保工を設置しながら段階的に掘削を進める
(6) 本体構造物の構築:掘削完了後、本体構造物のコンクリート工事などを行う
(7) 埋戻し・支保工の撤去:下段から順に埋戻しと支保工の撤去を行う
(8) 鋼矢板の引抜き:バイブロハンマーなどで引き抜く。引抜き跡は砂で充填する
鋼矢板の打設工法の詳細は鋼矢板の施工方法で解説しています。
親杭横矢板工法の施工手順
親杭横矢板工法は、H形鋼の親杭を一定間隔に建込み、掘削に合わせて横矢板を挿入する工法です。
(1) 親杭の建込み:オーガーで削孔し、H形鋼を建込む。孔壁にはセメントミルクを注入
(2) 掘削と横矢板の挿入:0.5-1.0m程度ずつ掘削し、親杭の間に横矢板(木矢板または鋼製)を挿入する
(3) 裏込め:横矢板の裏側の空隙に砂やモルタルを充填する
(4) 支保工の設置:腹起し・切梁を設置して土圧を支える
(5) 本体構造物の構築
(6) 埋戻し・親杭の引抜き:横矢板は埋殺しとし、親杭のみ引き抜くのが一般的
親杭横矢板工法の注意点
- 止水性が低いため、地下水位が高い場所では補助工法(薬液注入など)が必要
- 横矢板の裏込め不足は背面地盤の沈下原因となる
- 親杭の間隔は通常1.0-1.5m。地盤条件に応じて設計する
SMW工法の施工手順
SMW(Soil Mixing Wall)工法は、原位置の土とセメント系固化材を攪拌混合して壁体を造成し、その中にH形鋼を建込む工法です。
(1) SMW機の据付:多軸の攪拌機を所定の位置にセットする
(2) 掘削攪拌:攪拌翼を回転させながら地盤を掘削し、セメントミルクを注入して攪拌混合する
(3) H形鋼の建込み:ソイルセメント壁体が固化する前にH形鋼を建込む
(4) 養生:ソイルセメントが設計強度に達するまで養生する(通常7-28日)
(5) 掘削・支保工設置:鋼矢板工法と同様に段階的に掘削と支保工設置を行う
(6) 本体構造物の構築
(7) 埋戻し:SMW壁体は埋殺しとする。H形鋼も通常は引き抜かない
支保工の種類
| 支保工の種類 | 特徴 | 適用条件 |
|---|---|---|
| 切梁方式 | 最も一般的。対面する土留め壁を切梁で支える | 掘削幅が狭い場合 |
| アンカー方式 | 背面地盤にアンカーを打設して土留め壁を支える | 掘削幅が広い場合 |
| 自立方式 | 支保工なしで土留め壁の剛性のみで自立 | 浅い掘削、良好な地盤 |
品質管理のポイント
| 管理項目 | 管理基準・方法 |
|---|---|
| 矢板・親杭の鉛直精度 | 傾斜1/100以内 |
| 根入れ長 | 設計長さ以上を確保 |
| 支保工の設置高さ | 設計位置からプラスマイナス50mm以内 |
| 切梁のプレロード | 設計荷重の50-80%を導入 |
| 変位計測 | 掘削中は毎日測定、管理値を超えたら対策 |
| SMWの一軸圧縮強さ | 設計基準強度以上(通常0.5-2.0N/mm2) |
計測管理の重要性
土留め工事では、施工中の計測管理(情報化施工)が安全確保の要となります。
- 土留め壁の水平変位:傾斜計、トランシットで測定
- 切梁の軸力:ひずみ計で測定
- 地下水位:観測井で測定
- 周辺地盤の沈下:レベル測量で測定
- 周辺構造物の変状:目視・クラックゲージで確認
管理値を超えた場合は直ちに作業を中止し、対策を検討します。
施工計画書への記載
土留め工の施工計画書には、土木工事の施工計画書ガイドの基本構成に加え、以下を記載します。
- 土留め工法の選定理由
- 土留め壁の構造計算書(通常は設計図書に含まれる)
- 掘削と支保工設置の段階図
- 計測管理計画(測定項目、頻度、管理値、対応フロー)
- 近接施工がある場合の影響検討
まとめ
土留め工は仮設工事ですが、本体工事の安全と品質を支える基盤です。工法の選定は地盤条件・止水性・施工条件を総合的に判断し、施工中は計測管理を確実に行いましょう。
上下水道工事での開削工法については管渠工事の施工管理も参照してください。
