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土木工事の外注管理を仕組み化して利益率5%改善|R土木工業株式会社様
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | R土木工業株式会社 |
| 所在地 | 関東地方 |
| 従業員数 | 22名 |
| 主な事業 | 造成工事、道路舗装工事、外構工事 |
| 年間売上 | 約5億円 |
| 外注比率 | 売上の約55% |
導入前の課題
R土木工業株式会社は、施工の大部分を協力会社に外注しています。しかし、外注管理の仕組みが整っておらず、利益率が低迷していました。
外注管理の実態(改善前)
| 問題 | 具体的な状況 |
|---|---|
| 見積もりの比較をしていない | 付き合いの長い協力会社に毎回随意で発注 |
| 発注金額が口頭ベース | 電話で金額を伝えるだけ。発注書を出していない現場もある |
| 実行予算との照合がない | 外注費が予算を超過しても、工事完了まで気付かない |
| 精算の基準が曖昧 | 追加作業の精算基準がなく、協力会社と毎回揉める |
| 支払いの管理が煩雑 | 出来高払いの管理がExcelにもなっておらず、紙のメモで管理 |
利益率の推移(改善前)
| 年度 | 売上 | 完成工事原価 | 粗利益率 |
|---|---|---|---|
| 3年前 | 4.8億円 | 4.3億円 | 10.4% |
| 2年前 | 5.1億円 | 4.6億円 | 9.8% |
| 前年 | 5.0億円 | 4.6億円 | 8.0% |
粗利益率が年々低下しており、特に外注費の管理が原因であることが経営課題でした。
改善のきっかけ
決算で粗利益率が8%まで低下したことを受け、社長が「外注管理を根本から見直す」と宣言。高額なシステムを導入する余裕はなかったため、Excelと運用ルールで仕組み化を進めることにしました。
取り組みの内容
(1) 協力会社の評価基準の策定
まず、協力会社を客観的に評価する基準を作りました。
| 評価項目 | 配点 | 評価基準 |
|---|---|---|
| 品質 | 30点 | 手直し・やり直しの発生頻度 |
| 価格 | 25点 | 他社と比較した価格の妥当性 |
| 工程遵守 | 20点 | 約束した工期を守れるか |
| 安全意識 | 15点 | 安全ルールの遵守状況 |
| 対応力 | 10点 | 急な依頼や変更への対応 |
半年ごとに評価を実施し、評価結果に基づいて発注先を選定するルールにしました。
(2) 外注見積もりの比較ルール
一定金額以上の外注については、必ず複数社から見積もりを取るルールを設けました。
| 外注金額 | 見積もり社数 | 承認者 |
|---|---|---|
| 100万円未満 | 1社(ただし単価表で妥当性確認) | 現場代理人 |
| 100万円-500万円 | 2社以上 | 工事部長 |
| 500万円以上 | 3社以上 | 社長 |
(3) 発注書・注文書の発行を義務化
すべての外注に対して、発注書を発行することを義務化しました。
| 発注書の記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 工事名・工種 | どの工事のどの作業か |
| 作業内容と範囲 | 具体的な作業範囲(ここまでが対象) |
| 金額 | 一式または単価x数量 |
| 工期 | 作業開始日と完了予定日 |
| 精算条件 | 追加作業の精算方法、変更時の手続き |
| 支払条件 | 出来高払い、完了払いなどの条件 |
(4) Excel管理表の整備
工事ごとの外注費を管理するExcelシートを作成しました。
| 管理項目 | 内容 |
|---|---|
| 実行予算(外注費) | 工事開始時に設定した外注費の予算 |
| 発注済み金額 | 発注書を発行した金額の累計 |
| 支払い済み金額 | 出来高に応じて支払った金額の累計 |
| 残予算 | 実行予算 - 発注済み金額 |
| 予算消化率 | 発注済み金額 / 実行予算 x 100% |
(5) 月次の外注費レビュー
毎月1回、工事部長と現場代理人が外注費の状況をレビューする会議を設けました。
| レビュー項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 予算消化率 | 進捗に対して外注費が予算内に収まっているか |
| 追加発注の有無 | 追加発注が発生していないか。発生している場合の理由 |
| 精算見込み | 工事完了時の外注費の見込み額 |
| 協力会社の作業状況 | 品質や工程に問題がないか |
導入のスケジュール
| 期間 | 取り組み内容 |
|---|---|
| 1か月目 | 協力会社の一覧作成、評価基準の策定 |
| 2か月目 | 発注書のフォーマット作成、Excel管理表の作成 |
| 3か月目 | 新規工事から新ルールを適用開始 |
| 4-6か月目 | 運用しながらルールを微調整 |
| 6か月目 | 第1回の協力会社評価を実施 |
定量的な効果
改善に取り組み始めて1年後の結果です。
| 指標 | 改善前 | 改善後 | 改善幅 |
|---|---|---|---|
| 粗利益率 | 8.0% | 13.2% | +5.2ポイント |
| 外注費比率(対売上) | 55% | 48% | -7ポイント |
| 発注書の発行率 | 約30% | 100% | +70ポイント |
| 協力会社とのトラブル件数 | 年12件 | 年3件 | -75% |
利益額にすると、年間で約2,600万円の改善です。
定性的な効果
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 協力会社との関係が改善 | 発注内容が明確になり、精算時のトラブルが減少 |
| 現場代理人のコスト意識が向上 | 予算管理の仕組みにより、コストを意識した発注判断ができるように |
| 新しい協力会社の開拓が進んだ | 複数社見積もりのルールにより、新規の協力会社との取引が増加 |
| 経営判断の精度が向上 | 工事途中でも利益見込みが把握でき、早期に手を打てるように |
導入時に苦労したこと
| 課題 | 対応 |
|---|---|
| 現場代理人の反発 | 「今まで問題なかったのに」という声。社長が直接、利益率低下の現状を説明 |
| 協力会社への説明 | 発注書の発行が義務化されたことを丁寧に説明。協力会社にもメリットがあることを伝えた |
| Excel管理表の入力が面倒 | 入力項目を最小限に絞り、ドロップダウンリストで入力を簡素化 |
| 複数社見積もりの手間 | 見積依頼のテンプレートを用意し、FAXやメールで一斉に依頼できるように |
社長のコメント
「特別なシステムは使っていません。Excelと紙の発注書、それに月1回のレビュー会議だけです。大事なのは仕組みを作って、それを守ること。ルールがなければ、どんなに優秀な現場代理人でもコスト管理はできません」
まとめ
外注管理の仕組み化は、高額なシステムがなくても実現できます。R土木工業株式会社の事例では、Excelと運用ルールだけで利益率を5%以上改善しました。
ポイントは、(1)見積もり比較のルール化、(2)発注書の発行義務化、(3)月次レビューの3つです。外注比率が高い会社ほど、この取り組みの効果は大きくなります。
