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熟練技術者のノウハウをマニュアル化して技術継承を実現|B土木株式会社様

熟練技術者のノウハウをマニュアル化して技術継承を実現|B土木株式会社様

企業概要

項目内容
社名B土木株式会社
所在地東海地方
従業員数30名
主な事業河川工事、砂防工事、道路工事
年間売上約6.5億円
技術者の年齢構成50代以上が60%、30代以下が15%

導入前の課題

技術者の高齢化と知識の偏在

B土木株式会社の技術者の年齢構成は偏りがありました。

年代人数割合役職
60代3名10%顧問、技術部長
50代8名27%現場代理人(主任技術者)
40代5名17%現場代理人
30代3名10%現場代理人見習い
20代2名7%作業員
その他(事務等)9名30%-

50代以上の技術者が全体の37%を占め、5年以内に5名が定年退職を迎える見込みでした。

具体的な問題

問題詳細
暗黙知の消失リスク熟練者が持つ施工のコツ、判断基準が文書化されていない
若手の育成に時間がかかるOJTのみで育成。教える側の負担も大きい
同じ失敗の繰り返し過去のトラブル対応の記録が残っていない
技術提案力の格差熟練者と若手で提案の質に大きな差がある
品質のばらつき担当者によって施工の仕上がりに差が出る

具体例: 河川護岸工事の場合

ベテランの技術部長(62歳)は、河川護岸工事で40年以上の経験がありました。

ベテランが持つノウハウの例内容
石張り工の石の配置安定する石の向きや組み合わせ方を経験で判断
仮締切工の水位予測過去の水位データと天候から増水リスクを判断
コンクリート養生の判断気温や風の状況から養生方法と期間を決定
地盤の性質の判断掘削中の地盤の色や手触りから支持力を推定
発注者との交渉術設計変更の提案タイミングと説明方法

これらの知識は、すべて技術部長の頭の中にあり、文書化されていませんでした。

取り組みの内容

(1) 対象ノウハウの選定

すべてのノウハウを一度にマニュアル化するのは不可能なため、優先順位を付けて取り組みました。

優先度対象選定理由
頻度が高い施工(護岸工、舗装工)多くの現場で必要
トラブル対応の判断基準誤判断による損害が大きい
施工計画書の作成ポイント若手が最も苦労する業務
発注者との協議のコツ工事成績に直結する
特殊工法のノウハウ頻度は低いが記録しておく価値がある

(2) ノウハウの聞き取りと記録

熟練技術者へのインタビューと、現場での撮影を組み合わせて記録しました。

記録方法内容
インタビュー若手社員が聞き手となり、ベテランに施工のポイントを聞く
動画撮影実際の施工場面をスマートフォンで撮影。ベテランが解説を入れる
写真+コメント施工の各段階を写真で記録し、判断のポイントをコメントで追記
チェックリスト化ベテランが無意識に確認しているポイントをリスト化

(3) マニュアルの構成

マニュアルは以下の構成で作成しました。

セクション内容
工種の概要工事の目的、一般的な施工手順
施工のポイントベテランが重視するチェック項目
判断基準「こういう状況ならこう対応する」という判断フロー
よくあるトラブルと対処法過去に発生したトラブルと対処の記録
写真・動画リンク参考となる施工写真や解説動画へのリンク
参考数値目安となる数値(養生期間、余掘り量など)

(4) ナレッジ共有の仕組み

作成したマニュアルを社内で共有する仕組みを整備しました。

仕組み内容
共有フォルダクラウドストレージに「技術マニュアル」フォルダを設置
検索機能工種名やキーワードで検索できるように目次を整備
更新ルール新しい知見が得られたら追記する担当者を指名
勉強会月1回、マニュアルの内容をもとに社内勉強会を開催

導入スケジュール

期間取り組み
1-2か月目対象ノウハウの選定、インタビューの開始
3-4か月目マニュアルの作成(護岸工、舗装工の2工種)
5-6か月目社内レビューと修正、共有フォルダの整備
7か月目以降勉強会の開始、他の工種のマニュアル追加

定量的な効果

導入1年後の効果です。

指標改善前改善後改善幅
若手が1人で現場代理人を務めるまでの期間5-7年3-4年-2年程度
施工のやり直し発生率月平均2.5回月平均0.8回-68%
技術提案書の作成時間(若手)1件あたり3日1件あたり1.5日-50%
社内勉強会の参加率-90%以上新規施策
作成したマニュアル数0件12件+12件

やり直しの削減による経済効果

項目数値
やり直し1回あたりの平均コスト約15万円(人件費+材料費)
月間の削減回数1.7回(2.5回→0.8回)
年間の削減コスト約306万円

定性的な効果

効果内容
ベテランの安心感「自分の知識が会社に残る」という安心感。退職後も貢献できる
若手の自信マニュアルを参照しながら判断できるようになり、自信を持って施工
組織の学習文化「知識を共有する」文化が社内に根付き始めた
採用面での差別化「体系的な育成制度がある」ことを採用時にアピール

苦労した点

課題対応
ベテランが言語化できない「なぜそうするのか」を繰り返し質問。具体的な状況を示して回答を引き出す
聞き取りの時間確保現場の移動中や昼休みを活用。1回30分以内に
マニュアルの文量が膨大1工種あたりA4で10ページ以内に。詳細は動画で補足
マニュアルが使われない勉強会で活用し、実際の現場で参照することを習慣化
更新が滞る工事完了時の振り返りで「追記すべき知見」を確認するルールに

技術部長(62歳)のコメント

「40年間で身につけた感覚を言葉にするのは難しかった。しかし、若手に質問されることで、自分でも意識していなかったポイントに気付くことがありました。このマニュアルは、自分の引退後も会社の財産として残ります。それが嬉しい」

まとめ

技術継承は、土木工事会社にとって喫緊の経営課題です。B土木株式会社の事例では、熟練技術者のノウハウをマニュアル化し、社内ナレッジとして共有することで、若手の育成期間短縮と施工品質の安定化を実現しました。

大切なのは完璧なマニュアルを目指さないことです。まずは最も重要な工種から、ベテランの言葉を記録するところから始めてみましょう。

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