週休2日制導入で離職率が半減|H土木工事株式会社様
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | H土木工事株式会社 |
| 所在地 | 四国地方 |
| 従業員数 | 32名 |
| 主な事業 | 道路工事、河川工事、砂防工事 |
| 年間売上 | 約7億円 |
| 平均年齢 | 48歳 |
導入前の課題
休日の実態
H土木工事株式会社では、日曜日のみ休みの「4週4休」が実態でした。繁忙期(10月-3月)には日曜出勤も珍しくなく、月の休日が2-3日しかない時期もありました。
| 項目 | 実態 |
|---|---|
| 就業規則上の休日 | 日曜日+祝日+第2土曜日 |
| 実際の休日(閑散期) | 日曜日+月1-2回の土曜日 |
| 実際の休日(繁忙期) | 日曜日のみ(月4日程度) |
| 年間休日数 | 約70日 |
離職率と採用の問題
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 直近3年の離職率 | 年平均18%(6名/年) |
| 離職者の年代 | 20-30代が80% |
| 退職理由(複数回答) | 「休みが少ない」75%、「体力的にきつい」50% |
| 新卒応募数 | 年0-1名 |
| 中途採用の応募数 | 年2-3名 |
若手が入っても3年以内に辞めるという状態が続いており、技術の継承が危機的な状況でした。
改善のきっかけ
国土交通省が公共工事の週休2日対象工事を拡大したこと、そして入社2年目の若手社員が「休みが少なすぎて続けられない」と退職を申し出たことが直接的なきっかけでした。
社長は「このまま何も変えなければ、10年後に会社は人がいなくなる」と危機感を持ち、週休2日制の導入を決断しました。
取り組みの内容
(1) 工程管理の見直し
週休2日にするためには、5日間で従来の6日分の工程を消化する必要があります。そのため、まず工程管理を根本から見直しました。
| 見直し項目 | 改善内容 |
|---|---|
| 段取りの前倒し | 翌日の作業準備を前日の終業前30分で実施 |
| 手待ち時間の削減 | 材料の搬入時間を工程に合わせて指定 |
| 重機の稼働率向上 | 重機の移動時間を最小化する配置計画 |
| 天候リスクの考慮 | 工程に予備日を組み込み、雨天時の室内作業を用意 |
| 朝礼の短縮 | 従来20分の朝礼を10分に短縮。詳細はチャットで共有 |
(2) 段階的な導入スケジュール
一気に週休2日にするのではなく、段階的に休日を増やしました。
| 段階 | 期間 | 休日数 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 準備期間 | 3か月 | 4週4休 | 工程管理の見直し、効率化に取り組む |
| 第1段階 | 6か月 | 4週6休 | 第2・第4土曜日を休日に |
| 第2段階 | 6か月 | 4週7休 | 第1・第2・第4土曜日を休日に |
| 第3段階 | - | 4週8休 | 完全週休2日(土曜・日曜) |
(3) 発注者との調整
公共工事については、発注者に対して週休2日を前提とした工期設定を依頼しました。
| 調整事項 | 内容 |
|---|---|
| 工期の設定 | 週休2日を考慮した工期(従来比約1.1倍)を要望 |
| 週休2日対象工事への応札 | 国交省・県の週休2日対象工事を積極的に受注 |
| 現場閉所の周知 | 協力会社・近隣住民に土曜閉所を事前周知 |
(4) 給与制度の見直し
休日が増えることで日給月給の作業員の収入が減る問題に対応しました。
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 月給制への移行 | 日給月給から月給制に段階的に移行 |
| 基本給の調整 | 月間の稼働日数が減る分、日額単価を引き上げ |
| 資格手当の新設 | 資格取得者に月額手当を支給(技術力向上のインセンティブ) |
| 賞与での調整 | 生産性向上の成果を賞与に反映 |
(5) 生産性向上の取り組み
休日を増やしても売上を維持するために、生産性向上に全社で取り組みました。
| 取り組み | 効果 |
|---|---|
| 工事写真アプリの導入 | 写真整理の時間を1日30分短縮 |
| 日報のデジタル化 | 事務作業の時間を削減 |
| 協力会社との事前打合せ強化 | 現場での手待ちや手戻りを削減 |
| 5S活動の徹底 | 資材置場の整理で探し物の時間を削減 |
導入のタイムライン
| 時期 | 取り組み |
|---|---|
| 1-3月(準備期間) | 工程管理見直し、生産性向上施策の実施 |
| 4月(第1段階開始) | 4週6休を開始。新年度のタイミングで切替 |
| 4-9月 | 効率化の効果を検証、運用を改善 |
| 10月(第2段階) | 4週7休に移行 |
| 翌4月(第3段階) | 完全週休2日を実現 |
定量的な効果
完全週休2日制の導入から1年後の結果です。
| 指標 | 改善前 | 改善後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 年間休日数 | 約70日 | 約105日 | +35日 |
| 離職率 | 18% | 9% | 半減 |
| 新卒応募数 | 0-1名/年 | 3名/年 | 大幅増 |
| 中途応募数 | 2-3名/年 | 5-6名/年 | 約2倍 |
| 売上 | 約7億円 | 約6.8億円 | -3%(ほぼ維持) |
| 1人1日あたりの出来高 | 基準 | +8% | 生産性向上 |
売上は若干減少しましたが、離職率の半減と採用力の向上は、中長期的に見て大きなプラスです。
定性的な効果
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 社員のモチベーション向上 | 「土曜日に家族と過ごせるようになった」という声が多数 |
| 安全意識の向上 | 疲労が蓄積しにくくなり、事故やヒヤリハットが減少 |
| 採用面接での強み | 「完全週休2日」を打ち出すことで応募者が増加 |
| 協力会社からの評価 | 「働きやすい元請」として協力会社の確保にもプラス |
苦労した点
| 課題 | 対応 |
|---|---|
| ベテラン社員の抵抗 | 「建設業は休めない」という固定観念。実際に休んでみて考えが変わった |
| 繁忙期の工程圧迫 | 発注者との工期調整と、閑散期の前倒し施工で対応 |
| 協力会社の対応 | 協力会社も週休2日にするため、工程を事前に共有 |
| 日給作業員の収入問題 | 月給制への移行と日額単価の引き上げで対応 |
社長のコメント
「正直に言えば、最初は不安でした。稼働日が減って売上が落ちるのではないかと。しかし実際には、生産性が上がり、何より人が辞めなくなった。採用にもお金がかかるし、新人の教育にも時間がかかる。離職率が半減した効果は、売上の数%の減少よりはるかに大きい」
まとめ
週休2日制の導入は、短期的には売上に影響する可能性がありますが、離職率の低下と採用力の向上という中長期的な効果があります。H土木工事株式会社の事例では、工程管理の見直しと段階的な導入により、ほぼ売上を維持しながら完全週休2日を実現しました。
人手不足に悩む土木工事会社にとって、働き方改革は経営戦略そのものです。
