業務改善事例約9分で読めます
見積作成時間を半分に短縮した積算データベースの活用|M土木株式会社様
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | M土木株式会社 |
| 所在地 | 近畿地方 |
| 従業員数 | 18名 |
| 主な事業 | 道路舗装工事、上下水道工事、外構工事 |
| 年間売上 | 約4億円 |
| 年間見積件数 | 約120件(うち受注約40件) |
導入前の課題
M土木株式会社では、年間120件もの見積もりを作成していました。しかし、積算を担当できるのは社長と工事部長の2名のみ。見積もり作成が大きな負担となっていました。
見積もり作成の実態(改善前)
| 問題点 | 詳細 |
|---|---|
| 1件あたりの作成時間が長い | 簡易見積で2-3時間、詳細見積で1-2日 |
| 単価の根拠が属人的 | 社長と工事部長の頭の中にある「相場感」で単価を設定 |
| 過去の見積が活用されていない | 類似案件の見積があるはずだが、探すのに時間がかかる |
| 受注確度の分析ができない | どの単価水準で受注できるか/できないかのデータがない |
| 後任の育成ができない | 積算の知識が2名に集中しており、引き継ぎが困難 |
時間の試算
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 年間見積件数 | 120件 |
| 1件あたり平均作成時間 | 約6時間 |
| 年間の見積作成時間 | 約720時間(1人あたり360時間) |
| 営業日換算 | 約90日分(2名合計) |
年間の約4分の1の営業日が見積もり作成に費やされている計算です。
改善のきっかけ
工事部長が定年退職を2年後に控え、積算知識の引き継ぎが急務となりました。「頭の中にある単価をデータベース化すれば、後任も使えるし、見積もりの時間も短縮できるのでは」という発想が出発点です。
取り組みの内容
(1) 過去の見積データの整理
まず、過去3年分の見積データをExcelに整理しました。
| 整理した項目 | 内容 |
|---|---|
| 工事の種類 | 舗装工事、上下水道工事、外構工事など |
| 工種 | 路盤工、舗装工、管布設工など |
| 数量 | 各工種の施工数量 |
| 単価 | 見積時に設定した単価 |
| 受注結果 | 受注できたか、できなかったか |
| 実績単価 | 受注した工事の実績原価(完成後のデータ) |
(2) 自社単価データベースの構築
整理したデータをもとに、工種ごとの単価データベースをExcelで構築しました。
| データベースの項目 | 内容 |
|---|---|
| 工種コード | 工種の分類コード |
| 工種名 | 作業の名称 |
| 単位 | m2、m3、m、式など |
| 標準単価(下限) | 過去実績の下限値 |
| 標準単価(中央) | 過去実績の中央値 |
| 標準単価(上限) | 過去実績の上限値 |
| 直近の実績単価 | 最新の工事での実績 |
| 備考 | 単価に影響する条件(施工量、地域、難易度等) |
(3) 見積テンプレートとの連携
工事の種類ごとに見積テンプレートを作成し、単価データベースから自動的に単価を呼び出せるようにしました。
| テンプレートの種類 | 含まれる標準工種 |
|---|---|
| 舗装工事(新設) | 路盤工、舗装工(表層・基層)、区画線工 |
| 舗装工事(修繕) | 舗装版撤去、路盤工、舗装工 |
| 上水道工事 | 管布設工、弁類設置工、舗装復旧工 |
| 下水道工事 | 管布設工、マンホール設置工、舗装復旧工 |
| 外構工事 | 土工、コンクリート工、排水工、舗装工 |
(4) 見積作成の標準手順の策定
見積もり作成の手順を標準化し、誰でも一定の品質で見積もりを作成できるようにしました。
| 手順 | 内容 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| (1) 現場確認 | 図面と現場を照合し、条件を確認 | 30分-1時間 |
| (2) テンプレート選択 | 工事の種類に合ったテンプレートを選ぶ | 5分 |
| (3) 数量の入力 | 図面から数量を拾って入力 | 30分-2時間 |
| (4) 単価の調整 | DBの単価を確認し、条件に応じて調整 | 15-30分 |
| (5) 諸経費の設定 | 現場条件に応じて諸経費率を設定 | 10分 |
| (6) 上長確認 | 社長または工事部長が最終確認 | 15-30分 |
定量的な効果
| 指標 | 改善前 | 改善後 | 改善幅 |
|---|---|---|---|
| 簡易見積の作成時間 | 2-3時間 | 1-1.5時間 | 約50%削減 |
| 詳細見積の作成時間 | 1-2日 | 半日-1日 | 約50%削減 |
| 年間の見積作成時間 | 約720時間 | 約360時間 | -360時間 |
| 見積作成の担当者数 | 2名 | 4名(若手2名が追加) | +2名 |
| 見積精度(実績との乖離) | +-15% | +-8% | 精度向上 |
受注率への効果
| 指標 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 年間見積件数 | 120件 | 150件(余力が生まれて件数増) |
| 受注率 | 33%(40/120件) | 35%(53/150件) |
| 受注件数 | 40件 | 53件 |
見積もりの精度が上がったことで、適正な価格で提出できるようになり受注率も向上しました。
定性的な効果
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 積算知識の共有 | 社長と工事部長の頭の中にあった知識がデータベースに |
| 若手社員の育成 | データベースを参照することで若手でも見積作成が可能に |
| 価格戦略の精度向上 | 受注/失注データから、受注できる単価水準が見えるように |
| 工事部長の退職リスクの軽減 | 知識の属人化が解消され、引き継ぎの目処が立った |
苦労した点
| 課題 | 対応 |
|---|---|
| 過去データの整理が大変 | 事務員と手分けして3か月かけて整理 |
| 単価の妥当性の判断 | 工事部長の経験と実績データを突き合わせて検証 |
| データベースの更新が続かない | 工事完了時に実績単価を入力するルールを決め、担当者を指名 |
| Excelの限界 | 数百件のデータでExcelが重くなる。将来的にはAccessや専用ソフトへの移行を検討 |
まとめ
見積もり作成時間の短縮は、売上に直結する改善です。M土木株式会社の事例では、自社の実績データをデータベース化するだけで、見積もり時間を半分に短縮し、年間の受注件数を30%以上増やすことができました。
特別なソフトを使わず、Excelでもデータベースは構築できます。まずは過去の見積データを整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。
