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経審P点を1年で100点アップさせた取り組み|N建設株式会社様
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | N建設株式会社 |
| 所在地 | 中部地方 |
| 従業員数 | 28名 |
| 主な事業 | 道路工事、河川工事、下水道工事 |
| 年間完成工事高 | 約6億円 |
| 主な入札参加 | 県・市町村の公共工事 |
経審P点とは
経営事項審査(経審)の総合評定値(P点)は、公共工事の入札参加資格の格付けに使用される点数です。P点が高いほど大型の工事に入札できるため、公共工事を受注する建設会社にとって非常に重要な指標です。
P点は以下の要素で構成されます。
| 評価項目 | 略称 | 配点ウェイト |
|---|---|---|
| 経営規模(完成工事高) | X1 | 25% |
| 経営規模(自己資本額・利払前税引前償却前利益) | X2 | 15% |
| 技術力 | Z | 25% |
| その他の審査項目(社会性等) | W | 15% |
| 経営状況分析 | Y | 20% |
導入前の状況
N建設株式会社のP点は長年横ばいで、県の入札格付けでB等級にとどまっていました。A等級に上がればより大型の工事に入札できるため、P点のアップが経営課題でした。
改善前のP点の内訳(概算)
| 評価項目 | 改善前の状況 |
|---|---|
| X1(完成工事高) | 売上は安定しているが大幅増は難しい |
| X2(自己資本等) | 自己資本比率は平均的 |
| Z(技術力) | 技術者の人数は限られている。資格取得が進んでいない |
| W(社会性等) | 加点項目の取得が不十分 |
| Y(経営状況) | 利益率が低く、改善の余地あり |
改善のアプローチ
社長と顧問の行政書士が相談し、「1年間で100点アップ」を目標に設定。完成工事高(X1)を急に増やすことは難しいため、技術力(Z)、社会性等(W)、経営状況(Y)を重点的に改善する方針を立てました。
取り組み(1): 技術力(Z)の向上
技術者の資格取得推進
| 取り組み | 内容 |
|---|---|
| 資格取得の目標設定 | 1級土木施工管理技士を2名、2級を3名が受験 |
| 受験費用の全額会社負担 | 受験料、テキスト代、講習会の費用を会社が負担 |
| 勉強時間の確保 | 試験前2か月間は残業を制限し、勉強時間を確保 |
| 合格報奨金の制度化 | 1級合格で10万円、2級合格で5万円の報奨金 |
結果として、1級土木施工管理技士1名、2級土木施工管理技士2名が新たに合格しました。
工事成績評定の向上
| 取り組み | 内容 |
|---|---|
| 技術提案の質を向上 | 過去の高評価工事の提案内容を分析し、テンプレート化 |
| 施工プロセスの記録 | 工夫した施工方法を写真と文書で記録 |
| 発注者とのコミュニケーション強化 | 段階確認や協議を丁寧に実施 |
取り組み(2): 社会性等(W)の加点項目の取得
W点には多くの加点項目があり、比較的短期間で改善できるものがあります。
| 加点項目 | 改善前 | 改善後 | 取り組み内容 |
|---|---|---|---|
| 建設業経理士の在籍 | なし | 2級1名 | 経理担当者が2級建設業経理士を取得 |
| 防災協定の締結 | なし | あり | 地元自治体と災害時の応急復旧協定を締結 |
| 法定外労働災害補償制度 | なし | あり | 業界団体の制度に加入 |
| 退職一時金制度(建退共) | 加入済み | 加入済み | 履行証明を確実に取得 |
| CPD(継続教育) | なし | 実施 | 技術者のCPD単位取得を開始 |
| 建設機械の保有 | 一部 | 追加 | ダンプなど自社保有機械を適正に評価 |
取り組み(3): 経営状況(Y)の改善
| 取り組み | 内容 |
|---|---|
| 利益率の改善 | 原価管理を徹底し、粗利益率を2%向上 |
| 借入金の圧縮 | 遊休資産(使わない重機)を売却し借入金を返済 |
| 自己資本比率の改善 | 役員報酬を一時的に減額し、内部留保を増加 |
| 営業キャッシュフローの改善 | 請求・回収サイクルの見直し |
1年間のスケジュール
| 月 | 取り組み内容 |
|---|---|
| 1-2月 | 現状分析、改善計画の策定 |
| 3-4月 | 資格取得の勉強開始、W点の加点項目洗い出し |
| 5-6月 | 防災協定の締結、各種制度への加入手続き |
| 7-8月 | 建設業経理士試験(9月)の準備 |
| 9-10月 | 1級土木施工管理技士試験(10月)の準備 |
| 11-12月 | 決算対策(利益率、自己資本の確認)、経審申請の準備 |
定量的な効果
| 評価項目 | 改善前 | 改善後 | 変動 |
|---|---|---|---|
| X1(完成工事高) | 微増 | 微増 | +5点程度 |
| X2(自己資本等) | - | 改善 | +15点程度 |
| Z(技術力) | - | 資格取得+成績向上 | +40点程度 |
| W(社会性等) | - | 加点項目の取得 | +25点程度 |
| Y(経営状況) | - | 利益率等の改善 | +20点程度 |
| P点合計 | - | - | 約+105点 |
目標の100点アップを達成し、県のA等級への格上げが見込める水準に到達しました。
定性的な効果
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 社員のモチベーション向上 | 資格取得への取り組みが会社全体の学習意欲を刺激 |
| 入札機会の拡大 | A等級の工事への入札が可能になり、受注の幅が広がった |
| 対外的な信用力向上 | 防災協定の締結や資格者の増加により、発注者からの信頼が向上 |
| 経営の見える化 | 財務指標を意識した経営ができるようになった |
苦労したこと
| 課題 | 対応 |
|---|---|
| 資格試験の不合格 | 1級土木の1回目は不合格。翌年の再受験で合格を目指す体制に |
| 短期的な利益の圧迫 | 役員報酬の減額は経営者の覚悟が必要だった |
| 行政書士との連携 | 経審の制度に詳しい行政書士と密に連携することで効率的に進められた |
社長のコメント
「経審の点数を上げるというと、数字のテクニックに聞こえるかもしれません。しかし実際にやったことは、社員の資格取得を支援し、安全や品質の体制を整え、財務を健全にすること。経審の改善は、会社の体力を上げることそのものでした」
まとめ
経審P点の向上は、一朝一夕では実現できませんが、計画的に取り組めば1年で100点アップも可能です。N建設株式会社の事例では、技術力(Z)と社会性(W)の加点項目に集中的に取り組んだことが大きな成果につながりました。
まずは現在のP点の内訳を分析し、改善余地の大きい項目から着手するのがポイントです。
