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ISO9001取得で変わった品質管理と社内意識|P建設株式会社様
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | P建設株式会社 |
| 所在地 | 甲信越地方 |
| 従業員数 | 33名 |
| 主な事業 | 道路工事、河川工事、上下水道工事 |
| 年間売上 | 約7億円 |
| 公共工事比率 | 約80% |
ISO9001とは
ISO9001は、品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格です。製品やサービスの品質を継続的に改善するための仕組みを構築し、第三者機関の審査を受けて認証を取得します。
建設業では、公共工事の入札で加点項目となるケースがあり、経営事項審査(経審)のW点でも加点されます。
取得前の課題
品質管理の実態
| 問題 | 詳細 |
|---|---|
| 品質管理の基準がない | 「何をどこまで管理するか」が現場代理人の裁量 |
| 手順が標準化されていない | 同じ工種でも現場代理人によってやり方が異なる |
| 記録の管理が不十分 | 品質管理の記録が散逸し、後から確認できない |
| 不具合の再発防止ができない | 不具合が発生しても対策が他の現場に共有されない |
| 工事成績評定が伸びない | 品質管理の評価が低く、平均点にとどまる |
経審への影響
ISO9001を取得していないことで、経審のW点で加点を得られていませんでした。
取得の目的
| 目的 | 期待する効果 |
|---|---|
| 品質管理の仕組み構築 | 標準的な手順で品質を管理できる体制を作る |
| 工事成績評定の向上 | 品質管理の評価点を上げる |
| 経審の加点 | W点の加点により総合評定値(P点)を向上 |
| 社内意識の改革 | 「品質は全員の責任」という意識を浸透させる |
| 対外的な信用力向上 | 発注者や取引先からの信頼を得る |
取得までの手順
全体スケジュール
| 期間 | 取り組み |
|---|---|
| 1-2か月目 | ISO規格の理解、推進体制の構築 |
| 3-4か月目 | 品質マニュアルの作成、手順書の整備 |
| 5-8か月目 | 運用開始、記録の蓄積 |
| 9か月目 | 内部監査の実施 |
| 10か月目 | マネジメントレビューの実施 |
| 11-12か月目 | 認証機関による審査(第1段階・第2段階) |
(1) 推進体制の構築
| 役割 | 担当者 | 主な業務 |
|---|---|---|
| 経営者(トップマネジメント) | 社長 | 品質方針の策定、経営資源の提供 |
| 管理責任者 | 工事部長 | QMSの構築・運用の統括 |
| 事務局 | 総務課長 | 文書管理、記録の管理 |
| 内部監査員 | 現場代理人2名 | 内部監査の実施 |
| コンサルタント | 外部 | ISO取得の助言、文書作成支援 |
(2) 品質マニュアルの作成
品質マニュアルは、自社の品質管理の仕組みを文書化したものです。
| 章 | 内容 |
|---|---|
| 品質方針 | 会社としての品質に対する考え方 |
| 適用範囲 | 土木工事の設計・施工・アフターサービス |
| 組織と責任 | 品質管理に関する各自の役割 |
| 資源管理 | 人材育成、設備管理、作業環境 |
| 施工プロセス | 受注から引渡しまでの各プロセスの手順 |
| 測定・分析・改善 | 品質の測定方法、不適合の処理、是正措置 |
(3) 手順書の整備
各施工プロセスの手順書を作成しました。
| 手順書の種類 | 内容 |
|---|---|
| 施工計画手順書 | 施工計画書の作成手順とチェック項目 |
| 品質管理手順書 | 工種ごとの品質管理基準と記録方法 |
| 検査手順書 | 自主検査、段階確認の実施手順 |
| 不適合管理手順書 | 品質不具合の発見から是正完了までの手順 |
| 文書管理手順書 | 文書の作成、承認、配布、保管のルール |
| 購買管理手順書 | 材料の発注、受入検査の手順 |
(4) 運用と記録の蓄積
手順書に従って実際に運用し、記録を蓄積しました。認証審査では「仕組みが実際に動いているか」が確認されるため、最低3か月以上の運用実績が必要です。
(5) 内部監査
社内の内部監査員が、QMSが手順書通りに運用されているかを監査しました。
| 監査項目の例 | チェック内容 |
|---|---|
| 施工計画書の作成 | 手順書に従って作成されているか |
| 品質管理記録 | 記録が漏れなく作成・保管されているか |
| 材料の受入検査 | 納品時の確認が実施されているか |
| 不適合の処理 | 不具合の報告と是正措置が適切に行われているか |
取得にかかった費用
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| コンサルタント費用 | 約150万円(月2回の訪問x12か月) |
| 認証審査費用 | 約80万円(第1段階+第2段階) |
| 内部監査員研修 | 約10万円(2名分) |
| 文書作成の人件費(社内) | 約100万円相当(延べ工数) |
| 合計 | 約340万円 |
年間の維持費用(サーベイランス審査)は約40万円です。
取得後の効果
定量的な効果
| 指標 | 取得前 | 取得後(1年) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 工事成績評定(品質) | 平均62点 | 平均68点 | +6点 |
| 品質に関する手戻り | 年5件 | 年1件 | -80% |
| 経審W点の加点 | 0点 | +10点 | +10点 |
| 不適合の是正完了率 | 記録なし | 100% | 管理可能に |
定性的な効果
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 標準化の定着 | 「自分流」ではなく「会社の手順」で施工する意識が浸透 |
| 記録文化の定着 | 「やったことは記録する」が当たり前になった |
| 不具合の再発防止 | 是正措置の仕組みにより、同じ失敗を繰り返さなくなった |
| 新人教育への活用 | 手順書が新人の教育教材として機能 |
| 発注者からの信頼 | ISO認証取得企業として信頼性が向上 |
導入で苦労した点
| 課題 | 対応 |
|---|---|
| 文書作成の負担 | コンサルタントのテンプレートを活用し、自社向けにカスタマイズ |
| 現場の理解不足 | 「書類が増えるだけ」という誤解。品質向上の具体的なメリットを説明 |
| 記録の形骸化 | 実際に役立つ記録のみに絞り、不要な記録は廃止 |
| 内部監査の実施 | 最初は形式的になりがち。具体的な改善提案を出すことを目標に設定 |
社長のコメント
「ISO取得は、品質管理の『仕組み』を会社に入れたということです。今まで現場代理人の個人の力量に頼っていた品質管理が、組織として取り組めるようになりました。経審の加点も嬉しいですが、一番の収穫は社員の意識が変わったことです。『品質は自分たちの評価に直結する』と全員が理解しています」
まとめ
ISO9001の取得は、品質管理体制の構築と社内意識の改革を同時に実現できる取り組みです。P建設株式会社の事例では、工事成績評定の向上、経審の加点、手戻りの削減という具体的な成果が得られました。
取得には約1年の準備期間と相応の費用がかかりますが、品質の安定化と対外的な信用力の向上は、長期的に見て大きなリターンを生みます。
