施工要領書の書き方|施工計画書との違いと記載項目【土木】
施工要領書は、特定の工種や作業について、施工手順・使用材料・使用機械・品質管理・出来形管理・安全対策を、現場でそのまま使えるほど具体的に書いた書類です。 施工計画書が工事全体の計画を示すのに対し、施工要領書は1つの工種・作業の「やり方」を詳しく定めます。なお、国土交通省の土木工事共通仕様書(案)が受注者に提出を求めているのは施工計画書と、監督職員が指示した事項についての詳細施工計画書(1-1-1-6)で、「施工要領書」という書類名は定められていません。公共工事では、施工要領書は詳細施工計画書や施工計画書の「施工方法」「施工管理計画」を詳しくした書類として作るのが実務上の位置づけです。
本記事では、施工計画書・詳細施工計画書との違いを整理したうえで、施工要領書の記載項目、コンクリート打設と舗装の書き方例、作成手順、作成前のチェックリストをまとめます。
施工要領書とは
施工要領書は、ある工種・作業を「どの順番で、何を使って、どの基準で管理しながら施工するか」を定めた書類です。現場の職長・作業員が作業前に読み、手順と管理基準を共有するために使います。
「施工要領書」は法令や共通仕様書で定義された名称ではないため、発注者・元請によって呼び方や中身が異なります。現場では次のような書類が、同じ役割で作られています。
| 呼び方 | 主な作成者 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 詳細施工計画書 | 受注者(元請) | 共通仕様書 1-1-1-6 第3項。施工計画書を提出した際に監督職員が指示した事項について提出する |
| 施工要領書 | 元請、専門工事会社 | 特定工種の手順・管理方法を詳しく書いた書類。特記仕様書や元請の社内ルールで求められる |
| 施工計画書のうち工種別の「施工方法」「施工管理計画」 | 受注者(元請) | 共通仕様書 1-1-1-6 第1項の記載事項(7)(8)。施工要領をここに書き込む場合もある |
| 作業手順書 | 専門工事会社、職長 | 作業の単位ごとの手順と急所。職長教育の「作業手順の定め方」に対応する現場の安全書類 |
共通仕様書の中で「施工要領」という言葉が使われている例に、機械式鉄筋継手があります。共通仕様書 1-3-7-5(継手)は、機械式鉄筋継手を使う場合、使用する工法に応じた施工要領を施工計画書に記載し、確認項目・頻度・方法・合否判定基準を施工計画書に明示したうえで施工・確認することを求めています。施工要領は独立した書類である必要はなく、施工計画書に記載する扱いもある、ということです。
施工計画書・詳細施工計画書との違い
| 項目 | 施工計画書 | 詳細施工計画書 | 施工要領書 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 共通仕様書 1-1-1-6 第1項 | 共通仕様書 1-1-1-6 第3項 | 法令・共通仕様書上の定めなし(特記仕様書、監督職員の指示、元請の社内ルールなど) |
| 対象範囲 | 工事全体 | 監督職員が指示した事項 | 特定の工種・作業 |
| 記載の深さ | 工事概要から施工方法・施工管理・安全管理まで全体を記載 | 指示された事項を詳細に記載 | 1つの工種・作業の手順・基準を詳細に記載 |
| 提出時期 | 工事着手前、または施工方法が確定した時期 | 施工計画書を提出した際に監督職員が指示したとき | 当該工種の着手前(発注者・元請の指定による) |
| 提出先 | 監督職員 | 監督職員 | 監督職員または元請(求められた相手) |
| 主な読み手 | 発注者、元請の管理者 | 発注者、元請の管理者 | 現場の職長・作業員、元請の管理者 |
ひと言でいえば、施工計画書は「工事全体を何でどう進めるか」、施工要領書は「この工種をどの手順・基準でやるか」です。公共工事で監督職員から詳細な計画を求められた場合は、詳細施工計画書として提出するのが共通仕様書に沿った扱いになります。
施工計画書の内容に重要な変更が生じた場合は、その都度、当該工事に着手する前に変更施工計画書を提出します(共通仕様書 1-1-1-6 第2項)。施工要領書で定めた手順を大きく変える場合は、施工計画書の変更に当たらないかもあわせて確認してください。詳しくは変更施工計画書とはで解説しています。
施工要領書が求められる主な場面
すべての工種に施工要領書が必要なわけではありません。次のような場面で作成を求められます。
- 発注者から求められた場合: 特記仕様書に記載がある、または施工計画書の提出時に監督職員が詳細な計画を指示した
- 設計図書にない工法・新技術を使う場合: 機械式鉄筋継手のように、工法ごとに手順と確認方法が異なるもの
- 品質管理が特に重要な工種: コンクリート打設、舗装、防水、杭など、施工管理基準の品質管理項目が多い工種
- 安全上のリスクが高い作業: 深い掘削、移動式クレーンを使う作業、夜間作業、河川内の作業など
- 元請が専門工事会社に求める場合: 元請の品質・安全の社内ルールとして、工種ごとに提出を求める
施工要領書の記載項目
施工要領書の様式は決まっていませんが、施工計画書の記載事項(共通仕様書 1-1-1-6)のうち、その工種にかかわる部分を詳しく書くと、施工計画書との整合が取りやすくなります。
| 項目 | 内容 | 対応する施工計画書の記載事項 |
|---|---|---|
| 工種名・適用範囲 | 対象となる工種、施工区間、数量 | (1)工事概要 |
| 施工時期 | 施工する期間、工程上の前後関係 | (2)計画工程表 |
| 体制 | 責任者、職長、作業主任者などの配置 | (3)現場組織表 |
| 使用機械 | 機械名、規格、台数 | (4)指定機械、(5)主要船舶・機械 |
| 使用材料 | 材料名、規格、品質の確認方法 | (6)主要資材 |
| 施工手順 | 作業のステップを順番に記載し、各ステップの急所を書く | (7)施工方法 |
| 品質管理 | 管理項目、規格値、試験方法、頻度(施工管理基準に沿う) | (8)施工管理計画 |
| 出来形管理 | 測定項目、規格値、測定頻度(施工管理基準に沿う) | (8)施工管理計画 |
| 安全対策 | その作業に特化した危険と対策 | (9)安全管理 |
| 緊急時の対応 | 異常時の連絡先と処置 | (10)緊急時の体制及び対応 |
| 環境対策 | 騒音・振動・濁水などの対策 | (12)環境対策 |
| 添付図面 | 施工詳細図、管理断面図、施工フロー図 | (7)施工方法 |
品質管理・出来形管理の規格値と頻度は、国交省の「土木工事施工管理基準及び規格値(案)」が基準です。最新版の構成は土木工事施工管理基準及び規格値とは、施工計画書への書き方は施工計画書の品質管理計画の書き方を参照してください。
工種別の施工要領書 記載例
以下の数値は、当サイトで出典と照合済みの記事の値と一致させています。実際の工事では、発注者の仕様書・特記仕様書と最新の施工管理基準で確認してください。
コンクリート打設の施工要領書
施工手順
- 打設前の準備(型枠・鉄筋の確認、打込み面の清掃)
- 受入検査(スランプ、空気量、塩化物総量、コンクリート温度、圧縮強度用の供試体採取)
- 運搬(練混ぜ開始から荷卸し地点到着まで1.5時間以内)
- 打込み(1日の打設高さ、層の厚さ、打込みの順序)
- 締固め(内部振動機の使い方)
- 仕上げ(表面仕上げの方法)
- 養生(養生方法と期間、温度の管理)
品質管理項目(荷卸し時)
| 管理項目 | 規格値 | 頻度 |
|---|---|---|
| スランプ | 指定値に対する許容差(8cm以上18cm以下は±2.5cmなど) | 1回/日以上、または構造物の重要度と工事の規模に応じて20〜150㎥ごとに1回、および荷卸し時に品質変化が認められたとき |
| 空気量 | 指定値に対して±1.5% | スランプと同じ |
| 塩化物総量 | 原則0.3kg/㎥以下 | 打設が午前と午後にまたがる場合は午前の打設前に1回(結果が規制値の2分の1以下なら午後は省略可) |
| 圧縮強度 | 1回の試験結果が呼び強度の85%以上、3回の試験結果の平均値が呼び強度以上 | 1回/日以上、または20〜150㎥ごとに1回。供試体は1回につき6個(σ7用3個、σ28用3個) |
| コンクリート温度 | 暑中コンクリートは打設時35℃以下(所定の品質を確保できる場合は38℃)、寒中コンクリートは5〜20℃ | 荷卸し時 |
単位水量の管理値、小規模工種の扱い、記録表の書き方はコンクリートの品質管理で詳しく解説しています。
舗装工事(アスファルト舗装)の施工要領書
施工手順
- 路面清掃(路盤面のごみ・泥の除去)
- プライムコート・タックコートの散布(乳剤の種類と使用量は設計図書による)
- 混合物の受入れ(温度測定、外観確認)
- 敷均し(アスファルトフィニッシャで敷均し、敷均し時の混合物温度110℃以上)
- 初転圧(ロードローラ。初転圧前の温度110℃以上を確認・記録)
- 二次転圧(タイヤローラまたは振動ローラ)
- 仕上げ転圧(タイヤローラまたはロードローラで不陸を修正し、ローラマークを消す)
- 交通開放(舗装表面温度50℃以下になってから。監督職員の指示がある場合を除く)
温度の規定と目安、記録の取り方はアスファルト温度管理基準一覧にまとめています。
施工要領書の作成手順
ステップ1: 対象工種と提出先の確認
設計図書・特記仕様書・監督職員の指示から、施工要領書(または詳細施工計画書)が必要な工種を洗い出し、提出先と提出時期を確認します。
ステップ2: 施工手順の検討
使用する材料、機械、施工方法を具体的に検討します。過去の同種工事の施工要領書があれば参考にしつつ、今回の現場条件(地盤、作業スペース、周辺環境)に合わせて書き直します。
ステップ3: 品質・出来形・安全の管理項目の設定
品質管理・出来形管理は施工管理基準の項目・規格値・頻度に合わせます。安全対策は、その作業で想定される危険と対策を、作業手順の各ステップに結びつけて書きます。
ステップ4: 図面の作成
施工詳細図、管理断面図、施工フロー図を作成します。文章だけでは伝わりにくい手順や管理位置が、図面で共有できます。
ステップ5: 施工計画書との整合確認と社内レビュー
施工計画書の工程・機械・管理基準と食い違いがないかを確認し、経験のある技術者にレビューしてもらいます。特に品質管理項目と安全対策の過不足を確認します。
作成前チェックリスト
土木工事 業務改善Naviが、共通仕様書の施工計画書の規定(1-1-1-6)と施工管理基準をもとに、施工要領書を作る前に確認する事項を並べたものです。
| 順番 | 確認すること | 根拠・資料 |
|---|---|---|
| 1 | 監督職員から詳細施工計画書の提出を指示された事項か、特記仕様書で求められた書類か、元請の社内ルールか | 共通仕様書 1-1-1-6 第3項、特記仕様書 |
| 2 | 施工計画書の「施工方法」「施工管理計画」と内容が一致しているか | 共通仕様書 1-1-1-6 第1項 |
| 3 | 品質管理の項目・規格値・頻度が最新の施工管理基準と一致しているか | 土木工事施工管理基準及び規格値(案) |
| 4 | 出来形管理の測定項目・規格値・頻度が最新の施工管理基準と一致しているか | 土木工事施工管理基準及び規格値(案) |
| 5 | 設計図書にない工法・新技術を使う場合、確認項目・頻度・方法・合否判定基準を明示したか | 共通仕様書 1-3-7-5(機械式鉄筋継手の例) |
| 6 | 作業主任者・特別教育・資格が必要な作業を洗い出したか | 労働安全衛生法・施行令 |
| 7 | 異常時の連絡先と処置を書いたか | 共通仕様書 1-1-1-6 第1項(10) |
| 8 | 手順を大きく変える場合に、変更施工計画書の提出が必要かを確認したか | 共通仕様書 1-1-1-6 第2項 |
| 9 | 現場の職長・作業員に説明する日と、改訂時の周知方法を決めたか | 社内ルール |
施工要領書の運用
作業員への周知
施工要領書は、作業員が実際に参照してはじめて意味を持つ書類です。
- 作業前の打合せ: 当日の作業にかかわる手順と管理基準を全員に説明する
- 現場への掲示: 手順と急所、管理基準値の要点を現場に掲示する
- 変更時の周知: 施工方法を変更した場合は速やかに要領書を改訂し、再周知する
改訂の管理
施工中に施工方法を変更した場合は、施工要領書を改訂します。
- 改訂日、改訂内容、改訂理由を記録する
- 旧版と新版を区別する(改訂番号を付ける)
- 現場に掲示する要領書を最新版に差し替える
- 施工計画書の重要な変更に当たる場合は、変更施工計画書を着手前に提出する
よくある質問
Q. 施工要領書と施工計画書の違いは何ですか。 A. 施工計画書は工事全体の計画(工事概要、工程、組織、機械、資材、施工方法、施工管理、安全管理など)を示す書類で、公共工事では共通仕様書 1-1-1-6 で監督職員への提出が定められています。施工要領書は、特定の工種・作業の手順と管理方法を詳しく書いた書類で、法令や共通仕様書には書類名の定めがありません。
Q. 施工要領書は提出義務がありますか。 A. 法令上の提出義務はなく、国の土木工事共通仕様書にも「施工要領書」の提出規定はありません。特記仕様書で求められた場合、監督職員が詳細施工計画書を指示した場合、元請が社内ルールで求める場合に作成・提出します。
Q. 詳細施工計画書と施工要領書は同じものですか。 A. 詳細施工計画書は、施工計画書を提出した際に監督職員が指示した事項について提出する書類です(共通仕様書 1-1-1-6 第3項)。工種の手順を詳しく書く点で施工要領書と内容が重なるため、公共工事では施工要領書を詳細施工計画書として提出する扱いが共通仕様書に沿った形になります。呼び方と様式は発注者に確認してください。
Q. 施工要領書の書き方のコツは何ですか。 A. 施工計画書の記載事項に合わせて項目を立て、品質管理・出来形管理の規格値と頻度は最新の施工管理基準と一致させることです。手順は作業の順番に並べ、各ステップの急所と安全対策を同じ行に書くと、現場で使いやすくなります。
まとめ
- 施工要領書は、特定の工種・作業の手順・材料・機械・管理基準を詳しく書いた書類
- 共通仕様書が定めるのは施工計画書・変更施工計画書・詳細施工計画書(1-1-1-6)で、施工要領書という書類名の定めはない
- 公共工事では、施工要領書は詳細施工計画書や施工計画書の「施工方法」「施工管理計画」を詳しくした位置づけで作る
- 品質管理・出来形管理の数値は最新の施工管理基準と、発注者の仕様書・特記仕様書で確認する
施工計画書全体の書き方については、土木工事の施工計画書 完全作成ガイドもあわせてご覧ください。
出典・参考
- 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」第1編 第1章 第1節 1-1-1-6 施工計画書(1.一般事項、2.変更施工計画書、3.詳細施工計画書)
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun01_syo01_setsu01.html - 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」第1編 第3章 第7節 鉄筋工 1-3-7-5 継手(機械式鉄筋継手:使用する工法に応じた施工要領を施工計画書に記載)
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun01_syo03_setsu07.html - 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」第1編 第3章 第6節 1-3-6-3 運搬、第9節 暑中コンクリート(打設時のコンクリート温度)、第10節 寒中コンクリート(打込み時のコンクリート温度)
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun01_syo03_setsu06.html
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun01_syo03_setsu09.html
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun01_syo03_setsu10.html - 国土交通省「土木工事共通仕様書(案)令和8年3月」第3編 第2章 第6節 3-2-6-7 アスファルト舗装工(敷均し温度、交通開放時の舗装表面温度)
https://www.mlit.go.jp/tec/r08dobokukoujikyoutsuusiyousyo/honbun03_syo02_setsu06.html - 国土交通省「土木工事施工管理基準及び規格値(案)令和8年3月」(品質管理基準及び規格値 1 セメント・コンクリート、14 アスファルト舗装)※本記事のコンクリート・舗装の数値は、出典を照合済みの当サイト記事「コンクリートの品質管理」「アスファルト温度管理基準一覧」の値と一致させています
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001990185.pdf - 国土交通省 技術調査「監督・検査・工事成績評定・土木工事共通仕様書関係」(各基準の最新版)
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000052.html
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