技術提案書の書き方|総合評価落札方式で評価される記載例と注意点
技術提案書は、総合評価落札方式(価格と技術を総合的に評価して落札者を決める入札方式)で、入札説明書が示す評価項目(課題)に対し、発注者の標準案よりどう品質を高めるかを書く書類です。書き方の基本は、①その現場ならではの課題を示し、②課題に対する具体的な対策を、③期待できる効果とともに、1提案につき1つの着目点で書くことです。 国土交通省の運用ガイドラインでは、技術提案は優・良・可などの段階で評価され、「不適切ではないが、一般的な事項のみの記載」は低い評価の例として示されています。また、要求水準に対して過剰でコストのかかる提案は、優れていても優位に評価しないとされています。
本記事では、国土交通省「国土交通省直轄工事における総合評価落札方式の運用ガイドライン」(2023年3月)をもとに、方式ごとに求められる内容、評価のされ方、書き方のポイントと記載例、提出前のチェックリストをまとめます。地方公共団体の工事は発注者ごとに方式や評価基準が違うため、必ず入札説明書で確認してください。
総合評価落札方式と技術提案書の関係
国土交通省の直轄工事では、総合評価落札方式の落札者は、入札価格が予定価格の範囲内にある者のうち評価値が最も高い者です。評価値は除算方式で求めます。
評価値 = 技術評価点 ÷ 入札価格
技術評価点 = 標準点(最低限の要求要件を満たせば100点)+ 加算点 + 施工体制評価点
技術提案の評価は加算点に入ります。価格を下げなくても加算点を上げれば評価値は上がるため、技術提案書の出来が勝敗を分けることがあります。価格の線(予定価格・低入札価格調査基準価格など)と評価値の関係は公共工事の落札率と入札の勝率を上げる考え方で解説しています。
方式ごとに求められる内容
国土交通省は平成25年3月に、それまでの「簡易型」「標準型」「高度技術提案型」を「施工能力評価型」と「技術提案評価型」の2タイプに再編しました。現在の区分と、技術提案書(技術資料)で求められる内容は次のとおりです。
| 方式 | 対象となる工事 | 求められるもの | 評価のされ方 |
|---|---|---|---|
| 施工能力評価型Ⅰ型 | 技術的工夫の余地が小さい工事 | 企業・技術者の能力等(施工実績、工事成績、表彰など)+施工計画 | 施工計画は「可」「不可」の二段階で審査し点数化しない。「不可」は不合格 |
| 施工能力評価型Ⅱ型 | 同上 | 企業・技術者の能力等 | 実績などで評価(施工計画は求めない) |
| 技術提案評価型S型 | 標準案に対し、施工上の特定の課題について施工上の工夫を求める工事 | 指定テーマに対する施工上の工夫の技術提案 | 提案ごとに優・良・可などの段階で評価し、得点の合計を加算点とする(素点計上方式) |
| 技術提案評価型A型(AⅠ・AⅡ・AⅢ) | 通常の構造・工法では制約条件を満たせない工事、有力な構造・工法が複数ある工事、高度な施工技術で社会的便益の向上を期待する工事 | 工事目的物そのものや施工方法の高度な技術提案と、その具体的な施工計画 | 技術対話を通じて提案を改善し、技術提案に基づいて予定価格を作成 |
このほか国土交通省は、令和6年の公共工事品質確保法の改正を踏まえ、技術提案に基づく比較的軽微な設計図書の変更で品質や生産性などの向上が期待される工事を対象に、「技術提案評価型SⅠ型」を試行しています。
多くの土木工事で受注者が書くことになるのは、施工能力評価型Ⅰ型の「施工計画」と、技術提案評価型S型の「技術提案」です。地方公共団体では独自の区分名を使っている発注者もあるため、入札説明書の評価項目と評価基準で中身を確認してください。
施工能力評価型Ⅰ型の「施工計画」
- 特に重要と考えられる工種の施工方法について、どういう点に配慮して施工するか(施工上配慮すべき事項)を書く。これに代えて、環境対策など特に配慮すべき事項を求められることもある
- 記述量はA4で1〜2枚が基本
- 現場条件を踏まえた記述が適切なら「可」、不適切または未記載なら「不可」。不可は競争参加資格が認められない
- 施工計画の代わりに、配置予定技術者へのヒアリングで理解度を確認することもある
点数化されないとはいえ、「不可」になれば価格に関係なく失格です。現場条件に触れていない一般論だけの記述は避けてください。
技術提案評価型S型の「技術提案」
- 指定テーマは工事内容に応じて1〜2テーマ
- 提案はテーマごとに最大5つが基本。提案数を超えた分は評価されず、上限までの提案で評価される
- 記述量は1テーマにつきA4で1〜2枚程度が基本
- 定量的な評価項目(数値の提案)と定性的な評価項目(工夫の内容)があり、定量評価を設けるときは定性評価も併せて設けるのが基本
- 必要に応じて配置予定技術者へのヒアリングが行われ、理解度に応じて技術提案の評価点に係数が掛けられる(ガイドラインの例では×1.0、×0.5、×0.0)
上の枚数や提案数はガイドラインが示す基本形です。実際の上限は工事ごとに入札説明書で決まるので、そちらに従ってください。
評価基準の読み方
ガイドラインには、定性的な評価項目の評価基準の例として、次のような段階が示されています(例:周辺住民の生活環境維持対策)。
| 評価の段階(例) | ガイドラインの例示 | 書き方への置き換え |
|---|---|---|
| 最上位 | 現地条件を踏まえ、騒音・振動・粉塵などの対策を計画しており、有意な工夫が見られる | 現場固有の条件に結びついた、標準案にない工夫を具体的に書く |
| 中位 | 現地条件を踏まえ、騒音・振動・粉塵などの対策を計画している | 現場条件に結びついているが、工夫の独自性・具体性が足りない状態 |
| 下位 | 不適切ではないが、一般的な事項のみの記載となっている | どの現場にも当てはまる対策の列挙 |
数値の提案(定量評価)は、例えば施工期間(日数)なら、最低限の要求要件を0点、目標状態を最高得点とし、その間は提案値に応じて按分する方法が例示されています。数値を出すときは、その数値を実現する具体的な施工方法をセットで書くことが基本です。
高評価を狙う技術提案書の書き方
ポイント1:現場固有の課題を明確にする
評価基準の上位に共通するのは「現地条件を踏まえ」ている点です。一般論ではなく、その現場の条件から課題を導きます。
一般論の例:「安全対策として、毎朝KYミーティングを実施する」
現場固有の例:「当該現場の搬入路は通学路に接しており、登校時間帯に児童の通行が集中する。この時間帯は工事車両の搬入を行わず、搬入路の出入口に交通誘導警備員を配置する」
現場固有の課題を見つけるには、現地踏査、設計図書、入札説明書の施工条件、周辺の道路・河川・住宅の状況の確認が欠かせません。
ポイント2:「課題→対策→効果」の順で書く
1提案ごとに、次の3段で書くと評価者が読みやすくなります。
- 課題:当該現場で想定される具体的な課題と、その根拠となる現場条件
- 対策:課題を解決する具体的な方法(使う機械・材料・手順・管理方法・体制)
- 効果:対策によって何がどう良くなるか。数値で示せるものは、根拠と実現方法をセットで示す
ポイント3:1つの提案には1つの着目点だけを書く
ガイドラインは、1つの提案項目は1つの着目対象(○○対策など)に限るとし、1つの提案に複数の着目対象が書かれた場合の扱いとして「加点評価の対象としない」「1つだけを評価する」「最も評価が低い提案で評価する」などの例を示しています。どの扱いになるかは入札説明書に書かれます。盛りだくさんの提案は、かえって評価を下げることがあると考えてください。
ポイント4:過度なコスト負担を要する提案をしない
ガイドラインは、過度なコスト負担を要する提案は、優れた提案であっても、過度なコスト負担を要しない提案より優位な評価としない(または加点対象としない)としています。過度なコスト負担の考え方として、次の3つが挙げられています。
| 考え方 | ガイドラインの例 |
|---|---|
| 発注者が示す要求水準に対して過剰なもの | 排水基準・騒音値などの管理基準の厳格化、高強度材料や重防食へのグレードアップ、ボーリング・観測機器・監視員の追加 |
| 提案の履行に要する費用が高価なもの | 技術的な工夫や配慮の域を超えるもの |
| 提案の効果が十分でないもの | 費用に見合った効果がないもの |
「騒音を規制値より大幅に下げる」「管理値を仕様より厳しくする」といった数値の引き上げは、評価されないどころか、履行の義務だけが残ることがあります。工夫で品質を上げる提案を考えるのが基本です。
ポイント5:図表で現場と手順を見せる
| 表現方法 | 効果的な使い方 |
|---|---|
| 平面図 | 施工範囲、仮設計画、交通規制範囲、搬入経路 |
| 断面図 | 施工手順の段階ごとの状態 |
| 工程表 | 作業の流れ、並行作業、制約のある期間 |
| フローチャート | 品質管理・安全管理の手順と判断基準 |
記述量に上限があるため、文章で長く説明するより、図と短い説明文で伝えるほうが限られた枚数に収まります。
ポイント6:実績と工事成績を積み上げておく
施工能力評価型では、企業と配置予定技術者の同種工事の施工実績、工事成績、表彰などが評価されます。実績の記載はCORINS(工事実績情報システム)の登録内容と整合させてください。工事成績評定を高く保つことは、次の入札の評価にもつながります。詳しくは施工計画書の品質と工事成績評定を参照してください。
提案した内容は契約後に守る義務がある
ガイドラインは、落札者決定に反映された技術提案について、契約上その履行を確保するよう求めています。特記仕様書の記載例では、技術資料に書いた提案は、発注者が「実施してはならない」と通知したものを除き、施工計画書に記載しなければならないとされています。
| 不履行の場合 | 扱い(ガイドラインの考え方) |
|---|---|
| 工事目的物の不具合に当たる場合 | 契約書に基づき修補や損害賠償を請求 |
| 施工方法に関する提案の不履行(受注者の責めによる場合) | 契約不履行の違約金を徴収(例:実際に確認できた結果で点数を再計算し、落札時との点差に応じた額) |
| いずれの場合も | 工事成績評定の減点対象 |
実現できない提案は、落札できても後で違約金と減点という形で返ってきます。提案は施工計画書に落とし込める内容に限ってください。契約後の施工計画書の説明と協議の進め方は施工計画書の説明と協議の進め方で解説しています。
技術提案書でよくある失敗
| 失敗パターン | 問題点 | 改善策 |
|---|---|---|
| 他工事の提案の使い回し | 現地条件を踏まえておらず「一般的な事項のみ」と評価される | 現地踏査を行い、その現場の条件から課題を導く |
| 1提案に複数の対策を詰め込む | 加点対象外や低い方の評価になることがある | 1提案1着目点に分ける |
| 管理基準の厳格化やグレードアップ | 過度なコスト負担として優位に評価されない | 工夫で効果を出す提案にする |
| 実現性の低い提案 | ヒアリングで理解度が低いと評価点に係数が掛かる。契約後は不履行の違約金・減点の対象 | 自社で確実に実施できる内容に絞る |
| 提案数・枚数の上限超過 | 上限を超えた提案は評価されない | 入札説明書の上限を守り、優先順位の高い提案から書く |
| 評価項目とずれた内容 | 求められていない内容は評価されない | 評価項目ごとに見出しを立てて対応させる |
提出前の最終チェックリスト
| No. | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 入札説明書の方式(施工能力評価型・技術提案評価型など)と、評価項目・評価基準・配点を確認したか |
| 2 | 各提案が、評価項目(指定テーマ)のどれに対応するかが見出しで明確か |
| 3 | 提案数・記述量(枚数)が入札説明書の上限内か |
| 4 | すべての提案が、現地条件を根拠にした課題から始まっているか |
| 5 | 1提案に1つの着目点だけを書いているか |
| 6 | 数値を示した提案に、根拠と実現する施工方法が書かれているか |
| 7 | 管理基準の厳格化、材料のグレードアップ、監視員の追加など、過度なコスト負担になる提案が混ざっていないか |
| 8 | 契約後に施工計画書へ記載して確実に実施できる内容か |
| 9 | 配置予定技術者が提案の内容と施工上の配慮事項(工程・品質・安全・関係者調整)を説明できるか |
| 10 | 企業・技術者の実績、工事成績、資格の記載がCORINSなどの登録内容と一致しているか |
| 11 | 図表が鮮明で、誤字脱字がないか |
| 12 | 提出期限と提出方法(電子入札システムなど)を確認したか |
入札書類の準備全体については、土木工事の入札書類 準備チェックリスト30項目もあわせて確認してください。
よくある質問
Q. 技術提案書には何を書けばよいですか。 A. 入札説明書の評価項目(指定テーマ)ごとに、その現場の条件から導いた課題、具体的な対策、期待できる効果を書きます。施工能力評価型Ⅰ型では「施工計画」として施工上配慮すべき事項を、技術提案評価型S型では施工上の工夫の技術提案を求められるのが国土交通省の基本形です。
Q. 技術提案はいくつ書けばよいですか。 A. 国土交通省のガイドラインでは、技術提案評価型S型の指定テーマは1〜2テーマ、提案はテーマごとに最大5つが基本で、上限を超えた分は評価されません。実際の上限は入札説明書で確認してください。
Q. 騒音や管理値を仕様より厳しくする提案は評価されますか。 A. ガイドラインは、管理基準の厳格化などを「過度なコスト負担」の例に挙げ、優れた提案であっても優位な評価としない(または加点対象としない)としています。工夫で品質を上げる提案を検討してください。
Q. 技術提案した内容は、落札後どうなりますか。 A. 施工計画書に記載して実施します。受注者の責めで実施しなかった場合は、違約金や工事成績評定の減点の対象になるとガイドラインに示されています。
Q. 簡易型・標準型という区分はもう使われていませんか。 A. 国土交通省の直轄工事では、平成25年3月に施工能力評価型と技術提案評価型の2タイプに再編されています。地方公共団体は発注者ごとに区分名や評価方法が違うため、入札説明書で確認してください。
まとめ
- 技術提案書は、評価項目ごとに「現場固有の課題→具体的な対策→効果」を、1提案1着目点で書く
- 国土交通省の基本形は、施工能力評価型Ⅰ型の施工計画(A4で1〜2枚、可・不可)、技術提案評価型S型の技術提案(1〜2テーマ、各最大5提案、1テーマA4で1〜2枚程度)
- 「一般的な事項のみ」の記載は低評価、過度なコスト負担を要する提案は優位に評価されない
- 提案は契約後に施工計画書へ記載して実施する義務があり、不履行は違約金・工事成績の減点につながる
- 実際の方式・上限・配点は工事ごとに入札説明書で確認する
出典・参考
- 国土交通省 大臣官房会計課・技術調査課ほか「国土交通省直轄工事における総合評価落札方式の運用ガイドライン」2023年3月(1-2 平成25年3月のタイプ再編、2-1 タイプの概要、2-4 複数提案と過度なコスト負担の設定例、2-6 施工計画・技術提案の求め方と評価方法・評価基準の例、3-1 評価値の算出方法、5-1 技術提案履行の確保)
https://www.mlit.go.jp/common/001068241.pdf - 国土技術政策総合研究所「総合評価(工事)」(運用ガイドラインと技術提案評価型SⅠ型の試行に関する情報)
https://www.nilim.go.jp/lab/peg/1sougou.html - 国土交通省「国土交通省直轄工事における総合評価落札方式技術提案評価型SⅠ型の試行」
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000152.html
いまの課題に近いものはどれですか?
選んだお悩みに最適なサービスのご案内ページへ移動します。
お使いの業務に合う機能と、無料体験の内容をご確認いただけます。




