土木工事会社の事業承継|今から始める準備チェックリスト
土木工事会社の事業承継が急がれる背景
建設業の経営者の高齢化は深刻です。経営者の平均年齢は60歳を超えており、後継者が決まっていない会社も少なくありません。
土木工事会社の事業承継は一般企業以上に複雑です。建設業許可、経営事項審査、入札資格、技術者の配置など、業界特有の要件があるためです。準備不足のまま事業承継を行うと、最悪の場合、建設業許可を失い、事業の継続が困難になります。
事業承継の3つのパターン
| パターン | 内容 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 親族内承継 | 子どもや親族に引き継ぐ | 関係者の理解が得やすい | 適任者がいない場合がある |
| 社員承継 | 幹部社員に引き継ぐ | 業務をよく知っている | 株式の買取資金が課題 |
| M&A(第三者承継) | 外部の会社・個人に売却 | 後継者不在でも事業存続可能 | 従業員の不安、相手探しの手間 |
どのパターンでも、準備には最低3-5年が必要です。早め早めの着手が成功の鍵となります。
事業承継の準備チェックリスト
ステップ1: 現状の把握(承継の5年前-)
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社の財務状況の棚卸し | 資産、負債、借入金、保証債務の洗い出し |
| 建設業許可の状況確認 | 許可業種、許可期限、経営業務管理責任者の要件確認 |
| 技術者の配置状況 | 1級・2級施工管理技士の人数と年齢構成 |
| 入札参加資格の確認 | 登録先の自治体、格付け等級の確認 |
| 株式(出資持分)の評価 | 自社株の評価額の算定 |
| 経営者個人の保証状況 | 銀行借入の個人保証、担保提供の状況 |
ステップ2: 後継者の選定と育成(承継の3-5年前)
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 後継者候補の決定 | 能力、意欲、周囲の信頼を総合的に判断 |
| 後継者の経営知識の習得 | 財務、労務、法務の基本知識の教育 |
| 建設業の経験要件の確認 | 経営業務管理責任者の要件(建設業の経営経験5年以上等) |
| 社内外への周知 | 取引先、金融機関、従業員への段階的な周知 |
| 権限の段階的な移譲 | 意思決定の権限を少しずつ後継者に移す |
ステップ3: 具体的な承継手続き(承継の1-2年前)
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 承継方法の決定 | 株式譲渡、事業譲渡、合併など |
| 税金対策 | 贈与税・相続税の試算、事業承継税制の活用検討 |
| 建設業許可の変更届 | 経営業務管理責任者、専任技術者の変更手続き |
| 経営事項審査の準備 | 承継後も経審のP点を維持する計画 |
| 金融機関との調整 | 借入金の承継、個人保証の解除交渉 |
| 各種届出の手続き | 税務署、社会保険、労働保険の届出 |
土木工事会社特有の注意点
建設業許可の引継ぎ
2020年の建設業法改正により、事業承継(譲渡、合併、分割、相続)に伴う建設業許可の承継が可能になりました。ただし事前の認可申請が必要です。
| 承継の種類 | 手続き |
|---|---|
| 譲渡・合併・分割 | 事前に許可行政庁の認可を受ける |
| 相続 | 被相続人の死亡後30日以内に認可申請 |
認可を受けずに事業承継を行うと、後継者は新規に建設業許可を取得し直す必要があり、その間は500万円以上の工事を受注できなくなります。建設業許可の基本は建設業許可を取るための要件と手続きで解説しています。
経営業務管理責任者(経管)の要件
後継者が経営業務管理責任者になるには、建設業に関する経営経験が5年以上必要です(2020年法改正後は、建設業以外の経営経験6年以上でも可)。
後継者が要件を満たしていない場合は、要件を満たす他の役員を確保するか、後継者が経験を積むまで現経営者が経管として残る必要があります。
技術者の確保
1級土木施工管理技士などの技術者は、配置技術者として工事の受注に不可欠です。事業承継時に技術者が退職してしまうと、工事の受注能力が低下します。
- 技術者の処遇を明確にし、承継後も継続して勤務してもらう
- 後継者自身も施工管理技士の資格を取得しておく
- 若手の資格取得を計画的に進める
入札参加資格への影響
事業承継により法人格が変わる場合(新会社を設立する場合など)、入札参加資格を新たに申請し直す必要があります。また経営事項審査も、承継後の会社として新たに受審する必要がある場合があります。
事業承継を支援する制度
| 支援制度 | 内容 |
|---|---|
| 事業承継税制 | 一定の要件のもと、贈与税・相続税の納税が猶予される |
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 国が設置する無料の相談窓口。M&Aのマッチングも支援 |
| 経営承継円滑化法 | 資金調達の支援(金融支援) |
| 小規模企業共済 | 経営者の退職金制度。承継時の資金に活用可能 |
まとめ
土木工事会社の事業承継は、建設業許可の引継ぎや経営業務管理責任者の要件など、業界特有の課題があります。「まだ先のこと」と思わずに、5年前から準備を始めることが重要です。
まずは現状の把握から始め、チェックリストに沿って一つずつ準備を進めていきましょう。専門家(税理士、行政書士、事業承継支援センター)への早めの相談もおすすめです。
