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土木工事の原価管理で利益率を改善する方法

土木工事の原価管理で利益率を改善する方法

なぜ原価管理が利益率を左右するのか

土木工事の利益は「売上(請負金額)- 原価 = 利益」というシンプルな構造です。売上(請負金額)は契約時に決まるため、利益を増やすには原価をコントロールするしかありません。

しかし、多くの土木工事会社では「工事が終わって決算するまで利益が分からない」という状態になっています。これではどの工事で利益が出ていて、どの工事で赤字になっているのかが見えません。

原価管理の目的は、工事の途中で原価の状況を把握し、利益を確保するための対策を早期に打てるようにすることです。

原価管理の全体像

原価管理は大きく3つのフェーズに分かれます。

フェーズタイミング内容
実行予算の作成工事着手前請負金額から目標利益を確保できる原価予算を設定
日々の原価把握施工中投入した人員、材料、機械の原価を日々記録
予実管理月次予算と実績を比較し、差異の原因を分析・対策

フェーズ1: 実行予算の作り方

実行予算とは

実行予算は、工事を完了するために必要な原価の見積もりです。発注者に提出する設計書とは異なり、社内用の管理資料です。

項目設計書(発注者)実行予算(社内)
目的工事の積算・発注原価管理・利益確保
単価設計単価(標準単価)実勢単価(実際の調達単価)
数量設計数量実施数量(ロス含む)
経費諸経費率で計算実際にかかる経費を積上げ

実行予算の作成手順

(1) 工種ごとに原価を積算する

設計書の工種分類に合わせて、以下の原価項目を積算します。

原価項目積算の方法
材料費実際の調達先から見積もりを取り、使用数量にロス率を加味
労務費自社作業員の日当 x 必要人工数
外注費協力会社から見積もりを取得
機械経費リース単価 x 使用日数 + 燃料費 + 回送費
仮設費仮設材のリース、設置・撤去費用
現場経費現場事務所、電気・水道、消耗品

(2) 目標利益率を設定する

請負金額に対して、売上総利益率の目標を設定します。業界の相場については土木工事業の利益率の相場と改善のための3つの視点を参考にしてください。

請負金額目標利益率目標利益額原価上限
3,000万円15%450万円2,550万円
5,000万円15%750万円4,250万円
1億円15%1,500万円8,500万円

(3) 予算を承認する

実行予算は、工事責任者(現場代理人)が作成し、上司(工事部長等)と経営者が承認する流れにします。1人で完結させず、複数の目でチェックすることで精度が上がります。

フェーズ2: 日々の原価把握

日報を原価管理の基礎データにする

毎日の日報に記録する内容が、原価管理の基礎データになります。

日報の記録項目原価管理での活用
投入人員(職種別人数)労務費の実績把握
使用材料(品名・数量)材料費の実績把握
使用機械(機種・稼働時間)機械経費の実績把握
協力会社の人員・作業内容外注費の実績把握
出来高(施工数量)進捗率の計算

原価を工種ごとに記録する

日々の原価を「工事全体」ではなく「工種ごと」に記録することが重要です。工種ごとに管理すれば、どの工種で原価がオーバーしているかが分かります。

工種予算実績(当月末)差異進捗率
掘削工300万円280万円+20万円90%
擁壁工800万円750万円+50万円85%
舗装工400万円100万円+300万円20%
合計1,500万円1,130万円+370万円65%

フェーズ3: 月次の予実管理

予実管理の方法

月に1回、実行予算と実績を比較し、差異を分析します。

確認ポイント内容
原価の消化率と出来高の比較原価の進捗が出来高を上回っていないか
工種ごとの予算超過どの工種で予算をオーバーしているか
残工事の見込み原価残りの工事を完了するのにいくらかかるか
最終利益の見通しこのまま行くと最終的にいくらの利益が残るか

原価超過の主な原因と対策

原因対策
実行予算の見積もりが甘い次の工事では実績データをもとに精度を上げる
手戻り・やり直し施工前の確認を徹底し、1回で仕上げる
天候不順による作業効率の低下工程に余裕を持たせる。雨天作業の可否を事前に検討
協力会社の作業効率が低い協力会社の選定を見直す。打ち合わせを密にする
材料のロスが多い使用量の管理を厳格化。余剰発注を減らす
設計変更に未対応追加費用を遠慮なく発注者に協議する

特に設計変更は利益を圧迫する大きな要因です。「サービスで対応」してしまうと原価だけが増えます。設計変更の協議方法は設計変更と精算の手順で解説しています。

原価管理を始めるための3ステップ

原価管理を一度にすべて導入するのは難しいため、段階的に進めましょう。

ステップ1: まずは「工事別」の原価を把握する

全社の合計ではなく、工事ごとに材料費、労務費、外注費、機械経費を集計できるようにします。

ステップ2: 次に「実行予算」を作る

主要な工事だけでよいので、工事着手前に実行予算を作成する習慣をつけます。

ステップ3: 「月次の予実管理」を行う

実行予算と実績を月次で比較し、差異を分析する会議を実施します。

原価管理に使えるツール

ツール特徴コスト
Excel(スプレッドシート)手軽に始められる。カスタマイズ自由無料-低コスト
建設業向け原価管理ソフト工種別管理、日報連動など業界特化の機能月額数千円-数万円
クラウド会計ソフト(工事別管理機能)会計と原価管理を一元化月額数千円-

小規模な会社ではExcelで十分です。まずはExcelで原価管理の仕組みを作り、管理の習慣が定着してから専用ソフトの導入を検討するのがおすすめです。

まとめ

土木工事の原価管理は、実行予算の作成、日々の原価把握、月次の予実管理の3つで構成されます。「工事が終わるまで利益が分からない」状態から脱却し、施工中に原価をコントロールすることで、利益率を着実に改善できます。

まずは工事別の原価集計から始め、段階的に管理の精度を上げていきましょう。業務効率化と合わせて取り組むことで、少ない工数で効果的な原価管理が実現できます。効率化の具体策は土木工事会社の業務効率化 すぐできる5つの方法を参考にしてください。

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