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擁壁工事の施工手順と種類|重力式・L型・逆T型の選定

擁壁工事の施工手順と種類|重力式・L型・逆T型の選定

擁壁工事とは

擁壁工事は、切土や盛土によって生じる高低差を安全に支えるための構造物を構築する工事です。道路の法面保護、宅地造成、河川護岸など幅広い場面で必要となり、土木工事のなかでも基本的かつ重要な工種の一つです。

擁壁の選定を誤ると、地盤の崩壊や構造物の傾斜など重大な事故につながります。現場条件に応じた適切な形式の選定と、正確な施工手順の把握が欠かせません。

擁壁の主な種類と比較

擁壁にはさまざまな形式がありますが、土木工事で特に多く用いられるのは以下の3種類です。

項目重力式擁壁L型擁壁逆T型擁壁
構造の特徴自重で土圧に抵抗L字型の底版で安定逆T字型で前趾・後趾あり
主な材料無筋コンクリート鉄筋コンクリート鉄筋コンクリート
適用高さ3m程度まで5-8m程度5-10m程度
コスト低い(小規模時)中程度やや高い
施工の難易度比較的容易型枠・鉄筋の技術要型枠・鉄筋の技術要
適用場面低い擁壁、山間部道路、宅地造成大規模造成、道路

擁壁形式の選定基準

擁壁形式を選定する際は、以下の要素を総合的に判断します。

(1) 擁壁高さ:3m以下であれば重力式が経済的。それ以上はL型・逆T型を検討

(2) 地盤条件:支持力が十分か、地下水位の状況はどうか

(3) 背面土の状況:土質・内部摩擦角・粘着力の確認

(4) 施工スペース:底版の張出しに必要な幅が確保できるか

(5) 経済性:材料費・型枠費・施工期間を含めたトータルコスト

(6) 上載荷重:道路や建物など、擁壁上部にかかる荷重の有無

重力式擁壁の施工手順

重力式擁壁は無筋コンクリートで構築するため、鉄筋の組立が不要で比較的シンプルな施工となります。

手順の概要

(1) 掘削・床付け:設計図に基づき基礎地盤まで掘削し、所定の支持力を確認する

(2) 基礎砕石の敷設:クラッシャーランなどを敷均し、転圧して基礎とする

(3) 均しコンクリートの打設:厚さ100mm程度の均しコンクリートを打設する

(4) 型枠の設置:擁壁の形状に合わせて型枠を組み立てる。勾配がつくため、支保工の設置に注意する

(5) コンクリートの打設:1回の打設高さは1.5m以下を目安とし、バイブレーターで十分に締め固める

(6) 養生・脱型:気温に応じた養生期間を設ける。夏場は5日以上、冬場は更に長期の養生が必要

(7) 裏込め材の投入:透水性のよい砕石を裏込めし、水抜きパイプを設置する

(8) 埋戻し:所定の材料で埋戻しを行い、層ごとに転圧する

L型擁壁の施工手順

L型擁壁は鉄筋コンクリート構造となるため、鉄筋の組立精度と型枠の管理が品質を左右します。

手順の概要

(1) 掘削・床付け:底版に必要な幅を確保して掘削。地盤の支持力を平板載荷試験などで確認する

(2) 基礎砕石・均しコンクリート:重力式と同様に基礎を構築する

(3) 底版の鉄筋組立:設計図に基づき主筋・配力筋を配置。かぶり厚さの確保に注意する

(4) 底版コンクリートの打設:打設後、適切な養生を行う

(5) たて壁の鉄筋組立:底版から立ち上がる鉄筋を正確に配置する。鉄筋の継手位置、定着長さに注意

(6) たて壁の型枠設置:勾配に合わせた型枠を精度よく設置する

(7) たて壁コンクリートの打設:打設高さ、バイブレーターの挿入間隔を管理する

(8) 養生・脱型・裏込め・埋戻し:重力式と同様の手順

施工時の品質管理ポイント

擁壁工事で特に注意すべき品質管理のポイントは以下のとおりです。

管理項目管理基準・留意点
基礎地盤の支持力設計値以上であることを確認。軟弱な場合は地盤改良を検討
鉄筋のかぶり厚さ土に接する部分は60mm以上、その他は40mm以上が基本
コンクリートの強度設計基準強度を満たすことをテストピースで確認
水抜きパイプ内径75mm以上、2-3m2に1箇所以上設置
裏込め材透水性の良い材料(砕石など)を使用し、排水を確保
出来形高さ・幅・延長の測定を行い、規格値内であることを確認

コンクリートの品質管理については、コンクリートの品質管理の記事も参考にしてください。

施工計画書への記載事項

擁壁工事の施工計画書には、以下の項目を盛り込むことが重要です。

  • 擁壁形式の選定理由と構造諸元
  • 基礎地盤の調査結果と支持力の確認方法
  • コンクリートの配合計画(設計基準強度、スランプ、最大骨材寸法)
  • 鉄筋の加工図・組立図(L型・逆T型の場合)
  • 型枠・支保工の計画
  • 打設計画(リフト割り、打重ね時間間隔)
  • 裏込め・埋戻しの材料と施工方法
  • 出来形管理計画

施工計画書の基本的な書き方については土木工事の施工計画書ガイドを参照してください。

現場でよくあるトラブルと対策

基礎地盤の支持力不足

掘削後に設計で想定した地盤と異なる場合は、速やかに監督員に報告し、地盤改良やセメント安定処理などの対策を協議します。

水抜きパイプの詰まり

裏込め材に土砂が混じると水抜きパイプが詰まり、背面に水圧がかかる原因となります。裏込め材の品質確認と、パイプ周辺への透水シートの設置が有効です。

コンクリートの打継目からの漏水

打継面の処理が不十分だと漏水の原因になります。打継面はレイタンスを除去し、適度に湿潤状態にしてから打設します。

まとめ

擁壁工事は土木工事の基本工種ですが、形式の選定から施工・品質管理まで多くの判断が求められます。現場条件を十分に把握し、適切な擁壁形式を選定することが工事成功の第一歩です。

出来形管理の具体的な方法については出来形管理の実務も併せてご確認ください。

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