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酸素欠乏・硫化水素中毒の防止対策【下水道・マンホール工事】

酸素欠乏・硫化水素中毒の防止対策【下水道・マンホール工事】

酸素欠乏・硫化水素中毒とは

酸素欠乏症とは、空気中の酸素濃度が18%未満の環境で発生する健康障害です。また、硫化水素中毒は、硫化水素ガス(腐った卵のような臭い)を吸入することで発生する中毒症状です。

下水道やマンホール内の工事では、酸素欠乏と硫化水素中毒の両方のリスクが同時に存在します。これらの災害は発生すると短時間で意識を失い、死亡に至る極めて危険な災害です。

酸素濃度と人体への影響

酸素濃度症状
21%通常の大気(安全)
18%安全限界(法令上の基準値)
16%頭痛、吐き気、脈拍増加
12%めまい、筋力低下、体の自由が利かなくなる
10%顔面蒼白、意識消失、嘔吐
8%昏睡、7~8分以内に死亡
6%以下一呼吸で瞬時に昏倒、呼吸停止

硫化水素濃度と人体への影響

硫化水素濃度(ppm)症状
10以下安全限界(法令上の基準値)
10~50目、鼻、のどの刺激
50~100頭痛、めまい、吐き気
100~300嗅覚麻痺(臭いを感じなくなる)
300~700肺水腫、意識消失
700以上瞬時に意識消失、死亡

注意: 硫化水素は高濃度になると嗅覚が麻痺するため、「臭いがしないから安全」とは限りません。

酸素欠乏・硫化水素が発生しやすい場所

土木工事における危険場所

場所発生原因
マンホール内有機物の分解による酸素消費、硫化水素の発生
下水道管きょ内汚水中の有機物の分解
暗きょ・ボックスカルバート内密閉空間での酸素消費
深い掘削底面(密閉状態)酸化しやすい地層(腐植土等)からの酸素消費
ケーソン内密閉空間での酸素消費
既設管への接続部既設管内のガスの流入

酸素欠乏が発生するメカニズム

  • 微生物の活動: 有機物を分解する際に酸素を消費
  • 金属の酸化: 鉄管の錆びなどによる酸素消費
  • 地層からのガス: メタンガスや二酸化炭素による酸素の置換
  • 化学反応: 塗料や溶剤の蒸発による酸素の置換

法令上の義務

酸素欠乏症等防止規則の主な規定

規定内容詳細
作業主任者の選任酸素欠乏危険作業主任者(第2種)の選任
酸素濃度の測定作業開始前に測定(18%以上を確認)
硫化水素濃度の測定作業開始前に測定(10ppm以下を確認)
換気の実施十分な換気を行うこと
保護具の備え付け空気呼吸器等の備え付け
特別教育の実施酸素欠乏危険作業に係る特別教育
監視人の配置坑外に常時監視人を配置
退避の設備異常時に直ちに退避できる設備

作業主任者の資格

下水道やマンホール内の作業では、硫化水素のリスクもあるため、第2種酸素欠乏危険作業主任者の資格が必要です(第1種では不可)。

種別対象作業測定項目
第1種酸素欠乏危険作業(硫化水素なし)酸素濃度のみ
第2種酸素欠乏・硫化水素危険作業酸素濃度+硫化水素濃度

具体的な防止対策

(1) 作業前の濃度測定

測定項目基準値測定方法
酸素濃度18%以上酸素濃度計(電気化学式)
硫化水素濃度10ppm以下硫化水素検知器

測定のポイントは以下のとおりです。

  • 作業開始前と作業中断後の再開前に必ず測定する
  • マンホール等では上部、中部、下部の3箇所で測定する(ガスの比重により濃度が異なる)
  • 測定者は坑外から測定器を吊り下げて測定する(坑内に入らない)
  • 測定結果を記録し保管する

(2) 換気の実施

換気方法特徴
送気式換気マンホール上部から新鮮な空気を送り込む(推奨)
排気式換気坑内の空気を吸い出す
自然換気マンホール蓋を開放して自然通風(十分でない場合が多い)

送気式換気が最も効果的です。換気装置は作業中を通じて継続して運転します。

(3) 保護具の準備

保護具用途
空気呼吸器(SCBA)酸素濃度18%未満の場所での救助用
送気マスク長時間の作業用(外部から空気を供給)
酸素濃度計(携帯型)作業者が携帯し、異常時に警報
安全帯(ハーネス)緊急救出用(ロープで引き上げ)
救出用三脚マンホールからの要救助者の引き上げ

(4) 監視人の配置

坑外に監視人を常時配置し、以下の業務を行わせます。

  • 坑内作業者の状態を常時監視
  • 異常発生時の通報・救助要請
  • 酸素呼吸器を装着せずに坑内に入ることを禁止(二次災害防止)
  • 入退坑者の記録

緊急時の対応

救助時の最重要ポイント

酸素欠乏・硫化水素中毒の事故では、救助者が二次災害で被災するケースが非常に多いです。

やるべきことやってはいけないこと
空気呼吸器を装着してから救助に入る呼吸用保護具なしで坑内に入る
換気装置を最大で稼働させる換気せずに救助しようとする
救急車を直ちに呼ぶ自力救助だけで対応しようとする
ハーネスとロープで要救助者を引き上げる二次災害のリスクを無視して飛び込む

緊急時対応手順

(1) 異常を発見したら大声で周囲に知らせる

(2) 救急車(119番)を直ちに呼ぶ

(3) 換気装置を最大出力で運転する

(4) 空気呼吸器を装着した上で救助に向かう

(5) 要救助者をハーネスとロープで坑外に引き上げる

(6) 坑外で心肺蘇生(CPR)を行う

教育・訓練の実施

KY活動でも酸素欠乏・硫化水素のリスクを取り上げ、新規入場者教育で全作業員に周知することが重要です。また、救助訓練を定期的に実施し、緊急時に確実に対応できるようにしておきましょう。

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