河川工事の仮締切工法の種類と選定方法
仮締切工法とは
仮締切工法は、河川内で構造物を構築する際に、施工区域への水の浸入を防ぐために設置する仮設構造物です。橋梁の下部工事、堰・水門の構築、護岸工事、河床の掘削など、河川工事では欠かせない工種です。
仮締切は洪水時に流失・崩壊するリスクがあるため、出水期を避けた非出水期に施工するのが原則です。河川工事特有のリスクを理解し、適切な工法を選定することが重要です。
仮締切工法の種類と比較
| 工法 | 止水性 | 適用水深 | コスト | 施工期間 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鋼矢板二重締切 | 高い | 深い(5m以上可) | 高い | 長い | 大規模工事に適用 |
| 鋼矢板一重締切 | 中程度 | 中程度(3m程度) | 中程度 | 中程度 | 一般的な河川工事 |
| 土のう締切 | 低い | 浅い(1m程度) | 安い | 短い | 小規模工事 |
| 大型土のう締切 | 中程度 | 中程度(2m程度) | 比較的安い | 比較的短い | 中規模工事 |
| コンクリート堰 | 高い | 中程度 | 高い | 長い | 長期間使用する場合 |
| 仮設堤防(築堤) | 中程度 | 中程度 | 比較的安い | 中程度 | スペースがある場合 |
鋼矢板二重締切
鋼矢板二重締切は、2列の鋼矢板の間に中詰材(砂、砕石)を充填して構築する工法です。
特徴
- 止水性が高く、水深の深い箇所にも対応可能
- 安定性が高く、大規模な河川工事に適する
- コストが高く、施工期間も長い
- 鋼矢板の打設・引抜きに伴う振動・騒音に注意
施工手順
(1) 鋼矢板の打設準備:導材を設置し、打設順序を計画する
(2) 外側鋼矢板の打設:河川側の鋼矢板を先に打設する
(3) 内側鋼矢板の打設:施工区域側の鋼矢板を打設する
(4) 中詰材の投入:2列の鋼矢板の間に砂や砕石を投入し、締め固める
(5) 腹起し・タイロッドの設置:内外の鋼矢板をタイロッドで連結し、安定性を高める
(6) 排水:締切内の水をポンプで排水し、ドライワークの環境を確保する
鋼矢板の打設方法の詳細は鋼矢板の施工方法を参照してください。
鋼矢板一重締切
特徴
- 二重締切に比べてコスト・施工期間を抑えられる
- 止水性は鋼矢板の継手性能に依存する
- 水圧が大きい場合は腹起し・切梁で補強が必要
施工手順
(1) 鋼矢板の打設:施工区域を囲むように鋼矢板を打設する (2) 腹起し・切梁の設置:水圧に応じた支保工を設置する (3) 排水:ポンプで締切内の水を排水する (4) 漏水対策:継手部からの漏水はコーキングや止水材で処理する
土のう締切・大型土のう締切
特徴
- 施工が簡易で、短期間で設置できる
- コストが低い
- 止水性は低く、常時ポンプでの排水が必要
- 水深が浅い箇所、小規模工事に適する
施工手順
(1) 河床面の整地:土のうを積む箇所の河床を平坦にする (2) 敷設シートの設置:土のうの下に遮水シートを敷設する(必要に応じて) (3) 土のうの積上げ:必要な高さまで土のうを段積みする。大型土のうの場合はバックホウで設置 (4) 遮水シートの設置:土のうの表面に遮水シートを被せ、漏水を抑制する (5) 排水ポンプの設置:締切内に溜まる水を排水する
工法選定のポイント
仮締切工法を選定する際は、以下の要素を検討します。
| 検討項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 河川の水深・流速 | 平水時の水深と流速を確認 |
| 施工期間 | 非出水期に完了できる工期か |
| 施工区域の規模 | 締切の延長と囲む面積 |
| 河床の地盤条件 | 鋼矢板の打設が可能な地盤か |
| 上流のダム・堰の有無 | 急な放流による水位上昇のリスク |
| 阻害率 | 河川断面の阻害率が許容範囲内か |
| 環境への配慮 | 濁水の流出防止、魚類への影響 |
河川断面の阻害率
仮締切によって河川断面が狭くなるため、洪水時の水位上昇を検討する必要があります。一般的に阻害率は河川管理者と協議の上で決定し、通常は5-20%以内に収めます。
安全管理のポイント
河川工事では、以下の安全管理が特に重要です。
(1) 出水対策:上流の降雨状況を常に監視し、水位上昇時の退避基準を明確にする
(2) 退避訓練:作業員全員に退避経路と退避方法を周知し、定期的に訓練を行う
(3) 水位監視:水位計を設置し、リアルタイムで監視する。警戒水位、退避水位を設定
(4) 仮締切の点検:毎日の始業前点検で仮締切の変状を確認する
(5) 排水ポンプの予備:排水ポンプの故障に備え、予備ポンプを用意する
施工計画書への記載
河川工事の仮締切に関する施工計画書には以下を記載します。河川工事全般の施工計画書の書き方は河川工事の施工計画書を参照してください。
- 仮締切工法の選定理由
- 仮締切の構造図(平面図、断面図)
- 河川断面の阻害率の検討
- 施工手順と工程
- 排水計画(ポンプの台数、排水量)
- 出水時の対応計画(退避基準、退避経路)
- 仮締切の撤去計画
- 河川管理者との協議結果
まとめ
仮締切工法の選定は、河川工事の安全と品質を左右する重要な判断です。水深・流速・地盤条件・施工規模を総合的に検討し、出水リスクに備えた安全管理体制を整えましょう。
施工計画書の基本的な書き方については土木工事の施工計画書ガイドも併せてご確認ください。
