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土木工事に必要な保険の種類と選び方ガイド

土木工事に必要な保険の種類と選び方ガイド

土木工事会社にとって保険が重要な理由

土木工事は屋外作業が中心であり、重機や高所作業を伴うことから、事故のリスクが他業種より高い傾向にあります。万が一の事故が発生した場合、適切な保険に加入していないと、会社の存続に関わる損害を負う可能性があります。

また、公共工事では保険への加入が入札の条件となっていたり、経営事項審査(経審)の加点要素になっている保険もあります。リスク管理と経営戦略の両面から、保険を正しく理解しておきましょう。

土木工事会社が加入すべき保険の全体像

保険は大きく3つのカテゴリに分けられます。

カテゴリ目的主な保険
法定保険(加入義務あり)従業員の保護労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金
任意保険(強く推奨)事故・損害への備え賠償責任保険、建設工事保険
その他の保険経営リスクへの備え経営者保険、車両保険 等

法定保険: 加入が義務付けられている保険

労災保険(労働者災害補償保険)

従業員が業務中または通勤中にけがや病気をした場合に補償する保険です。建設業では元請会社が現場単位で加入します。

項目内容
加入義務労働者を1人でも雇用する事業主は加入必須
保険料の負担事業主が全額負担
保険料率土木工事: 千分の24(建築工事は千分の9.5)
補償内容治療費、休業補償、障害補償、遺族補償

一人親方の労災保険

一人親方(個人事業主で従業員を雇用していない者)は通常の労災保険に加入できません。一人親方向けの特別加入制度を利用する必要があります。

社会保険(健康保険・厚生年金)

法人は健康保険と厚生年金への加入が義務です。個人事業主も常時5人以上の従業員がいる場合は加入義務があります。

2024年以降、社会保険未加入の建設業者は建設業許可の更新が認められず、公共工事の下請にも入れません。

雇用保険

従業員を雇用する事業主は加入義務があります。従業員の失業時や育児休業時の給付に使われます。

任意保険: 加入が強く推奨される保険

賠償責任保険(CGL: 総合賠償責任保険)

工事中に第三者(通行人、近隣住民、他の建物など)に損害を与えた場合に補償する保険です。

補償の対象具体例
対人賠償工事現場から資材が落下して通行人がけがをした
対物賠償クレーン作業中に隣接する建物を損壊した
地下埋設物損壊掘削中に水道管やガス管を破損した
地盤沈下工事の振動で近隣の家屋が傾いた

補償金額の目安

補償項目推奨する補償限度額
対人賠償1名1億円以上、1事故5億円以上
対物賠償1事故5,000万円-1億円以上

土木工事は影響範囲が広いため、補償限度額は十分な金額を設定しましょう。

建設工事保険(CAR保険)

工事の目的物(施工中の構造物)が、火災、風水害、盗難、作業ミスなどで損害を受けた場合に補償する保険です。

項目内容
補償対象施工中の工事目的物、仮設物、工事用材料
補償されるリスク火災、落雷、風災、水災、盗難、作業ミスによる損壊
保険期間工事着手から引渡しまで
保険金額請負金額を基準に設定

公共工事では発注者側で保険をかけている場合もありますが、民間工事では施工者が自ら加入する必要があるケースが多いです。契約書で保険の負担について確認しましょう。

法定外労災保険(上乗せ労災保険)

法定の労災保険の補償に上乗せして、より手厚い補償を提供する任意保険です。

項目法定労災法定外労災(上乗せ)
死亡時の補償遺族補償年金等1,000万-3,000万円の一時金を追加
後遺障害の補償障害補償年金等等級に応じた一時金を追加
休業補償給付基礎日額の80%差額の20%を上乗せ
入院時の補償治療費は全額入院日額(5,000-10,000円)を追加

法定外労災保険の加入は、経営事項審査(W点)の加点項目にもなっています。

その他の保険

保険の種類内容加入の優先度
自動車保険(任意保険)業務用車両の事故に対応必須
建設機械の動産総合保険建機の損壊、盗難に対応高(高額な機械を保有する場合)
経営者の生命保険経営者に万が一の場合の事業継続資金
サイバー保険情報漏えい、ランサムウェアに対応低-中(IT化が進んでいる場合)

保険を選ぶ際のポイント

(1) 自社のリスクを洗い出す

どのような工事を主に行っているかによって、優先すべき保険は変わります。

主な工事内容特に注意すべきリスク優先する保険
道路工事第三者事故(交通事故)賠償責任保険
河川工事水害、出水による損壊建設工事保険
地下埋設管工事既設埋設物の損壊賠償責任保険
大型構造物工事施工中の損壊建設工事保険

(2) 補償の重複を避ける

複数の保険に加入すると、補償内容が重複する場合があります。保険代理店に現在の加入状況を整理してもらい、無駄な保険料を削減しましょう。

(3) 保険料と補償内容のバランスを考える

保険料を安くするために補償を削りすぎると、いざというときに十分な補償を受けられません。逆に、過剰な補償は経営を圧迫します。年間の保険料総額と補償内容のバランスを見て判断しましょう。

(4) 建設業に詳しい保険代理店を選ぶ

建設業特有のリスクを理解している代理店であれば、自社に合った保険の組み合わせを提案してもらえます。

保険の加入状況チェックリスト

保険加入済み要確認
労災保険-保険料率が正しいか
雇用保険-全従業員が対象になっているか
健康保険・厚生年金-加入義務を満たしているか
賠償責任保険-補償限度額が十分か
建設工事保険-対象工事の漏れはないか
法定外労災保険-経審の加点を得られているか
自動車保険(任意)-業務用車両が全台カバーされているか

まとめ

土木工事会社の保険は、法定保険の確実な加入を基本に、賠償責任保険と建設工事保険で事業リスクをカバーするのが基本です。法定外労災保険は従業員の安心と経審の加点の両方に効果があり、導入をおすすめします。

年に1回は保険の加入状況を見直し、補償内容と保険料のバランスが適正かを確認しましょう。

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