土木工事会社のBCP(事業継続計画)の作り方
BCPとは何か
BCP(Business Continuity Plan: 事業継続計画)とは、地震、台風、豪雨などの災害や感染症の流行といった緊急事態が発生した際に、事業の継続または早期復旧を図るための計画です。
土木工事会社にとってBCPは二重の意味で重要です。1つは自社の事業を守るため、もう1つは地域のインフラ復旧を担う建設業としての社会的責任を果たすためです。
土木工事会社がBCPを策定するメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 入札での加点 | 国土交通省や多くの自治体で、BCP策定企業に入札時の加点がある |
| 経営事項審査(W点)の加点 | BCPの認定を受けると経審の社会性等(W点)で加点される |
| 取引先からの信頼 | 元請会社や発注者からの信頼度が向上 |
| 従業員の安全確保 | 災害時の行動指針が明確になり、従業員の安全を守れる |
| 事業の早期復旧 | 計画があることで、混乱を最小限に抑えて復旧できる |
BCP策定の5つのステップ
ステップ1: 想定するリスクを洗い出す
自社の所在地や事業内容に応じて、どのような災害リスクがあるかを洗い出します。
| リスクの種類 | 影響の例 |
|---|---|
| 地震 | 建物・機械の損壊、道路の寸断、ライフラインの停止 |
| 台風・豪雨 | 現場の浸水、作業中止、土砂崩れ |
| 豪雪 | 現場へのアクセス不能、作業中止 |
| 感染症 | 作業員の欠勤、現場の閉鎖 |
| 火災 | 事務所・倉庫の焼失、重要書類の喪失 |
| 主要取引先の倒産 | 売掛金の回収不能、工事の中断 |
ハザードマップで自社の事務所、資材置き場、主要な現場のリスクを確認しましょう。
ステップ2: 優先する業務を決める
すべての業務を同時に復旧することは不可能です。緊急時に優先すべき業務を決めておきます。
| 優先度 | 業務内容 | 復旧目標時間 |
|---|---|---|
| 最優先 | 従業員の安否確認、安全確保 | 発災後3時間以内 |
| 最優先 | 自治体・発注者への連絡、災害協定に基づく出動 | 発災後6時間以内 |
| 高 | 施工中の現場の安全確認、応急処置 | 発災後24時間以内 |
| 高 | 建設機械・資材の確認、調達手配 | 発災後48時間以内 |
| 中 | 通常業務の再開(事務作業、見積もり等) | 発災後1週間以内 |
| 中 | 中断していた工事の再開 | 発災後2週間以内 |
ステップ3: 具体的な行動計画を作る
連絡体制の整備
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 緊急連絡網 | 全従業員の連絡先リスト(携帯電話、家族の連絡先) |
| 安否確認の方法 | LINE、メール、電話など複数の手段を用意 |
| 指揮命令系統 | 社長不在時の代行者を明確化(副社長、工事部長等) |
| 外部連絡先 | 発注者、協力会社、銀行、保険会社、行政機関の連絡先 |
人員の確保
- 災害時に出勤可能な従業員のリストを作成
- 遠方に住む従業員は出勤が困難な場合を想定
- 協力会社からの人員応援の事前取り決め
資機材の確保
| 資機材 | 備蓄・確保の方法 |
|---|---|
| バックホウ、ダンプ等 | 自社保有機械の配置場所を明確化 |
| 燃料 | 燃料販売店との優先供給契約 |
| 土のう袋、ブルーシート | 一定数を常時備蓄 |
| 発電機 | 保管場所と燃料を確保 |
| 仮設トイレ | リース会社との優先手配の取り決め |
データのバックアップ
- 工事書類(契約書、設計図書、施工計画書)の電子化とクラウド保管
- 会計データのクラウドバックアップ
- 重要書類(建設業許可証、経審結果通知書等)のコピーを別拠点に保管
ステップ4: 災害協定への対応を計画に組み込む
多くの土木工事会社は、地元の建設業協会を通じて自治体と災害協定を締結しています。災害発生時には、道路の啓開(障害物の除去)、河川の応急復旧、がれきの撤去などに出動する義務があります。
BCPには、災害協定に基づく出動の手順も含めておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出動要請の連絡経路 | 自治体 → 建設業協会 → 自社 |
| 出動可能な人員 | 災害時に即応できる人員のリスト |
| 出動可能な機械 | 即時稼働可能な建設機械のリスト |
| 担当エリア | 自社が担当する地域・路線 |
ステップ5: 訓練と見直しを行う
BCPは作って終わりではありません。定期的な訓練と見直しが必要です。
| 頻度 | 内容 |
|---|---|
| 年1回以上 | 緊急連絡網の更新、安否確認の訓練 |
| 年1回 | BCP全体の見直し(組織変更、人員変動への対応) |
| 災害発生時 | 実際の対応を検証し、BCPを改善 |
BCPのひな型と記載例
BCPの基本構成は以下のとおりです。
| 章 | 記載内容 |
|---|---|
| 1. 基本方針 | BCPの目的、適用範囲、基本的な考え方 |
| 2. 想定リスク | 対象とする災害の種類と被害想定 |
| 3. 優先業務 | 復旧の優先順位と目標復旧時間 |
| 4. 組織体制 | 災害対策本部の設置、指揮命令系統 |
| 5. 連絡体制 | 緊急連絡網、安否確認の方法 |
| 6. 行動計画 | 発災直後、24時間以内、1週間以内の行動 |
| 7. 資源の確保 | 人員、資機材、資金、情報の確保方法 |
| 8. 訓練・見直し | 訓練計画、BCPの更新ルール |
国土交通省が公開している「建設会社のための災害時の事業継続簡易ガイド」を参考にするとよいでしょう。
BCP認定を受けるには
国土交通省の「建設会社における災害時の事業継続力認定」を受けると、経審のW点で加点されます。認定を受けるには、BCPを策定したうえで地方整備局等に申請します。
認定の要件は主に以下のとおりです。
- 防災活動に関する計画の策定
- 防災活動に必要な資機材の保有
- 災害時の体制の整備
- 定期的な防災訓練の実施
まとめ
土木工事会社のBCPは、自社の事業を守るだけでなく、地域の災害復旧という社会的責任を果たすためにも重要です。入札での加点や経審のW点向上というメリットもあります。
「うちは小さい会社だから」と思わず、まずは簡易版から作り始めましょう。連絡体制の整備と安否確認の仕組みを作るだけでも、いざというときの対応力は大きく変わります。
